芳賀さんの オウム法廷番外編
97.6.27
新実智光被告公判
検察側証人:岡崎一明被告
坂本弁護士一家殺害事件の審理で、世紀のウソツキ男こと岡崎一明被告が新実被告の弁護人から反対尋問を受けた。この日の公判でも、時折にやけた表情をみせ、なめきった態度に終始した岡崎被告。最後に許しがたい言葉まではいて、傍聴席を唖然とさせた。
麻原彰晃の公判でも反対尋問が継続中の岡崎だが、どの法廷に出ても「自分はかわいい。聞かれないことは答えない」という主義だけは変えるつもりは毛頭ないようだ。
尋問は入信の経緯から始まったが、最初のウソが炸裂したのは麻原から金を奪った際の状況。
弁護人「どこに保管してあったのか」
岡崎 「麻原の選対本部。押入の段ボールの中に。いくらあったかは知らない」
弁護人「いくつもっていったのか」
岡崎 「2箱」
弁護人「1人でやったのか」
岡崎 「はい。一ずつ運び、教団の車のトランクに詰めた」
ここまでが最初の尋問。だが、休廷後に確認で質問すると
弁護人「部屋にはだれかいたでしょう」
岡崎 「警備の人と麻原の二女と三女がいました」
弁護人「何か言われたか」
岡崎 「特に何も」
弁護人「警備の人は」
岡崎 「車まで運ぶのを手伝ってくれました」
このように、厳しく突っ込まなければ、自分に言いようにしか供述しない。
岡崎のフザケタ放言は、平成7年4月に犯行を神奈川県警の捜査員に自白した経緯で飛び出した。
弁護人「平成2年には話さなかったのに、なぜ 話す気になったのか」
岡崎 「これ以上、オウムが活動しては困る。潰さなきゃいけない。田口君(岡崎らに殺害された信者。オウム最初の殺人事件)のような人がほかにもいるから。『早く』という気持ちだった。地下鉄サリンで強制捜査になって潰れると思ったのに、 それどころか国松長官事件まで。ほっておけない。自分しかないと思った」
この思いあがり発言は、検察官の最終尋問でも飛び出した。
検察官「あなたは脱会して、サリン事件などにかかわらなくてよかったと思いますか」
岡崎 「私が教団の外にいたから、坂本事件も解決した!」
お前がいたから坂本事件が起きたんじゃねーか!。傍聴席には、言葉にならない憤りとあまりに世の中をナメた態度に呆れる息があふれた。
供述を始めた経緯では、岡崎の放言にはまだ枚挙にいとまがない
弁護人「最初はなんと話した」
岡崎 「私は車の運転と…」
弁護人「なぜ、ウソをついた」
岡崎 「怖い。証拠があるなら、早く挙げてほしい。それだけを望んでいた。楽観的でした」
弁護人「自分だけ助かりたかったんじゃないのか」
岡崎 「それもありますが、オウムを潰さなきゃと…」
これまで、「オウムを2度と生まないために教育改革が必要だ」などと説教をぶってきた岡崎は、また新たな道徳を…
質問は、龍彦ちゃんの後、坂本弁護士と都子さんの遺棄場所も書いて手紙を投函しながら、自ら回収した経緯でぶちかました。
弁護士「どんな意図で手紙を出したのか」
岡崎 「本当に、捜索してほしかったから」
弁護人「なぜ」
岡崎 「麻原に『岡崎は本気だ』と思われたかったから」
弁護人「でも、手紙を回収してしまい、捜索してほしいという気持ちは失せたのだろう」
岡崎 「金を払えば出さないと麻原と約束したから。警察も動かず、信じてもらえてなか ったし」
弁護人「麻原との約束など、なぜ守った」
岡崎 「約束は守るものだから!」
弁護人「…」
傍聴席「(笑)」
あくまで自分を格好よく、正当化しようとする岡崎だが、必ずボロは出る
神奈川県警に自称“自首”をした経緯
弁護人「警察官から『協力すれば助かるぞ』とか言われたのでは」
岡崎 「…んー。そういう言い方ではないが。遺体が出てオウムを潰すことができれば、それなりに貢献がと」
弁護人「その言葉をどういうふうに理解したのか」
岡崎 「もしかしたら助かるかなと」
弁護人の追求はここで終わってしまう。しかし、着任間もない岩瀬徹裁判長が、実は岡崎にとっては伏兵だった。ねちっこい裁判長は尋問の最後に食い下がった
裁判長「自首調書を書いて『助かるかも』というのは、何か助かるということ」
岡崎 「オウムが潰れて…」
裁判長「そういうことではなくて」
岡崎 「ん〜…」
裁判長「言えない、言いたくないならいいですよ」
岡崎 「…極刑です」
この瞬間、弁護側、傍聴席ともホッと安堵の表情。「死刑にしない」という“司法取引”まがいの条件を出して供述したともいわれる岡崎。ついに本心を暴き出した裁判長もさすがだが、岡崎の考えは甘い。日本には司法取引はないし、裁判所もそんなものに乗せられることはない。
この日、3人いる弁護人のうち土谷正実を、そしてオレンジ共済のバカ息子、友部百男の弁護人も努めるO弁護士は、平成7年当時の岡崎の婚姻関係にも踏み込んだ。
岡崎は平成7年4月7日、神奈川県警の調べに対して、自分のことはとぼけながらも事件の事実関係を供述。しかし、その後の5月5日に中国人の女性との結婚を果たした。
弁護人は「自分が逮捕され、相手の運命がどうなるか予想できたのになぜ」と質問すると、岡崎は「深くは考えが及ばなかった。楽観的だった」。さらに、弁護人は女性が中国に住んでいたことも曝露した。だが、質問はここで止まった。
岡崎は、自分が曝露してオウム壊滅すれば身の安全が確保され、さらに中国に逃げ込む腹積もりだったのではないか?
推測におよぶが、なぜ質問を続行しなかったのか。被告人との関係がないかもしれない。しかし、岡崎の証言の信用性を確認する上では、聞くべきだったのではないか。
また、坂本事件で最大の疑問点である「ドアの鍵」についても触れた。
地下鉄サリン事件で運転役だった外崎清隆をはじめ、無責任弁護士の尻拭いで数件引き受けているT弁護士は「あなたが、カギをあけたんじゃないの」と切り込んだ。岡崎は「それはない」ときっぱり。なおも「じゃ、合鍵でも」、それでも岡崎は「ありません」。「それじゃ、だれかがもってたとか」「ありません」。
解決はみなかったが、視点を変え時には仮説で切り込むのも必要だ。特に、審理の集大成ともいえる麻原公判では岡崎だけでなく、まだまだ本当のことを語っていないと思われる被告人もいる。前回の岡崎に対する反対尋問は、江川紹子さんや佐木隆三さんも書かれていたように、突っ込みが甘いどころの騒ぎではない。もう少し、比較検討、材料を用意して真実を語らせてほしい。何しろ、親分は話をする気などまるでないのだから。(了)