過去に読んだ本


00/06/??
『憑き者』, 大多和伴彦編, アスキーA-NOVELS, 4-7572-0765-4
重すぎる。内容がじゃなくて物理的にね。勘弁してくれ、体力ないんだから。ペーパーバックのくせに2000円ってのもなあ、何とかならんか。連句はともかく対談は不要だし、だいたい著者紹介が長すぎる。全体の10分の1以上も書いてどうするんだ。編集者やってたわりに素人くさいなこいつ。主な著書が『金田一耕介99の謎』とかくだんなさそうな本だし、よほどこういう仕事がうれしかったんだろうか。それはまあともかく、作品感想。
以下ネタばれあります。注意!!
『最後の楽園』 服部まゆみ。途中でほとんど読みきれるんだよね。物語の構成上。それでよしとするにはたとえばキャラクターなり、落しどころなり別の工夫が必要だろう。前半もほとんど無意味だろう。もっと切れよく読ませる手段があると思うんだが。

『ママ』 水城嶺子。現在と過去、主観と客観、男と女、大人と子供と、めまぐるしく変化する視点がなかなか効果をあげているかな。西条八十の引用を引っ張ってきたり、携帯のメールを予言に使ったりというのは幅が出てきていい手か。落しどころも雰囲気自体は悪くないか。感情移入させる視点を順にずらしつつ、最後の男の話に入ったところで落とす流れは結構うまいかも。落ちのネタ自体は無理に三段落ちにしたせいかいまいち切れてないが。

『水晶の部屋にようこそ』 藤木稟。展開、解決、オチとありがちなパターンながら、奇麗にまとまっている。キャラクターの使い方がうまいのかな。

『理想の物件』 楠木誠一郎。こういうナマな話はちょっとね。それはともかく、オチがよーわからん。老婦人が知ってたからって、たかだか家宅侵入だろう。脅迫になるほどのことでもないと思うが。まあ精神的にはまいるかも知らんが、この奥さんなら平気でしょう。

『マン・トラップ』 梅原克文。あいかわらずわけのわからない比喩はともかく、やっぱこいつ下手だ。キャラクターやら、その他の挙動にいちいちどうも納得いかないし、効果がまったく感じられないオチを、「定番」という理由で選んでみたり、展開もうまくない。ああひどい。

『ゴージャス・ムッチャン』 犬丸りん。ほのぼのコメディタッチから、どういうふうな(ほのぼの)ホラーにするのかと思ったら、ぜんぜんホラーじゃなかった。肩透かし。

『家に棲むもの』 小林泰三。ちょっと注目してるんだけど、なぜか読むのは初めて。なぞの呪文とか、不気味な家の感じがなかなかさすが面白い。割と理に落ちたあたりはブラフかなあ。

『馘』 谷甲州。どっちかってえと、バカSFのノリ。オチがちょっと奇麗に決めようとしすぎて、話としては失敗してるかな。

『未開封』 西澤保彦。レズとかのマイノリティを出したがる人だなあ、あいかわらず。変な事件に理屈を押し付けてしまうあたり、どうしてもミステリに走るのか。本筋とのつなぎかたもまあ、そつなくまとめてる。

『ランブリン・ローズ』 中山千夏。何なんだこれは。と、思ってしまうあたりはやっぱ私はホラーじゃなくって、怪奇が好きなんだなあ。ただでもやっぱこれはホラーじゃないよなあ。ただのバカの話じゃん。最初から話しぶりが狂騒的だから、それはまあ狙いは狙いなんだろうけど、最後の「変身」も特に意外性はないし。

『顔』 柴田よしき。ラス前のワンステップの飛躍は、そこまでにいったいどんな悲劇が当人に訪れるかを散々気を持たせておいた上で、当人にとっての悲劇でないほうに適度なばかばかしさで振ってみせたあたりはちょっと面白かったかな。オチのほうはどうかと思うが。「目薬」を使い切れないほど作ってしまう(作る本人にとっての)論理的必然性がないから、なんだかなあとしか思えないし。これだと得た「教訓」は「足りないものはどっかにある」ということではなかろうか。だいたい摘出したら目薬のために眼球を集める意味ってあんまりないと思うんだけどね。その辺がわからないあたりが「異常」を表現しているつもりなのかもしれないが、十分表現しているとは思えないな。多分はなから「生鮮食品」ってわかっている目薬を専門家が作りすぎて困っちゃったってあたりの論理性のなさからくるんだよな。ここをきっちり抑えておかないと、そのあとの飛躍が利かないと思う。
ところで眼科医って目薬の開発なんてやるんですかね。もちろん協力はするだろうけど、眼科医単体でやるのかなあ。

『バベル島』 若竹七海。どうせ文語が書けないなら、ステエションとかステュワアトなんてやめときゃいいのに。面白くはあったのだが、全体的な詰めが甘い。火薬を爆発させて壊したんだったら、その痕跡だとかはっきり残るんだから、この手記が取り上げられないわけはないと思うんだが、と言うか、手記があろうがなかろうが、真相が明らかになっていないなんてことはないだろう。昔の話だから細かい疑点は残るかも知らんが。ここはホラーとしての体裁を整えるために強引にもっていったとしか見えない。

『地下室』 図子慧。何がなんだか分かんない話ってのは、そりゃまあ、ホラーの一つの手ではあるのだが、これだと本当に何もわからないんだよなあ。家と男の関係も、なぜ服だけ残ってるのかも、何で「復活」が始まったのかも、何で女があっちにいっちゃったのかも、男の素性も、大叔母の正体も。全部明かせとは言わないが、もう少し効果を考えてもよかろうに。

『白い診療所』 米山公啓。点滴打って血尿なんて出たら次は別の病院に行きそうなもんだが。女をとらえたきゃ、診察に来たときにとっとと、薬で眠らせて確保すりゃよかろうに。そうしなかったから、係累あり(多分)の男が紛れ込んで、後々面倒なことになる可能性をもたらすことにならないだろうに。「遺伝子から羊を作り出す」のと、臓器の細胞から臓器を作るのはまったく違うと思うんだが。医者らしいからその辺判ってないわきゃないと思うんだが、読者をなめすぎ。生物学的の予備知識がなくても、この手が可能なら、もっと健全な方法で臓器移植する方法が確立されてるだろうことくらい考えると思うんだが。ノウハウがこいつらしか持っていなくって独占して金儲けしようと言うことかも知らんが、おおっぴらにできないからあまり効率的とは思えない。それより特許をとって特許料で稼いだほうがいいと思う。そもそも根本的に適合性の問題があるから、大して役に立たないだろう。あと希望をなくすことに活路の希望を見ている状態で、果たして希望を無くしたといえるんでしょうか。
まあ、こういう細かい点はともかく、オチで失笑を買うホラーと言うのはどうか。長編だったら、このあとの展開ってのもあるからまだともかく、短編なんだから意識が薄れていってうんぬんとかって方がまだましと思うんだが。

『スティーム・コップ』 霞流一。描写にかなり荒木飛呂彦が入っているが、全体としてはなかなかバカらしくて良かった。

『はかない願い』 田中哲弥&朱目牌。静かな導入からスリリングな展開、愛に満ちた結末へとホラーとしての完成度は高いと思うが、ヴィジュアルコラボレーションである必然性はないと思う。いったいどういうつもりなんだろう。枚数上の問題か?絵もあれだな。手間がかかっているのはいいがそれに見合うだけの効果があるかな。たしかにちょっと面白いタッチではあるけど。まあ、モノクロの小さいカットだからな。

00/07/14
『彼は残業だったので』, 松尾詩朗, 光文社カッパノベルス,4-334-07391-3
ネタばれありあり。誰も読まないと思うけど一応注意。
彼が残業だったことがいったい事件と何の関係があったのだろう。ただの偶然じゃん。それはともかく、完全にバレバレのトリック、面白みも何もない文章(本人はユーモアと、薀蓄と、感受性を表現していると考えていると思われるあたりがまたつらい)、魅力のまったくないシチュエーションはどうか。島田先生(と大森望)の推薦は基本的に信用しないようにはしているのだが、それにしてもこれはなあ。
いまさらどうでもいいが、いまどき不在時に貨物を部屋の前に置きっぱなしにして立ち去る宅配業者がいるんでしょうか。いったいどうして警察が切断部の照合をしなかったと思えるんでしょうか。いくらバカでも海外へなんて行く機会のありそうにない一介の主婦をクスリの運び屋の後釜へ据えようなんて考えると思えるんでしょうか。つっこみどころはいくらでもありそうだが、今日はこれくらいにしといたろ。

00/07/02
『シビュラの目』, フィリップ・K・ディック, ハヤカワ文庫,4-15-011313-0
まだ本邦初訳の作品なんてあるんだなあ。オチはともかく『聖なる争い』のコンピュータとの対話なんか面白いな。『雪風』のあのシーンとか思い出してしまう。

00/07/01
『MONSTER』14, 浦沢直樹, 小学館ビッグコミックス,4-09-185274-2
やっと話が進んできたようで、かといってしばらく終わりそうでないなあ。

『Heaven?』1, 佐々木倫子, 小学館ビッグスピリッツコミックススペシャル,4-09-186871-1
待望の佐々木倫子新刊。4月末日だから31日とか書いてみたりと、本当にいかにも普通にありそうなボケでここまで楽しませてくれるあたり、いつもどおりうまい。それにしても、このまま青年誌定着なんですかね。

『癒しの葉』7, 紫堂恭子, 角川書店アスカコミックスDX,4-04-853223-5
7巻まで来て、これで紫堂恭子最長連載確定ですね。そろそろクライマックスのようではあるが。

『最終兵器彼女』1, 高橋しん, 小学館ビッグスピリッツコミックス,4-09-185681-0
高橋しんは『いいひと』で絵も話もいまいち合わないと思っていたので、チェックしていなかったのだが、今度のこれは結構とんでもない話らしいので、ちょっと読んでみた。
確かにむちゃくちゃな話。この発端とこの絵で、これはないよなあ。かなり反則。とはいえ、今のところ(あるいはずっと?)状況やなぜ彼女が最終兵器なのかなどの説明がないので、どうしても単なるシチュエーションラヴストーリーということで、高い評価はできないなあ。その辺きっちり作りこんでくれたら、もっと評価は高くなるのだが、なんとなく無理そうな感じ。

『ニア アンダー セブン』1, 安倍吉俊+gK, 角川コミックスAエクストラ,4-04-713349-3
力入れてる絵と抜けてる絵の落差が。全体的には面白いけどな。