点火系の構成
日本仕様のBXで使用されている点火系は、エンジンのバリエーションによっていくつかのタイプが有ります.ポイント式を用いたものは、少なくとも正規輸入モデルにはありません.TRS系とTRIセダン系、GTIの初期モデル(5MT)はディストリビュータ内部のピックアップコイルが点火タイミングを検出しています.インジェクションモデルではこの信号がECUのエンジンスピード検知にも利用されていますが、進角制御はガバナとバキュームを組み合わせたものとなっています.
ATと組み合わせられたGTIとTRI以後のブレイクはモトロニックシステムとなり、点火タイミングはフライホイールで検知するスピードセンサーがベルハウジング上部に移設されています.
進角も電子制御となりディストリビュータによる点火時期の調整は一応(笑)できない事になっています.
モデル名 | エンジン形式 | 燃料システム | ピックアップ | 付記 |
TRS | 16:171 19:159 | キャブレター | ディストリビュータ内部 | 遠心進角+ バキューム進角 |
TRI(Sedan) | DFZ | LU2-Jetronic | ↑ | ↑ |
GTI (5MTモデル) | D6A | LE3-Jetronic | ↑ | ↑ |
GTI (ATモデル) | DKZ | MotronicM1-3 | フライホイール・センサ | 4ATモデル |
TRI Break | DKZ | ↑ | ↑ | ↑ |
16V | DFW | ↑ | ↑ | DKZ+ノックセンサ +アイドルアクチュエータ |
16TZi | ? | マレリ製? | ↑ | 詳細不明 |
TRS系の点火系統
- フルトランジスタ・イグニション -
- TRS系BXのディストリビューターはカムシャフトで同軸に駆動されています.
内部の4本の爪を持った永久磁石が回転する事によりピックアップコイルに電位が生じます.
このパルスがイグニッション・モジュールにコイルの1次電圧のオン-オフを行わせ、点火コイルの2次側へ高電圧を発生させます.その後はディストリビュータ・キャップより各HTリードへ分配されます。
ディストリビューターには機械的進角のためのガバナとダイヤフラムが装備されています。
ディストリビューターはBOSCH製とDucellier製があります。
TRI-セダン系の点火系統
- BOSCH L-Jetronic -
TRIセダン系はL-ジェトロ・フューエルインジェクションを採用しています。
しかし、点火システムはTRS系と大きな違いはありません。
ECUへエンジンスピードを伝えるための配線が追加されているだけで、点火方式自体は同じです。
TRI-ブレイク系/GTI-SOHC+AT系の点火系統
- BOSCH Motronic -
モトロニック・システムの場合、クランク角およびエンジンスピードはフライホイール・センサで検知され、信号をECUに送っています。
点火時期もECUによる電子進角を採用しており、機械的進角のデバイスはディストリビュータ本体から取り外されています。
ディストリビュータはピックアップコイルや進角デバイスを持たないため、外観はTRS系よりも小さくなっています。
構成部品の基準値
ディストリビューター内のピックアップコイル(ターミナル抵抗)
- 1-2間:990-1210オーム
- 2-3間:0.6-1.6Kオーム
点火コイル
1次コイル:+(15)〜-(1)間
- Ducellier:0.76-0.81オーム
- BOSCH:0.74-0.90オーム
2次コイル:-(1)〜ハイテンション・ターミナル間
- Ducellier:5700-6300オーム
- BOSCH:7425-9075オーム
ハイテンション・コード
- 1cmあたり、約50-60オーム
点火時期
- 10度BTDC/900回転(バキュームホースを外して測定)
点火系不調の時は、最初に各部品のコネクター清掃を行いましょう。
構成部品はそう簡単に壊れませんが、聞く限りでは以下の頻度で劣化が生じる印象があります。
- ディストリビューターキャップ/ローター
- ハイテンションコード
- (フライホイールセンサ?)
- イグニションモジュール
- ピックアップコイル
- 点火コイル
※16Vおよび16TZI、19TZIについては詳しい資料がありません。
情報の提供を宜しくお願いいたします。
(C) Y. Narabayashi