- 4 救出・解決にとってマイナスとなるような報道はしないこと
- (一) マスコミのオウム報道
坂本弁護士一家救出・事件解決にマイナスとなるような報道をしないという点については、不正確な報道とも通じる点があるが(不正確な報道はほぼ間違いなく救出・解決にとってもマイナスとなる報道である)、ここで指摘しておきたいのはオウム真理教に関する報道である。
坂本事件直後の平成元年11月から12月にかけて、各マスコミは坂本事件とオウム真理教との関係、オウム真理教の疑惑について一旦はそれなりに報道した。しかしオウム真理教が記者会見を開き、自分たちの教義をことさらに横に置いて「常識的に見てやるはずはないではないか。」ということを強調して反論し始めると、まず新聞が「深まるナゾ」という形でオウム真理教の疑惑追及から手を引いてしまった。
そして、事件直後はセンセーショナルに坂本弁護士一家失跡を報じていたテレビの各ワイドショーは、横浜法律事務所の弁護士、救う会の弁護士がワイドショーへの出演をしなくなった後も、この風変わりな格好をし、替わったパフォーマンスを見せる「疑惑の集団」を視聴率がとれる格好の題材としてテレビに登場させ続けた。
「富士宮総本部への独占取材と信者の修行の様子」「麻原教祖生出演」「麻原教祖と妻知子のなれそめ」等々。その結果、ワイドショーはあたかもオウム真理教の宣伝の道具と化した感があった。
我々はオウムが犯人だと決めつける報道を求めていたのではない。しかし、客観的に見て、オウム真理教がもっとも疑惑の深い団体であることもまた事実である。そのような中、あたかも芸能ネタのようにしてオウムを報道することがどのような意味を持つのか、もしもオウムが犯人だった場合、結果としてこれら報道がオウムの疑惑隠しの道具に利用されるのではないかということを真剣に検討したワイドショーなど恐らくなかったであろう。
そして、オウム真理教は、こうした経験を通じて、「教団にかけられた疑惑については、むしろテレビに積極的に出演して能弁にしゃべりまくればうやむやにできる。」「各テレビ局に取材の材料を小出しにすればテレビはすぐに飛びついてくる。」という教訓を得たことは間違いない。それは1995年1月1日の上九色村のサリン残留物質の検出報道以降のオウム真理教のマスコミに対する対応を見れば明らかである。
1990年以降1995年までの間、坂本事件とオウム真理教の疑惑について正面から論じた報道を行ったのは週刊ポスト、週刊文春、フォーカス等の週刊誌のみであった。もっとも、雑誌の中では、週刊SPA、週刊金曜日、週刊ポスト12月8日号のように、オウム真理教の疑惑をむしろ積極的に否定するような記事を載せたものもあるので、全てがオウム真理教の疑惑追及を行っていたわけではない。
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