オウムに破防法適用 棄却
公安審査委員会は、31日、オウム真理教に対して破壊活動防止法に基づく「解散の指定」の処分をするよう公安調査庁長官から出されていた請求を棄却する決定をし、公安庁と教団の双方に通知した。
1995年12月に政府が適用方針を決めて以来、「公共の安全」か「人権の保護」かをめぐって、広範な論議を巻き起こした破防法問題は、これで一応の決着をみた。しかし、52年の破防法制定以来初めての団体規制請求が退けられたことで、同法の見直しや公安庁の改廃問題が浮上するのは必至とみられる。
●団体として暴力主義的破壊活動を行った
決定は、松本サリン事件の経緯や実行状況を検討し、「武器としてのサリンの効果を試すとともに、松本市への進出の障害と考えた裁判官や地域住民を排除・抹殺するために行った」と認定。破防法適用の要件のうちの2つである「団体性」と「政治目的」を満たすとした。
教団側は「裁判制度そのものの否定までは考えておらず、政治目的を実現するものではない」などと主張していたが、認められなかった。
●現時点で、破壊活動を繰り返す恐れはない
続いて決定は、審査の最大の争点になった「将来の危険性」の有無に言及。破防法が定める「暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれ」という要件について、漠然たる不安感や「危惧(きぐ)の念を払い切れない」といった程度では足りず、今後ある程度近接した時期に危険が発生することが、客観的・合理的に認められる必要がある、との判断を示した。
そのうえで、地下鉄サリン事件以降の強制捜査や宗教法人格のはく奪、破産手続きなどによって、「教団は人的・物的・資金的能力を弱体化させつつ、隔離された閉鎖集団から社会内に分散した宗教生活団体に移行している」と述べ、松本サリン事件や地下鉄サリン事件を引き起こした当時の状況とは、極めて大きく変化してきている、と評価。
「公安庁提出の証拠では、近接した時期に暴力主義的破壊活動に及ぶ明らかなおそれがあるとはいえない」と結論づけた。
●今後も監視と信徒の社会復帰支援が必要
決定は最後に、「一連の手続きが、施設の公開や出家信徒と家族との面談会の実施など、かつての教団では考えられなかった変化をもたらした」と、団体適用の手続きに踏み切った公安庁の行動に「相当の意義」を認めた。
そして、今後、教団に不穏な動きがあれば改めて処分請求できることに触れたうえで、「教団の危険性が消失しているとはいえない以上、公安庁は引き続き教団に対する調査を継続するものと思われる」と、監視の必要性を指摘。一方で、「危険性を減少させるためには信徒の社会復帰を促進することが肝要だ」とも述べ、必要な措置をとるよう求めた。
なお、請求棄却の決定に対し、公安庁側が不服を申し立てることは認められていない。