江川紹子の裁判報告
24/JUNE/1997
TBS疑惑再燃!! 「どうぞ見て下さいという印象です」
――端本悟公判で早川紀代秀弁護側証人
本日の端本悟の公判で、早川紀代秀が弁護側証人として出廷。
TBS側は、坂本弁護士らのインタビュービデオを見せることよりも放映を中止することの方を気にしており、ビデオに関してはあっさりと見せてくれた、と証言した。
さらに早川は、岡崎が事件前に坂本宅の玄関前まで行った動機を「好奇心」だの「興味本位」だのと言っていることについて、「理解できない」と疑問を投げかけた。
早川証言によると、水中クンバカと合わせて批判的なインタビューも流すことを知って、麻原が自分と上祐、青山両にTBSに行くよう指示。オウム側はこの3人、TBS側も3人くらいの人間が応対し、名刺交換などをして話し合いに入った。その状況は逐一麻原に報告をあげ、判断を受けた。麻原は、ビデオの内容をチェックし、それがオウムに批判的であるのなら、水中クンバカの映像も放映を中止してもらうように、ということだった。
――見せてくれ、というとテレビ局側はなんと?
「『じゃあ見て下さい』と。もう一つ『それに反論をしたらどうか』とも言っていた。テレビ局側としては、もう新聞(のテレビ欄)にも出てしまったので、中止は避けたいとおっしゃられていた」
――わりとあっさり「見て下さい」と?
「そうですね。見せろ見せないでやりとりをしたことはないです」
――押し問答はなかった?
「ないです。どうぞ見てから文句を言って下さいという印象です」
――見せるのはまずいんだけど、という表情や言葉はなかったのか?
「全然ありません。ですから、(こういうものは本来外部に見せてはいけないものではなく)当然見てもいいものだと思って見ました」
結局麻原の指示で、オウム側は「こちらとしてはこのインタビューと抱き合わせでクンバカのビデオを使ってもらっては困る」と主張。ビデオを見るまではすんなりだったが、放映を中止させる話し合いに4、5時間くらいかかり、結局翌日の放映は中止という約束を取り付けた。ビデオの内容は、麻原に全て報告したが、牧太郎サンデー毎日編集長や被害者の会の永岡弘行会長に比べ、麻原が坂本さんに腹を立てている様子は全くなかった。
10月31日の横浜法律事務所での坂本弁護士との交渉の後も、麻原に報告しているが、麻原は「そうか」という感じで、坂本弁護士に対する怒りの態度はなかった。
――牧氏と比べて、坂本弁護士を問題視するということはなかったのか。
「問題視する問題がないわけですよ、我々からすれば。問題となっているDNAにしても、出家サマナのことにしても、お布施にしても。私も青山さんから帰りしなにどうでしたか、と聞いたのですが、話を聞いても問題だという意識は全くありませんでした。牧さんはドンドン連載をやって、一方的な書き方なんですよ。麻原がおっしゃることからすれば、嘘を書いているわけです。我々とすれば、公平を欠く感じがしていました」
――坂本弁護士より、牧氏の方が、教団にとって障害となる存在と見えたのか。
「障害かどうかは別として、牧さんは問題視するというか、腹が立つ存在でした。私の感じ方は、坂本弁護士は被害者の会の弁護士でしょ。そういう立場でいろいろほじくるのが仕事ですから、ある程度は仕方がない、と。でも、報道は中立的でなくてはならないはず。同じことを言っていても(弁護士とマスコミでは)違いますよね。それに、法律事務所の雰囲気からしても、共産党系だし、宗教的なことをすぐに理解されないだろうと思いましたから、それはじっくり説明していけばいいと。こちらはインチキではないと思って信じているわけですから、インチキではないと説明していけば、ある程度分かると思っていました」
――麻原が坂本弁護士に対して激高することは?
「麻原は感情的にバンと言われるタイプです。牧さんとの話し合いもけんか別れですし、ラジオ番組に出ていた弁護士ともそういう態度でした。こと坂本弁護士に関しては、そういうことはなかった」
この「ラジオ局の弁護士」というのは、文化放送の番組に出ていた木村晋介弁護士のこと。麻原は、木村弁護士とやりとりをして、怒っていたという。
早川は、坂本弁護士一家殺害などの犯罪に荷担した理由として
@麻原をマイトレーヤ如来と信じ人類救済をする存在と信じていた
A説法でポアを理論的に正当化していた
B人間的な情やつらいことを乗り越えるマハームドラーの修行
C出家の時に全面的に自分を麻原に明け渡した
Dハルマゲドンが近いので、1999年までにはなんとかしなければならないという思いがあり、そのためにはヴァジラヤーナで救済しなければならないと思った
などを挙げた。
「救済のためにはやむを得ない。しかもご本人のためになる、という理論でした。そういう理屈はあるが、理屈だけではやはり動けない部分はマハームドラーの考え方が補った。麻原の救済がなければ地球は救われないと思っていた」
その他早川は、麻原を信じた理由を滔々と語り、一瞬「まだ麻原を信じてるのか」と思ったほど。しかし、例えばマハームドラーについては、「チベット仏教のマハームドラーとは違うということが、最近ようやく分かった」とも言っており、未だ心の整理がつかない状態のよう。
また、岡崎が坂本弁護士宅のドアまで行ったことについて、弁護士とこんなやりとりが交わされた。
――岡崎や「興味本位」「好奇心」だったと証言している。
「ほー」
――そういう心理状態はありえるか。
「ないと思います。そんな浮ついた気持ちでは、私はありませんでした」
――興味本位、好奇心というのは
「理解できない」
麻原の怒りの対象が牧太郎氏から坂本弁護士に変わる間に、誰がどんな報告や意見を麻原に述べたのか。岡崎が、坂本宅までわざわざ行ったのは何のためなのか。
坂本事件に関する謎は、深まるばかりだ。