Guitars (1999)
ギターズ
Muse
Cochise
Embers
Summit Day
Out Of Sight
B.Blues
Four Winds
Enigmatism
Out Of Mind
From The Ashes
Tubular Bellsのイメージで、マルチプレーヤーという見方をされるオールドフィールドですが、彼は紛れも無くギタリストです。
彼のギターが奏でる音は非常に個性的で、このギターサウンドが好きなオールドフィールドファンも多いはずです。
このアルバムはその彼のギターを前面に押し出した小品集です。
ライナーノーツを読むとすべての音をギターを通して作ったと書いてあります。
つまり、ドラムやシンセの音もMIDIギターを使って鳴らしているということです。
でも、このアルバムの本当に良いところは彼のギタープレイそのものなのです。
シンセやドラムの音はほんの申し訳程度に鳴っているだけで、こちらに迫ってくるのは
アコースティックおよびエレクトリックギターの音色です。
そのため曲の完成度としては不充分なところは多い(というかギター偏重のミックスになっている)のですが
メロディー、フレーズ自身が生のオールドフィールドを見せてくれているようで、ファンには嬉しい限りです。
ここ数作発表されてきたディジタル加工された音世界とは一味違う繊細な手作りの味わいがあります。
もちろん彼の音楽の一面としてはTubular Bellsシリーズのような構築された大作というのがあるので、
そういう世界を期待されると肩透かしをくらいます。しかし過去に発表されたQE2のような小品集に通じる
彼のルーツ(ケルティック音楽、フォーク、70年代ロック)を感じることができ、私は好きです。
個人的に好きな曲はギターの多重録音を絵に描いたようなCochise、同じメロディーを奏でるEmbers、From The Ashes
ドラムが良ければかっこいいロックインストになっていたであろうOut Of Mindです。(このままでも好きですけどね(^^;)
日本ではプログレ(本当は彼の音楽にこの言葉を冠するのは不自然なのですが)にジャンル分けされて
いますが、そういう小難しさはなく、まったく気構えずにリラックスして聴ける好盤だと思います。
夜の高速道路に流れるヘッドライトの光跡はギターの6本の弦を連想させます。
(おまけ)
オールドフィールドによる各曲コメント(Music
Powerより)
分かる範囲内で和訳しています(^^;
Muse
"A simple track played on two guitars
that has an almost Elizabethan feel."
「2本のギターで演奏したエリザベス王朝時代の雰囲気を持っているシンプルな曲。」
Cochise
"This track is loosely based on the
first two bars of Led Zeppelin's Whole Lotta
Love ."
「この曲はレッド・ツェッペリンの『胸いっぱいの愛を』の最初の2小節をちょっとだけ下地にしているんだ。」
Embers
"The first track recorded for the
album, using a custom made classical Spanish
guitar.
The instrument is one of my most treasured
possessions."
「このアルバムのために一番最初に録音した曲。カスタムメイドの古典的なスパニッシュギターを使っているんだけど、
僕が持っている楽器のなかでは一番高価な部類に入るだろうね。」
Summit Day
"Inspired by John Krakauer's best-seller
Into Thin Air which dealt with a climbing
tragedy on Mount Everest.
I wrote the song as a tribute and attempted
to put the emotion of the final push to the
summit into music."
「John Krakauerが書いたベストセラーでエヴェレスト山登山の悲劇を扱った『Into
Thin Air』という本にインスパイアされた。
トリビュートとしての意味もあるけど、頂上へ至るときの感情を音楽にしてみたくてこの曲を書いたんだ。」
Out of Sight
"A jazz, rocky riff marks an upturn
in tempo for the album."
B. Blues
"A homage to the legendary B B King."
「伝説的なブルースギタリストB.B.キングに敬意を表して。」
Four Winds
"Four individual pieces of music in
one, named after the four winds with the
music taking their characteristics."
「4つの別々のピースをひとつの曲にしたんだけど、東西南北の音楽の特徴が表れているんでこう名づけたんだよ。」
Enigmatism
"I played my guitar through a synth
without a delay, using a midi converter,
allowing me to produce a mysterious, spooky
sound."
「遅れが発生しないMidiコンバータを通してギターでシンセをコントロールすることで、
ミステリアスで気味の悪いサウンドを作ることができた。」
Out Of Mind
"The penultimate track was borne out
of my love of rock'n'roll. With the Rolling
Stones' sound as a base,
I set about recreating my own version
of their style."
「僕の好きなロックンロールから生まれた歌。ローリングストーンズのサウンドをベースとして
彼らのスタイルを僕なりに作りなおしてみたんだ。」
From the Ashes
"A reprise of Embers but with an added
Celtic ending."
「Embersのリプライズ。でもここではケルティックなエンディングを追加しているんだよ。」