日本の伝統食の長所と短所


 これも 日本歯科医師会雑誌 1998-3月号に 掲載された 論文の一部である。

 物事には 必ず表と裏がある。短所を認めることで長所が活きてくる。 

 物事を冷静に判断するには 正しい情報が必要である。

長寿の秘訣 癌の化学予防 環境ホルモン

        「長寿をもたらす食生活」 家森 幸男 ( 京都大学大学院人間・環境学研究科教授)                日本の伝統食の長所と短所  日本の伝統食の良さを生かし、なおかつ白本食の欠 点をうまく修正した栄養摂取とさらに活発な社会活動 を展開するというメリットが加わり、ハワイ移住者の 長寿は沖縄の寿命をさらに延長したと考えられる。 表2には日本の伝統食の長所と短所を掲げた。以下 にその解説を長所、短所の順で補足する。  まず長所としては、 (1)主食が米であったため、脂肪が主なカロリー源 となることがなく、肥満や動脈硬化を防ぐことが   できた。 (2)魚のたんぱく(アミノ酸のタウリン)摂取が多 かったので、高血圧、コレステロール代謝、そし   て動脈硬化予防に好都合だった。 (3)魚油に含まれるn−3系統のDHA,EPAの油 脂が血栓症を確実に防いだので、痴呆や高血圧を   防ぐことができた。 (4)海藻はその繊維成分が高血圧、脳卒中、動脈硬 化、糖尿病予防に効果的であった。また、海藻に   はMgや銅などの必須の微量元素が多く含まれ ている。 (5)伝統食である大豆(今回の調査では特にイソフ ラボンの効果をみた)は、その成分中のたんぱく 質、   脂肪、繊維、Mg,Kが高血圧、脳卒中、動 脈硬化予防に有用で、かつイソフラボンは骨粗鬆症のみなら         ず、癌では栄養血管の増生を防ぐとい うデータも報告されている。  次に短所としては、 (1)食塩過剰が高血圧、脳卒中、胃癌を招きやす かった。 (2)動物性たんぱく質摂取が不足し、高血圧、脳卒 中の原因となっていた。 (3)乳製品(Caを含む)の摂取不足が脳卒中や 骨粗鬆症につながっていた。 (4)骨からのCa放出を抑制する大豆食は存在した が、野菜、果物からのカリウムの摂取に関しては   諸外国の長寿集団に比較すると不十分であった。                      長寿地域の共通点  上記の短所の少ない日本食が、世界有数の長寿地域 である沖縄の長寿を支えていたことに変わりはない。 表3では世界の長寿地域であるコーカサス、シルク ロード、エクアドル、中国の客家、そして沖縄、ハワ イ日系人について、その食生活の状況、社会心理的要 因を比較している。 (1)食生活の状況では、まず良質のたんぱく質摂取 が共通して挙げられる。 (2)食塩摂取量は必ずしも少ないところばかりでは ないが、摂取量が少なくない地域でも、食塩の害   を打ち消すのに充分な野菜などを摂取している。 (3)脂肪の過剰摂取がないか、またはそれを相殺す る高繊維食を摂取している。   またブラジル奥地の日系人とは異なり、ハワイ日系 人に関しては、 (1)沖縄の良好な食生活のべ一スをハワイに持ち込 むことで、たとえば沖縄の伝統食である豆腐や海   藻摂取の習慣がハワイ移住後もすたることなく、 加えて野菜、果物の摂取量が増えた。 (2)移住当時は醤油などが入手困難であったため か、減塩がスムーズに達成された。 (3)ハワイは海に囲まれているため、肉と魚介の摂 取バランスが良好に保たれた。 しかし、理想的な栄養摂取だけが長寿を支えている わけではなく、次に挙げる社会心理的要因も無視でき ない。 (1)長寿地域は大家族での生活が営まれているとこ ろが多いが、沖縄では親族関係が大事にされ敬老   の精神が生きていること。 (2)沖縄では「結」という相互扶助組織が歴史的に あったが、r結」はハワイに持ち込まれると県人   会となり各種ボランティア活動や社交の母体と なっている。 (3)親族関係を大事にすることや敬老にもつながる 先祖崇拝。 (4)高齢者も「生涯現役」の役割感があり、家族・ 親族関係や社会活動を通して、前向きの生活態度   を持ち続け、明るい高齢化社会を実現している。

  


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