現在の主な上映方式はDLP(Digital Light Processing)シネマで、これはテキサス・インスツルメンツ社 の開発したDMD(Digital Micromirror Device)を利用した上映方式の事です。
DMDはその名の通り、多数の極小鏡の集まりで、それぞれの鏡が動きます。 これに光を当て、光の反射によって絵を作りだします。
DMDの応答時間は非常に短く、ボケの少ない映像を表示する事が可能です。当初は東映系のT・ジョイが積極的に採用していました。
他にもSony Digital Cinemaで使用されるSRXD(Silicon X-tal Reflective Display)というデバイスもあります。
デジタル上映には利点が多く、フィルムの運搬や上映フィルムの検査の手間が大幅に軽減され、
上映による劣化もないため、常に同じ画質を維持する事が可能となります。上映もボタンを押すだけなので、映写技師の人件費削減もされるみたいです。
現在はDCI(Digital Cinema Initiatives)の仕様の上映フォーマットであるDCP(Digital
Cinema Package)が使用されており、専用のハードディスクに格納されています。
この中にはJPEG2000コーデックで圧縮された最大250Mbpsの映像データと圧縮または非圧縮の音声データ、字幕データ、字幕フォントなどのデータが含まれています。
DCI規格では映像の解像度は2Kの場合は2048×1080の24fps/48fps、4Kの場合は4096×2160の24fpsとなっています。
なお、DCPの中でもいくつか異なる規格がありお互いに互換性がありません。
3DについてはDCI規格では規格化されていませんが、Real D、ドルビー3D、XPanD、MasterImage、ソニー・デジタル・シネマ3D等いくつか方式があります。
DLPシネマの解像度は現状ハイビジョンと同程度でフィルムより劣っていますが、気になる程ではありません。また、将来的に倍の解像度(4K)になるものと思われます。色に関してもやや濃く出る印象もありますが、極めて自然な発色だと思います。
2002年公開の「スターウォーズ エピソードII」を始めとして撮影からデジタルで行われているものも増え、現在はほぼすべて撮影もデジタルで行われている。
ユニバーサル・ピクチャーズ:1912年創業。62年にMCAの傘下に入る。90年に松下電器がMCAごと買収したが95年にシーグラムが新オーナーに取って代わった。
パラマウント・ピクチャーズ:1912年創業。54年にビスタビジョンを開発した。94年にケーブル会社バイアコムの傘下に入る。
ワーナー・ブラザース:1923年発足。89年にタイム社と合併、タイム・ワーナーと改名。95年にはターナー・グループ(ニューラインシネマ等)買収。2000年にAOL(America
Online)と合併し、AOLタイム・ワーナーと改名。2003年にタイム・ワーナーに社名変更。
MGM/UA:1924年(MGM)。1919年(UA)発足。81年にMGMがUAを買収。
20世紀フォックス:フォックス・フィルムは1915年設立。トーキーなどを開発。35年に20世紀プロダクションに合併、20世紀フォックスが誕生する。50年代にシネマ・スコープを開発、85年にはミューズ・コーポレーションの傘下に入る。
ウォルト・ディズニー・カンパニー(ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ/タッチストーン・ピクチャーズ/ハリウッド・ピクチャーズ)
:ウォルト・ディズニー・ピクチャーズは1923年設立。アニメ・実写を製作。83年にタッチストーン、89年にハリウッドを併設。93年にはミラマックスを傘下にし、95年にはABC局を買収。
ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント(コロムビア・トライスター) :コロムビアは1924年創立、82年にコカ・コーラ社の傘下となり、83年にCBSと共同出資してトライスターを設立。89年にはソニーが買収。
ドリームワークスSKG:94年にスティーブン・スピルバーグ(S)、ジェフリー・カッツェンバーグ(K)およびデビッド・ゲッフェン(G)が設立した新興会社だが、作品を次々ヒットさせている強力スタジオ。
2005年にパラマウント・ピクチャーズに買収されるが、2008年に独立。
名称 | 新名称 | 規定の意味 |
---|---|---|
一般 | G | 子供が見ても大丈夫 |
PG-12 | PG12 | 12歳未満には保護者の助言・指導が必要 |
R-15 | R15+ | 15歳未満は見ることができない(旧「R指定」) |
R-18 | R18+ | 18歳未満は見ることができない(旧「成人指定」) |
名称 | 規定の意味 |
---|---|
G | 子供が見ても大丈夫 |
PG | 子供にとっては不適切なシーンがある |
PG-13 | 13歳以下にとっては不適切なシーンがある |
R | 17歳以下は親、もしくは大人の同伴が必要 |
NC-17 | 17歳以下は見ることができない |
スタンダードサイズは、普通のテレビと同じ縦横比1:1.333(4:3)で、長らくこのサイズが使われてきた。 しかし、テレビ放送との差別化を図るため、同じ縦幅で横方向の面積を稼ぎ、画面をできるだけ大きくし、 臨場感を増そうとした。それがビスタ、シネスコである。 ビスタ、シネスコはともに商品名であり規格名ではないが、便宜上みんなそう呼んでいる。
ビスタサイズはビスタビジョンと同じ縦横比1:1.85で、ハイビジョンサイズの縦横比1:1.78(16:9)に比べ僅かに横長。 ヨーロッパビスタビジョンは縦横比1:1.66(または1:1.75)で、ハイビジョンサイズと比べて少し横幅が短い。 ビスタビジョンは通常フィルムの倍の面積をもち、パーフォレーション(フィルムの両横の穴の間)の数も多く、 フィルムの合成時にぶれが少ないため、特撮映画によく使われていた。 現在はビスタビジョンはほとんど使われておらず、普通の35mmフィルムの上下にマスクをつけて同じ縦横比にしている。 したがって、本当のビスタビジョンではないので一般にビスタサイズと呼ばれている。 邦画では現在のほとんどの映画がビスタサイズで撮影されているようだ。
シネマスコープ(シネスコ)サイズは20世紀FOX社が開発した画面サイズの商品名。スコープサイズとも呼ばれる。縦横比は1:2.35で、かなり横長。「聖衣」で初めて使われたという。 フィルムには縦長に記録する、アナモフィック圧縮(アナモフィックをアナモと略す事もある)をし、再生時にアナモレンズで元のサイズに戻す。 邦画では「男はつらいよ」シリーズや昔の東宝映画(東宝スコープ)などがシネスコサイズで撮影されていた。
70mmフィルム(映像部分は65mm)は通常の35mmフィルムと比べより鮮明で、 画面サイズは縦横比1:2.20で、シネスコより若干横幅が短い。 最近では70mm映画はめっきり作られなくなった。 最後の70mm映画は「遥かなる大地へ」だという話。 「2001年宇宙の旅」も70mmで、湾曲スクリーンのシネラマで公開されたらしい。 ちなみに最初のシネラマは35mmフィルムを3数使い、湾曲スクリーンに投影する方式で、 縦横比1:2.88だったらしい。
ハイビジョンサイズは、映画館で上映されるサイズとは違うが、 ハイビジョンやワイドテレビの縦横比1:1.78(16:9)の画面サイズである。 ハイビジョンはNHKで開発したものだが、当初は縦横比3:5の予定だった。 しかし、アメリカからの意見で縦横比16:9になったのだ。しかし、なぜ16:9に決まったのかは謎。 ハイビジョンやワイドテレビでビスタの映画を写すと、若干上下に黒帯が見える。 シネスコの映画を写すと、上下に黒帯がかなり見える。
スーパー35は、ハリウッドで一時期多かった撮影方式で、画面サイズではない。 スタンダード(またはビスタサイズ)で撮影しておいて、
劇場公開時にマスクを付けたりアナモ圧縮したりしてビスタサイズやシネスコサイズにし、
ビデオ化の際には撮影サイズの全域(または一部)を使用してスタンダードで収録する。
この方式によって、ビデオ化の際に生ずるパン&スキャンのよる情報の欠落を抑える事ができるが、
撮影時には上映版用のサイズを意識しているので、やや間延びした感じになるし、不要な物が映り込んでいたりする。
ジェームス・キャメロン監督はこの方式をかなり前から使用しており、「タイタニック」でももちろん使用し、
オリジナル撮影サイズのビスタをシネスコやスタンダードサイズにしている。
「アビス」では劇場公開版はパン&スキャンのビスタだったが、完全版はシネスコだった。
光学式アナログ・トラック
フィルムに音の波形が記録されており、それを光で読み取って再生する方式。
磁気トラックと違って劣化がすくなくて済む。 現在のデジタル音声が記録された映画でも、
非常時のバックアップとして必ず光学式アナログ・トラックは記録されている。
2チャンネル分しかないので、ドルビーステレオ登場前はステレオまでしか再生できなかった。
磁気トラック
ドルビーステレオ登場以前の立体音響は磁気トラック(いわゆる普通のオーディオ・テープと同じ)
でしか実現できなかった。光学式より音質は良いらしい。 通常4チャンネル、70mmフィルムは6チャンネル(L,C,R,Le(レフト・エクストラ),Re(ライトエクストラ),サラウンド)
が記録出来たと思うが、昔の事なのでよく知りません。
ドルビーステレオ(A)
ドルビー研究所が開発した映画の音響規格。非常に多くの映画で採用されている。
フロント3チャンネル(right/center/left)+サラウンド1チャンネルの4チャンネル、アナログ・マトリクス方式で
光学式アナログ・トラックに記録されている。 アナログ・マトリクス方式というのは、位相処理によって4チャンネルの音声を
2チャンネルに合成する方法で、具体的にはセンターの音声を左右チャンネルに同位相で、
サラウンドの音声を左右チャンネルにそれぞれ逆位相で合成する方式の事。 再生する時には逆に2チャンネルから4チャンネルに分離させるのだが、
チャンネル間の干渉などもあって正確には分離されない。 しかも、チャンネル間の干渉を抑えるために、サラウンドチャンネルが7kHzに帯域制限されている。
ノイズリダクションにはドルビーAを採用。 家庭用の規格名はドルビーサラウンドで、ノイズリダクションが無い以外はほぼ同じ内容。
2チャンネルで記録されているため、放送やビデオから簡単にサラウンドが得られる。
ドルビーステレオSR
ドルビー研究所が開発したドルビーステレオの上位規格。これも非常に多くの映画で採用されている。
SRはスペクトラル・レコーディングの略。 内容に関して詳しく知らない。とにかく、SR収録の映画はSR対応のデコーダーが必要となる。
最近はエンドロールの表示がドルビーのロゴだけになっているので、ドルビーAとドルビーSRの判別ができなくなっている。
家庭用にはドルビーサラウンド・プロロジックというのがある。
ドルビーデジタル(ドルビーステレオSR-D)
ドルビー研究所が開発したデジタル立体音響規格。「バットマン・リターンズ」以来非常に多くの映画で採用されている。
以前はエンドロールにドルビーステレオSR-Dと表示されていたが、現在ではドルビーデジタルに統一されている。
(映画のパンフなどではSRDという表記がまだ残っている) フロント3チャンネル(right/center/left)+サラウンド2チャンネル(right/left)+LFE(サブウーファー)の5.1チャンネルで、
圧縮されたデジタル信号がパーフォレーション(フィルムの両横の穴の間)に書き込まれている。
デジタルなので、サラウンドチャンネルが制限されないし、S/N的にも有利で、
音の分離も正確で音の定位も良い。 圧縮方法はAC-3で、約1/12の圧縮がされている。AC-3とはオーディオコーディックの3番目という意味。
邦画で初めてドルビーデジタルを採用したのは「ゴジラVSメカゴジラ」。 以後、数は少ないものの次第にドルビーデジタル作品は増えている。「もののけ姫」もドルビーデジタルだった。
日本の劇場ではDTSよりドルビーデジタルが普及しているようだ。
家庭用の規格名もドルビーデジタルだが、以前はドルビーサラウンドAC-3と呼ばれていた。 家庭用のドルビーデジタルは映画で使われているものよりビットレートが高くなっている。 5.1チャンネルが独立しているので、今のところLDとDVDでしか再生できないし、デコーダーも必要。 しかもLDは専用RF出力端子が搭載されているプレーヤーが必要。 DVDも音声圧縮規格としてドルビーデジタルが採用されているが、全てのソフトが5.1チャンネルという訳ではなく、2チャンネルのソフトも多く存在する。
ドルビーデジタル・サラウンドEX
ドルビー研究所が開発したデジタル立体音響規格で、ドルビーデジタルとの完全互換性を持つ6.1chサラウンドステレオである。
「スターウォーズ/エピソード1」でデビューした規格で、ドルビーデジタルと比べるとサラウンド・センターチャンネルが1つ増えて、フロント3チャンネル(right/center/left)+サラウンド3チャンネル(right/center/left)+LFE(サブウーファー)になっている。
フィルムへの記録・圧縮方式などはドルビーデジタルと同一で、サラウンド・センターチャンネルはサラウンド2チャンネルにマトリックス処理して入れてある。
つまり、サラウンド・センターチャンネルはアナログで完全ディスクリートではないのだ。
チャンネルが1つ増えたことによって音の表現力はアップし、広い劇場のどの席にいても、制作者の意図通りの音響効果が得られるようになったのだ。
劇場側では、ドルビーデジタル・サラウンドEX用のアダプターが必要になるが、さほど高価なものでもないらしい。 スピーカーは従来のドルビーデジタルで使っていたリアのスピーカーがそのまま使える。 そして、ドルビーデジタル・サラウンドEXに対応してないドルビーデジタルを装備した館でも全く不都合なく再生できる(サラウンド・センターは出来ないが)。
家庭用でも技術的にはさほど難しいものではないので、すでに商品化されている。ドルビーデジタル・サラウンドEXといっても、 ドルビーデジタル信号はそのままなのでLDプレーヤーやDVDプレーヤーなどを買い替える必要はない。
DTSステレオ
デジタル・シアター・システムズ社によるアナログ立体音響規格。ユニバーサル映画の一部で採用。
アナログ・マトリクス方式の4チャンネルで、再生にはドルビー(A)又はドルビーSRデコーダを使用。
ノイズリダクションはドルビーに依存している。ドルビー(A)又はドルビーSRよりもライセンス料が安価で、
音の分離もドルビー(A)又はドルビーSRよりも良いらしい。
DTS(デジタル・シアター・システム)
デジタル・シアター・システムズ社によるデジタル立体音響規格。「ジュラシックパーク」で初めて使われ、ユニバーサル映画に多く採用されている。
ドルビーデジタルと同じく前3(right/center/left)+サラウンド2(right/left)+LFE(サブウーファー)の5.1チャンネルだが、
フィルムには画像と光学式アナログトラックの間にタイムコード(同期信号)が書き込まれていて、APTX100という圧縮方式で約1/4の圧縮がされたデータがCD-ROMに収められている。
ビットレートがドルビーデジタルより高いため、ドルビーデジタルより音が良いと言われている。
ちなみに、CD-ROM2枚で8チャンネル3時間半の再生が可能らしい。 再生ユニットの単価はドルビーデジタル、SDDSに比べ格段に安いので、アメリカでは対応劇場が他の規格にくらべ多い。
邦画で初めてDTSを採用したのは岩井俊二の「四月物語」。邦画ではDTSよりもドルビーデジタルを採用する方が多い。現在はDATASAT社が買収し、DATASATという名称に変更されている。(コンシューマ向けはDTSのまま)
LD、DVD用の家庭用規格もあるが、 ほとんどの機種はDTSデコーダを内蔵してないので、外部にDTSデコーダーが必要で、
しかもLDプレーヤーの一部機種とDVDプレーヤーの多くの機種では再生不可能なので買い替えが必要である。
なお、Blu-ray規格では必須規格となった。
DTS-ES
ドルビーデジタル・サラウンドEXと同じ方法で6.1チャンネル化したDTS。 またはディスクリート6.1チャンネルのDTS。
SDDS(ソニー・ダイナミック・デジタル・サウンド)
SDDS社(現在のSCPC社)社によるデジタル立体音響規格。ソニーピクチャーズ映画に多く採用されている。
MDと同じATRAC方式により約1/5の音声圧縮を行っており、デジタル信号がフィルムの両端に片方4チャンネルずつ記録されている。
チャンネル数は前方5チャンネル+サラウンド2チャンネル+ウーファー1チャンネルの8チャンネルらしいが、
6チャンネルや4チャンネルに変換する事も可能。しかし、現在8チャンネル記録もものは少なく、6チャンネルが主流らしい。
他のデジタル立体音響規格の非常時のバックアップはアナログトラックだけだが、
SDDSはデジタルデータのバックアップもされており、信頼性が高い。 家庭用では一応DVDにオプションとしてあるが、今のところ商品化は未定だそうだ。
デジタル上映時代の音声規格
上映がデジタル化されると、フィルムに音声を記録する必要もなくなるため、上映用のハードディスクに非圧縮の音声をそのまま記録するようです。