ある遺族の気持ち
50代女性
平成8年4月24、25日、あの忌まわしい地下鉄サリン事件より1年以上が過ぎ、やっと松本被告の初公判の報道をテレビで2日間じっくり視聴しました。
きっと黙秘するであろうと思い、その場に堪えられる自信がなく、最初より傍聴の気持ちはありませんでした。が、案の定、憤りと悲しさとむなしさのみ、そして何か納得ができない思いがし、先の事も考え、訴えるべく書き記してみました。
国選弁護人の方々にお願いがあります。被告の人権の事を考え、いろいろご苦労をされているであろう事もよく解りますが、信者でもなく、ある日突然、何も解らなく殺されてしまった12人とその遺族の悲しみ、それに後遺症で苦しんでいる人達の人権も是非考慮に入れて裁判に臨んで頂きたく思います。
同じ殺人でも、情状酌量にあてはまる場合は弁護人さんの力を注いでいただく事が大切ですが、今回の場合は個人の野望の為の無差別大量殺人です。罪を憎んで人を憎まず、と言いますが、松本被告には絶対あてはまらないと思います。
この世に想像すらできない集団をつくった極悪非道な人間に人権はいるのでしょうか。それなら、被害者の人権が忘れられていませんでしょうか。是非そこのところをよく考えていただきたく思います。とにかく真相を明らかにしていただく事を前提に裁判を速やかに進めていただけます様お願い申し上げます。
この無念な思いと子のない私は誰にもたくすことができませんので、私があの世へいく時は、夫に結果報告ができます様祈るしかあ
りません。
合 掌
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