初台                          1999年9月1日
 
1 陽子のマンションは山手通りと、甲州街道が初台で交わる辺りにある。マンションから山手通りに出て、北側を見るとオペラシティが高くそびえている。  2 そこから歩いて10分のところに、私がすんでいた家(30年前の姿のままで建っているのを、先日確認しておいた)がある。陽子のマンションに泊まった私は、カメラを持って散歩に出た。 

 
3 その家の姿は変わっていない。私が住んでいた部屋もそのままに、一瞬時間が止まったような錯覚に陥ってしまう。しばしたたずんだ後、後ろにそびえるオペラシティが年月の流れの大きさを感じさせて、現実に引き戻されるのである。 4 そのアパートには風呂がなく、私は少し奥まったところにある銭湯に通っていた。どの辺りだったろうか....自然に足が向き、この辺りでは....と角を曲がった私の目に、高い煙突が飛び込んできた。

 
5 何度もペンキを塗りなおしたような煙突は、あの頃と変わってはいないようだが、建物の正面に廻ると、入り口は現代風に化粧されていた。この建物になってからもすでにかなりの時間が経っているようである。 6 看板も「湯屋:KANEKI」と、いかにも新しい施設のように振舞ってはいるのだが.....。この銭湯に私は何度通ったのだろう。 

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