オウムが現在も経済活動をしているのならば、破産手続を一旦停止したらそれも取り込めるのではないか?
1998/6/1
質問
name: 金田真一
subject: 破産手続きについて
body: 丁寧なお答えをありがとうございます。固定主義、とは知りませんでした。それと、法律の窓を読んで、オウムに対する破産手続きが、まだ進行中であるという認識を持ちました。まだ破産宣告が裁判所によってなされていないのであれば、その手続きそのものを停止してしまえばいいのではないでしょうか?つまり、管財人が調査したところ、現在教団は自力で資産の形成を始め、かつ教団の活動も再開しているのだから、破産手続きをこれ以上、進めることは、被害者救済の見地から適切でないと見なすわけです。また、被害者の側が、破産手続きの停止を求める訴訟?を起こす手もあるかと思います。破産宣告が延期になればなるほど、教団の資産は増えるので、被害者には有利ではないでしょうか?もしかしたら、勘違いの質問なのかもしれませんが、素人なりに思ったことを書いてみました。
回答
なるほど、なかなかいい着想ですね。しかし結論から言うと、残念ながら不可能なのです。
オウム真理教に対する破産宣告は、平成8年3月28日午前10時に下されています。
破産手続は、[申立]→[宣告]→[処理・配当]→[終結]と流れていきますが、現在は[処理・配当]の段階なのです。
ところで、破産の手続は[宣告]によってスタートしますが、動き出した破産手続を途中で取りやめる手続としては、「破産取消」と「破産廃止」とがあります。「破産取消」は宣告から2週間以内に即時抗告(いわば異議申し立て)が出た場合に、それを認めて宣告をさかのぼって無かったことにするものです。オウムの破産では既にその期間を経過しており、宣告は確定していますので、「破産取消」はできません。
他方、「破産廃止」とは、将来に向かって破産手続を終了するものです。その中には、債権者全員の同意によっておこなう「同意廃止」と「財団不足による廃止」(資産が無く、配当はもちろん手続費用すらまかなえないような場合には、続行すること自体無意味ですから終了することになるのです。)とがあります。(さらに「財団不足による廃止」には、破産宣告の時点で不足が判明している「同時廃止」と、宣告後に不足の判明した「異時廃止」とがあります。)
まず「財団不足による廃止」については、本件オウム破産では約10億円の資産が確保されており、2割程度の配当が見込まれておりますので、この「廃止」は不可能です。
では、「同意廃止」はどうでしょうか。全ての債権者が一致団結すればできそうな気がします。しかし、残念ながらその申立は破産者つまりオウム真理教からしかできません。破産管財人や債権者から「同意廃止」の申立をすることはできないのです。破産宣告後のオウム資産を取り込むための方便として「同意廃止」をしようとするのに、オウム自身が協力するはずもありませんから、これもダメということになります。
ちょっと専門的で難しところですが、ご理解いただけましたか? TAKIZAWA