松本智津夫被告第62回公判
1998/1/16
(毎日新聞より)
オウム真理教の松本智津夫(麻原彰晃)被告(42)の第62回公判は16日、東京地裁(阿部文洋裁判長)で開かれ、今年の教祖の公判が始まった。冒頭、検察側が地下鉄サリン、松本サリンの両事件について、訴因を変更したのを受け、松本被告が昨年4月以来の意見陳述を行った。また、坂本堤弁護士一家殺害事件に関して、元教団幹部、早川紀代秀被告(48)に対して7回目の弁護側反対尋問が行われた。大雪の翌日にもかかわらず、松本被告の意見陳述が行われたため、傍聴希望者はここ数回の倍以上の360人に上った。
裁 判 長:阿部 文洋(52)
陪席裁判官:(48)
陪席裁判官:(40)
補充裁判官:(35)
検 察 官:山本 信一(49)=東京地検公判部副部長ら7人
弁 護 人:渡辺 脩(64)=弁護団長
大崎 康博(64)=副弁護団長ら12人
被 告:松本智津夫(42)
検察側証人:早川紀代秀(48)=元教団「建設省」大臣
(敬称・呼称略)
午前10時ちょうど、松本被告が入廷。画家などが着る紺色のスモックのような服に、ベージュのズボン姿。阿部裁判長が開廷を宣言する。
検察側から提出された地下鉄サリン、松本サリン両事件の被害者の数を絞る訴因変更請求手続きに入る。渡辺脩弁護団長は同意したうえで、意見表明を行った。
弁護団長
「地下鉄サリン事件の証拠はその内容、形式において極めてずさんなものだ。最大の問題点は社会をあおり立て、被告人、弁護人の争う権利を奪ったと言わざるを得ないことだ。また、こうした大量の被害者の訴因は、公判期日の指定にも影響を投げかけている。そもそもわれわれは十分な準備期間も与えられないまま公判に入っており、膨大な証拠の整理に要した時間と労力は大変なものだ。『そんなことをさせて悪かった』と、一言ぐらい言ってほしかった。被告人の争う権利を奪うような起訴があってはならず、これらの点についての反省がほしい。無差別テロ事件という検察側の主張については、証拠のずさんさ、空気中のサリンの毒性についての客観的な枠組みが不明確などの弱点があり、それがいまだに是正されていない」
松本被告はぶつぶつとつぶやき始めた。
10時25分、「今度は弁護団側が訴訟の促進に協力すべきだという意見があるが、それはおかしい」などと言って、弁護団長は意見陳述を終えた。
続いて、別の弁護人が「補足します」と手を挙げた。
「検察の真意は世の中の、『麻原に裁判は無効』『麻原は即刻死刑にしろ』という流れに乗ったものではないかと危惧(きぐ)する」と検察批判を展開。死刑に直面する被告の権利擁護を記した国連決議などを読み上げ、「国際法規を順守してほしい。拙速な訴訟指揮をしないように」と要望した。
弁護側の意見が終わり、裁判長が「被告人、前に出なさい」と声をかけた。
松本被告は左隣の刑務官に腕をとられ、法廷中央の陳述席に移った。刑務官が、立ったままの松本被告の両手を陳述台の上に置いた。指先をテーブルの上に付け、裁判長と相対する姿勢になった。
検察官が地下鉄サリン事件の訴因変更請求書を読み始めた。松本被告の声がマイクを通して廷内に響く。「ナインティーンナインティ シックス セプテンバー……」。「マイ ネーム イズ ショーコー アサハラ、チヅオ マツモト」
「1996年11月15日、私の裁判でアベフミオ裁判長が無罪を言い渡した」
松本被告は、検察官の朗読におかまいなく、つぶやき続ける。さらに被告席の方に歩きかけ、阿部裁判長が右手で席に戻すよう指示。刑務官3人が松本被告を制し、陳述席に戻した。しかし、独り言は止まらない。「教団は関与してないです」
10時35分、しびれを切らしたように阿部裁判長が「検察官の朗読が終わったら、意見を述べる機会がありますから、それまで静かにしていなさい」と注意する。だが、松本被告の口は動き続ける。
10時42分、地下鉄サリン事件に関する朗読が終わる。検察官席後列の検事が立ち上がり、続いて松本サリン事件に関する朗読が始まった。松本被告は「6月20日に第7サティアンのサリンプラントが停止した。だから、その後はサリンはできない」などとしゃべり続ける。傍聴席最前列に座った坂本堤弁護士の妻都子さんの父、大山友之さんは、松本被告の背をやりきれない表情でじっと見続ける。
訴因変更請求書の朗読は10時50分に終了した。
松本被告意見陳述
裁判長は松本被告に「それでは地下鉄サリン、松本サリン事件について意見を述べて下さい」と促した。松本被告は、その言葉が終わらないうちに早口で話し始めた。
被告「ですから、完全な無罪です。無実です。阿部文洋裁判長が1996年11月15日に、釈放と言っております。アメリカでチェックされています」
くぐもった声で早口。聞き取りにくく、傍聴席の記者たちが体を前に乗り出した。裁判長も「もういっぺん……」と声を出しかけたが、松本被告は意に介さず話し続けた。
被告「私の真意は刑事4部の裁判官に伝播(でんぱ)しました。ですから、その点はドンピシャと一致しています。後はありません。のんびりさせてもらうとありがたい」
傍聴席から小さな笑い声が漏れた。
裁判長が「それでいいの?」と念を押した。
被告「不可能ですよ」
裁判長「声が小さい」
たまらずワイシャツ姿の弁護人が立ち上がった。「麻原さんね、あなたにせっかく話してもらっても聞こえないんだが……」。職員が陳述席のマイクを松本被告に近づけた。
弁護人が「もう一度話して」と注文をつけると、松本被告は英語で話し始めた。「ザ コート ジャッジメント……」
「日本語で話しなさい」。裁判長が声を大きくした。無視する松本被告。裁判長がもう一度注意し、ようやく日本語で話し始めた。
被告「つまりですね、1996年11月15日に阿部文洋裁判長が、文章の文に太平洋の洋と書くので、『ぶんよう』という人もいるかもしれないが、全面無罪と宣言されています」
裁判長「それで?」
被告「この裁判が続くのは異常状態です。それが日本人の見解です」
松本被告はここで言葉を切った。法廷に数秒の沈黙がおりた。
裁判長「それでいいんですか」
被告「はい。私の見解です」
裁判長が目配せで合図をし、2人の刑務官が松本被告を両側から支えるように、被告人席に座らせた。あきれた表情の検察官が立ち上がり、冒頭陳述の変更点を読み上げ始めた。
冒頭陳述から削除された内容などについて弁護人側から質問が飛び、検察官とのやりとりがあって、訴因変更手続きは終わった。
早川紀代秀被告証人尋問
早川紀代秀被告が証人として入廷し、11時14分、反対尋問が始まった。
弁護人「坂本さん宅付近に行ってから、あなたは駅前でずっと待っていた。なかなか坂本さんが現れない。麻原さんの予知が当たらなかったと思いませんでしたか」
証人「予知という場合、めい想して、そこで見るビジョンを言葉で説明される。坂本さんの駅からの帰宅というのは、予言と受け取っていませんでしたから、信じる、信じないとは関係ない。現場に行ってみないと分からないと思っていました」
弁護人「当日(11月3日)が祝日と、分かっていたんでしょ」
早川被告は苦笑しながら、「分かりませんでした」と答える。松本被告は静かに聞き入っている。
弁護人「坂本さん宅の明かりを見に行ったのは何時ごろか」
証人「電話をする前で、午後7時か8時ごろと思う」
弁護人「坂本さん宅に電話を入れてみよう、というのは、どういう会話の中から出てきたのですか?」
証人「車に戻った時は、かなり遅くなっていて『坂本弁護士はどこかに寄っているのかね』と。でも、明かりがついているので部屋にはだれかがおると。本人が帰っているか確認するために、電話を入れてみようということになった」
弁護人「電話の次の段階として、岡崎(一明被告)さんがカギを調べた。これも事前に相談したのか」
証人「いえ、なかったです」
弁護人「独断でやった岡崎さんの行為は、指示に反しているのでは?」
証人「指示の範囲外ということは間違いない」
弁護人「カギが開いているという村井(秀夫元幹部)さんの報告は、どんな会話だった?」
証人「『カギが開いているようなんですよね』と。こちらも初めは何を言っているのか理解できなかった」
弁護人「中に入ってなにをする、ということは考えましたか? 主尋問では『やっかいなことになった、と思った』と述べていましたが。坂本弁護士がいたらポアするということになって、家族がいたらどうする、とかいうことは?」
証人「そこまで考えてませんね。入って中の様子を見るとか、そのくらいしか考えていません」
ずっと下を向いたまま、寝入っているような松本被告。「被告人、聞いてなさいよ」と裁判長から注意が飛ぶが、松本被告の反応はない。
弁護人「尊師に連絡しなければいけないと考えたというのは、なぜ」
証人「グルに電話を、という気持ちは覚えているが、なぜそうなったのかは覚えていません」
弁護人「坂本弁護士宅のカギが開いていることを踏まえ、入るかどうか尊師の指示を仰ごうと連絡した?」
証人「そうです」
弁護人「入るかどうかの指示を仰ぐと?」
証人「報告ですよ。入るかどうか限定していない」
弁護人「家族を巻き添えにするには、尊師の許可が必要だと考えたのではないか」
証人「それは入るには指示が必要ですよ」
裁判長が「同じ質問の繰り返しではないですか」と注意した。弁護人はやや考え込み、質問を変えた。
弁護人「麻原さんに電話したのかどうか、あなたと麻原さん以外には分からないんでしょ?」
証人「はい」
弁護人「あなたが電話をしたそぶりをして、麻原さんの指示ということもできる」
早川被告はあきれたように「それはないですねぇ」と述べた。
弁護人「(駅前で)電話したときに周りに人は?」
証人「新実(智光被告)は車の中ですし、いませんでした」
弁護人「ほかの乗客は」
証人「いましたね」
弁護人「電話は何台あったのか」
証人「何台か並んでいたような……。そのうちの一つではあるが」
弁護人「電話ボックスか」
証人「ボックスではなかったと思う」
弁護人「盗聴の心配は」
証人「当時はしてませんでした」
11時59分、休廷。
午後1時15分、松本被告が眠たげな表情で入廷した。
続いて早川被告が入り、着席するとすぐに紙コップの飲み物を口にした。
弁護人「(坂本さん宅に)入ってどうするということまで理解していたの?」
証人「その時点では決まってませんでした」
弁護人「家族を巻き込むというのは、家族を殺害することですか?」
証人「最悪の場合はそうなるだろうし」
「反対尋問したんじゃないですか」と裁判長が口を出す。弁護人は「そんなことはないです」と否定し、別の弁護人からも「前回と違う話をしてるじゃないですか」と助け舟を出した。「聞いて下さい、じゃあ」。裁判長があきらめ顔で左手をひらひらさせた。
弁護人「家族も同じなんだと麻原さんが述べた。具体的にどういう言葉?」
証人「電話の時も言われたと思うんですが、そうでない時もあるので、ごっちゃになっている」
弁護人「その時、あなたはどう答えたんですか」
早川被告は弁護人の執ような尋問に憤り始めた。
証人「また答えるんですか。主尋問で言ったのと同じですけどね」
弁護人「あなたの供述があいまいになっているから再度聞いてるんです」
証人「あいまいになってないですよ」
弁護人「どう答えたの」
早川被告はしぶしぶ証言を続けた。
証人「『家族の人数が多くないから、そのメンバーで大丈夫だ』と言われ、私は『親せきの人が泊まることもある』と答えた」
弁護人「『家族も悪業を積んでいるからポアする必要がある』と言われ、どう思った?」
証人「本当にその通りだ、と納得したんです」
いきなり弁護人が「麻原さんはそもそも殺害を望んでいなかったのではないですか」と切り出す。
証人「私に聞かれても分からない」
弁護人「あとは、お前たちで自由にやれということなのか」
証人「ええ、具体的な指示がないからそうなるのでしょう。坂本弁護士へは注射と言われていて、それを家族にまで拡大した。グルの『しようがない、一緒にやれ』という言葉は私情をまじえずに伝えた」
弁護人「村井さん、岡崎さんの反応は?」
証人「そうですか、という感じ」
弁護人「就寝時ならひそかに忍び寄り、注射で坂本さんだけを殺すのが一番いい方法だと思わないか」
証人は「おっしゃる通り」とだけ答えた。
弁護人「どうしてそう提案しなかったのか」
証人「私より先輩の村井さんや岡崎さんがいた。私の領分ではない」
「しかし……」。弁護人はさらに食い下がる。早川被告はあきれたように笑いながら、「何度言われても、私はそこまで考えてなかったのだから仕方ない」。
弁護人はしばし沈黙した後、質問を変えた。「坂本さん1人の殺害で済む方がよい、というのが麻原さんの意思では?」
証人「坂本さんをポアするのが第一優先。その結果家族を巻き込んでも仕方ない、と理解していた。もし麻原さんが『家族を巻き込まないように』と指示していれば従った」
松本被告は両手を机の上で組んだまま、目を閉じて動かない。
弁護人「龍彦ちゃんに布団をかけたと証言した時、あなたは泣きましたね。これはどういうこと?」
証人「分かんないですね。その時のことをちょっと思い出したもので」
弁護人「かわいそうだと」
証人「そうですね」
法廷全体が静まりかえる。
弁護人「坂本さんや奥さんに対してはそういう感情は起きないんですか」
証人「起きますけど子供さんにはね。奥さんや子供さんにはありますよ」
弁護人「坂本弁護士に対しては」
証人「そういう気持ちはありますよ。でも情であることは克服しないといけないと。修行が足りないと思ってましたから」
弁護人「牧(太郎・元『サンデー毎日』編集長)さんについてはポアする必要はあると思ったの?」
証人「坂本弁護士よりは理解できました」
弁護人「牧さんはポアしてもいいんだ、と」
証人「いいとは思ってませんが、坂本弁護士と牧さんを比べたら相対的に理解できたということです」
弁護人「坂本弁護士殺害は教団の救済活動に役立つ、と理解していたのか」
証人「そうです。それと本人の悪業からの救済と。それ以外にありません」
弁護人「結果として、事件は救済に役立ったと思っているか」
証人「悩んでいるところですね。判断できません。一般的に考えれば教団にマイナスになったと思うし、深い意味ではそうでないともいえるし」
弁護人「マイナスとは」
証人「オウムバッシングがひどくなりました」
弁護人が代わる。「どういう順で3人を殺したか」という問いに、早川被告は「いつ亡くなったというのは分からない」と逃げた。
弁護人「坂本さんを殺したのは注射した中川(智正被告)さんか」
証人「中川さんとは言っていない」
弁護人「ヘッドロックをしたのは岡崎さん。どちらかが殺したことになる」
証人「首を絞めているように見えた。分からないが、そうなりますか」
弁護人は、早川被告が捜査段階で「都子さんの首を絞めた」と供述し、後に撤回した点を追及した。「首を絞めたのでなければ、その間何をしていたのか」
証人「(都子さんの)うわ言を聞いていた」
弁護人「殺害は?」
証人「見ていません」
弁護人の口調が激しくなった。「あなたの話ではだれが何をしていたのか全然分からない。『龍彦ちゃんが寒そうに見えて布団をかけた』と言うが、その日夜には寒い場所に埋めに行ったんでしょ。矛盾しているではないか」
早川被告は「そう言われても」と苦笑する。
弁護人「(都子さんの)首を絞めた、と証言したのはどうして」
証人「もう話しました」
弁護人「納得いかないから聞いているんだ」
証人「納得いかないと言われても……」
激しい応酬が続いた。
弁護人「では、あなたは今でも、坂本さんをポアしたと思ってんの」
早川被告は一瞬、言葉に詰まり、「麻原さんの意思にかかわること」と答えた。
3時11分、休廷。
3時30分再開。早川被告が傍聴席に知人を見つけたのか、目で笑いかけた。
弁護人「坂本事件をやったから、地下鉄サリン事件まで続いたと考えているか」
証人「直接の動機としては関係ない。ただ、実行犯の選定は関係あったのかもしれないが」
弁護人「坂本事件にほかにかかわった人は」
証人「あり得ない」
弁護人「坂本事件であなたは当時からあやしまれていましたね」
証人「プルシャも(中川被告が現場に)落としていて、2、3日前に坂本さんの事務所に行っているからでしょ。私のアリバイが不明確で、疑われた」
弁護人は、毎日新聞社の爆破計画では下見に行ったのに、坂本弁護士事件では下見しなかった理由を追及。早川被告は「村井さんと岡崎さんが引っ張っていたから」と詳細な答えを避けた。
弁護人「麻原さんから『ポアしろ』と言われたのは何回?」
証人「覚えているのは1回」
弁護人は、口調を強める。「変ですね。ポアとは独特の意味の言葉。あとはやれ、と言われただけ。なぜ1度だけなのか」。証人は戸惑いを隠さず、「そう覚えているだけだから」。
弁護人は、松本被告に「一発で倒せる」と言ったとされる端本悟被告についても尋ねた。「端本さんは『そんなこと言うわけない』と証言しているが」
証人「それはウソです。彼が『倒せる』と言っていなければ、メンバーに入っていなかったでしょう」
弁護人「なぜ坂本弁護士をポアしなければいけなかったの」
証人「将来障害になるだろうということです」
弁護人「あなたは、被害者の会は障害にならないと言ったじゃないですか」
証人「私とグルの見方は違ってましたから」
弁護人が交代した。いきなり挑発を始める。
弁護人「あなたはこの法廷が麻原さんと今生で会う最後かもしれないと分かっているか」
証人「分かってません。たぶん田口(修二)さん(殺害)の件でまた会うと思ってましたが」
弁護人「まあ、あなたが警察庁長官狙撃事件に関与していればまた会うことになるけどね」
証人「それは一切知りません」
弁護人「なぜ聞くかというと、あなたが今でも麻原さんに強い信仰を持っているように思われるから」
証人「今でもそうです。教団にいた時とは違ってますけど、今もインチキとは思ってないし、グルは霊性のある方だと思う」
弁護人はさらに「あなたは『うそを言うのが苦しいから証言することにした』と言った。しかし信用できない」などと追及する。
証人「信用してくださいと言っても仕方ない。ご自由にしてください」
弁護人「あなたは坂本事件を語る時、笑う時がある。なぜですか」
証人「勘繰り過ぎの尋問に対する苦笑でしょう」
弁護人「早川さんはルソーの社会契約論を、自分の著書を書く時に初めて読みましたね」
証人「そうです」
裁判長がいらだった様子で「ルソーのことはいいではないですか」と言うが弁護人は応じない。ハルマゲドン、黙示録、物質文明批判……。弁護人の質問に早川被告から、教団の教えの変遷が次々と出る。
弁護人「麻原さんが『ポアしろ、なんて言っていない』と言ったとしたら」
証人「いまでもそうおっしゃってるんじゃないですか。こちらがとやかくいう筋合いのものではありません。証言台に立たなければ、私の供述調書が証拠として採用されてしまいます。厳しい反対尋問も含め受けたほうがいいと弁護士さんに言われたから、こうして証言しているんです」
早川被告の反対尋問が終わった。続いて、この日尋問予定だった青山吉伸被告(37)が入廷した。紺色のチェックの背広に、灰色のズボン姿。裁判長に「尋問は1月29日に行います」と告げられ、退廷した。
4時57分、閉廷。
裁判所は、今年4月から来春までの公判期日について、これまでと同じ原則月4回を提示、今後、弁護団などと協議するが、月3回が限度と主張する弁護団が反発しそうだ。