端本証言(詳報)
1996年11月26日、早川紀代秀被告に対する第14回公判で、坂本弁護士一家殺害事件について、
検察側証人として出廷した端本悟に対する検察側の主尋問が行われた。

早川はツイードジャケットに紫色のシャツ。端本は黒いカーディガンに紺のスラックス。黒縁メガネ)


犯行の指示 Q.坂本弁護士一家殺害を実行したのは誰ですか。 A.まず、私。早川さん、今は岡崎一明さん、故・村井秀夫、新実さん、中川さん。 Q.本件は誰の指示ですか。 A.麻原彰晃の指示に間違いありません。 Q.証人が麻原彰晃こと松本智津夫の警備をすることになったのはなぜですか。 A.武道大会というのがあって、立ち技の部門で自分が優勝したのが選抜された理由です。 Q.坂本弁護士の殺害について、初めて聴いたのはいつですか。 A.11月2日の夜になると思いますけど。 Q.誰から。 A.早川紀代秀さんです。 Q.どういうふうに。 A.「坂本弁護士をポアする」と。「お前は倒してくれればあとはわしらでやる」と。 Q.そう聞いてどう思いましたか。 A.まず、もちろん麻原の指示を受けたに間違いないと思ったし、それが当時から説かれていたヴァジラヤ ーナの教えにある、「これ以上、悪業を積ませない」とか、そのように考えました。 Q.「ポアする」の意味はどう考えましたか。 A.一般的に殺害であることに間違いないです。 Q.それがヴァジラヤーナの教えに基づくものなんですか。   A.そうですね。 Q.では、ヴァジラヤーナの教えと坂本弁護士の殺害はどう結び付くのですか。 A.それは先程述べたように、麻原に力があると信じていましたし、これ以上、悪業を積ませないとか、 教義の背景を考えました。 Q.これ以上、悪業を積ませないために殺害したのですか。 A.その上に、麻原が魂を引き上げるという意味を解釈していました。悪業を積んでいるけど引き上げると。 Q.なぜ、麻原の指示だと思ったのですか。 A.教団のすべてのことが麻原の意思によって運営されていましたので、むしろ、言わずもがなと言った方が いいが、その前の特別班の仕事も麻原の指示と考えてよかったし、当時からすべて麻原が人事を仕切っていた し、例えば、早川さんの勝手な意思で何かをするということはありませんでしたから。 Q.人を殺すのは本来、悪業だが、それが許されることもあるというのが当時の教えですか。 A.それが許される場合がある。麻原にはそれだけの力があるとか説法を信じていましたし。 Q.人を殺すのが許されると、誰が判断するのか。 A.それは松本智津夫しか出来ません。 Q.松本以外の者がポアすることを決定するのは。 A.それは出来ないと解釈していました。 Q.ところで被告人が「坂本弁護士をポアする」と言った時の被告人の様子は。 A.まあ、正直言って、聞いた瞬間は「ホントかな」とかいうのがあったが、割と思い詰めた様子で、今、思 い出しても若干、恐怖が・・・、(声が段々小さくなる)とにかく、本気だなと感じました。 Q.あなた自身、被告人の様子から恐怖を感じたのか。 A.被告人からというより、もちろん、人を殺したことないですし、そういうことです。 Q.証人自身、坂本弁護士を知っていましたか。 A.いや、知っていませんでした。 Q.証人は何と答えたか。 A.そこは短く「ハイ」と返事をしました。 Q.要するに殴り倒すのを承知したというのか。 A.あの、殴り倒すというか、倒すのをですね。 Q.なぜ、断らなかったのか。 A.当時のことになりますから、やはり、教えの呪縛とか、そういう問題だと、今は考えています。 Q.嫌だなあとか。 A.それはもちろんありました。 Q.「ハイ」と返事をした後、どうなりましたか。 A.その後、自分の中でずっと葛藤があって、悩んでいた記憶です。 Q.証人自身は、オウムを出発するまで、松本本人から坂本弁護士事件については、何ら言われていないのですか。 A.そうです。
犯行準備 Q.証人が殺害のために富士山総本部を離れたのはいつか。 A.11月3日の朝方だと思います。 Q.誰とですか。   A.先程の実行犯とです。 Q.交通手段は。   A.教団の車2台です。 Q.車の種類は。   A.ブルーバード・アテーサと、あと4駆の車でした。 Q.2台にどのように分かれたのか。   A.出発の時は覚えていません。 Q.富士山を出発した後はどこへ行ったか。   A.杉並の上荻です。 Q.上荻のどういう場所ですか。   A.アパート、「カーサ上荻」です。 Q.カーサでは何をしましたか。 A.あのう、変装道具が置いてあって、新実がかつらをかぶったのを覚えているのですが、あとの人は 覚えていないです。 Q.変装した後、どうしましたか。 A.したというより、する前に村井と自分が運転して村井と買い物に行った記憶があります。 Q.どこへですか。  A.荻窪駅前の「タウンセブン」です。 Q.何を買ったのか。 A.今、覚えているのは、「タウンセブン」の前の本屋で村井が地図を10冊くらい買っていたのを覚え ています。 Q.どこの地図ですか。  A.横浜の地図です。 Q.何のためと思いましたか。 A.それは坂本弁護士の事件のためのという理解はありました。 Q.それでどうしましたか。  A.新宿の方へ行きました。 Q.なぜですか。  A.服を買うということで。 Q.なぜ、服を買うことになったのですか。 A.ふだんの出家信者の服装がジャージとか、普通と違和感があるので、それを普通にしようということです。 Q.代金は。 A.代金は村井から手渡されたと思うが、とにかく手渡されました。 Q.いくらですか。  A.10万前後だったと思います。 Q.証人はいくら使いましたか。 A.だいたい使い切りました。 Q.そのことに何か言われましたか。 A.早川さんが、少し怒ったような(照れ笑い。早川も釣られて笑う) Q.手袋は買いましたか。 A.誰かがまとめて買ったと思います。 Q.どこでですか。   A.新宿しかないと思います。 Q.被告人にも手袋は渡っていますね。   A.そうです。 Q.新宿で服などを買った後はどうしましたか。 A.それで横浜の方へ向かいました。 Q.坂本弁護士宅の周辺に着いたのは何時頃と思いますか。 A.自分の記憶では割と暗くて、時計を見てはいないが、7時とかそういう感覚でいました。 Q.暗かったのですか。   A.はい。 Q.夕方ではないですか。 A.6時でも暗いかもしれないが、それははっきりしません。 Q.坂本弁護士宅の近くに着いて、どうしましたか。 A.結局、その時は車2台の構成が変わりました。ブルーバードに早川さんと新実さん、4駆に私も含 めて残り4名。それでとにかく早川さんが駅の方に行って、自分としては待ち伏せという気持ちでおり ました。 Q.坂本弁護士宅で車に乗ったまま、自宅の様子を見に行っていませんか。 A.通り過ぎたりはしていると思います。 Q.それで、被告人と新実が駅の方へ行ったね。   A.早川さんです。 Q.残りの4人はどの辺で待っていたんですか。坂本弁護士のお宅の近くですか。 A.あのう、近くと言うか、通るだろうという道に行きました。 Q.その段階では、証人は坂本弁護士の殺害をどういう段取りで行うと考えていましたか。 A.これについては、自分の公判との関係で証言を拒否します。 Q.坂本弁護士を待っていたが、実行犯と何かこのことの関係で話をしましたか。 A.中川さんと私は大師というステージにないので、早川さんたち4人で、ブルーバードの中で話して いた記憶があります。 Q.坂本弁護士がいるかどうか、確認する行動は。   A.ありました。 Q.何をですか。 A.とにかく、早川さんに言われて電話ボックスに行って、坂本さんのお宅に電話をかけて、相手が出 なかったという記憶があります。 Q.その他には確認はしていないか。 A.岡崎さんが、とにかくカギが開いているということを言っていたので、下見に行っていたのは分か っていました。戻ってきて、「カギがあいているぞ」と言った記憶があります。 Q.それでどうなりましたか。 A.それで、ですから、大師たち4人で話していたんじゃないかと思いますけど。 Q.被告人と新実は駅から戻ってきていたんですね。  A.はい。 Q.その時、証人はどこにいたのですか。 A.基本的に4駆にいたので、岡崎と村井がブルーバードの方に移って話していたと思っています。 Q.中川は。 A.中川も4駆だと思いますが、ちょっとはっきりしません。 Q.結果は聞いていますか。 A.結局、午前3時頃、押し入ることになったというのは聞いています。 Q.どうすると。   A.午前3時に押し入るということは記憶しています。 Q.証人は、大師たちの話の結果、「家族ともども殺す」と聞いたんじゃないか。 A.先程の理由で証言を拒否します。 Q.その頃、その話について、中川は何か言っていないか。 A.何もいっていないと思います。 Q.中川が「本当にやるの。子供がいるんでしょ」と言った記憶はないですか。 A.ありません。 Q.証人は坂本弁護士に家族がいるかもということは考えなかったのか。 A.ですから、先程言った理由で証言を拒否します。(やや、いらだつ)
犯行状況 Q.証人が大師たちの話で午前3時頃、坂本弁護士宅に押し入ると聞いた後、どうなりましたか。 A.実際に・・、(声のトーンを急に下げて)押し入っています。 Q.行ったのですね。 A.誰かが起こしに来たので、押し入っています。 Q.どうやって坂本弁護士宅まで行きましたか。   A.歩いてです。 Q.坂本弁護士の自宅に着いて、どうなりましたか。   A.そこで犯行を行いました。 Q.玄関の扉の外には全員集まったんですか。   A.そうですね。はい。 Q.玄関のドアを誰が開けたんですか。   A.・・・。(考え込む) Q.記憶にありませんか。   A.ドアを開けた・・・岡崎ですかね。 Q.岡崎と思うがはっきりしないということですか。 A.下見に行ったのが岡崎というのが強いんで、重なっちゃっているかもしれません。 Q.開けて、メンバー全員が坂本弁護士宅に入ったのか。   A.そうです。 Q.全員が入った後、誰がどういう行動をしましたか。 A.結局、寝室に押し入る前に早川さんが襖を開けて入ったという記憶があります。それで、新実 さんが入って、自分も入った記憶があります。 Q.被告人が襖を開けていた時に、何か言っていた記憶は。 A.言葉の記憶はないです。 Q.手袋については。 A.どっかで、ないというのが、言葉でなくゼスチュアで示していたと思います。 Q.どこで。   A.そうですね。場所はちょっとはっきりしないです。 Q.証人は家族と坂本弁護士が寝ている部屋に入り込んだということですね。 A.はい。 Q.なぜ、入り込んだのか。   A.それは殺害するためです。 Q.部屋の様子は。   A.薄暗いというか・・・、 Q.真っ暗ではないのか。   A.そうですね。真っ暗とは言えないです。 Q.豆電球がついていたくらいの明るさですか。 A.ついていたと、はっきりは言えません。 Q.入って、どうしましたか。 A.あの、自分が坂本弁護士を殴ったのは間違いありません。 Q.どのようにして殴りましたか。   A.馬乗りに近いような形です。 Q.坂本弁護士に殴りかかる前に、坂本弁護士は起きていましたか。 A.いや、寝ていたと思います。 Q.他のメンバーは何をしていましたか。 A.個人個人、何をやっていたかは本当に覚えていません。しかし、殺害を行っていたことは間違いありません。 Q.坂本弁護士の奥さんに対しては、誰か何かやっている記憶がありますか。 A.他の人の行動は本当に分からないです。 Q.証人自身は。 A.それが本当に申し訳ないんですけど、自分の公判の関係で証言を拒否します。 Q.実行犯の誰かが奥さんに襲いかかっていた記憶は。 A.他のメンバーの行動は本当に分からないです。 Q.誰かが奥さんの上に乗って、首を絞めようとしていたことは記憶していないか。 A.記憶していません。 Q.あなたは検察官の調べに対して、「誰かが奥さんの上にのしかかって、首を絞めようとしていた」 と話していないか。 A.誰かがということですか。誰か分からないということなら、間違いないです。 Q.証人は誰かが、なぜ、奥さんにもそういう行動を取っていたと思いましたか。 A.・・・。 Q.証人は坂本弁護士の奥さんが何を言っていたか覚えていますか。 A.(少し沈黙。息を吸い込んで)「子供だけは・・」と言ったのは覚えています。  (強い調子で、一息に言い切る) Q.どのくらいの大きさの声ですか。 A.すいません。これ以上は証言を拒否します。 Q.証人は坂本弁護士の子供の龍彦ちゃんを見ていますか。 A.・・・見ています。(小さい声。かなり震える) Q.証人が見た時の龍彦ちゃんの様子はどうですか。 A.ぐったりして、息絶えてしまったような感じでした。 Q.なぜ、そうなったのか、わかったか。 A.もちろん、誰かが殺害したと思いました。 Q.あなたたちはなぜ、坂本弁護士だけでなく、奥さんや子供さんまで殺したのか。 A.・・先程の理由で証言を拒否します。
犯行後の状況 Q.殺害の後、どうしましたか。 A.遺体を車に乗せて、教団に帰りました。 Q.なぜ、車に乗せたのですか。  (端本、突然「ゴホッ」とむせるような咳をして泣き出す) Q.言いたくないんですか。 A.いえ、いいです。  (両手で顔を覆って、証言席の机に突っ伏して低い声で泣く。「ウウッ」というおえつが法廷に響く。 ハンカチを握り締めて、1分ほど泣き続ける。14時17分) A.まず、運ぶとかいう、事前の話があったわけではありません。(涙声でつかえる) Q.その場で運ぼうと言い出したのですか。   A.そう思います。 Q.誰が言い出したのか。   A.それもはっきりわかりません。 Q.坂本弁護士のお宅から富士山総本部まで、誰がどの車に乗っていったか、記憶にありますか。 A.先程言った通りです。 Q.入る前と同じ組み合わせですね。   A.はい。 Q.車中で変わったことはありませんか。 A.中川さんが、「もう死んでいる」というようなことを医学用語で言っていたのを記憶しています。 (ずっとすすり泣き通し) Q.中川が遺体の状況を確認したのですか。   A.そう思います。 Q.なぜ、中川は確認したのですか。   A.覚えていません。 Q.その他、何か記憶していますか。 A.途中で中川さんが注射針を捨てようと言って・・、注射針と言ったかは覚えていません。 Q.富士山総本部に着いてからのことを聞きます。富士山総本部に着いた時、誰がいましたか。 A.石井久子さんが手招きしていたのを覚えています。 Q.入ってから、どうしましたか。 A.食堂へ行って、ふろ場でシャワーを浴びています。 Q.証人は麻原こと松本智津夫の部屋へ入っていないのか。 A.行っておりません。 Q.その後、証人は誰かから指示を受けていますね。 A.いわゆる、遺体遺棄ですね。 Q.誰からですか。   A.誰かからははっきり覚えていません。 Q.何と言われましたか。   A.言葉ははっきり覚えていません。 Q.いずれにしろ、死体を処分しに行くということですか。   A.そうです。 Q.指示を受けてどうしましたか。   A.実際にそれを手伝っております。 Q.まず、現場から持って帰った遺体を何かに移しましたか。 A.ドラム缶に入れました。 Q.証人は実際にやっていますか。   A.はい。 Q.証人は誰の遺体を運びましたか。   A.坂本弁護士だと思います。 Q.その時、着衣を脱がすようなことはしていますか。   A.していないです。 Q.着衣のズボンを脱がすようなことは。   A.それはしたかもしれません。 Q.何かにおいがしましたか。   A.ションベンのようなにおいがしました。 Q.奥さんや子供は。   A.誰がやったのか分かりません。 Q.ドラム缶に入れたのは。   A.それは間違いありません。 Q.他にドラム缶に入れましたか。 A.新宿で買った服を処分するということで、全員で入れたように記憶しています。 Q.服のことで何か言ったか。   A.とっといていいんですかというふうに。 Q.誰に。   A.早川さんに。 Q.被告人は何と言いましたか。 A.それは「何を考えているんだ」というふうに怒られました。 Q.それで、富士山を遺体の処分のために出発しましたか。   A.はい。 Q.実行犯は行ったか。   A.はい。 Q.他の人は。   A.実行犯だけです。 Q.どこに捨てるという具体的なことは決まっていましたか。 A.聞いておりません。 Q.松本で買い物をしましたね。   A.それはそうです。 Q.それから黒部ダムの方へ行ったんですね。   A.はい。 Q.捨てる場所をどう探したんですか。   A.探しに行くのは自分は行っていないです。 Q.誰が行ったのか。 A.下見に行くのは、早川さんと岡崎さんと村井も行ったかなという記憶です。 Q.遺体を埋める穴は誰が掘ったのか。   A.主に私と中川さんです。 Q.被告人はそばにいましたか。   A.いました。 Q.何をしていましたか。 A.はっきりした記憶はないですが、明かりを照らしていた可能性はあります。 Q.早川は実際に穴を掘りましたか。   A.少しやったかもしれません。 Q.そばで「寒い、寒い」と言っていただけじゃないのか。 A.「寒い、寒い」と言っていた記憶はあります。 Q.掘ってすぐ、水が出たのか。   A.そうです。 Q.深さは。   A.1メートルくらいです。 Q.横穴も掘ったか。 A.結果的にそうなりましたが、自分が掘っているうちに、固い石にぶつかって、それを抜いたと ころ、そうなりました。 Q.穴を掘ってどうしましたか。   A.遺体を埋めました。 Q.誰の遺体をですか。   A.龍彦ちゃんです。(ごく小さい声) Q.その後、新潟へ向かいましたか。   A.はい。 Q.どの車ですか。 A.どの車かはっきりしませんが、早川さんと一緒でした。 Q.あなたが運転している間に、早川さんは何をしていたのか。 A.早川さんが気を遣ってくれて、「いつでも運転を替わってやる」と言ってくれました。 Q.替わってくれましたか。 A.実際は、眠いのを我慢して自分が運転していて、何回か縁石にぶつかりそうになりました。 Q.それでどうしましたか。 A.ぶつかりそうになったのを、新実が早川さんに告げ口して、早川さんから怒られました。 Q.龍彦ちゃんを埋めてから、坂本弁護士の遺体を埋めたことは間違いないですか。 A.それは間違いないです。 Q.遺体を埋める場所にどうやって行ったか覚えているか。 A.車の種類は何となく4駆かなと。 Q.埋める場所に誰がいましたか。   A.まず、私と中川が穴を掘りました。 Q.他のメンバーは。 A.他のメンバーがもう1か所探しているというふうに理解していました。 Q.掘り方についての指示は、 A.スコップか何かで掘る線を早川さんが引いて、そこを掘れということだったと思います。 Q.それで、早川、新実らが戻って来たんですね。   A.はい。 Q.どの程度掘れていたんですか。 A.これが自分も疲れていて、中川さんも疲れていたので、あまりはかどりませんでした。ひざくらいで。 Q.あなたのひざくらいの深さか。 A.ひざか分からないがちょと浅い状態でした。 Q.そのことを何か言われたか。 A.「あまり掘れていない」ということを早川さんから言われました。 Q.それでどうした。 A.それですぐ、私はコンミン(昏眠?)したという感じで、それで何時かたって、坂本弁護士 をその場で埋めました。 Q.坂本弁護士の遺体を埋める時に誰かが、遺体に細工をするということがありましたか。 A.新実さんが、ツルハシを振り上げているシーンがありました。それは身元を分からなくする ためというのは分かりました。 Q.最後に奥さんの遺体を埋めたんですね。   A.はい。 Q.覚えていることはありますか。 A.この奥さんを埋めた場所には、自分は行っていないという記憶です。 Q.自分は行っていないのか。   A.別のところにいた記憶です。 Q.なぜ行っていないのか。 A.その件に関しては、自分の公判との関係で証言を拒否します。 Q.埋めた後、ドラム缶をどうしましたか。 A.その後という記憶ではないんですが、ドラム缶を海に捨てた記憶があります。 Q.いつという記憶ですか。   A.坂本弁護士の遺体を埋めた後です。 Q.奥さんを埋める前ですか。   A.そうなります。 Q.幾つ、ドラム缶を捨てたのですか。 A.その辺の関係について、証言を拒否します。 Q.ドラム缶を捨てる時、誰かに何か指示された記憶はないか。 A.指示というか、それがすぐ沈まなかったもので、それで早川さんが「泳いで沈めてこい」と言 ったんですが、結局は中川さんが「そのうち沈みますよ」と言ってくれて、泳ぎませんでした。 Q.「行って沈めて来い」と言われた時、どう思いましたか。 A.怖いというか、寒い季節ですので、驚いた記憶があります。 Q.証人は被告人から、坂本弁護士一家を埋める場所の話し合いについて何か聞いたことはありませんか。 A.あのう、結局、村井がとにかくあのう、とっぴなことをいつも言い出すんですけど、遺体遺棄の こともどこか方角を村井が提案していて、それを早川さんが麻原彰晃と確認していて、早川さんが 「わしの言ったことが正しかった」と言っていて、それで早川さんが麻原と連絡を取っていること が分かりました。 Q.すぐ、富士には帰らないで西に向かったということですね。   A.はい。 Q.何のため。   A.車を海に沈めようということでした。 Q.京都に寄っていますね。   A.はい。 Q.何か買っていますか。 A.自分は新実さんと本屋さんに行って、新実さんが法律書のコーナーを見ていたのを覚えています。 村井さんが車を沈めるための詳しい地図を持っていたので、それもここで買ったのだと理解しています。 Q.新実は法律書を買ったのか。   A.はい。 Q.なぜですか。   A.なぜって、事件のことがあったので買ったのだと思います。 Q.釣り具は。   A.その場所で買っています。 Q.山陰の方に捨てに行くつもりでしたね。   A.その通りです。 Q.結果的に見つからなかったんですね。   A.はい。 Q.それから岡山の方に行ってますね。   A.はい。 Q.津山の方へ行きましたね。   A.行っています。 Q.津山で何がありましたか。 A.岡崎さんと自分が服を買ったのを覚えています。それから、早川さんと中川さんと、故村井秀夫が いなくなってしまいました。その前に麻原から呼び返されたというのをどっかで聞いています。 Q.車を海に捨てるのはやめになったのですか。   A.はい。 Q.それでどうしましたか。 A.岡崎さんと服を買った後、オートバックスに行って、シートをむしって張り替えました。 Q.被告人と村井と中川の3人がなぜ、先に呼び返されたのか分かりますか。 A.中川さんが呼び返されたのはプルシャを落としていたというのをどこかで聞いていたはずです。 早川さんと村井が手袋がなかったというのも、その時は理解していたはずです。 Q.証人と岡崎、新実の3人は車の処理が終わってから富士山総本部に戻ったということですね。 A.そうです。 Q.戻った時に何をしていましたか。 A.その時間に合わせて麻原彰晃が説法をしていたのを覚えています。 Q.なぜ、その時間に説法をしていたのですか。 A.自分たちが帰ったのを分からせなくするための細工だと思っていました。 Q.その後、坂本弁護士一家の転生先を、麻原から聞いたことがありますか。 A.あります。 Q.麻原は何と言っていましたか。 A.3悪趣という、地獄、餓鬼、動物界に対象させて転生したと聞いていました。 Q.それを聞いてどう思いましたか。 A.非常に・・・一言で言ったら、ショックを受けました。 Q.なぜ。 A.ポアというのは、(悪業を積むのを)止めるポアというのを聞いたりしますが、麻原彰晃が (魂を)引き上げるというように理解していましたが、それがなされないポアなんていうのは少 しおかしい。少しどころじゃなくておかしい。結局、こういうことになります。現実にはポアと いうのは殺害で、この豊かな日本から殺害して、プラス、地獄へ落としたとしたら、それは犯行 前には考えられないことでした。悪業を止めるだけでなく、魂を引き上げることだと思っていま した。麻原が引き上げると言うから、私だけでなく早川さんだって、その時は犯行とはいえ、実 践してしまったんだと思います。 Q.ところで、麻原に家族を殺していいのかを聞いたことがありますか。 A.先程の理由で証言を拒否します。 Q.証人は麻原と被告人の間で、坂本事件のことを話しているのを聞いたことがありますか。 A.早川さんがですか。とにかく、麻原彰晃が「この事件は大きな騒ぎになりますかね」と言っ た記憶があります。 Q.被告人は何と言っていましたか。 A.「そうならないんじゃないですか」と言った記憶と、それを麻原が引き取った形で、「大した 騒ぎにはならない」と断言していた記憶があります。 Q.証人はこの事件の後、ラージャ・ヨーガの達成を認められましたね。 A.そうです。 Q.なぜですか。 A.その修行の時は、百人前後、修行しております。それで百人前後のほとんどがラージャ・ ヨーガを認められております。それにラージャ・ヨーガどころか、大師という上のステージに なった人もいました。 Q.事件後、麻原になぜ本件にあなたを加えたか、聞いたことがありましたか。 A.・・・あります。 Q.何と言われたか、証言出来ますか。 A.(少し考えて、意を決したかのように一気に)今は口にするのも非常に不快に思うので、 この一言で言いたいのですが、とにかく、「深い縁だった」ということを麻原が言いました。 Q.被告人と村井が指紋を消したのを知っていますか。   A.はい。 Q.どういう理由でか。 A.それは、犯行の時に手袋をしていなかったからです。 Q.右翼の犯行に見せ掛けようとしたことがありますか。 A.それは麻原がフッと言ったのを自分が聞いた覚えがあります。 Q.何と言っていましたか。 A.「この事件は右翼の犯行に見せ掛ければそれで終わりだ。そして、犯行声明を送りつけれ ば終わりだ」と。
次回期日は12月11日午前10時から、弁護人反対尋問がおこなわれます。