RUSH


Vapor Trails
(2002:CD)

One Little Victory/Ceiling Unlimited/Ghost Rider/Peaceable Kingdom/The Stars Look Down/How It Is
Vapor Trails/Secret Touch/Earthshine/Sweet Miracle/Nocturne/Freeze (part IV of "Fear")/Out Of The Cradle


ラッシュ久々の新作です。
今回のアルバムのひとつの特徴は「キーボードとの決別」でしょう。元々ギター、ベース、ドラムの3ピースバンドなので原点に戻ったという言い方も
あるかもしれませんが、多くのアルバムで隠し味のように使われてきたキーボード、シンセがなくなったことでサウンドの印象はかなり異なっています。
一言で云うと「シンフォニック色」の後退でしょうか。あと、Counterparts以降採り入れてきたグランジ風味も少し薄くなってよりシンプルなハードロックに
近くなっている印象です。
しかし、アレックス・ライフソンのギターはかなり多重録音されているようで、音圧は十分すぎるほど(^^)。かなり圧倒されます。
ゲディー・リーのベースもぶりぶりいっており、ニール・パートの手数も多くてアルバム全体を通して聴くと疲れてしまいそう。
ただラッシュらしいキャッチーなメロディーをもつ曲もあるのでご心配なく。
個人的にはTest For The Echoよりは好きかなー(^^;


Roll The Bones
ロール・ザ・ボーンズ
(1991)

Dreamline/Bravado/Roll The Bones/Face Up/Where's My Thing?
The Big Wheel/Heresy/Ghost Of A Chance/Neurotica/You Bet Your Life


ベテランハードロックトリオ、ラッシュの音楽は時代とともにそのスタイルを大きく変化させています。
で、このアルバムは'90年初期のスタイルの到達点といえるアルバムです。
この頃の彼らはプロデューサーにルパート・ハインを迎え、ギター・ベース・ドラムのトリオに
キーボード(シンセ)を有機的にからませようとしています。従来もキーボードは採り入れていたのですが
ライブでのトリオでの再現性を意識しているところがありました。しかし、この頃はそれを無視して
よりカラフルな音像を作ろうとしていたんだと思います。その結果、逆にギター、ベースが活き活きとして聞こえます。
また非常にポップであることもこの頃の特徴です。疾走感が爽快なDreamline
ポリスの「見つめていたい」を彷彿させるBravado、ラップを曲中に挿入したRoll The Bonesなどと
聴きやすい曲が多いです。また昔は癖のある声だったゲディー・リーのヴォーカルも円熟味を帯びて違和感がありません。
この後バンドは、再びヘビーなサウンドに移行していきますが、
今後ともスタイルを変えていくのが楽しみでもあります。


Hold Your Fire
ホールド・ユア・ファイア
(1987)

Force Ten/Time Stand Still/Open Secrets/Second Nature/Prime Mover
Lock And Key/Mission/Turn The Page/Tai Shan/High Water


ラッシュは高度な演奏技術をもちながら、かつ、「歌」を聞かすことができる数少ないバンドだと思います。
それはニール・パートという詩人兼ドラマーという存在も要素のひとつですが、ゲディー・リーのヴォーカリストとしての
円熟というのが重要な部分を占めていると思います。
個人的にはプログレッシヴハードロックの範疇で語られることが多い'70年代の彼らよりも
歌を中心に据えた'80年代が好きなんですけど、昔のゲディーのヴォーカルってかん高いだけで面白くなかったんですね。
それがGrace Under Pressureあたりからだんだん抑制された声の使い方をするようになって、
その分「歌」としての魅力がぐっと増してきました。
前置きが長くなりましたが、これはゲディーのヴォーカルを十分に堪能できるという意味で非常に優れたアルバムだと思います。
もちろんアレックス・ライフソンのギターもちゃんと楽しめるのですが、
それにも増して、全曲捨て曲なしの10曲の「歌」が素晴らしいです。
個人的に好きな曲はTime Stand Still(この曲ではエイミー・マンがバックコーラスで参加しています)、途中で7拍子に
なるところもかっこいいです。ピアノのイントロが珍しいSecond Nature、シンセパッドが壮大なサウンドを構築する曲Mission
などですが、特にMissionでは前作Power Windowsでの名曲Marathonを彷彿とさせるスリリングな間奏部と
ドラマチックなエンディングが大好きです。


Geddy Lee/My Favorite Headache
(2000:CD)

My Favorite Headache/The Present Tense/Window To The World/Working At Perfekt/Runaway Train
The Angel's Shere/Moving To Bohemia/Home On The Strange/Slipping/Still/Grace To Grace


カナダのヴェテランロックトリオ、ラッシュのヴォーカリスト兼ベーシストのゲディー・リー初のソロアルバムです。
ラッシュ自身'70年代にプログレッシヴロックスタイルの音楽をやっていたために、今でも日本では「プログレハード」なる括りで語られてしまうのですが
最近の音はメロディック&ハードなのです。ゲディーのこのソロアルバムでも現在のラッシュの味わいを強く感じます。
録音はラッシュと同様ギター、ベース、ドラムのトリオ編成というところにも、彼のラッシュへのこだわりが見えるようです。
ギターは元FMのベン・ミンク(この人はヴァイオリンも弾く)、ドラムはマット・キャメロン。
サウンドは最近のラッシュに通じる比較的へヴィーなものに仕上っているようですが、適度にポップで聴きやすいです。
ややミディアムテンポのハードロックに時折散りばめられるシンセ、ヴァイオリンがいい感じ。
Working At PerfektMoving To Bohemiaではストリングスが効果的に使用されていて個人的に好きです。
ゲディーのヴォーカルも味わい深いものになっていて、全体に落ち着いた雰囲気は「大人のハードロック」だと思います。


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