坂本弁護士一家事件の捜査の問題点
はじめに
坂本弁護士一家は、事件発生から5年10カ月を経て、3人とも遺体となって発見された。実行犯もすべて特定され、松本智津夫の指揮命令による事件であったことも実行犯たちの供述から明らかにされ、死亡した村井秀夫を除き実行犯及び松本智津夫がすでに起訴されている。事件発生直後から、坂本事件の解決に向けて営々と捜査を続けてきた捜査関係者の方々の努力、中でも捜査本部を始めとする現場の捜査官の方々の努力には、救う会としても心から敬意を表したいと思う。
しかし、現時点に立って本件捜査を振り返ってみたとき、それは残念ながら、オウム真理教の数々の犯罪、中でも假谷清志さんの逮捕監禁致死事件と地下鉄サリン事件に端を発する一連の強制捜査の中でオウム真理教が崩壊することにより、初めて浮かび上がった情報から、ようやく全容が解明されたこともまた事実である。
我々は、それが何故なのかを本章で問いたいと思う。なぜ坂本弁護士一家事件自体の捜査によって、坂本弁護士一家事件をオウムの崩壊前に解明できなかったのか。
もしオウム真理教が壊滅しなかったならば、坂本弁護士一家事件は解明できなかったのか。なぜこれほど多くの他の犠牲を生み出さなければ解明できなかったのか。
本章では、捜査機関に対し、厳しい批判をしている部分も多々ある。しかし、その批判は、個々の捜査員に対して向けられている訳では決してない。そうではなく、我々は、本章で我々の目から見た捜査の問題点を指摘し、二度と同じ過ちを犯して欲しくない、ただその一心である。広く坂本弁護士一家救出運動にかかわった方々、本件捜査に関与した方々、そしてすべての捜査関係者にぜひ目を通していただき、今後の捜査の糧としていただきたいと思っている。