巡洋戦艦のおおよそ*注:長いッス

 

戦艦(Battle Ship)ちゅーのは前世紀末から今世紀初頭に生まれた概念でして、

要は海戦における主力艦デス。戦艦以前は甲鉄艦だの戦列艦だのといった

艦種が主力艦だったらしいですがそっちは良く知りません。ゴミンナサイ。

 

では戦艦とは何かと言うと強力な火砲と強靱な装甲を持ち

敵の主力艦(戦艦)と正面切って戦える艦

(まことに大雑把ですが)定義できるでしょう。

伊の戦艦カイオ・デュリオ。可愛い。

仏の戦艦リシュリュー。

この戦艦を主力として小型艦や潜水艦(後には航空機)から戦艦を守る駆逐艦、

駆逐艦を率いる巡洋艦等を適時組み合わせて構成されるのが艦隊であります。

だいたいにおいて戦闘とは敵をいち早く見つけ(索敵)、しかる後に攻撃という

手順を踏みますがレーダーや航空機の無い時代、艦隊における索敵は

足の速い駆逐艦部隊が受け持ちました。もちろん敵艦隊も同じ事をしますから

索敵の駆逐艦部隊同士がばったり出会って撃ち合いになったりするわけですな。

ここで活躍するのが巡洋艦。戦艦のものより小さいが駆逐艦のものより大きい

主砲を持ち、駆逐艦のタマ程度だったら防げる装甲を有し、戦艦よりも足が速く

航続力の長い巡洋艦は駆逐艦部隊の旗艦としてはうってつけです。

ところが敵も駆逐艦部隊に巡洋艦を随伴させるようになると

事態は振り出しに戻ってしまいます。敵の偵察部隊を蹴散らし、自軍に

敵主力の位置を通報させるには偵察部隊にもっと強力な火力を持たせねば・・・

何となく偵察部隊に随伴させる巡洋艦を増やせば良いような気もしますが

艦隊主力でも巡洋艦は必要ですし、何より偵察部隊の隻数が増えると

行動に小回りが利かなくなります。むー。

ここでやっと登場するのが巡洋戦艦です。発案者は

イギリスの海軍軍令部総長フィッシャーさん。彼は戦艦並みの主砲を持ち

巡洋艦並みの速度と航続力を備えた艦を建造する事を主張しました。


この艦を中心に偵察部隊を編成すれば、敵の偵察部隊と遭遇した際には

圧倒的な火力でこれを殲滅し、敵主力の戦艦部隊と

出会った際には快速を生かしてその場を離脱、味方主力に通報する

という非常に合理的な用法を提案しました。

英国の巡洋戦艦フッド。

んがしかしこの理屈は自国の艦隊だけが巡洋戦艦を保有している場合

のみ有効なわけで、案の定「英国が巡洋戦艦なるものを建造している」事を耳にした

各国は次々に巡洋戦艦の建造に乗り出しました。

そして第一次世界大戦における最大規模の海戦ジュトランド沖海戦では

巡洋戦艦を擁する英国、独双方の偵察部隊同士がばったりと出会い

壮絶な撃ち合いとなりました。

何せお互いが巡洋戦艦ですから俊足を生かして逃げ出すこともままならず

互いが打ち出す戦艦並みの主砲弾は互いの巡洋艦に毛の生えた程度の

装甲を次々と貫きエラい事になりました

(英国側三隻、ドイツ側一隻の巡洋戦艦が沈没。損傷艦多数)。なお、ドイツ側の

沈没艦が少ないのは英国よりも防御に気を使った構造だったためだそうです。

この戦いの結果防御力の低い巡洋戦艦は使い道がないという事になり

各国はあわてて装甲の強化に乗り出しました。また、巡洋戦艦同士が

激烈な砲戦を行っている間、足の遅い戦艦隊は戦闘に参加できず

遊兵化してしまったために各国は戦艦の速度アップにも気を使うようになりました。

その後残存した巡洋戦艦の内、日本の金剛型四隻は数次の改装の結果

高速戦艦として生まれ変わりましたが、英国のフッド

第二次大戦でドイツ戦艦ビスマルクの砲撃によりあえなく轟沈、

レパルスは日本の海軍航空隊にあっさりと葬られてしまいました。

また建造途中だった日、米の巡洋戦艦はワシントン条約の結果

空母として生まれ変わりました(空母に転用されるはずだった日本の

天城は関東大震災でドックが破壊されたためスクラップとなりました)。

以降巡洋戦艦は歴史上にその姿を現すことなく現在に至っています。

巡洋戦艦時代の金剛。速度は27.5ノットと建造された1913年
当時では高速であった。

第一次改装で速度が26ノットに低下した金剛級は装甲の強化も
相まって戦艦に類別されたが、後の第二次改装によって速度が
30ノットの高速戦艦に生まれ変わった。

以上長々と説明いたしましたが、別にワタシ具体的に好きな巡洋戦艦が

あるわけではないです。実在した巡洋戦艦は高速発揮のために

戦艦より余分に機関を搭載せねばならず、ずいぶんと胴長な

煙突の数が多いスタイルだからであります。

英国の戦艦レベンジと巡洋戦艦レナウン。レベンジが全長190.3mで
最高速度が23ノットなのに対し、レナウンは242m、30ノット。
機関を余分に搭載するためどうしても船体が大きくなりがちな巡洋戦艦は
建造費も戦艦の7,8割増しという高価な艦になってしまった。

ワタシが巡洋戦艦に惹かれるのは強大な火力、へっぽこな装甲

というその概念であります。格闘ゲームでも防御は弱いが素早いキャラばかり

使ってるワタシにぴったんこの艦、それが巡洋戦艦であります。

空母登場以来戦艦同士の殴り合いが発生しづらくなった

第二次大戦に於いて、高速の空母に随伴して護衛を務める事の

出来た大型艦はアメリカの高速新鋭戦艦アイオワ級

日本の金剛級のみでしたが、もし巡洋戦艦が存続していれば

その巨大な船体に増設した対空火器で防空戦闘を、また

航空機の使えない夜間には(ガタルカナルの様に)艦砲射撃を、

とまだまだ出番はあったと思えるだけに残念です。合掌。

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