マリリオンは'80年代初期のNWOBHM(New Wave Of British Heavy Metal)の流れの中から現われた
新世代のプログレッシブロック(ポンプロックとも呼ばれる)バンドの一つです。
初期の彼らはヴォーカルのフィッシュの個性的なパフォーマンスと音楽性が
往年の(ゲイブリエル在籍時の)ジェネシスに近いものを感じさせていましたが、
'87年のフィッシュ脱退後、新ヴォーカリスト、スティーヴ・ホガースを迎えてからは
独自の世界を構築し、現在に至っています。
同時代にデビューしたペンドラゴンがかつてのプログレッシブロックの遺産を受け継いで
新世代に継承しているのに対して、マリリオンはよりモダンなスタイルを纏おうとしているように思われます。
最近の作品は見方によってはトム・ヨーク率いるレディオヘッドに相通じるものがったりします。

ここではマリリオンのアルバム紹介をしようと思いますが、私は全作品を持っているわけではないので
そのへんはご了解ください(^^;。


Script For A Jester's Tear (1982)
一人芝居の道化師


Fugazi (1984)


Misplaced Childhood (1985)
過ち色の記憶

Pseudo Silk Kimono/Kayleigh/Lavender
Bitter Suite
; Brief Encounter/Lost Weekend/Blue Angel
Hearts Of Lothian ; Wide Boy/Curtain Call
Waterhole(Expresso Bongo)/Lords Of The Backstage
Blind Curve
; Vocal Under A Bloodlight/Passing Strangers/Mylo/Perimeter Walk/Threshold
Childhoods End ?/White Feather

マリリオンの人気を不動のものとしたフィッシュ在籍時の傑作トータルアルバムです。
全10曲で数曲ではサブタイトルがつけられていますが、それとはほとんど関係なしに全編シームレスで編集されたこのアルバムは
フィッシュ自身の少年時代のトラウマを描いたと云われ、かなり内容は暗い(といっても歌詞を理解しているわけではないですけど)ものです。
しかし、KayleighLavenderはシングルカットされ、英国で大ヒットしました。


Clutching At Straws (1987)
旅路の果て

Hotel Hobbies/Warm Wet Circles/That Time Of The Night (The Short Straw)
Going Under/Just For The Record/White Russian
Incommunicado/Torch Song/Slainte Mhath/Sugar Mice/The Last Straw
i) Happy Ending

前作のヒットを受けて制作された本作品ですが、内容はフィッシュ自身の現在の心情吐露したへヴィなものとなっています。
テーマは「ショービズ界に押し潰されようとするアーティスト」、「アルコール依存症」というものが散りばめられており、
前作ほどのトータルアルバムではありませんが統一されたトーンが感じられます。
しかし曲はどの曲も美しいメロディーをもった佳曲揃い。アルバム中数少ないロックンロールナンバーIncommunicado
シングルヒットとなりました。個人的に好きな曲はSugar Mice。間奏でのスティーヴ・ロザリーのギターソロの情感がすごくいい。
サウンドはこのころからジェネシス系のプログレスタイルからもっとオーソドックスなブリティッシュロックになってきており、
それにフィッシュの個性とロザリーのギターを主軸に構築されるサウンドは「マリリオン独自の」ものとなってきているように思います。
が、そのフロントマン、フィッシュはこのアルバムを最後にバンドを脱退。ソロとなります。


Seasons End (1989)
美しき季節の終焉

The King Of Sunset Town/Easter/The Uninvited Guest/Seasons End
Holloway Girl/Berlin/After Me/Hooks In You/The Space...



Holidays In Eden (1991)
楽園への憧憬

Splintering Heart/Cover My Eyes (Pain And Heaven)/The Party/No One Can/Holidays In Eden
Dry Land/Waiting To Happen/This Town/The Rakes Progress/100 Nights


英国プログレッシブロックバンド、マリリオンの1991年の作品です。3rdアルバム以降のスタジオ録音盤ではこれだけ持っていなかったのです。
個性的ヴォーカリスト、フィッシュが去ったあとのヴォーカル、スティーヴ・ホガースが参加しての2作目となるアルバムですが、
次作braveが話題性高かったため地味な印象があるのですが、実際はシングルヒットを狙ったポップチューンもあるとはいえ
やっぱり地味です(^^;。
でもこのサウンドが新生マリリオンの音だということはその後の作品を聴けば明らか。
これが気に入るかどうかがマリリオンが好きになれるかどうかの踏絵的存在なのかも知れません。
ちなみに私は気に入りました。もっと早く聴いておけば良かったと思ったりして・・・・。
最後の3曲はトータル10分に渡り継ぎ目なしに展開するマリリオンお得意のスタイル。これが次作に繋がっていくのだなあと納得。


Brave (1993)
ブレイヴ

Bridge/Living With The Big Lie/Runaway
Goodbye To All That
/Wave/Mad/The Opium Den/The Slide/Standing In The Swing
Hard As Love/The Hollow Man
Alone Again In The Gap Of Luxury/Now Wash Your Hands
Paper Lies/Brave
The Great Escape/The Last Of You/Fallin' From The Moon
Made Again

ブリティッシュポンプロックバンド、マリリオンのおそらく最大の問題作であり傑作です。
'87年、ヴォーカルでありフロントマンであるフィッシュが脱退後、スティーブ・ホガースが加入し
2枚のアルバムを作ってきましたが、ここでホガースの感性が一気にブレイクしたように思われます。
ホガース自身が新聞記事の中から見つけた実際に起きた事件を元にしたといわれるこのコンセプトアルバムは、
現代社会の中で傷ついた人間の魂のきしみのようなものが音の端々から聞こえてくるようです。
アルバム全曲71分(!)を聴きとおすと非常にヘビーです。
しかしながら、最後のThe Great EscapeMade Againの流れは
非常にすばらしい高揚感あふれるサウンドが繰り広げられ、それまでの重圧を一気に開放するような感じを
受けます。そしてこのサウンドのキーとなるのはスティーブ・ロザリーのギターです。
それまではあまり印象は強くなかったのですが、この作品から一気に彼のファンになりました。
ちなみに、このころのライブではホガースはメイクをして昔のピーター・ガブリエルのような
シアトリカルなステージングをしてたようです。(日本でも公演あったけどガラガラだったらしい....)


Afraid Of Sunlight (1995)
アフレイド・オブ・サンライト

Gazpacho/Cannibal Surf Babe/Beautiful/Afraid Of Sunrise
Out Of This World/Afraid Of Sunlight/Beyond You/King


This Strange Engine (1997)
ディス・ストレンジ・エンジン〜遠い記憶に〜

Man Of A Thousand Faces/One Fine Day/80 Days/Estonia/Memory Of Water
An Accidental Man/Hope For The Future/This Strange Engine


Radiation (1998)
レディエイション

Costa Del Slough/Under The Sun/The Answering Machine/Three Minute Boy/Now She'll Never Know
Three Chains/Born To Run/Cathedral Wall/A Few Words For The Dead


Marillion.com (1999)

A Legacy/Deserve/Go!/Rich/Enlightened
Built-in Basterd Radar/Tumble Down The Years/Interior Lulu/House

'80年代初期ネオ・プログレムーブメントの中から登場したマリリオンですが、
ここ数作、メジャーレーベルから離れてからの彼らはどんどん自由な音楽を作っていってるようです。
この新作に収録された曲もかつてのマリリオンからは考えられないようなバラエティー豊かなスタイルを
演奏しています。しかしながら全体的な印象はやはりマリリオンだと思えるのは
Vo.のスティーブ・ホガースの個性によるものでしょう。
もっとも彼ららしいのは16分に及ぶ大作Interior Luluです。これは納得のマリリオン節です(^^)。
歌詞はまだ読んでいないのですけど、インターネットに関わる内容のようです。
そして、内ジャケットには700人以上のファン(?)のポートレイトがずらーっと並んでいて圧巻。


Anoraknophobia (2001)

Between You And Me/Quartz/Map Of The World/When I Meet God
The Fruit Of The Wild Rose/Separated Out/This Is The 21st Century/If My Heart Were A Ball It Would Roll Uphill

新世紀最初のアルバムはなんとEMIに復帰してのリリース。
タイトルは「アノラック恐怖症」。でジャケットには「アノラック小僧(名前はBarry Islandというらしい)」のイラストが(^^;。
アルバムジャケットがやけにポップでマリリオンっぽくないのですが、
サウンドのほうもかつての彼らの姿は表面的には殆ど見えてきません。
9分以上ある曲が4曲もあるのですが一時期のように重たくもなく、比較的軽快なビートの曲が多いようです。
冒頭のBetween You And Meなどはホガースの声でなければマリリオンとわからないようなハードロックチューン。
Quartzも序盤は隙間の多いサウンド。でも途中からマリリオンらしい展開が見え隠れしてきます。
時折挿入されるギターのメロがキング・クリムゾンの「Starless」に似てるぞ(^^)。この曲は結構気に入りました。
シングルになってもおかしくないポップなMap Of The World(よく考えたら昔はシングルヒットを沢山出してたんよね)に続くWhen I Meet God
マリリオンらしいサウンドのミディアムテンポのナンバー。ホガースのヴォーカルはこういう曲にはビタっとはまります。
5分過ぎから曲調が一変しドリーミーな展開に。後半のインスト部はヴォイスのSEを交えています。
ハードロックのSeparated Outで挿まれるオルガンはドアーズのレイ・マンザレクっぽかったりして(^^)。
アルバムで一番長尺(11分)のThis Is The 21st CenturyはSFっぽいタイトルですが、歌詞は結構色っぽい内容だったりします(^^)。
たぶん。
最後の曲はなかなか過激なサウンド。一番マリリオンらしくないかも(^^)。いや、でもマリリオンらしいとも言えるかも(^^;。

ちなみにアノラックを着こんだBarry君の好きなアーティストは
マリリオン、ジェフ・バックリー、ビートルズ、イアン・デューリー、レッド・ツェッペリン、マッドネス、クラッシュ、リンプビズキット、マグマ・・・
で嫌いなものはというと
ネオプログレッシヴロックだそうな・・・(^^)。


Marbles
(2004:CD)

The Invisible Man/Marbles I/You're Gone/Angelina/Marbles II/Don't Hurt Yourself
Fantastic Place/Marbles III/Drilling Holes/Marbles IV/Neverland
Bonus Track: You're Gone (Single Mix)

マリリオンの新作。今回購入したのはRetail (小売り)Versionと呼ばれる1枚もののアルバムですが、本来は2枚組で発表されたもの。
下記がオリジナルの曲リストですが、1枚版には収録されなかった曲が4曲と曲順がだいぶ違っています。

Disc 1:The Invisible Man/Marbles I/Genie/Fantastic Place/The Only Unforgivable Thing/Marbles II/Ocean Cloud
Disc 2:Marbles III/The Damage/Don't Hurt Yourself/You're Gone/Angelina/Drilling Holes/Marbles IV/Neverland
(購入はバンドのWEBサイト:http://www.marillion.com/にて)

内容ですが、ズバリBrave('94作品)の再来!と言いたくなるような力作だと思います。
といってもBraveのようなしっかりしたコンセプトは無いみたいです。ただしMarblesというインターリュード4曲を散りばめてアルバム全体を
まとめているような印象を受けます。これらの曲では「僕の最後のビー玉はどこへいったの?…」といった感じの歌詞から始まる
Marble(ビー玉)をテーマにした歌詞が歌われているのですが、英語の辞書によると"missing a few marbles"は「正気を失う」という意味が
あるようで、冒頭のThe Invisible Manの最初に"The world's gone mad ..."と歌っていることからテーマ性があるのかなと思います。
歌詞がはっきり理解できないのでなんともいえませんが…(^^;

そのThe Invisible Manは13分以上の長い曲ですが、独立した3〜4曲をつなぎ合わせたようにも聴こえます(^^;。
これはBraveGoodbye To All That的な作りといえるでしょう。続くYou're GoneはなんとUKヒットチャートのトップ10に入ったという
ヒット曲。ダンスビートを使ったモダンな曲ではありますが、さほどキャッチーとも思えない曲なのにヒットしたとはイギリスは不思議な国(^^;。
その後も緩急とりまぜて湿度感のあるブリティッシュロックが繰り広げられるのですが、特筆すべきはすべて違ったタイプの曲が収録されていること。
このへんはさすがベテラン、懐の深さを実感できます。最後の曲Neverlandは再び12分以上にわたるドラマチックな曲。ここではピンク・フロイドの
影響を強く感じます。近作でフロイドへの影響度合いをみせつけたペンドラゴンと近いサウンドを聴くことができます。

ちなみにジャケット写真、よくみると右が少年、左が少女の合成写真になっているんですね(^^)。


EMI Singles Collection
(2002:DVD)

Market Square Heroes/He Knows You Know/Garden Party/Assassing/Kayleigh/Lavender/Lady Nina
Heart Of Lothian/Incommunicado/Sugar Mice/Warm Wet Circles/Hooks In You/Uninvited Guest
Easter/Cover My Eyes/No One Can/Dry Land/Sympathy/Hollow Man/Alone Again In The Lap Of Luxury
The Great Escape/Beautiful


マリリオンのEMI時代のヴィデオクリップ集のDVDです。
フィッシュ時代もそうなんですが、ヴィジュアル的にぱっとしないバンドなんで、他の出演者のドラマ仕立てになっているものが
多いみたいです。しかし変なものが多いです。2代目Vo.のスティーヴ・ホガースも最初の頃は爽やかなんだけど、作品ごとにどんどん変になってます(^^;。
でも各曲のシングルバージョンが聴けるのはなかなか魅力的。ファン必携アイテム・・・かな?


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