北海道は初めてで、その雄大さにただただ圧倒されるばかりであった。以前ユタに行った時に、アメリカの国土の広さに驚き「日本人とアメリカ人の心の豊かさの違いは、国土の広さの違いからきている」と思ったものだが、北海道も広さの点では十分アメリカに対抗できる。
旭川から稚内へ向かう途中には、荒れ果てた牧草地の片隅に廃屋と化した酪農家が点在している。立派なサイロを建設し、最新鋭の搾乳機を導入する。そのために莫大な借入金を背負い、乳製品の価格低下により返済もままならなくなった結果のことであるという。希望に満ち溢れて入植し、寝る間も惜しんで働き、苦労が実ることなくその地を去っていった人たちの多かったこと。個人がいくらがんばっても、より大きな経済的な制度には抗いきれない。雲が低く垂れ込めたその日の空のせいもあるのだろうか、そこに住んでいた人々の無念さを思うと、あまりにも悲しかった。
それに比べて、2日目に通ったオホーツク沿岸の漁村の中には、豊かな村づくりに成功している例もあった。全村を挙げての努力して漁業と観光を融合させた結果である。60歳以上の医療費は無料、年に2回お小遣いを支給する。その他の村民には年に2回、特産品であるホタテを10枚ずつ配るという。これは一人の力は小さいが、多くの人が力を合わせると強くなれるということの良い例だろう。
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