地下鉄サリン事件民事裁判 全面勝訴
3月9日 井上元幹部らに6億6800万円賠償命令
(毎日新聞より)
死者12人と多数の負傷者を出した地下鉄サリン事件で、被害者と遺族ら41人が元オウム真理教「諜報省」大臣の井上嘉浩被告ら元幹部7人に損害賠償を求めた裁判で、東京地裁は9日、請求通り計6億6800万円余の支払いを命じた。西岡清一郎裁判長は「被害者の無念さ、遺族の悲しみは深く、損害の補てんには到底足りない状況にある」と述べて被害の深刻さを認め、死亡慰謝料の金額を通常の交通事故に比べ2倍以上とするなど、高額の賠償を認めた。
判決理由で西岡裁判長は、事件を「教祖だった松本智津夫被告を首謀者として、地下鉄という公共交通機関を対象として行われた極めて凶悪な無差別テロ事件」と認定した。
その上で、「被害者には重い後遺症で治療の見込みさえ立たない者や、今なお肉体的、精神的後遺症に悩まされている者は少なくない。教団の破産による破産手続きを通じて受領した配当額も、原告らの損害全体を補てんするには到底足りない」と述べ、地下鉄事件被害者の特別な事情を認めた。
被害者側は松本被告ら15人と教団を相手に提訴していたが、松本被告ら8人は、裁判に欠席して賠償を命じられたり、請求を認めて裁判は終結。教団に対する訴訟も、宗教法人の破産に伴い破産管財人との間で和解が成立し、井上被告ら7人に対する裁判が続いていた。
判決後会見した被害対策弁護団によると、被告の元幹部らはほとんどが公判中で経済力がなく、実際に賠償が支払われる見込みは低いという。
事件後寝たきりとなった被害者の兄も会見に同席し、「この判決で、民事裁判に一つの区切りがついたことになるのかもしれないが、私たち家族に『終わり』はない。これからも生活の苦しさに立ち向かっていかなければならない」と訴えた。