The Millennium Bell (1999)
ミレニアム・ベル


Peace On Earth
Pacha Mama
Santa Maria
Sunlight Shining Through Cloud
The Doge's Palace
Lake Constance
Mastermind
Broad Sunlit Uplands
Liberation
Amber Light
The Millennium Bell

前作Guitarsからわずか半年という早いペースでリリースされたオールドフィールドの新作は
過去2000年の歴史を振り返るという壮大なコンセプトで作られたそうですが、アルバムの構成としては
TB3などにも通じる彼本来の手法で作られたトータル作となっています。
ただ過去のアルバムと比較するとオーケストラとコーラス(ヴォイス)を大々的に導入しているのが特徴で、
ヴォイスの使い方はThe Songs Of Distant Earthに近いものが感じられます。
そのぶん彼自身が演奏するギターが控えめになっています。たぶん彼の発表したアルバムの中で
最もギターの露出度が低いんじゃないかと思います。(キリングフィールドは除く)
ただ、オールドフィールドらしいメロディーは健在ですし、彼独特の音色のエレクトリックギターをここぞというときに
使っているため、さほどギターの不足感は感じられません。元々彼は弾きまくるタイプのギタリストではないことは
ファンの人であれば気づいているはず。全体のオーケストレーションの中で効果的にギターを配していくのが
オールドフィールドのスタイルだと思います。ただギターが全くないと彼らしさが無くなってしまうので難しいところですが....(^^)。

さて曲ですが、序曲といえるPeace On Earthに続くPacha Mamaでこのアルバムの一つの主題となる
メロディーがTB導入部のピアノに似たフレーズにのせて現われます。
Sunlight Shining Through Cloudでは北欧のヨイク風のコーラスをバックに
TB3のライブから参加しているペプシのパワフルなヴォーカルを聴くことができます。
続く2曲はストリングスが前面に出たパートとなっていてちょっと異色ですが、
Lake ConstanceTB3The Inner Childを思わせるところもあり、この曲で前半終了。
CDになってもしっかり前半後半の区切りをつける(つけてしまう)ところは昔からのくせでしょうか(^^)。

Broad Sunlit Uplandsはノスタルジックなピアノのメロディーで始まる曲で後半のハーモニカが
いい味を出しています。この部分はTB3でのThe Top Of The Morningでのパイプの音色に通じるものがあると思います。
サウンドコラージュ風のLiberationAmarok後半を思わすアフリカンドラムとミリアム・ストックリーのコーラスにのせて
オールドフィールドの娘グレタのナレーションが入り、そこに鋭いギターが切れ込んでくるのですがこの入り方は見事にツボをついています。
Amber Lightはゴスペルコーラスが参加するドラマチックな曲で高揚感を味わえます。
このへんの盛り上げ方はさすがに上手いと思います。それとここではアフリカンドラムとオールドフィールドのギターの
相性の良さをあらためて感じさせます。個人的にはこのアルバムで最も好きな曲です。
最後のThe Millennium Bellはダンスビートに乗せてそれまでのメロディーがフラッシュバックのように
綴られていくこのアルバムの総括部分で、オールドフィールドのギターの露出度も多い曲です。
ここでのダンスビートはイビザのDJの助けを借りて作られたようですが、下世話になりすぎない「品位」を感じさせます。
(というのはファンのひいきめかも知れませんが....)
そして鐘が一発鳴りわたったあと、再びAmber Lightがリプライズして締めくくります。

全体的な印象としてはヴォーカルにミリアム・ストックリーが参加しているせいもあってかアディエマスに近い部分も
感じさせるのですが、単なるヒーリングミュージックにならないのがオールドフィールドらしいところでしょう。
オールドフィールドの書く素朴なメロディーとギターはなにものにも替えがたいものがあります。
本作でのオーケストラの導入が今後も続くのであればちょっと考えてしまいますが、
本作はオールドフィールドのチャレンジの一つなんだろうなと思う昨今です(^^)。


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