秋葉原お買いものツアーの顛末


私はデジタRメラ、さっともいくつか買いたいものがあるというので秋葉原にでかけた。その日はかなり歩くことになりそうなので、身軽にして家を出た。バッグと財布を小さいものに替え、カードも買い物に必要なもの1枚だけを出し、カードケースはもとに戻した。これがその日の悲劇の始まりだったのである。

秋葉原は駅前に大きな駐車場があり、いつもはそこに車を置いて買い物をする。駐車料は30分250円とかなり高いので、のんびりと買い物をしているとかなり高額になってしまう。その日は節約したいと思い、とりあえず路上駐車をすることにした。「気をつけていて、取締りが始まるようだったら移動する」つもりで、途中何度か車の無事を確かめながら買い物をしていた。ある店でデジカメを見ているうちに、かなり時間がたったことに気がつき、慌てて外に出た。私の目に入ったのは、ミニパトと婦警、次に車を移動しているレッカー車である。

それでもその時はまだ「あ、来ている。移動しなくては」と、比較的のんきに構えていた。「車を止めたのは、あの角を曲がってすぐだから.....」とあたりを見まわすが、みつからない。不慣れなところなので場所を勘違いしているのかと思い、あちこち探すがやはりない。最終的に「あそこにまちがいない」と確信した場所に行き路面を見る。そこには、我が愛車「ミストラル」のナンバーと電話番号が書きなぐってあった。

「こちらまで来てください」と言われ、歩いて2.3分の万世橋警察に車を引き取りに向った。途中、免許証を持ってきていないことに気がついた。出掛けにバッグの中身を入れ替えたときに、移し替えるのを忘れたようだ。こういう場合はおそらく駐車違反のみで、免許不携帯は違反の対象とされないだろうとは思う。しかし、免許証を持っていないのに運転して帰りますとは言えない。困った......。

さっとは困りはてている私を見て、車を引き取ってもらえる人を探してくれた。そこで見つかったのが黒岩である。黒岩の会社は、秋葉原から自転車で5分ほどのところにあるらしい。「天の助け」とはまさにこのことである。電話を受け、自転車で駆けつけてくれた黒岩を、横断歩道の向こう側に発見したときには小躍りして喜んだ。彼は会うなり「ばーか」と笑う。このときほど、黒岩が頼もしく感じられたことはない。(彼はなぜかTシャツを後ろ前に着ていたが....)車を引き取ってもらい、私たちは別れた。私のせいで黒岩は昼食を食べ損なったのではないだろうか。


「いっそのこと買い物を中止して、このまま帰ろう。いや、Jの仕事が終わるのを待って、運転してもらおう」と、さまざまな思いが交錯した。このまま運転して帰って、もし、事故でも起こしたら大変なことになる。免許停止などということになったら、日々の生活に差し支える。散々迷った挙句、やはりJに頼むことにして、お買いものツアーを再開する。

歩き始めたとき、財布がほぼからになっていることに気がついた。警察で、レッカー代を1万5千円も取られたのである。なによりもまず、お金を下ろさなくてはならない。横断歩道を渡り、銀行の前に立った瞬間、キャッシュカードも家においてきたことに気がついた。災難はこれでもか、これでもかとおそいかかってくる.....。そこで、再びさっとの出番である。彼の口座からお金を下ろして、貸してもらうこととなった。

日が暮れて、悲惨な一日が終わろうとしている。お茶を飲みながら「気に入ったデジカメが手に入ったんだから...」と自分たちを納得させようとする。しかしそう考ようとしても、話は「10万円弱のカメラが、13万円のものになってしまった」という方向にいって暗くなる。仕事を終えたJと落ち合い、帰途に着いた時にはすでに7時を回っていた。帰りの車の中では、再び立ち直ることができないほどの衝撃を受けた。毛穴の一つ一つまではっきりと映し出された、画面いっぱいに広がる自分の写真を見せられたのである。買ったばかりのカメラは、あまりにも画質が良かった。良かったという程度の生易しいものではない、ここまでいくと迷惑と言いたくなるほどである。

まわり中を騒ぎに巻きこんで、秋葉原お買いものツアーは幕を閉じた。ぼろぼろに疲れきって、トマトにたどりついた私は、マサグチに遅くなったことを詫びて交代した。