リアアーム脱着とアームベアリング交換
BXも含めてハイドロニューマチックシトロエンのリヤサスペンションはトレーリングアームを採用しています.
アームのピボットシャフトはローラーベアリングを介してサブフレームに保持される構造です.
歴代のハイドロモデルは皆このベアリングを採用していますが、ある程度の距離を走ると大抵ここが駄目になってきます.
ヨーロッパでは「リヤアーム・リペアキット」なるものも純正部品で供給され、弱点として認識が高い部分と思われます.
ベアリング破損によりリヤサスペンションの動きが悪くなり、乗り心地が悪化します.
ベアリング破損の徴候として
- リヤタイヤにハの字(ネガティブ・キャンバー)がついてくる
- リヤの突き上げが強まり、乗り心地が悪化
- 車高の上下で金属音(カキンコキンからギーギー引き摺るような音まで様々)
ゆっくり歩道に乗り上げるような場面で気付く事が多い
- リヤを押してやると硬い
- 長時間駐車した後もリヤの車高が下がらない.
こんな時に上から押すとストンと下がる(音もする)
以上は私の経験からの症状です.
ネガティブキャンバーがついたブレイクの左足
走行は約7.2万キロ
- 今回使用した工具 -
- アーム脱着関係
- 24mmディープソケット
- 24mmメガネレンチ
- 13mmソケット
- スピナーハンドル
- 20kgf/m上限のトルクレンチ
(全て差し込み角1/2インチ)
- ベアリング脱着関係
- 30cm程度の水道管
- KTC36mm(3/4)ソケット
- プラスチックハンマー
- 金属ハンマー(サイズ中程度)
- No2マイナスドライバー
- 細みのバール
交換作業はリヤアームの脱着とベアリングの組み換えです.
いずれもかなりの腕力勝負、工具も3/8ソケット類では到底力が及びません.
- リヤアームの取り外し -
作業手順:リヤアームは、スタビライザのブラケット、サスシリンダーのピン、ブレーキパイプのプラスチックのブラケットおよびブレーキキャリパーの刺入部、最後にピボットシャフトを外せば取り外せます.
- まずスタビライザをアームに固定しているブラケット(13mm*2本)、サスシリンダー・ピストンロッドとアームを止めているピンを外します.
- ブレーキパイプをブラケットおよびブレーキキャリパーから外します.
- ブレーキパイプが螺旋になっている中に24mmディープソケットを通し、ピボットシャフトのナットを内側から外します.
シャフトを外側に引き抜きます.
- アーム全体を後ろ方向に少しずらしてから、前向きに90度回します.
ブレーキラインを挟まないように注意!このまま車体横方向へ引き抜きます.
ここまでで、体力の1/3くらいが消費されます(笑)
※ 写真は両手が塞がって撮影できなかったため、手持ちの資料を使用しました.
- ベアリングの脱着 -

まずはピボット部分の構造から.
右上の同心円は、ピボット部分を外側から見たシェーマです.
- 分解法 -
サスペンション・スペーサー(中心の金属パイプ)に直径が合うソケットのコマなどを当て、たたき込みます.
そんなに力は要りません.パイプが抜けるとベアリングブッシュ、ローラーベアリングとインナーリングが自然に抜けます.
うちの車ではベアリングがばらけ、インナーリングのフチは欠け、錆や泥みたいな物と一緒にばらばらとこぼれ落ちてまいりました.
ゴム製のオイルシールをペンチなどで引っ掛けて外します.
シールプロテクター(プラスチックチューブ)を外します.これ自体は壊れていないのですが、アウターリングと面一でぴったり接しており、リングを外す邪魔になります.
ドライバーなどを差し込んでこじり、開いたスペースにバールなど
を当て、向こう側まで切り進みます.
最後に、残ったベアリングのアウターリングを水道管のような堅い金属パイプなどで叩き出します。パイプのエッジは少し研いで鋭くするとアウターリングに良く掛かります。
水道管法はCMLで北田さんから教えて頂きました。
はじめに試したベアリング・プーラーを使うよりもより圧倒的に楽でした。
ピボット部分の構成部品
上からピボットシャフト、サスペンション・スペーサー
中段左からベアリングブッシュ、オイルシール、シム、インナーリング+ローラーベアリング、アウターリング、
下段の黒い筒がシールプロテクターです.
叩き出したアウターリング.
入れる時はリングに薄くグリスを塗り、プラスチックハンマーなどで軽く叩くと入ります.抜く時の苦労が嘘のようです.
入り口を超えたら、奥まで押し込む為のカラ−が必要になります.今回はKTCの36mmソケットを使いました.筒の奥の段まで入って止まります.
アウターリングが両側入ったら、インナーリング+ベアリング、オイルシール、スラストブッシュをスペーサー(金属パイプ)に入れます.これもプラハンで楽勝です.
オイルシールはブッシュに嵌めてから叩き込みます.アウター側はインナーリングとブッシュの間にシムが入りますのでお忘れなきよう.
片側が入ったらパイプをアームに差し込んで反対側も組みます.パイプとブッシュが面一になるまで押し込みます.ベアリングは充分にグリスアップして下さい.
組み上がったら逆の手順でアームを取り付けます.
ピボットシャフトの組み付けトルクは13kgf/mが指定です.
取り付け時もブレーキラインを壊さないように注意して下さい.
ラインの取り付け時には新しいパイプのオイルシールを使い、エア抜きも行います.
- Parts List -
( )内は片側あたり必要な個数
- アームベアリング(2):75 472 408
- シールプロテクター(1):RP 5179 12
- オイルシール(2):79 03 087 098
(C) Y. Narabayashi