不定期通信 オウム法廷番外編
松本知子被告公判
97・12・16 被告人質問
自称、日本一不幸な女の被告人質問は今回で3回目。これまで弁護人による尋問が行われたが、いよいよ検察側の反対尋問に突入した。立ち会いは田辺検事。一連のオウム裁判では、公判開始から担当する数少ない検事の1人。
教団最古参の幹部と言っても過言ではない知子被告の起訴事実は、元信者の落田さんの殺害事件の殺人。この日の被告人質問は事件へ至る導入となったが、予想通り「坂本弁護士一家殺害事件」にも踏み込んだ。しかし…
知子被告は前回までの被告人質問の中で、坂本弁護士事件について弁護人に問われ、『無言』を通した。田辺検事は、その点から追及した。
検 事「尋問に先立ち打ち合わせは」
知 子「しました」
検 事「平成元年12月に声がでなくなった話が出て、坂本事件との関係はあるかと聞かれて答えなかったのはなぜか」
知 子「…」
検 事「予想してなかったの?。打ち合わせなし」
知 子「答えられなかった。打ち合わせもないと思います」
検 事「改めて聞くけど、関係あるのですか?」
知 子「あの事件に関することは言えません。あの後、被告人質問の後ですが、弁護人が…」
検 事「弁護人がどうしたの。触れないことになったの」
知 子「他の、事件になっていることは全てです」
検 事「坂本事件を知ったのはいつ?」
知 子「他の事件のことはいえません」
検 事「教団の犯行と知ったのは?」
知 子「…」
検 事「あなたの夫の公判では、実行犯が報告する場にあなたが『いた』という人もいるけど」
知 子「…」
検 事「いいたくないのですか」
知 子「…」
検 事「遺体処理について、あなたが発言したという人もいるけど」
知 子「…」
検 事「その処理の件は真島さん事件のことだという人もいるが、いいたいことはないの」
知 子「…」
検 事「前回、捜査攪乱のためあなたを『撃つ』という話があったけれど、小銃を作っていたことは」
知 子「…」
検 事「教団上の立場を知りたいから聞いているんだけど」
知 子「他の事件のことは、他の人から聞いて下さい。私はどう思われてもかまいません。この場では何も言えません」
検 事「小銃を見て『まっすぐ飛ぶんですか』と質問しているでしょう」
知 子「…(無視。肩ひじついてていこう)」
やはり坂本事件については口を閉ざす知子被告。古い事件に関しては、知子被告が謀議の場にいたことが、複数の信者の証言などによって明らかになっている。
この証言のわずか数十分前、弁護人の質問に対し、「当初、横山弁護士の指示で『落田事件の現場にいなかった』と供述していましたが、真実を言った方が分かってもらえるし、保釈されると思って本当のことを言った」と述べていた。『自分のため』にならない場合には、真実を話したくないという姿勢なのか。
知子被告の主張は、一貫している。「私は教祖にしいたげられていました」。この日も、教団の草創期、船橋に住んでいたころの話を聞かれ「品がなくなるからいいたくなかった。あのころから、若い信者の母親に『おたくの夫は若い女性を集めて何をやろうとしてるんですか』と言われて…。そのころから女を…。そういう時代のことは、私の旨の中に抱けにして出さない出おこうとしたのに…」と号泣した。しかし、その後は坂本事件について聞かれた際の状況にあるように、淡々としかも、けだるそうに「何を聞きたいのですか?」「意味が分かりません」と、あしらおうとする。感情の起伏の激しさは、夫も顔負け。
次回以降も検察側の被告人質問が続く。井上嘉浩、杉本繁郎両被告が、知子被告の公判で証言した「恐妻・松本知子」の素顔が暴かれる。