「生きてかえれ!」
救出運動総括文集発行に当たって
「救う会」を中心とした坂本弁護士一家の救出運動は、過去に例を見ない広がりと高まりを見せた。一家を直接は知らない多くの人々までもが、何か自分にできることはないかと自発的に動き、実に多彩で発想豊かな救出運動を展開してくれた。このため、事件は5年余りを経ても風化せず、このことが事件解決に大きな影響を与えたことは疑いの余地がない。
しかし、いかに運動的に成功を収めても、一家の救出がかなわなくては全てが虚しく感じる。当初から、救出不可能だったのなら、なおさらである。
私たちの努力は無駄なものであったのか。坂本弁護士一家の救出運動はいったい何だったのか。今日その意義を見定めることは、家の救出を訴え、多くの方々に多大な御協力をお願いした私たち「救う会」の責務であると思う。そのために、私たちは数回に及ぶ合宿も含め長時間の総括会議を開いて、本書を作成した。この中には救出運動の詳細な経過報告のほか、捜査の問題点、マスコミの取材・報道の問題点など坂本事件を通じて私たちが考えさせられたいくつかの考察も含まれている。
坂本堤君、都子さん、龍彦ちゃん、3人の命はかけがえのないものであった。この3人の死を絶対に無駄に終わらせてはならない。この事件から、あらゆる教訓を学びとり、次につなげていく責任が私たちにはある。
今、3人の家族は誰に邪魔されることなく、緑豊かな鎌倉の寺に眠る。3人の墓石には「和」の文字が刻まれている。
私たち「救う会」は、本報告書を3人の墓前に捧げ、二度と再びこのような事件がおこることのない社会を築くべく、努力を続けることを誓う。