Steering Steering rack boots
TECH GUIDE

ステアリングラック・ブーツはドライブシャフトブーツ等と同じく消耗品です。
ラックギヤのダストカバーがその役割ですが、放置するとラックギヤに砂が咬み込んだりする事も有ります。
また、このブーツが切れていると通常は車検が通りません。
純正のファクトリーマニュアルではラック本体の脱着、ギヤユニット分解での方法しか記載がなく、ヘインズにも交換法の記載がありません。

今回は英国ANDY SPARESで販売されている社外品を使いました。
この製品はゴム製のため引き延ばして装着する事ができ、今回は車載での交換を試みました。
元々の装着部品は樹脂製で伸縮性に乏しいのですが、純正部品の補修部品も最近はゴム製が供給されるという報告が有ります。

部品番号:
  • 右側:95 496 072
    国内標準価格: 1.620円

  • 左側:95 604 346
    国内標準価格: 5,690円



(写真は ユーノス版SHOP MANUAL を加工したものです)
パワーアシスト付きステアリングラックのレイアウトです。ステアリングラックの後方にステアリング・ラム(パワーシリンダー)が配置されるため、右側のブーツを交換するためには一度パワーシリンダーを外さなくてはなりません。
左側はタイロッドを外せばブーツの交換をする事ができます。
作業の実際
  • 車体のフロントをジャッキアップし、リジッドラックを掛けます。
    作業はサブフレーム後側からのアプローチとなるため、リジッドラックは少し高めにセットします。安定に十分注意して下さい。

  • 車高レバーを最低位置とし、プレッシャーレギュレーターのリリースボルトを1/2回転ほど緩めて油圧を抜きます。ハンドルを何度か左右の最大位置まで切り込み、ステアリング・ラム内のLHMをリザーバーヘ戻します。マフラーとラックの間に有る遮熱板が邪魔な場合は外します。

    以後の交換作業は左右で手順が異なる為、分けて記載します。

左側

左側ではタイロッドを取り外す必要が有ります。
axial joint部はトーの調整をする部分なので、再組み付けでは同じ位置で固定する必要があります。このため、先にナットやタイロッド、Axial Joint に合いマークを付けます。その後ロックナットを緩めます。
タイロッドエンドを、ギヤプーラーなどを使って外します。この後、タイロッド全体を反時計方向に回せば取り外す事ができます。
タイロッドを外したAxial Joint 部。
下側のナットがロックナットです。ブーツの挿入にはロックナットも外しておく必要があります。

タイロッドだけでなく、Axial Jointとの間にも合いマークを付けておきます。

この後、ブーツを留めている針金のクリップを外せば古いブーツを取り出す事ができます。
右側


右側ではステアリング・ラム(パワーシリンダー)を取り外します。

ステアリングラック・ケースとステアリング・ラムのケースは図B部で固定されます。ステアリングギヤとパワーシリンダーは図A部でボルトで固定されます。

A部ではラックギヤに突起が有り、ステアリングラムの一端はこれに差し込んでからボルトで固定されます。つまり、ステアリングラムを取り外しても、ブーツを交換する際にはこの突起の分ブーツを引き伸ばさなければなりません。

なお、右側ではブーツ両端の内径が大きいため、タイロッドはナックル側を外すだけで挿入する事ができます。
実際の配置です。
固定ボルトB部にはピニオンバルブからのフィードパイプが接続されていますが、両方のボルトを取り外す事で、A部をラックギヤの突起から抜く自由度が得られます。

パワーシリンダーはフィードパイプの弾力のみで保持されますので、無理な力をかけてパイプを変形させないよう注意して下さい。
最大の難関は、ラックギヤ先端の突起をブーツを引き延ばしながら越える事です。色々な方法が有るようなのですが、今回は内側からエクステンションバー()のような棒を使い、内側から伸ばしながら送り込みました。

他にも良い方法が有りましたらぜひ御教授ください。

ブーツの両端は付属のタイラップで締め込みます。
逆の手順で各部を組み直します。
プレッシャーレギュレータを閉め直す事をお忘れなく。


(C)Yohsuke NARABAYASHI