オウム法廷番外編
BY 芳賀
97/7/4
麻原公判第43回、44回
証人岡崎一明に対する弁護側反対尋問
岡崎は本当に麻原の指示だけで事件を実行したのか?
坂本弁護士事件の審理、佳境ともいえる本格的な岡崎の反対尋問に突入した。
だが、弁護団の論拠と岡崎の“おとぼけ”は、食い違いばかりが露呈した尋問となった。
岡崎が、あの松野頼三の「施設秘書をやっていました」と証言していただけに、弁護団は平成元年の宗教法人の認可問題に切り込んだ。
弁護人「信者の親が衆議員を出して圧力をかけた際、あなたが対策を提案したのでは」
岡崎 「分かりません」
弁護人「何かしているでしょう」
岡崎 「元裁判官で弁護士の出家信者がいて、その人の紹介で沖縄の参院議員に会いにいきました」
弁護人「何をしに行ったのか」
岡崎 「教団のプラスになるよう、『一度出向いて下さい』と自宅に行った」
弁護人「どうなりました」
岡崎 「病んでいたので、『今は動けない』といわれました」
岡崎の証言は万事この通り。供述調書と証言の食い違いをしつこく問われても「詳しく聞かれなかったから。ウソついたのではない」と何食わぬ顔。
4日の法廷でも、その大きな態度は何度も法廷にいらだちを巻き起こした。相手は、大胆な仮説で証言を切り崩す主任弁護人。
弁護人「毎日新聞爆破で2回も下見してるが、すでに爆破をしかけることは決まっていたんじゃないの」
岡崎 「なんで、そんな飛躍するのかな。不可解だ」
さらに、若手弁護人が畳み掛ける
弁護人「2回目の下見で、早川が500枚のビラをドスンと置いたんでしょ。爆破すればすぐバレルそれでも実行しろ、と言われたら、グルの意思だといってやるの?」
岡崎 「だから、もうダメだと分かったから帰りましたと言ったでしょ。法廷かな、本当に…」
尋問に言い返す岡崎は、腕組みをして、いかにも「オレの証言をきちんと聞けよ」と言わんばかりの態度。
しかし、今回ばかりは弁護団長が強気で責め立てた。
弁護人「坂本弁護士の家の前で双眼鏡でみたのはあなたじゃないの」
岡崎 「いえ、村井さんです」
弁護人「だって主尋問では、いかにもあなたが見たと言うように」
岡崎 「別の人が見て、後で自分で聞いたと…」
弁護人「相当、図々しいね!」
岡崎 「本当です」
弁護人「内容よりも、あなたが本当のことを言うかが問題なんだよ」
岡崎 「誠心誠意、本当のことを話してます」
麻原が「こんな尋問を続けるのか」と割って入っても「ちょっと黙ってて」言い放つことができるのは、弁護団の中でも今は団長ただ1人。久しぶりの大役を果たした。
弁護団長は4日の公判終了後の会見で、「坂本事件は岡崎被告の反対尋問が最大のヤマ場。実行や遺棄、捜査経過などもこれから」と話し、7月の残り2期日(17、18日)以降も継続する可能性を示唆した。
事件の数カ月後、金を奪って脱走。麻原を脅してまで金を巻き上げた岡崎が、本当に事件当時は麻原の指示を盲信しただけなのか。早川、村井と岡崎地位関係はどうなっていたのか。弁護団が攻め落とそうとするポイントに、基本的に間違いはない。しかし…。追及不足の感は次回以降で払拭されるのか。坂本事件について、現時点ではなせるのは早川紀代秀と岡崎。早川の反対尋問は岡崎の終了後になるため、早川証言で岡崎のウソが分かっても後の祭り。そうならないためにも、鋭く、的を得た尋問が望まれる。
(了)