Bi−TURBOマフラー製作記

私がBi−TURBOのマフラーを製作しようと思ったきっかけは‘97年11月に憧れのALPINA
B10 Bi−TURBOを購入(並行物)を購入し、喜びも冷めきらないうちにマフラーのタイコ部分がサビで
ボロボロなのを発見し、その時は、穴が開いてからでも新品を購入すればいいやと軽い気持ちで構えて
居たところ、その話を聞いていた友人が二コルに値段を聞いてくれたんです。
なんとその値段が50万!  桁が違うじゃないか!! ってしばし呆然としてしまいました。
すぐさま、購入した某中古車店に連絡し、クレームで交換してほしいと頼んだ所、値段を知ってか知らず
かものすごく渋られましたがM5のマフラーが無加工で取り付き、新品が在庫であるのでそちらならとの
事で私も了承しました。
しかし、どうせオリジナルを保っていないのならターボ車だし、スポーツマフラーが欲しいなと思って探し
ても何処にもアルピナ用のスポーツマフラーなんてあるハズも無く、諦めかけた時、出張ついでに寄った
茨城県の某カーショップに中古の535i用のステンマフラーがあるじゃないですか!!
B10 Bi?TURBOもE34ベースだし加工すればなんとか付きそうだと考え即、購入してしまいました。
購入し家に帰って色々と調べるとまず当然の事ながら、パイプの径が535i用のステンマフラーはΦ50
一方、Bi−TURBOはΦ60で異形状のサイレンサー(タイコ)部分を流用するだけでパイプ部分は全部
交換するしかありません。
遅れましたが私は某自動車部品メーカーに勤めており、試作工場に作業に必要な溶接機を始め、加工
機械を使えるとっても恵まれた環境があり(上役にはもちろん内緒ですが)これまでも定時間後や休日を
利用し、S13シルビアのエンジンをバラしてポート研磨したり、部品を自作してプライベートチュ−ニング
をしていました。
その悪いムシが騒ぎ出し、マフラーを製作するのもそんなに難しくはないだろうと安易に考えていましたが
これが結構大変な作業でした。
まず購入したマフラーをエアープラズマと言う切断機でタイコ部分までバラバラに解体します。
ここで分かったことは外車用市販マフラーの内部構造は大した構造ではないという事です。
つまり、せっかくΦ50デュアルパイプのレイアウトなのに内部でΦ50シングルに集合しているのです。
確かにパイプを中間で太らせたり、細めて排気ガスの膨張や流速を早めるテクニックはあるのですが、
あまりにも断面積が違いすぎ、ただ単にE34の車格に似合う音質を狙うためサイレンサー内部のグラス
ウールの量を増加させるための手段としか思えません。
皆さん、スポーツマフラーを購入する時は色々な情報を基に選んで下さい!! せっかく購入したマフラー
を付けたのに逆にパワーダウンしてたなんて悲しいですから!
ちなみにこのマフラーは新品で¥19,5000?もします。高いマフラーは良いとも限りませんね。
そんな事もあってアルピナのマフラーってどんな内部構造してるんだろうと興味津々! こちらも解体して
みて、またしてもガッカリしてしまいました。内部構造を下記に図示しますがこちらも効率の点で悪影響
を及ぼす構造です。図示の通り内部は3重構造にもなっていて重量は20kg以上(もっと重いかも!)
も有り本当に50万もする代物ではありません。ただし救いとしては、マフラーはアルピナ内製では無く、
BOYSEN というメーカーにアルピナが作らせているものらしく、M5のマフラーも同じメーカー製でした


                                                          排気ガスの流れ
       Fig1 市販マフラー内部構造                                                  Fig2 アルピナマフラー内部構造

  話がそれてしまいましたが、タイコとパイプが分割された状態でパイプの曲がりを調べます。
マフラーメーカーはNCパイプベンダーという色んな角度にパイプを曲げる機械があって自由自在に角度
を決められるのですが、市販の曲りパイプを使うしかありません。
何とか45度ベンド2本と30度1本を組み合わせれば出来そうだったのでΦ60のパンチングパイプと
ともに会社に出入りしている鉄鋼屋さんに注文しました。
パイプが来るまでの間にマフラーを吊るステーを外し、フロントパイプとの継ぎ部取り付けフランジ
をフライス、旋盤などで作って置きます。ステンレスは普通の鉄より硬いので削るのに苦労しました。
部品が揃ったところでいよいよ組み付けです。
まず解体したサイレンサーの溶接ですが、これが最大の難所でした。パンチングパイプの両端に10mm
程に切断したパイプを溶接します。これは、サイレンサーとの溶接をしやすくするためです。
続いて解体したサイレンサーの合体ですが、先ほど作ったパイプの先端がサイレンサーから2〜3mm
出して仮止め溶接しスチールウールとグラスウールを詰め込みます。このグラスウールが手に刺さり、
いつまでたってもチクチクして地獄でした。
サイレンサーの板厚は1mm程でTIG溶接するのですが油断するとすぐに穴が開いてしまいます。
穴を塞ぎながらの溶接でちょっと奇麗とはいえない
溶接になってしまいまいたがここで挫折はしていら
れないので次の作業に進みます。
ここからは車をリジャッキアップしての作業で休日
の工場に車を乗り入れ溶接機が届くところで作業
します。
さすがにこれには勇気が要りました。
なんたって上役に見つかったら ????かもしれ
ませんもんね。
普通の人はやらないのでしょうがここまで来て諦め
られないので工場内に上役が入って来ない事を祈
って作業します。
ジャキアップしてM5マフラーを外します。
このM5マフラーも重い!!アルピナマフラーに負け
ない程で、改めてドイツ製品の質実剛健ならぬ
重実剛健(?)さを感じてしまいました。
サイレンサー単体で車体に組み付け、車体のサスペ
ンションメンバーをかわす様にしながらベンドパイプを
MIG溶接機で仮止めしていきます。これも結構 地獄の作業で車体の下に潜りながら左手でパイプを持ち
右手には溶接トーチで当然 スパッター(火の粉)が降って来て熱い思いも数知れず“なんか焦げ臭いな”
と思ったら髪の毛が焦げて50本ぐらい毛が抜けた時には思わず、鏡の前に走って行っちゃいました。(笑)
仮止めが終わった所で一度ジャッキを下ろし
一服し  ながらマフラーを揺すって干渉が無いか
を調べます。
ついでにテールパイプをサイレンサーに合わせ
てバンパーとの干渉も確認します。
これは最初っから左側だけ535iよりも大きく
バンパーが切り欠いてあり、あたかもこの
マフラーの為に切り欠きが有る様でクリアしました
再度ジャッキアップし本溶接するのに大きい
サイレンサーが付いていては邪魔になるので
一度パイプとサイレンサーの仮止めだけを外し
ます。パイプをTIGで本溶接し車載状態で再び
サイレンサーにMIG溶接で仮止めし、マフラー
ステーを仮止めした所で車体からマフラーを降ろ
します。これが軽い!
Bi−TURBOの50対50の重量配分が
52対48ぐらいになったかななどと余計な
事を考えてしまいました。
ここまで来たらもう完成したも同然。サイレンサーとパイプ、ステーを本溶接し最後に慎重にマフラーテール
を溶接します。なんたってマフラーテールはマフラー
の顔ですものね。
溶接を全てチェックし軽く磨いて完成です!!。
完成した喜びと共に不安がひとつふたつと頭を
過りました。
せっかく作ったマフラーの性能と音量です。
作ったはいいけどパワーダウンやサーキットでしか
走れない音量だったら今までの苦労も水の泡です
から・・・。
マフラーを仮組み付けし新品のガスケットを
組み付け、干渉をもう一度確認しボルトを本締め
します
ジャッキアップした状態でいよいよエンジンに火を
いれます。
ブォーンと重低音を響かせながらアイドリング
しています。
マフラーが熱くならない内にガス漏れをチェック
どうやら大丈夫みたいです。
ジャッキを降ろし、運転席に座り2〜3度レーシングさせてみるとドゥヒュン、ドゥヒュンとノーマルよりアクセル
のつきが良くなり、タコメーターのピックアップが軽くなってます。
タービンで音が消されているのでしょう爆音にはならずに済み、ホッと胸をなで下ろしました。
しばらくアイドリングを続け、サイレンサー内部のグラスウールを落ち着かせてから実走行に入ります。
結果は・ ・ ・ ブーストの掛かり始める3500rpmからはパワーの違いが体感出来る程で、シフトダウンの際、
回転を合わせるためレーシングさせても簡単に回転が上昇していまうので、今までのつもりでいたら回転を
上げ過ぎてしまいました。アクセルのONにも敏感に反応してくれます。これは、作ったマフラーがストレート
構造でマフラーによる背圧が減少したためでしょう。予想以上の出来に大喜びです。            
・ ・ ・とここまではいい事ばかり書いてしまいましたが
ストレート構造の弱点で低回転でトルクが細くなって
しまいました。これはターボ車の宿命ですね。
なんたって圧縮比7.2:1でノンターボよりかなり
圧縮比が低く設定してあり 本来、パイプ径を細く
しないとトルクは稼げません。
といっても、上でのパワーか下のトルクかといったら
先程書いたメリットを考えれば、やはり上でのパワー
を取ってしまいますよね。
今回製作したマフラーは自作のくせに、本々のマフラー
のJASMAプレート付きで自作とは分からない様に
なってます。
自作したって知ってるのは、この記事を見た人と数人
だけです。
外車って本々、車検が甘いって話も聞きますし、
おまわりさんもこのマフラーだったら保安基準適合って
認めてくれるでしょう。(甘いか!?)
最近の国産車チューニング事情は10年前とは全然違い、
部品の数、性能が格段に上がっていますが外車用はまだまだこれから先も少ないままでしょうね。
私は逆にボルトオンで行かない所に面白味があると思います。これからもメンテはもちろん、流用や自作で
Bi−TURBOを楽しんで行こうと思ってます。

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