Back Numbers : ホームモニター日記2021



※家のテレビモニターで鑑賞した作品やコンテンツに関する感想のまとめです。(映画に限らず何でも話題にしています。)

※映画館や配信サイトでの公開から1年以内の映画は、新作映画と考えて簡単な作品情報を載せています。(何の根拠もない独自ルールですみません……。)


今期は割とドラマをたくさん見ているような。『俺の家の話』『書けないッ !? ~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~』『その女、ジルバ』『にじいろカルテ』『おじさまと猫』『アノニマス ~警視庁“指殺人”対策室~』など。人格が入れ替わったりする設定は苦手なので、そのお話は見てないのだが。

『俺の家の話』は、とにかく先が全く読めなくて見る度に驚く。クドカンは常に新しいドラマの地平線を開拓しようとしているんだなと感心してしまう。しかし長瀬智也さん、裏方に回るとか言わないで、今後も表舞台でもガシガシ活躍して戴きたいのですが……。

『書けないッ !? …』は福田靖さん脚本。ついに同業者ネタを扱うことになりましたか。しかし深夜帯のドラマにこんなに豪華なキャスティングが実現しているのは、福田脚本の吸引力も大きいのでは。
そして期待に違わぬ面白さ。毎回無理難題に立ち向かう生田斗真さんや、今回珍しく後ろ暗くない役の北村有起哉さん、チャラくて我儘な主演俳優役の岡田将生さんなど、みんな生き生きと楽しそうに演じているのがいいです。

『その女、ジルバ』は東海テレビ制作。独自のドラマやドキュメンタリーを割とたくさん作っているんだな。本作では池脇千鶴さんを主演に据えたのがまず慧眼。そして、中年以降の女性を主人公にしたドラマが本当に少ない中、その主題を真っ向から扱っているチャレンジングなところを推したいと思う。

『にじいろカルテ』は岡田惠和さんの脚本のやさしさが今後どう転がるのか、まだ様子見な感じ。『おじさまと猫』はこんな草刈正雄が見たかった!という草刈さんがてんこ盛りで素敵。主役の猫がぬいぐるみなのもいい。実写の猫は本当は何を考えてるのか分からなくて感情移入が難しいことが多いんだよね。

そして、香取慎吾さん目当てで見始めた『アノニマス ~警視庁“指殺人”対策室~』に案外ハマっている。SNSをテーマに、一筋縄ではいかない社会の位相を複雑なままに捉えようとしている、結構野心的なドラマなのではないかと思う。
香取さんを始めとする関水渚さん、清水尋也さん、MEGUMIさん、勝村政信さんという指殺人対策室の面々も魅力的。今後【新聞記者】のシム・ウンギョンさんのエピソードがどう展開して、山本耕史さんがどう絡んでくるのかも楽しみ。
調べてみたら、チーフプロデューサーの阿部真士さんは『モテキ』『みんな!エスパーだよ!』『鈴木先生』『孤独のグルメ』『きのう何食べた?』など幾多のテレ東ドラマを手掛けてきた方らしい。濱谷晃一PとのYouTube配信も後追いで見ちゃったよ……。なんかオラ、ワクワクしてきたぞ!

Netflixで『クイーンズ・ギャンビット』を視聴。つまらなくはなかったけれど周囲の評判ほどには熱中できず、どうしてなのかなーと考えてみる。

主人公は才能に恵まれ、つまづきや苦難はあるとはいえコミュ障にもならず周囲の人間関係にも恵まれ、割と順調に欲しいものを手に入れることが出来たように見える。だからふーんといった感じ。そう言ったら家族に、(ぴ)は若い女性に対して厳しいからなーと言われた。そ、そうだっけ?

アニャ・テイラー=ジョイさんのちょっと独特な風貌は役柄を選ぶと思うんだけど、本作の天才肌で自信家の主人公にはぴったりで、当たり役に巡り会えてよかったねーと思った。(一回売れたらオファーが来やすくなるもんね。)

U-NEXTで【女王トミュリス 史上最強の戦士】を鑑賞。カザフスタン映画というのが珍しくて興味が湧いた。トミュリスは紀元前6世紀頃のカスピ海東岸地方のマッサゲタイ族の女王で、映画で描かれている通り、古代ギリシャの歴史家ヘロドトスの著書に記載されているのだそうだ。

マッサゲタイ族は遊牧民だったそうで、草原の騎馬隊の絵面などを見ているとチンギス・ハーンの映画などが思い出される感じ。史実にどの程度基づいているのかは分からないけど、とにかく知らないことだらけなので勉強になった。

【女王トミュリス 史上最強の戦士】(5/10)
原題:【Tomiris】
監督:アカン・サタイェフ
脚本:アリーヤ・ナザルバエフ
出演:アルミラ・ターシン、アディル・アフメトフ、エルケブラン・ダイロフ、ハッサン・マスード、アイザン・ライグ、他
製作国:カザフスタン

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別アカで薦めている人が多かった『呪術廻戦』や『SK∞ エスケーエイト』などを見るなどした。

『呪術廻戦』は評判に違わぬ面白さ。キャラクターや設定の構築って大事って改めて思う。ただ、今のところはまだストーリーの核心の周りの部分をぐるぐる回っている感じで、まだまだ先が長そうだ。

『SK∞ エスケーエイト』はスケボーの架空の競技の話。キャラ先行でお話はちょっとふわっとしてるけど、みんなわちゃわちゃ仲良くしてて可愛いなー。主人公よりその親友の方が主役っぽいという設定は新しい感じで、唯一の敵キャラ(?)の彼へのねじれた愛情が今後どう転んでいくのか見守りたい。

U-NEXTでダルテンヌ兄弟の【その手に触れるまで】を鑑賞。イスラム系コミュニティの少年が、極度に保守的な宗教指導者(でもかなり無責任…)にそそのかされて学校の女性教諭をナイフで刺そうとするが失敗、少年院に送られる、といった話。

少年院と言っても、近郊の農家に作業を手伝いに行くシーンなどもあり、日本とは環境が大分違う感じ。周りの大人の一人一人がこの少年の更正を真剣に考えているんだな~という印象を受けた。

それでも少年は揺れ動く。そもそもどうして少年は保守的な思想にハマったのかということはあまり語られていないが、何を信じればいいのかというのは難しい話だよな……でも、誰かを怪我させたり殺したりさせるような思想が正しい訳がないのだということを、この少年が分かってくれていたらいいのだが。

静かな語り口の中に一筋縄ではいかない世の中の複雑さやままならなさを鮮明に浮かび上がらせるダルテンヌ兄弟の緻密な作風が本当に好きだな~。と改めて思う一方、自分が好きな作風の監督さんはどんどん高齢化して、自分が好きな表現の世界は先細りする一方なんだな……としみじみした。

【その手に触れるまで】(9/10)
原題:【Le Jeune Ahmed (Young Ahmed)】
監督・脚本:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
出演:イディル・ベン・アディ、ミリエム・アケディウ、オリヴィエ・ボノー、他
製作国:ベルギー/フランス

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続けてアルモドバル監督の【ペイン・アンド・グローリー】を鑑賞。監督の自伝的な物語とのことだが、全身の激しい痛みからヘロイン中毒になった話とか、それで仕事にも支障を来していた話とか、昔の恋人の話とか、監督にも様々な紆余曲折があったんだなと窺い知ることができる。

アルモドバル監督も70オーバー。こういう映画をお造りになるということは、自らのキャリアの来し方行く末を見つめ直していらっしゃるということかな……とまたしみじみした。

【ペイン・アンド・グローリー】(7/10)
原題:【Dolor y gloria (Pain & Glory)】
監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
出演:アントニオ・バンデラス、ペネロペ・クルス、アシエル・エチェアンディア、レオナルド・スバラーリャ、ノラ・ナバス、フエリタ・セラーノ、他
製作国:スペイン

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更にテレンス・マリック監督の【ソング・トゥ・ソング】を鑑賞。あっこれは【聖杯たちの騎士】系の映画だったか……。セレブなお暮らしの皆さんの何かしらの悩みって、全然心に刺さらなかったです……。

【ソング・トゥ・ソング】(5/10)
原題:【Song to Song】
監督・脚本:テレンス・マリック
出演:ルーニー・マーラ、ライアン・ゴズリング、マイケル・ファスベンダー、ナタリー・ポートマン、他
製作国:アメリカ

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YouTubeでチャラン・ポ・ランタンの小春さんと小松亮太さんの3本立ての対談をたまたま見つけて、思い切り睡眠時間を削ってしまった。無茶苦茶濃い話がたっぷり聞けて至福でした!

蛇腹談義36
蛇腹談義37
蛇腹談義38

朝ドラの『おちょやん』を見るのがどうもしんどいと思っていたのだか、個人的に、親のせいで家族関係の概念がバグっている人を見ているのがつらいのだと判明した。う~んどうしようかな。千代さんは最後まで家族関係に翻弄されていそうな予感しかしないしな……。

今季のドラマ『その女、ジルバ』『書けないッ!? 脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活』『アノニマス 警視庁“指殺人”対策室』などが終了。どれも面白かったな~。

家族が『その女、ジルバ』のアララの弟役の金井浩人さんをとても気に入っていたので、金井さんは【きらきら眼鏡】って映画で既に池脇千鶴さんと共演経験があるよ!なかなかいい映画だったよ!と教えておいた。

その家族に、今注目している若手俳優は誰ですかと聞かれたので、北村匠海さんと磯村勇人さんと答えた。北村さんは【アンダードッグ】、磯村さんは【ヤクザと家族 The Family】。二人ともとっくにドラマで注目されていて人気者なのに、映画に出てくれるまで認識できない映画脳……。

U-NEXTで【プラド美術館 驚異のコレクション】を鑑賞。普通の美術館のドキュメンタリーは美術館の中で作品の解説をするのが常套手段だけど、本作は時間も空間も飛び越え、時には外国にまで行って、この美術館がどのように成立したかというその歴史や精神まで描き出そうとする。

そのナビゲートをしているのがジェレミー・アイアンズ様。おぉ、相変わらずカッコいい。単なる美術ドキュメンタリーの枠に留まらない、新たな切り口を持つ作品だった。

【プラド美術館 驚異のコレクション】(6/10)
原題:【Il Museo del Prado – La corte delle meraviglie (The Prado Museum, a Collection Of Wonders)】
監督:ヴァレリア・パリシ
(ドキュメンタリー)
出演:ジェレミー・アイアンズ
製作国:イタリア/スペイン

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続けて【パブリック 図書館の奇跡】を鑑賞。極寒のオハイオ州シンシナティで、行き場がなく図書館に立てこもったホームレスの人々と、彼らと対峙した図書館員の行動の顛末を描きつつ、実はアメリカの民主主義の根幹に関わる自由と平等がテーマだったりする。

「公共図書館はこの国の民主主義の最後の砦だ」という科白にある通り、アメリカの公共図書館は情報の平等を提供することで民主主義を下支えする装置なのだろう。フレデリック・ワイズマン監督のドキュメンタリー【ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス】を併せて見るといいのではないかと思う。

昔は青春スターという感じだったエミリオ・エステベス氏が、いつの間にか、前作の【星の旅人たち】や本作のような作品の製作から脚本・監督まで手掛けるよき映画人になっていたのが感慨深い。

【パブリック 図書館の奇跡】(8/10)
原題:【The Public】
監督・脚本・出演:エミリオ・エステベス
出演:アレック・ボールドウィン、ジェナ・マローン、テイラー・シリング、クリスチャン・スレイター、ガブリエル・ユニオン、ジェイコブ・バルガス、マイケル・ケネス・ウィリアムズ、ジェフリー・ライト、チェ・“ライムフェスト”・スミス、他
製作国:アメリカ

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U-NEXTで石井裕也監督の【生きちゃった】を視聴。主演の仲野太賀さんや、その元妻役の大島優子さんらの役者陣の演技はよかったんだけど、どうも釈然としなくて、その理由を考えてみたのだがこれは随分と男性にばかり都合のいいストーリーなんじゃないだろうか。そもそも、自分が口下手なのを相談するために他の女を妻の留守中に自宅に連れ込んだって何だそりゃ。百万歩譲ったって自宅に連れてくる必要全く無いじゃんか。

そしてストーリーの都合でその妻を自宅に男を連れ込んだりするような女に仕立て、挙げ句の果てに○○してしまうってどういうこと?その因果を招いたのが自分の口下手であることに主人公が苦しんでいるというのがこの映画の骨子のようだが、それは随分と自己憐憫的で独りよがりな悩みなんじゃないの?

こんな男の更正のために女の方を○○すまでしまうなんて随分ひどい話なんじゃないかと思った。

【生きちゃった】(5/10)
監督・脚本:石井裕也
出演:仲野太賀、若葉竜也、大島優子、毎熊克哉、他
製作国:日本

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U-NEXTで【バクラウ 地図から消された村】も視聴。どんな映画かよく分からずに見てたんだけど、時々UFO(っぽい何か)が出てきたり権力に立ち向かったりするブラジリアン・バイオレンス・モンドムービーってことでいいかな?

いろいろ深読みすることも出来るのかもしれないけど、いい意味でのトラッシュムービー的な映画としてもっと単純に楽しめばいいような気がする。しかし、そもそもその手の映画に対する感性が低い自分にはちょっとハードルが高かったのかもしれない。

【バクラウ 地図から消された村】(5/10)
原題:【Bacurau】
監督・脚本:クレベール・メンドンサ・フィリオ、ジュリアーノ・ドルネレス
出演:バルバラ・コーレン、トマス・アキーノ、シルベロ・ペレイラ、ソニア・ブラガ、ウド・キアー、他
製作国:ブラジル/フランス

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続けて【異端の鳥】を視聴。ナチズムの時代の背景に横たわる人間の悪意や暴力性と言われるとミヒャエル・ハケネ監督の【白いリボン】などが思い出されたが、言われてみるまではよくわからず、ただうんざりするほどの暴力や虐待が延々と続く、見ていてひたすら気持ちが悪くなるような映画だった。しかし原作小説からして正に「人間とはそうししたものだ」という意図で書かれているようなので、優れた映画化と言うべきなのだろう。健康で元気がある時なら頑張って見てみてもいいと思う。

【異端の鳥】(6/10)
原題:【Nabarvené ptáče (The Painted Bird)】
監督・脚本:ヴァーツラフ・マルホウル
原作:イェジー・コシンスキ
出演:ペトル・コトラール、ウド・キアー、レフ・ディブリク、イトカ・チュヴァンチャロヴァー、ステラン・スカルスガルド、ハーヴェイ・カイテル、ジュリアン・サンズ、バリー・ペッパー、他
製作国:チェコ/スロバキア/ウクライナ

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【ハニーランド 永遠の谷】という北マケドニアのドキュメンタリーも視聴。自然養蜂家の女性を追った作品ということで、ヨーロッパの養蜂事情とかが分かるのかなと思っていたら全然そんなことはなかったのだが、家族や身近な人々との人間関係に右往左往させられる一人の人物の物語としては目が離せなくなる魅力があり、これ本当にドキュメンタリーなの?と思ってしまうような特異な作品になっていた。

【ハニーランド 永遠の谷】(6/10)
原題:【Honeyland】
監督:リューボ・ステファノフ、タマラ・コテフスカ
(ドキュメンタリー)
製作国:北マケドニア

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U-NEXTで【星の子】を視聴。新興宗教の熱心な信者である両親を持つ女子中学生を描いた小説を大森立嗣監督が映画化した作品。

人に害を及ぼしたり人に押し付けたりしなければ何を信じるのも自由だとは思うけど、水などに関するエピソードを見る限り、ご両親の信じている宗教は少し眉唾かもしれない。主人公も、小さな頃よりいろいろなことが見えるようになり、周囲の目も意識するようになっていろいろ思い悩む。

同じようなテーマの映画ということで塩田明彦監督の【カナリア】(2004年)を思い出したが、90年代のオウム真理教の一連の事件をそのまま思い起こさせるような内容だったその作品と比べると、主人公が一応家族と共に一般の社会生活を送ることができている本作はまだマイルドに思える。

だからこそ、両親を否定しきれない主人公の悩みは、より内面化して複雑になっているようにも見えるのだが、あのフラットな目で見てくれる友人がいるならきっと大丈夫だと思いたい。自分の道を模索している最中の彼女が、自分にとって最善な道を選ぶことができますようにと、祈らずにいられなかった。

芦田愛菜さんは学業を優先にしているから、今の時期の彼女が制服を着て同年代の役を演じるのはレアかもしれない。その意味でも貴重な映画になったと思う。あの友人役の新音(にのん)さんは【まく子】に出てた方ですよね?独特な雰囲気が好きだなぁ。今後も演技の仕事も続けてくれると嬉しいです。

【星の子】(7/10)
監督・脚本:大森立嗣
原作:今村夏子
出演:芦田愛菜、永瀬正敏、原田知世、大友康平、新音、岡田将生、田村飛呂人、赤澤巴菜乃、高良健吾、黒木華、蒔田彩珠、他
製作国:日本

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続けてアマプラで堤幸彦監督の【望み】を視聴。行方不明になった息子が殺人事件に関わっていると知り、息子は犯人ではなく殺されたのではないかと考える父親と、例え息子が犯人であっても生きていて欲しいと願う母親がすれ違う。

少し横柄な父親を演じる堤真一さんや、盲目的なほどに息子を思う母親を演じる石田ゆり子さんを始めとする俳優陣の演技が見事で、堤監督の的確な演出も冴える。こうしたラストになってしまうのか……というところに少し虚しさも感じるが、確かな見応えのある映画だと思う。

【望み】(7/10)
監督:堤幸彦
脚本:奥寺佐渡子
原作:雫井脩介
出演:堤真一、石田ゆり子、岡田健史、清原果耶、加藤雅也、市毛良枝、松田翔太、竜雷太、他
製作国:日本

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ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の【静かなる叫び】という映画を見ていないと判り、U-NEXTで視聴。1989年にモントリオール理工科大学で起きた銃乱射事件が元になっているらしい。

視聴しながら、アメリカのコロンバイン高校の銃乱射事件を基にした【ボウリング・フォー・コロンバイン】や【エレファント】などを思い出す。独りよがりな動機で多くの人の命を奪う身勝手さに既視感がある。犯人にどんな背景があれ、断じて許されることではないというのも同じだ。

熊本を舞台にした行定勲監督の『うつくしいひと』の続編『うつくしいひと サバ?』がアマプラに来ていたので視聴。熊本出身のコンテンポラリーダンサーの妻を亡くしたフランス人が、妻の父に会うため、2016年の地震直後の熊本を訪れるという話。

『うつくしいひと』は熊本地震以前の熊本を映した映画として残ることになり、『…サバ?』は地震の被害に立ち向かおうとする熊本を新たに映す映画になった。個人的に行定監督の世界とはどうも合わないところがあるようなのだが、故郷の熊本への愛がストレートにぶつけられたこの両作はとても好きだ。

それにしても、石橋静河さんが元はコンテンポラリーダンサーとして活動していた人だったとは知らなかった。森山未來さんや土屋太鳳さんなど、ダンスをベースにした俳優さんが何だか増えているんだな。

U-NEXTに【あざみさんのこと 誰でもない恋人たちの風景 vol.2】が来ていたのでいそいそ視聴。ただ【…vol.1】ほど魅かれなかったかも。

【…vol.1】の登場人物もいろいろ欠点を抱えた人達ではあっても、それぞれ人間くさいところがあって見ていて引き込まれた。でも【…vol.2】の登場人物は本当にただの身勝手や冷淡と映る人が多く、彼等が互いにどんな関係を持とうが残念ながらあまり心が動かされなかった。

【あざみさんのこと 誰でもない恋人たちの風景 vol.2】(4/10)
監督・脚本:越川道夫
出演:小篠恵奈、奥野瑛太、嶺豪一、斉藤陽一郎、遊屋慎太郎、片岡礼子、他
製作国:日本

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U-NEXTに篠田正治監督の【はなれ瞽女おりん】【沈黙】【処刑の島】などが来ていたので鑑賞。

【処刑の島】は、ある小説を石原慎太郎が脚色したものと後で分かり、この自己陶酔的で独善的な感じはそうだよなーと思うなど。【沈黙】はマーティン・スコセッシ監督の【沈黙 サイレンス】より前に見ておくべきだったかも。同じ話でも予算が違いすぎるのをあまりにも如実に感じてしまう……。

【はなれ瞽女おりん】は、戦前に多くいたという盲目の女旅芸人・瞽女が主人公。時代的には【愛のコリーダ】と同じくらいだろうか。女性の描き方には時々あれ?と思うけど、主人公と脱走兵の男との純愛には心を動かされた。そしてやっぱり自分は原田芳雄さんが大好きだなーとしみじみ思った。

【はなれ瞽女おりん】で【津軽じょんがら節】を思い出したので、アマプラで視聴。(と言っても三味線と日本海くらいしか共通点がないが……。)ヘマをして逃亡せざるを得なくなった下っ端ヤクザの情婦が、かつて出ていった故郷の津軽に男を連れて帰ってくる。

昔の映画は現在の自分との価値観の違いが引っかかって心の中で補正が必要なこともあるのだが、この映画は、彼等の行動をジャッジすることなくただひたすら見つめているだけなのでそのストレスがなかった。この荒涼とした津軽の海辺の風景は、スクリーンで見たかったかもしれない。

気分を変えて、タモリさん主演で写真家の浅井慎平さんが監督という異色作【キッドナップ・ブルース】をU-NEXTで見てみる。『笑っていいとも!』が始まったのと 同時期の1982年10月の公開作。

はっきりした起承転結のようなものはなく、タモリさんがよその子供を連れてただあちこちを放浪する雰囲気先行の映画という感じだが、浮かれ騒ぐ80年代が始まる前の、70年代独特の静かで尖った香りが残っていて、知りもしないのに妙に懐かしい気分になる。

国民的司会者になる前の当時キワモノ芸人扱いされていたタモリさんの風貌や、豪華なゲスト出演者など、今見るといろいろ見どころも多い映画なのではないかと思う。

続けて未見だった黒木和雄監督の【原子力戦争 Lost Love】を視聴。原発の町にやって来たチンピラが、放射能漏れ事故を巡る町ぐるみの隠蔽工作に巻き込まれていく、といった話だが、シビアアクシデントが現実に起きてしまった今となっては随分のどかな話のようにも思える。

ただ、原発は昔から利権やら隠蔽やらがつきまとう胡散臭い商売だったんだな、という雰囲気は感じ取ることができる。日本のように狭くて自然条件の厳しい土地には原発は無理だったってもう十分証明されただろうに、いつまでもしがみつこうとするのか。日本はすっかり周回遅れの国になってしまった。

ずっと保留にしていた【青の帰り道】をNetflixで視聴。完成が危ぶまれた曰く付きの作品だが、あの【新聞記者】の藤井道人監督の作品とは知らなかった。

高校卒業を目前にした7人の男女が主人公。前半はよくある青春映画みたいでなかなか興味が湧かなかったが、中盤から終盤にかけて彼らが挫折や耐えがたい出来事を経験するようになると、お話が俄然厚みを増していった。一人一人の気持ちの在りようが心に突き刺さってくるような秀作だった。

アマプラでふくだももこ監督の【君が世界のはじまり】を視聴。若い人達の逡巡系の映画に対する感性が本当に摩耗してしまっているんだな……と痛感せざるを得なかったが、彼等がある場所に忍び込む場面以降の終盤の展開には心が浮き立った。

【君が世界のはじまり】(5/10)
監督・原作:ふくだももこ
脚本:向井康介
出演:松本穂香、中田青渚、片山友希、金子大地、甲斐翔真、小室ぺい、板橋駿谷、山中崇、正木佐和、森下能幸、億なつき、江口のりこ、古舘寛治、他
製作国:日本

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TL情報からしばらく見るのを躊躇していた『おちょやん』を一気見し、視聴をやめることにした。千代さんが毒親とどう向き合うかという問題に直面せざるを得なくなったのは理解できるが、その毒親が死ぬからって、被害を受けていた本人に対して、周りの人間が寄ってたかって、本当はいい人だったとか許してやれとか言う権利などあるものか。テルヲは人間として哀れだとは思うが、やったことは永遠に消えないし、可哀想でも何でもない。これは演者のせいではなく、この演出チームに、毒親との対峙というテーマを描き切る力が無かったのだと思う。

録り溜めてあった空族/富田克也監督の『雲の上』『国道20号線』を視聴。ストーリーの組み立て方や語り口などまだまだ発展途上の習作だった感は否めないが、映画を手探りで形にしようとする原初的な衝動に溢れ、後の作品の片鱗も見えて面白かった。

『雲の上』は8mm作品なのだが(『国道20号線』は16mm)、よく8mmで2時間近くある映画を作れたな~。今ではもう8mm映像を見る機会もほぼ無くなっていて(昔からそんなに無かったが)何だか懐かしかったが、この映像の荒さが独特の効果を醸し出しているように思った。

録り溜めてあった原一男監督の新作【れいわ一揆】をようやく視聴。れいわ新選組が2議席を獲得した2019年の参議院選挙で、れいわの比例代表候補として出馬した安冨歩(やすとみあゆみ)氏の選挙戦を中心に追ったドキュメンタリー。

安冨氏は東大教授の経済学者で、50歳で思うところあって女性装を始めたという方。選挙演説では具体的な政策を提言したりすることはほとんどなく、いろんな話題を引用しながら一貫して「子どもを守ろう」とだけ主張していた。およそ政治には向いていそうにないが、面白い人だ。

今まで一貫してユニークな人物の姿を追いかけてきた原一男監督が、今回は特に安冨氏の人となりに興味が湧いたということらしい。正直、政治的アジテーションがあまりに激しい映画だったら4時間見るのは辛いなぁと思っていたのだが、そんな気負いは全く不要だった。

見る側は、原監督の記録の中から、安富氏のユニークな選挙活動を見たり、様々な候補者の主張に耳を傾けたり、当時のれいわ新選組を取り巻く熱気を思い出したりしながら、各自が読み取りたいことを読み取ればいいのだろうと思う。

【れいわ一揆】(7/10)
監督:原一男
(ドキュメンタリー)
出演:安冨歩、山本太郎、蓮池透、木村英子、舩後靖彦、渡辺てる子、野原善正、他
製作国:日本

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そういえば未見だった金秀吉監督の【君は裸足の神を見たか】をU-NEXTで視聴。1986年ということなので、ぼちぼち映画を大量に見始めたけど日本映画にはまだ興味が無かった頃の作品だ。

本作は、個人的な勝手なイメージでは80年代的というよりは70年代の青春映画っぽい感じで、昔どうして日本映画が好きじゃなかったのかと言えば女性の描き方が好きじゃなかったからだと思い出してしまった。ラストの展開もどうも……。でもあの頃はこういった感じが好まれていたんだよね、多分。

しかし、自分が配信で見る昔の日本映画、ATG率がやたら高いな……。

ちょっと気分を変えて、アマプラで『潜入捜査アイドル・刑事(デカ)ダンス』を視聴。テレ東の『アノニマス…』の阿部真士Pと、バラエティ班の佐久間宣行P(当時)が組んだ企画とのこと。

刑事が捜査のためにアイドルになるという荒唐無稽な設定に、エグい業界あるあるが散りばめられ、やがて秘められた闇が明らかに……。話が進むごとに5人のメンバー(中村蒼・大東駿介・横浜流星・森永悠希・立花裕大)の個性がどんどん際立ってくるという構成も見事。

そしていつの間にか彼らのことがとても好きになっている。どうして当時見なかったのか。めっちゃ面白かった!

アマプラで【喜劇 愛妻物語】を視聴。【百円の恋】の脚本家・足立紳さんの原作・脚本・監督作で、自身の下積み時代をモデルにしたものらしい。

終始妻とセックスすることばかり考えている売れない脚本家の夫を演じる濱田岳さんと、そんな夫との生活を支えるのに疲れ果てキツい言葉がデフォルトになっている妻を演じる水川あさみさんの、毒舌漫才みたいなマシンガントークが圧巻。

しかし、彼等は何のかんの言いながら心の底では好き合っているのだなというところも随所に見て取れて、夫婦なるものの深淵を見るような気持ちになる。主演のお二人の迫真の演技が脚本の味を何倍にも増幅させている、見応えのある映画だった。

【喜劇 愛妻物語】(7/10)
監督・脚本:足立紳
出演:濱田岳、水川あさみ、新津ちせ、夏帆、大久保佳代子、ふせえり、光石研、他
製作国:日本

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『俺の家の話』の最終回をやっと視聴。介護と能とプロレスと家族のリユニオンのミクスチャーという、長瀬智也さんの花道にふさわしい前代未聞のドラマだった。本来、死にオチはあんまり好きじゃないけれど、死は順番にはやって来ないというのは真理だなとは思う。 (前回のエンディングで、あれ?もしかして?ってちょっと思ってたんだ……。)

しかし改めて、長瀬智也さんという傑物が芸能界の表舞台から身を引いてしまうのは惜しいと思った。長瀬さん、気が向いたらいつでも戻ってきてくださって構わないんですよ……。

U-NEXTに【ムーミン谷とウィンターワンダーランド】が来ていたので、そういえば見ていなかったと鑑賞。手書きの書き割りを背景にしたパペットアニメの手作りっぽさがとても味わい深く、とてつもなく可愛い。ず~っと見ていたいので、今度から見るものが無い時のBGVにしようかな。

U-NEXTで【薬の神じゃない!】を視聴。中国で2018年に製作され約500億円の興行収入を記録したという映画で、ジェネリック製薬大国のインドから中国に白血病の薬を密輸するという話。

しかし、見始めて間もなく「あれ?【ダラス・バイヤーズクラブ】に似てない?」と思い始め、見れば見るほど「これは原作料を払ってもいいレベルでは…」という展開に。段々仲間が増えるところや、営利主義から社会正義に目覚めるところや、一度活動を断念するところなど、大まかな流れが類似している。

本作は一応中国の実際の事件を基にしていて、それで中国では医療改革が起こり薬価も下がったということなのだが、細かい違いは色々あるとは言えどうもなぁ…。と思って検索したら皆同じことを考えていたようだが、中には中国版何某と堂々紹介している商業映画サイトまであって脱力した。駄目だこりゃ。

【薬の神じゃない!】(4/10)
原題:【我不是藥神 (Dying to Survive)】
監督・脚本:ウェン・ムーイエ
出演:シュー・ジェン、ワン・チュエンジュン、ジョウ・イーウェイ、タン・ジュオ、チャン・ユー、ヤン・シンミン、他
製作国:中国

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U-NEXTで【三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実】を視聴。自分にとっての三島由紀夫氏は、本を読むほど好きではなく、かと言ってどんな関連映像作品を見てもよく分からないブラックボックスであり続けてきた。

本作によると、氏の目には戦後民主主義社会が醜く堕落した社会と映っていて、それを批判する論拠として旧来の美しい日本文化の礎としての天皇制を熱狂的に支持しており、その制度と自分を同一視することで陶酔感や高揚感を得て、自分の中の欠落感や劣等感を穴埋めしようとしていたということらしい。

強大な何かと自分を一体化させたプライドと尊大さで他者にマウントを取ることでしか自身の自尊心を補完できない……。そういうタイプの人達にエネルギーを吸い取られたくないのでなるべく関わり合わないように生きてきたつもりだが、もしかして、その人達と氏は同じ精神構造を有しているのではないか。

今まで「三島由紀夫的なるもの」や彼を取り巻く現象がよく分からなくてずっと遠巻きに眺めてきただけだったが、もしかしてここには、自分が常日頃から忌み嫌い解体すべきと考えている価値観がごっそり横たわっていて、社会を融通性のある方向に導く何かを強固に阻害しているのかもしれない、と思った。

【三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実】(7/10)
監督:豊島圭介
(ドキュメンタリー)
出演:三島由紀夫、芥正彦、木村修、橋爪大三郎、篠原裕、宮澤章友、原昭弘、清水寛、小川邦雄、瀬戸内寂聴、椎根和、平野啓一郎、内田樹、小熊英二、他
ナレーション:東出昌大
製作国:日本

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井口奈己監督のドキュメンタリー【こどもが映画をつくるとき】の期間限定のYouTube配信を視聴。宮崎で開催されたこども向けの映画ワークショップを撮影したもの。 こども達の活動記録という側面が強いと思うけど、映画?何それ?といった雰囲気だったこども達が、そのうち積極的になってきて、みんな段々いっぱしの撮影隊みたいに見えてくるのが面白かった。

ずっと見逃していた【8日で死んだ怪獣の12日の物語】をやっと録画視聴。もともと、樋口真嗣監督が『カプセル怪獣計画』というSNSの動画プロジェクトに参加しており、その番外編として岩井俊二監督が製作したのが本作とのこと。

斎藤工さん演じる主人公が自粛期間中に通販で買ったカプセル怪獣を育てるという話で、ほぼ全編がリモート通信の画面で構成されている。ちょっとした不思議さや不穏さや哀しさや希望もあって、低予算で限られた条件下でもアイディア一つで映画を成立させることができるというお手本のような映画だった。

カプセル怪獣というのも十分珍妙なのだが、更にのんさんが通販で買った宇宙人を育てているという設定(通信では映らないという設定で画面には出てこない)で、お話に妙な奥行きが加わっていて面白かった。

【8日で死んだ怪獣の12日の物語】(7/10)
監督・脚本:岩井俊二
原案・出演:樋口真嗣
出演:斎藤工、のん、武井壮、穂志もえか
製作国:日本

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U-NEXTで今泉力哉監督の【鬼灯さん家のアネキ】を視聴。マンガ原作だそうなので、主人公が義姉を始めとする女性達にモテまくるという謎設定を動かしようもあるまい。

ただ、義姉役の谷桃子さんは、『ゴッドタン』のお姿しか見たことがなかったけど、こんな演技もできた方だったのかと。引退なさってしまったのは惜しいなぁと思った。

他に壇蜜さん主演の【地球防衛未亡人】や武田梨奈さん主演の【KG カラテガール】などを視聴。

【…未亡人】は未亡人なのに○○という設定で、河崎実監督らしい馬鹿馬鹿しさだけど、案外気楽に見れて楽しかったかも。【KG…】はどうも。筋書きには期待していなかったが、私なんぞが見てもアクションの撮り方がイマイチではいいところ無しなのではなかろうか。

オバマ元大統領夫妻が製作総指揮を務めたという【ハンディキャップ・キャンプ:障がい者運動の夜明け】をNetflixで視聴。

1970年代に障がい者向けのサマーキャンプから始まった障がい者の権利運動が、その後結実していく過程が描かれている。
ドキュメンタリーとしての出来は最上ではないかもしれないが、当然あるはずの権利のために声を上げることがその後の人々の道を開いてきたと述べられているのは示唆に富んでいる。

U-NEXTで韓国のドキュメンタリー【共犯者たち】【スパイネーション/自白】を視聴。韓国の公営放送局をクビになったチェ・スンホ氏というジャーナリストが独立系メディアを立ち上げ、調査報道を続けながら製作した作品だ。

国家情報院が北朝鮮のスパイを捏造していたという事件について描いた【スパイネーション/自白】も凄い話なのだが、時の政権からメディアへの大々的な政治介入を告発した【共犯者たち】は更に圧巻だった。

公共メディアが政府の言い分を垂れ流す広報機関と化した姿は、今の日本の大手メディアと思い切りかぶる。今の日本の大手メディアは政権与党の手先となって日本を破滅に向かわせている戦犯。韓国は軌道修正できたけど、日本はどうか。このままメディアと大企業と腐れ与党もろとも沈んでいくのだろうか。

そして【権力に告ぐ】を視聴。こちらは韓国の「ローンスター事件」という大金融スキャンダルを、事件と対峙する検事を主人公にして描いた作品。

個人的に金融関係が苦手というのもあるのだが、何せ直前にあまりの迫力のドキュメンタリーを見てしまったため、フィクションということ自体に少し物足りなさを感じてしまったかもしれない。でもこういう実在の問題を劇映画にできてしまうこと自体に、今の韓国映画界の力強さを実感した。

翻ると、今の日本映画界にはこういう批評性って本当に欠如してるよな……。長いものに巻かれろ体質は映画界だけに限らないかもしれないが。

Netflixで話題の【隔たる世界の2人】を視聴。タイムループもののプロットに、 ブラック・ライヴズ・マター運動の端緒となった一連の事件のエッセンスを散りばめ、現状に対する厳しい問題提起も盛り込んだ秀作。時事性からしても評価が高いのは当然だなぁと思った。

【隔たる世界の2人】(8/10)
原題:【Two Distant Strangers】
監督・脚本:トレイヴォン・フリー
共同監督:マーティン・デズモンド・ロー
出演:ジョーイ・バッドアス、アンドリュー・ハワード、ザリア・シモン、他
製作国:アメリカ

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久々にNetflixを見たついでに、クロエ・ジャオ監督の【ザ・ライダー】も視聴。ライダーとはロデオの乗り手のことだけど、怪我でロデオができなくなった若い主人公がどうすればいいのか悩む話なので、中高年の自分にはやはり【ノマドランド】の方が切実に映るみたいだ。

Netflixで『ハイパーハードボイルドグルメリポート』を見つけてしまい、未見のエピソードが多かったので見てしまう。すると興が乗ってしまい、Paraviをひと月だけ契約して『ウルトラハイパーハードボイルドグルメリポート』も見てしまった。

せっかくParaviをひと月契約したので、ちょっと見たかった『アノニマス』のスピンオフドラマ『アノニマチュ!~恋の指相撲対策室~』も見る。本編とは打って変わったラブコメ仕立てで楽しい。清水尋也さんはやっぱりいいな~。今後もっといろんな作品で活躍して欲しい。

Paraviで映画のチケットがもらえていたのを発見し、折角なので解約する前に【水上のフライト】を鑑賞。(ただ、Paraviの映画はFireTVでは見れなかったので携帯の画面で見ることに。ちょっと残念。)

【超高速!参勤交代】の土橋章宏氏の脚本で、事故で歩けなくなった元陸上選手が紆余曲折の末パラカヌーに挑戦するという話なのだが、絶望に囚われた後また希望を見出し進み始める主人公の心の動きが細やかに表現されていて、そうよ、私はこういう中条あやみさんが見たかったのよ!と膝を打った。

母親役の大塚寧々さんやコーチ役の小澤征悦さん、カヌークラブの子供達などの周りの人達の描写もいいし、妙な恋愛要素が入らないのもいい。おそらくオリパラ絡みでOKが出た企画なのだろうというところを差し引いても、なかなかいい作品だと思った。

【水上のフライト】(7/10)
監督:兼重淳
脚本:土橋章宏
出演:中条あやみ、杉野遥亮、大塚寧々、小澤征悦、高月彩良、冨手麻妙、高村佳偉人、平澤宏々路、他
製作国:日本

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前から少し気になっていた【種まく旅人】シリーズの【…みのりの茶】【…くにうみの郷】【…夢のつぎ木】をU-NEXTで視聴。

毎回テーマもロケ地も監督も出演者も違い、製作会社もその都度異なっている謎の農業映画シリーズなのだが、農林水産省職員がカッコよく登場しがちなところを見ると、農林水産省あたりが主導して電通にでも発注し取りまとめられている案件なのだろうか。

それぞれの話は、【…夢のつぎ木】のちょいセクハラ気味な展開を除けば、それぞれのケースでの問題点も踏まえつつ手堅く作られていてまぁ面白かったのだが、シビアな農業問題がそんなに農林水産省の目論見通りに上手く解決するものかしら、と思ったりはした。

U-NEXTに【地上最大のショウ】が入荷していたので視聴。筋立て云々よりも、大隊列を組んで街から街へと移動する古き良きサーカスの表裏の姿が活写されているのが抜群に面白く、先日NHKで放送していた木下大サーカスのテント撤収作業のドキュメント番組を思い出した。

しかし、この映画の舞台になっていたリングリング・サーカスは2017年に解散してしまったとのこと。時代の流れとはいえ寂しい気がするのだが、そうなると、木下大サーカスという存在は、もはや世界的に見ても貴重な文化遺産と言えるのではなかろうかと思い始めた。

U-NEXTで第1回米国アカデミー賞の最優秀作品賞【つばさ】も視聴。1927年公開のサイレント作品で、お話は当時のごく普通の娯楽映画的なものだけど、その頃は世界的に航空機ブームで、空中戦の描写の斬新さが特に評価されたのだそうだ。日本だと昭和の初め頃だけど、ジブリの【風立ちぬ】と同じ時代だったのではないかな。

U-NEXTで【ある画家の数奇な運命】を視聴。

旧東ドイツ出身の画家ゲルハルト・リヒターをモデルにした作品とのことで、妻と共に西ドイツに亡命した画家が、かつてナチスの安楽死政策により死んだ美しい叔母の記憶というモチーフに行きつくが、その出来事には実はある人物が深く関わっていた、という話。

ゲルハルト・リヒター作品は今やもの凄い価格で取引されているとのこと。その作品の良し悪しはよく分からないのだが、映画はどっしりと見応えがあり、個人的にはドナースマルク監督の旧作【善き人のためのソナタ】より好きだった。

【ある画家の数奇な運命】(7/10)
原題:【Werk ohne Autor (Never Look Away)】
監督・脚本:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
出演:トム・シリング、セバスチャン・コッホ、パウラ・ベーア、ザスキア・ローゼンダール、オリヴァー・マスッチ、他
製作国:ドイツ

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U-NEXTでアレハンドロ・ホドロフスキー監督の未見作【ホドロフスキーの虹泥棒】を見つけたので視聴。

筋書き的には謎な感じで、やっぱりホドロフスキー監督はストーリーテリングは向かないんじゃないか、と思ったりした。が、しばらく経つといくつかのシーンが唐突に胸の中に蘇ってきたりする。ホドロフスキー監督が指向する映画の境地は、やはり凡百の人には及ばない別の次元にあるのかもしれない。

公開時に少し気になっていた【シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢】をU-NEXTで見かけたので視聴。しかしほどなく、そういえば自分はフランスのコメディとは相性悪かったのだと気づいた。

男性のシンクロナイズドスイミングといえば、日本には矢口史靖監督の【ウォーターボーイズ】が存在しているではないか。あの映画はやはり大傑作だったのだなぁと、今更また痛感するに至った。

家族と【騙し絵の牙】の話をしていたら、そういえば佐藤江梨子さんは今何をなさっているのだろうとふと思い立ち、調べてみると、関西のサンテレビのドラマ『惑星スミスでネイキッドランチを』にご出演なさっていた。
#ホームモニター日記

あるSMクラブに所属する3人のSM嬢とその周囲の人々を描く(おそらく低予算の)B級テイストのコメディ。このちょっとエッジの効いた感じ、な~んだか懐かしい雰囲気があって嫌いじゃない。

U-NEXTに【響 HIBIKI】【ピンクとグレー】などが入荷していたので視聴。おそらくだけど、これはどちらも原作の方が面白いんじゃないだろうか。演者の皆さんは頑張っていると思うのだが、映像にしてしまうとどうもそこはかとないチープさが滲み出てきてしまうような。

Netflixオリジナルの【彼女】、あまりに評判が悪いので、これはやめといたがいいのかな……。

『今ここにある危機とぼくの好感度について』を録画視聴。「俺はいつだって何一つ言ってこなかった」「正論、ダメ、ゼッタイ!」などの台詞に爆笑しつつ震撼とする。大学の荒廃を背景に「表面さえ誤魔化せばよい」という現代の病根を絡めてコメディにするなんて、渡辺あやさんはやっぱり天才では。

そして松坂桃李さんが凄い。これまで演じてきた役と比較しても、役の振幅が広すぎでは。「中身が空っぽ」な人物を演じるだけでも相当な離れ業なのに、主人公としてどこか吸引力(魅力)もないとドラマ自体が成立しないということをおそらく分かった上で、完璧に演じ切るなんて。

この主人公の魅力は純粋さや悪意の無さだろうけど、それは鈍感さや思慮の足りなさにも直結する訳で。次回以降どうなっていくのか、無茶苦茶楽しみです。

U-NEXTにアッバス・キアロスタミ監督の映画が大量入荷していたので、未見だった初期作品【トラベラー】を視聴。人を騙したりお金を盗んだりまでして欲望を遂げようとする少年がほろ苦い結末を迎える話は、私には結構シビアに映ったのだが。

数年前に公開されていた出馬康成監督の【ギフテッド フリムンと乳売り女】がU-NEXTに来ていたので視聴。“フリムン”は沖縄の方言でバカものの意味で、その恋人がおっぱいパブで働いてるから“乳売り女”ということらしい。

景気がいいとは言えず鬱屈を抱える主人公達のコミュニティに、メディアを通すとなかなか見えづらい沖縄の一面が活写されているように思った。主人公の原嶋元久さんの口調は何となく濱田岳さんが思い出されて嫌いじゃなかった。

YouTubeに韓国映画の【下女】の字幕版があると聞き視聴。うーむこれは。

女にだらしない男が何故かモテモテで、起こる事件は全部女の性質に問題があるせいって、むっちゃ【黒い十人の女】を思い出したのだが。本作が1960年作で【黒い…】が1961年(昭和36年)と時代も一致。あの頃は、スタイルの評価はともかく、内容的にはこんな💩な映画も多かったような気がする。

昨年亡くなったチャドウィック・ボーズマンさん主演の【マ・レイニーのブラックボトム】をNetflixで視聴。実在したブルース歌手のマ・レイニーとそのバックバンドのブラックボトムを描いた戯曲の映画版。彼等の会話の中に黒人が舐めてきた辛酸の歴史が投影されている。

チャドウィック・ボーズマンさんの熱演に、アカデミー賞主演男優賞を取らせてあげたかったという下馬評が分かる気がした。しかしこれだけ完全に黒人寄りの映画だと、内心反発してこっそり他の人物に投票した白人のおじさんのアカデミー会員も、もしかすると少なくなかったのかもしれない。

【マ・レイニーのブラックボトム】(6/10)
原題:【Ma Rainey's Black Bottom】
監督:ジョージ・C・ウルフ
脚本:ルーベン・サンチャゴ=ハドソン
原作:オーガスト・ウィルソン
出演:ヴィオラ・デイヴィス、チャドウィック・ボーズマン、グリン・ターマン、他
製作国:アメリカ

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アマプラで今年の米国アカデミー賞にノミネートされていた【タイム】というドキュメンタリーを視聴。

しかしこれは Not for me だったかな~。銀行強盗を働いて服役している夫を待ち続けながら逞しく生きる奥さんは凄いと思うし、同じ罪状でも人種や財力で刑の重さが違うのは問題だと思うけど、それで強盗した罪がゼロにはならんだろうという疑問が払拭されなかったのだ。

【タイム】(4/10)
原題:【TIME】
監督:ギャレット・ブラッドリー
(ドキュメンタリー)
製作国:アメリカ

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Netflixで清水崇監督の【ホムンクルス】を視聴。

しかし、頭蓋骨に穴を空ける手術を受けた男に人間の深層心理が見えるようになる、といういかにも漫画的な設定を実写にして説得力を持たせるのは難しかったのかもしれない。う~む、綾野剛さんが救えなかった作品を初めて見てしまったかも。

U-NEXTに【はちどり】が入荷していたので視聴。

舞台は1994年の韓国・ソウル。一般家庭に暮らす中学生女子の心の動きが描かれているけれど、それより15年くらい前に日本の地方都市で暮らしていた自分が感じていた実感と重なる部分がかなりあった。かつて言葉にしづらかった微妙な部分が繊細に捉えられている良作だと思った。

【はちどり】(8/10)
原題:【벌새 (House of Hummingbird)】
監督・脚本:キム・ボラ
出演:パク・ジフ、キム・セビョク、チョン・インギ、イ・スンヨン、パク・スヨン、キル・ヘヨン、他
製作国:韓国

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U-NEXTに篠田正浩監督の【美しさと哀しみと】と【乾いた花】が入荷していたので視聴。篠田監督に限らず実は未見作だらけの監督さんってたくさんいらっしゃるなぁと改めて思った。(そういえば、意図的にしらみつぶしに見たのは黒澤明監督と大島渚監督くらいだったもんね。)

川端康成原作の【美しさと哀しみと】、なんと八千草薫さんと加賀まりこさんが恋愛する話じゃありませんか~!(主演のおじさんは最早狂言回しにしか見えない。)昭和的描写の限界を差し引いても、お二人の姿は耽美的すぎてドキドキした。篠田正浩監督作で最も好きな作品になったかもしれない。

対する【乾いた花】は、三年の刑期後に出所したヤクザの破滅願望を描いた作品なのだが、どうも乗れない。よく見てみると石原慎太郎原作となっていて、成程な~と。裕次郎御大の出演作以外のこの方原作の映画は、意図せずとも概してこんな反応になってしまう。

U-NEXTで【窮鼠はチーズの夢を見る】を視聴。ヘテロの恋愛しか理解できない人が無理矢理作った同性同士の恋愛の描写の限界を見せられることになるのでは、という予感が思った以上に当たりすぎてしまっていて、見続けるのが辛かった。

そもそも二人がちっとも愛し合っているように見えないんだもの……。主演のお二人は身体を張って頑張っているとは思うんだけど、恋愛映画で「頑張っている」という感想になってしまうのはもう致命的なのでは。

【窮鼠はチーズの夢を見る】(3/10)
監督:行定勲
脚本:堀泉杏
原作:水城せとな
出演:大倉忠義、成田凌、吉田志織、さとうほなみ、咲妃みゆ、小原徳子、他
製作国:日本

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アマプラに以前から気になっていた柴田啓佑監督の【ヤギ、おまえのせいだ】があったので視聴したところ、何か見たことあるような。調べてみたら、昨年の5月に開催されていた配信映画祭2020で【ひとまずすすめ】と共に視聴済みだった……。う~んすみません。でもそこはかとないユーモアや切なさがとても好きな作品です。

藤井直人監督の初期短編集3本や【幻肢】【光と血】【悪魔】、アマプラの【デイアンドナイト】をまとめて視聴。

デビューの2011年からこの頃までの藤井監督の作品は、観念的なエピソードが先行していてキャラクターの心情に少し寄り添いづらい気がするが、論旨を明快に表現しようとする姿勢が今の的確な表現力に繋がっているように思った。

藤井監督はこれらの映画の他にドラマなどもたくさん手掛けていらっしゃった模様。この仕事量はすごいなー。一時期の三池崇史監督を思い出してしまった。

U-NEXTで【ハルカの陶】を視聴。備前焼に挑戦する若い女性が主人公で、電通案件のご当地映画かと思ったら、原作が存在しているようだった。

内容は可もなく不可もなく手堅い無難な印象を受けたけど、当初若干無神経でもの知らずに描かれがちという若い女性のステレオタイプはもう要らないんじゃないかなぁとちょっと思った。

引き続きU-NEXTで【僕はイエス様が嫌い】を視聴。日本人が宗教的体験を描く映画には言いたいことがありすぎて身構えてしまうことが多いので、個人的にはこのタイトルじゃなくてもよかったのではないかと思った。しかも観念的な話とかじゃなくばっちり見えちゃってるしなー……。

しかし奥山大史監督の個人的体験に根ざした話だとのことなので否定もできまい。主人公の少年にとってイエス様が見えた日々は大切な友達と過ごした忘れがたい日々だったのだろう。その尊さは胸に沁みた。

U-NEXTで【ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方】というドキュメンタリーを視聴。

何もないカラカラの大地にいきなり沢山の動物を連れてきても、生態系はそんなに簡単に構築できないのでは…と思ったら案の定。でも、農場主達が次々降りかかる問題の1つ1つに向き合い解決に努力するうちに、いつしか生命が循環する自然農法の楽園が出現していた。その現象は単純に素晴らしいと思った。

U-NEXTで瀬々敬久監督の未見作【愛するとき、愛されるとき】を見たのだが……う~むこれは誰の気持ちにも全く入っていけなくてちょっと。

Netflixに岡本喜八監督作品が大量に来ていたため、未見の作品を集めて岡本喜八マラソンを敢行してみた。

Netflixでは【独立愚連隊】【江分利満氏の優雅な生活】【血と砂】【日本のいちばん長い日】【斬る】、アマプラでは【殺人狂時代】、U-NEXTでは【肉弾】【激動の昭和史 沖縄決戦】【ダイナマイトどんどん】【近頃なぜかチャールストン】【ジャズ大名】を視聴。(【大誘拐】以降は見たことがあった。)

どの作品にも多かれ少なかれ戦争なるものに対する監督の思い入れを感じたが、波長やテンポ感は作品によって自分に合う合わないがあった。(あと、戦場での娼婦の描き方は脳天気だなと思った。)

【日本のいちばん長い日】は原田眞人監督版を見たことがあり話が頭に入りやすかったが、【激動の昭和史 沖縄決戦】と共に東宝8.15シリーズという作品群に数えられるのだそうで、代表作とされるだけある迫力があった。

軍楽隊の少年兵たちが否応なく戦闘に駆り出される【血と砂】や、ある藩の悪政に立ち向かう若者たちを無宿者が助太刀する【斬る】、犯罪心理学者が殺し屋たちと対峙するブラックコメディ【殺人狂時代】なども印象に残った(仲代達矢さんがめちゃかっこよかった)。

が、予想外なことに、一番好きだったのは【ダイナマイトどんどん】だった!
舞台は戦後の小倉で、暴力団が抗争鎮圧のために警察主催の野球大会に強制参加させられるという荒唐無稽な話なのだか、高度成長期前のレトロな昭和の時代に満ち溢れる混沌としたエネルギーに何だか元気をもらえた。

豪華なオールスターキャストの中、紅一点の宮下順子さんの海千山千な色気や、若かりし北大路欣也さんのかっこよさなど見逃せないけど、何と言っても一本気な菅原文太さんが暴れ回る姿にスカッとした。あれ?もしかして自分、菅原文太さんのこと相当好きなのでは?というのは意外な発見だった。

U-NEXTの新規入荷作のリストを見ていて【フォクスター】【ガネーシャ マスター・オブ・ジャングル】【ようこそ、革命シネマへ】をジャケ買い視聴。

【フォクスター】は何とウクライナ製の、少年と犬型ナノボットが主人公のファンタジー映画で、ナノボットのフォクスター君の一部がCGで描かれている。ジュブナイルSFとして出色の出来だけど、ラストはそっちか~!とちょっとだけ残念だった。

【ガネーシャ マスター・オブ・ジャングル】はアメリカ人が監督したというインドのアクション映画で、ジャングルの象たちを守るため戦う獣医という新機軸。主人公のヴィドゥユト・ジャームワールさんはめっちゃかっこよかったが、アクションが中心になる後半は、個人的にはちょっと飽きちゃったかな。

【ようこそ、革命シネマへ】は去年、緊急事態宣言が発令された頃に公開されていたらしいドキュメンタリー。軍事独裁政権により長年表現の自由を奪われてきたスーダンの4人の映画人が母国で再会し、映画館を復活させようとする。こんな思いをしてまで映画を愛し、映画で何かを伝えようとする人達が存在しているということが、凄いことだと思った。

未見作をいろいろ視聴。
市川崑監督【股旅】、増村保造監督【音楽】【曾根崎心中】、若松孝二監督【天使の恍惚】、森谷司郎監督【赤頭巾ちゃん気をつけて】、新藤兼人監督【心】【絞殺】、大森一樹監督【風の歌を聴け】、村野鐵太郎監督【鬼の詩】、大林宣彦監督【廃市】など。

ついていけね~という価値観(主に女性観)の映画もいくつかあって、昔の映画の鑑賞には注意が必要で自然と本数も絞ってしまうのはこういうところだなと改めて感じたけど、昔の価値観や文化や風俗や言葉遣いがそのままパッケージされているのが面白いところでもあり、ある意味勉強になるなーと思った。

今回見た中では、村野鐵太郎監督の【鬼の詩】があまりにも面白くてびっくりした。天涯孤独の噺家が、ようやく結婚した恋女房とも死別し、常軌を逸したような芸風に傾倒していくという話。芸人の狂気って本来はこんなふうなことを指して言うのだろうなと思った。

ATG率がやけに高かったけど、もしかすると、ATGものがまとめて入荷されたタイミングだったのかもしれない。
しかし自分、大森一樹監督の【風の歌を聴け】と大林宣彦監督の【風の歌が聴きたい】を混同して覚えてしまっていたらしい。恥ずい。しかしこれ、タイトルだけ聞いたら紛らわしくないですか?

先日の岡本喜八マラソンの後、どういう流れだか、未見の高倉健作品が多いなと思い至り、高倉健祭りを開催してしまった。健さんはなにせ出演作品が多い(205本)のであくまでほんの一部なんだけど。

今回一番面白かったのは【昭和残侠伝】シリーズ。特に1作目。健さんご出演のヤクザものは、ヤクザとはいえ筋道を通した稼業を営む健さん所属の組が、悪徳ヤクザの組に苦しめられ、ついに堪忍袋の緒が切れて殴り込みをかけるというのが王道パターンなんだけど、

1作目は終戦後の時代背景を特に色濃く感じさせてくれるところがよかった。同シリーズでは【…唐獅子牡丹】【…血染の唐獅子】【…死んで貰います】なども見たけど、後になるほど様々な娯楽的要素が加わってくるので(それはそれで面白さがあるけど)、個人的には1作目のストレートさが特に好きだった。

ヤクザものでは他に【日本侠客伝】(1作目)、アマプラの【網走番外地】【…望郷編】【侠骨一代】などを視聴。(【関東緋桜一家】は昔見たことがある。)

石井輝男監督作では、【網走番外地】シリーズより、【花と嵐とギャング】【恋と太陽とギャング】【東京ギャング対香港ギャング】【ならず者】などが興味深かった。そういえば石井輝男監督の前期の作品って見たことがなかったと思い至り、こんな軽妙洒脱な演出をなさる方だったのか!とびっくりした。

降旗康男監督の【冬の華】【駅 STATION】【夜叉】【あ・うん】なども見たけど(【鉄道員(ぽっぽや)】以降の作品は見たことある)、この頃描かれていた健さん像、男性受けは良かったのかもしれないけど、個人的にはやっぱりあまり好きじゃないかもしれない。

他に見たのは【海峡】や【大いなる旅路】など。勝新太郎さんとの共演作【無宿 やどなし】はちょっとだらっとしていて、健さんとの共演作がこれ1本だったというのも仕方ないかなという感じがした。

これで以前見た作品と合わせて30数本くらいだけど、まだ全出演作の2割にも満たない。健さんすげーと改めて思った

田坂具隆監督の【土と兵隊】【五人の斥候兵】をアマプラで視聴……してみたものの、ずっと戦ってるなぁという印象に終始してしまった。これに亀井文夫監督の【戦ふ兵隊】の厭戦的な雰囲気を加えると実際の戦場の雰囲気が少し想像できるのかもしれない。

U-NEXTで、井ノ原快彦さん主演の【461個のおべんとう】、福田雄一監督の【新解釈・三國志】、伊藤沙莉さん主演の【タイトル、拒絶】などを視聴。【…おべんとう】は、心理描写などがサラッとし過ぎていてちょっと薄味な印象だったけど、イノッチがカッコよかったからいいか。【…三國志】は完全にNot for me。福田監督とその作風が好きな人達との間に需要と供給が成り立っているならそれでいいと思うけど、私はここまで来てもどうしても馴染めなかったから、今後はもう遠慮させて戴こうかと思う。【タイトル、拒絶】は、劇団□字ックの舞台作品を、劇団を主宰する山田佳奈氏が自ら監督して映画化したもの。デリヘルを舞台にした今まで見た作品の中でも特に救いがない感じ。クズ男成分が高いのもあるけど、苦しむ女性の姿を美化したりしてないからなのではないかと思う。

【461個のおべんとう】(5/10)
監督・脚本:兼重淳
共同脚本:清水匡
原作:渡辺俊美(TOKYO No.1 SOUL SET)
出演:井ノ原快彦、道枝駿佑(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、森七菜、若林時英、工藤遥、阿部純子、野間口徹、KREVA、やついいちろう、映美くらら、坂井真紀、倍賞千恵子、他
製作国:日本

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【新解釈・三國志】(3/10)
監督・脚本:福田雄一
出演:大泉洋、ムロツヨシ、橋本さとし、高橋努、橋本環奈、岩田剛典、渡辺直美、城田優、佐藤二朗、賀来賢人、山本美月、岡田健史、矢本悠馬、半海一晃、小栗旬、磯村優斗、阿部進之介、山田孝之、西田敏行、他
製作国:日本

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【タイトル、拒絶】(6/10)
監督・脚本:山田佳奈
出演:伊藤沙莉、恒松祐里、佐津川愛美、モトーラ世理奈、片岡礼子、でんでん、他
製作国:日本

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U-NEXTにゴダール関連の未見作がいろいろ来ていたので視聴。【イタリアにおける闘争】【ジェーンへの手紙】【プラウダ】【ブリティッシュサウンズ】はいかにも政治の季節のゴダールといった感じ。【ふたりのヌーヴェルヴァーグ ゴダールとトリュフォー】というドキュメンタリーは、最初は共闘していたゴダールとトリュフォーが、ゴダールの先鋭化によって決裂していく様が詳しく説明されていて勉強になった。ヴィム・ヴェンダース監督のドキュメンタリー【666号室】は、1982年のカンヌ映画祭期間中に著名な映画監督達に映画の未来について語ってもらったインタビュー集。ゴダールだけでなくファスビンダー、ヘルツォーク、アントニオーニからスピルバーグなどビッグネームが並ぶ中、ユルマズ・ギュネイ監督がトルコ当局から身柄の引き渡しを要求されていて潜伏先から出られず、録音された声だけが流されていたことが一番印象に残ってしまった。

U-NEXTで【燃ゆる女の肖像】を鑑賞。結婚が決まっている貴族の娘と、彼女の肖像画を描く女性画家の恋が描かれているが、基本的にハピエン厨の自分には感情移入度は低かった。

【燃ゆる女の肖像】(6/10)
原題:【Portrait de la jeune fille en feu】
監督・脚本:セリーヌ・シアマ
出演:ノエミ・メルラン、アデル・エネル、ルアナ・バイラミ、ヴァレリア・ゴリノ、他
製作国:フランス

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U-NEXTで【ウディ・アレン VS ミア・ファロー】を視聴。猿渡由紀氏の『ウディ・アレン追放』も読んだところなので、これはまた別稿にします。

CSのザ・シネマで放送した【夢の涯てまでも】の完全版を視聴。昔映画館で見た時、こりゃ出来損ないのダイジェスト版を見せられたと気づき、それからずっと完全版が見たかった。四半世紀以上かかってようやく巡り会えた。
見直してみて印象的だったのは、核戦争で世界が滅びるかもしれないという緊張感や絶望感をはらんだ世紀末の閉塞的な空気感。でも、今の若い人にはあの感覚は伝わりづらいかもしれないな。

2021年の7月から8月は、コロナの感染者数が爆上がりしている中でオリパラが強行され、あらゆるやる気が壊滅していたし、ワクチン接種も見通しが立たなかったので、とにかく家にこもって何もせずにだらだら過ごしてた。そんな時期に見た映画の感想を逐一丁寧に書くと負担が大きすぎるので、以下、箇条書きで覚え書き的に列挙します。
今後は、家で見た映画(主にながら見になる)はこんなふうに列挙しようかな。家では悪食上等で何でも気軽に見たいもんね。

U-NEXT視聴作品:

【パリのどこかで、あなたと】:セドリック・クラピッシュ監督作。【ワンダーランド駅で】みたいな恋愛までの前日譚。
【RED】:Not for meだった……。
【メロディ・タイム】【メイク・マイン・ミュージック】:ディズニーの【ファンタジア】路線の作品。ただこのケースでは知名度とクオリティが比例してるかも。
【トム・ジョーンズの華麗な冒険】:トニー・リチャードソン監督作。
【できごと】:ジョセフ・ロージー監督作。古今東西、若い女の子の尻を追っかけるおっさんの話はキモい。
【ずべ公番長 夢は夜ひらく】:はみ出し者の女性達の描写が案外グッと来た。
【風たちの午後】:そういえば未見だった矢崎仁司監督のデビュー作。
【ニューヨーク1997】:アイパッチのカート・ラッセル主演のジョン・カーペンター監督作。
【第十七捕虜収容所】:ビリー・ワイルダー監督作。
【素晴らしき哉、人生】:フランク・キャプラ監督版。
【卒業】:何と今まで未見だったのだが、この年になって初見でよかったのかも。今なら馬鹿だねーと生温かい目で見ることができるが、昔だと腹立っただけだったかもしれん。
【日のあたる場所】:エリザベス・テイラー×モンゴメリー・クリフト主演作。
【離愁】:第二次大戦中のフランスから貨物列車で逃亡するユダヤ人女性と既婚男性の束の間の恋の話。
【召使】:ジョセフ・ロージー監督作。有能な召使が貴族の男を支配していく様はホモセクシャル的解釈が一番しっくりくるかも。
【マーフィの戦い】:ピーター・オトゥールはこんなおっさん臭い役もやっていたのか。
【雨のしのび逢い】:ジャンヌ・モロー×ジャン・ポール・ベルモンドによるマルグリッド・デュラス的不倫の世界。
【シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢】:ドキュメンタリーではない。
【二つの世界の男】:冷戦下のベルリンが舞台のキャロル・リード監督作。
【嘆きのテレーズ】:マルセル・カルネ監督作。傲慢な姑と夫に抑圧される妻が不倫の果てに×××して破滅するという身も蓋もない話。
【追悼のメロディ】:殺人の濡れ衣を着せられたジャン・ポール・ベルモンドが出獄後に真犯人を捜して復讐する話。
【恋ひとすじに】:貴族のマダムと不倫関係にあるアラン・ドロンが若い町娘と恋仲になる話で、筋書きだけ書くとう~ん…となる。
【帰らざる夜明け】:これもアラン・ドロン主演。農家の未亡人の下に転がり込んだ男が実は犯罪者だった、てな話。
【ハピネス】:永瀬正敏さん×SABU監督。変なヘルメットを被ると幸せだった時のことを思い出す、という謎設定。
【修道女】:ジャック・リヴェット監督作。
【夏、至るころ】:池田エライザさん監督作。もの凄く斬新な作風とかではないにしろ、この人は本当に多才な人なのだなぁと感心した。
【マイ・フーリッシュ・ハート】:オランダ映画って珍しいなと思ったら、チェット・ベイカーってアムステルダムで死んだのか。
【謎の天才画家 ヒエロニムス・ボス】:ドキュメンタリー。
【ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男】:ドキュメンタリー。
【サウナのあるところ】:サウナドキュメンタリー。それぞれの人生の苦しさを吐露するおじさん達を延々見続けるのは思ったより苦行だった…。
【イーディ、83歳 はじめての山登り】:もっと明るいコメディ的な作風を予想していたら、まじめなイギリス映画だった。
【アカシアの通る道】:トラック運転手が赤ちゃん連れのシングルマザーと旅をするというアルゼンチン映画。
【7s】:藤井道人監督が描く自主制作映画の舞台裏。
【里見八犬伝】:深作欣二監督作。真田広之さんも薬師丸ひろ子さんも若いなぁ。
【次郎長三国志】:マキノ雅弘監督版。
【羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来】(日本語吹替版):ロシャオヘイ可愛かった。
【ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画】:【パッドマン】(未見)と同製作チームによるインドの火星探査計画の映画化。【ドリーム】から黒人差別問題を除いたような話とイメージすると近いかも。
【ふたりの女】:戦争に翻弄される母娘を描いたヴィットリオ・デ・シーカ監督作。
【わが町】:川島雄三監督作。
【ロストパラダイス・イン・トーキョー】:みんな1回はこういうのを作るのかな?といった感じの白石和彌監督のデビュー作。

【夏、至るころ】(6/10)
監督・原案:池田エライザ
脚本:下田悠子
出演:倉悠貴、石内呂依、さいとうなり、安部賢一、杉野希妃、高良健吾、リリー・フランキー、原日出子、他
製作国:日本

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【羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来】(6/10)
原題:【罗小黑战记】
監督:MTJJ(木頭)
脚本:彭可欣、風息神泪
(アニメーション)
製作国:中国

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【ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画】(6/10)
原題:【Mission Mangal】
監督:ジャガン・シャクティ
脚本:R・バールキ
出演:ヴィディア・バラン、アクシャイ・クマール、他
製作国:インド

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アマプラ視聴作品:

【片腕マシンガール】:ずっと見損ねていたのでやっと見れてよかった。
【猟人日記】:女猟りにうつつを抜かす既婚男性が連続殺人事件に巻き込まれる。ついつい画面に引き込まれた中平康監督作。現代人の荒涼とした心象風景を冷徹に描写した傑作なのでは。
【「エロ事師たち」より 人類学入門】:小沢昭一さんと坂本スミ子さんの夫婦の生々しさ。今まで見た今村昌平監督作品の中で一番リアルに感じた作品かもしれない。
【すべてが狂ってる】:鈴木清順監督もこんな根暗な青春映画みたいなの作ってたのか。
【ファーストラヴ】:殺人事件の話から北川景子さん×中村倫也さんの過去のトラウマ話にシフトしていくのが案外面白かった。

【ファーストラヴ】(6/10)
監督:堤幸彦
脚本:浅野妙子
原作:島本理生
出演:北川景子、中村倫也、芳根京子、窪塚洋介、板尾創路、木村佳乃、石田法嗣、清原翔、高岡早紀、他
製作国:日本

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TSUTAYA DISCASのDVDレンタル、毎月サブスクをするほどじゃないんだよな……と躊躇していたのだが、よくよく探すと月額0円でその都度課金のコースもあるじゃない!どうしてこんなに目立たないようにしているの?やることがセコい……。でも、ちょっと古めの意外な映画がアーカイブされてたりするから、配信されていない昔の映画を探すにはいいかもしれない。

TSUTAYA DISCAS視聴作品:

【花咲ける騎士道】:ジェラール・フィリップのファンファン・ラ・チューリップ!
【パローレ】:見逃したことをずっと後悔していたくりぃむしちゅー×前田哲監督の怪作。
【フライング☆ラビッツ】:これも見逃したことを後悔していた瀬々敬久監督作。その後廃部にされたJALラビッツは、今は新潟のチームに引き継がれているらしい。
【白鯨】:ジョン・ヒューストン監督×グレゴリー・ペック版の王道ぶりに満足。最近映画化されたやつ酷かったからさぁ……。
【風の歌が聴きたい】:先日【風の歌を聴け】と間違えた大林宣彦監督作。聴覚障害者夫婦の夫がトライアスロンに挑むの物語だけど、夫婦観がちょっと古くさいのは仕方ないのかな~。
【アエイオウ (ウタモノガタリ~CINEMA FIGHTERS project)】:安藤桃子監督の短編。

U-NEXT視聴作品:

【<片隅>たちと生きる 監督・片渕須直の仕事】:これはmust seeだった。
【オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁】:日中合作。役所広司さんはカッコいいけれど、ストーリーがちょっと雑でもったいない。
【さらば愛しきアウトロー】:ロバート・レッドフォード引退記念作品。
【ミスター・ロン】:SABU監督作。日本の田舎町の人々に馴染む殺し屋チャン・ツェンさんの佇まいは大正義。ただ、ストーリーを動かすために女性を不幸にする癖はどの監督さんももうやめて欲しい。
【あなた、その川を渡らないで】:何故か見ることを躊躇していた韓国のドキュメンタリー。この老夫婦の仲睦まじさがとにかく可愛いらしかった。
【ビーイング・チャーリー】:ロブ・ライナー監督の息子さんの実体験が元になっているとか。アメリカではドラッグのリハビリ施設ってポピュラーなのかなぁ。
【ビール・ストリートの恋人たち】:【ムーンライト】チームの新作。年若い女の子が冤罪で捕まった恋人を助けようと奔走する。
【剣の舞 我が心の旋律】:ハチャトゥリアンのアルメニア人としてのルーツに初めて思い至った。これだけ民族色の強い音楽を創っても国家に潰されなったというのはどえらい天才ぶりだったんだろうな。
【アンガー・ミー】:ケネス・アンガー監督についてのドキュメンタリー。彼がジョナス・メカス監督と親交があったのが意外だった。
【SNS 少女たちの10日間】:成人女性にネット上で12歳の少女を演じてもらうという実験を行ったチェコのドキュメンタリー。この心が寒くなる実験結果は全世界で共有すべきだ。
【いざなぎ暮れた。】:毎熊克哉さんと武田梨奈さんの蓮っ葉なカップルと島根の港町の風情が妙に合う。この感じ、かなり好きかもしれない。
【羊飼いと風船】:素朴さを売りにするような草原の牧畜民系の映画はもういいかな……と食わず嫌いだったのだが、中身はびっくりするくらい現代的な問題に翻弄される夫婦の話だった。本作の舞台はチベットだけど、もうこの世のどこにも現代社会の一部であることから逃れられる地域など存在していないのではなかろうか。
【旅立つ息子へ】:自閉症の息子を支援施設に送ることを躊躇する父親の物語。ちょっと特殊なセッティングだけど、子離れできない父親の話って初めて見たかもしれない。
【RAW 少女のめざめ】:今年カンヌでパルムドールを受賞したジュリア・デュクルノー監督の旧作。女性の肉欲の目覚めを別の肉欲(カニバリズム)とダイレクトに結びつけるなんて随分斬新なんでない?
【恐怖のメロディ】【白い肌の異常な夜】【荒野のストレンジャー】:クリント・イーストウッド主演の旧作。【恐怖の…】はワンナイトスタンドを楽しもうとした相手の思い込みが激しくてストーキングを受ける話。【白い肌…】は南北戦争時代に森の中の女学園に負傷した兵隊が迷い込む話(ソフィア・コッポラ監督がリメイクした)。【荒野のストレンジャー】は西部劇。どれもこれも自己中のクソ男の話ばかりでげんなりした。
【田園の守り人たち】:【神々と男たち】のグザヴィエ・ボーヴォワ監督作。「農場を守り続けた女たちの物語」なんて美化したコピー付けてんじゃねーよ!真っ当に生きようと頑張ってる女性を孤児だからって排除する話じゃん!
【クイーンズ・オブ・フィールド】:伝統はあるけど中身はカツカツのサッカーチームのメンバー全員が出場停止になってしまい、代わりに町の女性達が選手として戦おうとする、という結構無茶な話。でも、男って、女って、というステレオタイプな思い込みが軽やかに乗り越えられていくのが楽しい。
【ソロモンの偽証】:公開当時、2部構成に腹が立って見に行かなかった成島出監督作。脇をベテランで固め、本筋には若手有望株の俳優さんを大挙起用しているようだけど、清水尋也さんが重要な役で出てるじゃないの!
【ソン・ランの響き】:ソン・ランはベトナムの民族楽器なのだそう。「ボーイ・ミーツ・ボーイ」という触れ込みだけど、それほどでも…という感じだった。
【こんなにも君が好きで goodbye mother】:こっちはがっつりBLっぽい。故郷ベトナムの保守的な結婚観に直面して苦悩する男性カップルの誠実な描写に好感が持てた。
【マイルス・デイヴィス クールの誕生】:マイルス・デイヴィスのドキュメンタリー。彼の内面に迫ろうというよりは、バイオグラフィーを外側からなぞっている印象だった。

【アンガー・ミー】(6/10)
原題:【Anger Me】
監督:エリオ・ジェルミーニ
(ドキュメンタリー)
出演:ケネス・アンガー、ジョナス・メカス、他
製作国:カナダ

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【SNS 少女たちの10日間】(8/10)
原題:【V síti】
監督:バーラ・ハルポヴァー、ヴィート・クルサーク
(ドキュメンタリー)
製作国:チェコ

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【羊飼いと風船】(9/10)
原題:【气球 (Balloon)】
監督・脚本:ペマ・ツェテン
出演:ソナム・ワンモ、ジンパ、ヤンシクツォ、他
製作国:中国

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【旅立つ息子へ】(7/10)
原題:【Hine Anachnu (Here We Are)】
監督:ニル・ベルグマン
脚本:ダナ・イディシス
出演:シャイ・アヴィヴィ、ノアム・インベル、他
製作国:イスラエル/イタリア

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【クイーンズ・オブ・フィールド】(6/10)
原題:【Une belle équipe (Queens of the Field)】
監督・脚本:モハメド・ハムディ
共同脚本:アラン=ミシェル・ブラン
出演:カド・メラッド、セリーヌ・サレット、サブリナ・ウアザニ、コリン・フランコ、他
製作国:フランス

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Netflixは値上がりしたし、もともと海外のドラマにあまり興味が無いし、キュレーターさんと感覚が合ってないと思うことが多々あるし、U-NEXTとアマプラを見ているだけで結構事足りるし、どうしても見たい作品が出てくればその月だけ入ればいいし、ということで、一旦退会することにした。その代わり、最近始まったJAIHOに加入。これは国内外のアートハウス系寄りの作品を期限付きで公開する月額770円の配信サービス。作品数は少ないものの、結構レアな作品も含まれているし、作品も順次入れ替わっていくので、今のところかなり面白い。群雄割拠の配信界で今後どうなっていくかは分からないけれど。

JAIHO視聴作品:

【24フレームズ】:アッバス・キアロスタミ監督の遺作。どうして劇場公開されないのかと思っていたけど、明確なストーリーが無く、24種類の絵画のようなイメージ映像を延々と流している実験映画的な作品なので、確かに一般公開は難しいかもしれない。
【プティ・カンカン】:ブリュノ・デュモン監督によるフランスの田舎の悪ガキ達の物語。上手く言えないけど、いい意味で定型の物語との乖離を感じる。
【香港ノクターン(香江花月夜)】:【嵐を呼ぶ男】など多くの娯楽作を監督した井上梅次監督が香港のショウ・ブラザーズに招聘されていた頃の作品群の1本。
【アルプス】:【聖なる鹿殺し】【女王陛下のお気に入り】のヨルゴス・ランティモス監督の日本未公開作。こ、これはどう解釈すればいいのかな……。
【アワ・ボディ】:【金子文子と朴烈】のチェ・ヒソさん主演の韓国映画。ランニングで体をシェイプアップすることで自尊心を高めていく女性の姿が麗しい。
【梁山泊と祝英台】:1963年の香港のリー・ハンシャン監督版。中華圏ではポピュラーな悲恋の説話で何度も映画化されているとか。
【私の血に流れる血】:【愛の勝利を ムッソリーニを愛した女】のマルコ・ベロッキオ監督監督作。前半は17世紀の魔女裁判の話で、後半は現代のヴァンパイア譚。2つの話の繋がりが分かりにくくて検索しまくったんだけど、結局、各自が好きに考えていいらしい。

【鬼滅の刃 無限列車編】の地上波初放送を鑑賞。もちろん、テレビシリーズのクオリティそのままに大変面白かったけれど、興収400億円を超えるヒットになったと聞くと、作品そのもののポテンシャル以上に、様々な力学が重なって大きな波が起こったのではないかと思われた。例えば、少し古風なところもある作風が子供たちだけでなく親や祖父母の世代も含めた老若男女に遡及したことや、映画館で騒がない日本の人には映画は比較的安全な娯楽だと分かり、コロナの自粛疲れで倦んでいた人々に手頃な外出の機会になったことなど。何はともあれ、このヒットが無ければ日本全国の多くの映画館はもっともっと大変なことになっていたはずで、誰もが敬意を払わずにはいられない煉獄さんのお人柄には心から感謝したいと思う。

【鬼滅の刃 無限列車編】(8/10)
監督:外崎春雄
脚本:ufotable
原作:吾峠呼世晴
(アニメーション)
出演:花江夏樹、鬼頭明里、下野紘、松岡禎丞、日野聡、平川大輔、石田彰、他
製作国:日本

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ふと思いついて、ずっと未見だった『ふしぎの海のナディア』と『トップをねらえ!』をU-NEXTで視聴。こういうところが評価されたのか、という面が少し分かった気がしたが、先人の作品のパロディを内輪で喜んでいる感じはあまり好きではないので、当時は見ようと思わなかったのも仕方ないかなとも思った。

その勢いで『かくしごと』も視聴。これ、ものすごく好きー!絵柄的にアニメにしやすそうというのもあるけど、クスクス笑ってほっこりしている間に少しずつタイトルの意味が明らかになってきて、最後に回収されるという完璧な構成ではあるまいか。エンディングテーマに大滝詠一氏の「君は天然色」を使っているのはずる~い!と一瞬思ったけど、よく考えてみたら、世代を超えて伝えたいようなエバーグリーンのマスターピースは、その時々に合った形で何度も世に問う方がいいのかもしれない。

その勢いで更に、WOWOW製作の柴咲コウさん主演の連続ドラマ『坂の途中の家』を視聴。母親が幼い子供を殺した事件の陪審員になった主婦が、犯人と自分を重ね合わせるうちに、自分がいる環境の閉塞性を自覚するようになるという話。彼女に限らず、裁判に関わる数人の女性達が日々周囲の人々から投げかけられる言葉や態度は、よくぞここまで事例を集めたというようなモラハラの見本市で、心から嫌な気持ちになり、このまま何かの教材にできそうだと思った。こんな終わり方でいいの?という疑問は多少あるものの(自らのモラハラぶりに無自覚だった男がそんなに簡単に改心するとは思えないじゃん……)、よくぞこの分断に明確な形を与えて世に問いかけて下さった、と感謝したい気持ちになった。

U-NEXT視聴作品:

【衝動 世界で唯一のダンサオーラ】:若くしてスペイン国家舞踊賞を受賞したフラメンコ界のニュースター、ロシオ・モリーナのドキュメンタリー。フラメンコというよりコンテンポラリーダンスと融合した新しい表現といった色合いが強く、個人的にはあまり好みではなかったかな。
【THE CROSSING 香港と大陸をまたぐ少女】:中国本土から最も香港に近い深圳と香港を越境通学する女子高生を描いた中国映画。もっと地勢学的な面白さが出ているかと思ったけど、家族の愛に飢えた女子高生が道を踏み外しそうになるというストーリーは世界のどこにであるありふれた感じがした。しかし北海道旅行というのは香港や中国の人にそれほど人気なのかな。
【アフリカン・ウエディング】:白人男性が黒人女性と様々な壁を乗り越えて結婚しようとする南アフリカ映画。
【アダム:ゲイタから来た少年】:アルビノ(先天性白皮症)の子供達の苦難を描くタンザニアとカナダの合作ドキュメンタリー。肌の白い子供達の体の一部が呪術に使われるため狙われるという話は聞いたことがあったが、その実態は想像以上にエグかった……。これは国際的に何とかしなければならない問題に違いない。
【ホッタラケの島 遥と魔法の鏡】:2009年のフルCG映画。絵はきれいだけどストーリーはもう少し工夫が必要だったのでは。
【アヴリルと奇妙な世界】:フランスのアニメ映画。ストーリーも地味で暗めの絵柄も残念ながらnot for meだった。
【昼も夜も】:塩田明彦監督の中編映画。ヒロインの設定があまりピンと来なかった。
【薔薇のスタビスキー】:ジャン・ポール・ベルモンドが実在した詐欺師を演じるアラン・レネ監督作。
【この庭に死す】:ルイス・ブニュエル監督のメキシコ時代の作品。メキシコ時代にもカラー作品があったのかとアホなことに驚く。

大阪バイオレンス3番勝負(【大阪外道】【大阪蛇道】【コントロール・オブ・バイオレンス】)の石原貴洋監督の作品がU-NEXTやアマプラにたくさん入っているを見つけ、喜び勇んで視聴。
サイコパスな人達が奇妙なリストに載せられる【RED LIST レッドリスト】の狂気を孕んだ気持ち悪さや、人を安楽死させるカプセルを売る男を描く【RED CAPSULE レッドカプセル】のハードボイルドと、おばあちゃんが所有するボロアパートの家賃の取り立てに精を出す小学生を描く【大阪少女】の『じゃりン子チエ』的なユーモア(でもちょっとバイオレンス風味)がどうして両立するのか、ホント不思議だ。園子温さんや坂口拓さんとのコラボ【RED BLADE レッドブレイド】(これのみアマプラで視聴)は一昔前によくあったB級女性アクションの趣きでちょっと毛色が違っていたが、【大阪闇金】【大阪闇金2】は、柾木玲弥さん、榊原徹士さん、朝井大智さんといった若手の新鮮さと超ベテランの中野英雄さんとの絡みが実にいい味を出していて、大阪金融道ものの新たな展開としてもっとメジャーになって欲しいなぁと思った。
噛めば噛むほど味がある。うーむ、すっかり石原貴洋監督の大ファンになってしまったじゃないの。

あっしまった。【大阪闇金】は今年劇場公開されていた。

【大阪闇金】(8/10)
監督・原案:石原貴洋
脚本:松平章全
出演:柾木玲弥、中野英雄、榊原徹士、朝井大智、兒玉遥、舘昌美、中山こころ、橘さり、川﨑健太、木田佳介、虎牙光揮、海道力也、林海象、他
製作国:日本

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イタリアのグァルティエロ・ヤコペッティ監督のモンド映画【世界残酷物語】【さらばアフリカ】を興味本位で視聴。どこが「やらせ」かそうでないか考えながら見る以外に楽しみようがないじゃないか。検索しているとシマフィルムの【太秦ヤコペッティ】が候補に出てきて笑った。

若くして亡くなったチャドウィック・ボーズマンを抑えてアンソニー・ホプキンスがアカデミー賞主演男優賞を掻っ攫ったことで話題を集めた【ファーザー】を視聴。相手を威圧して優位に立つことで人生を渡ってきた人には、認知症になるという老後はより辛いものになるのかもしれないと思わされた。アンソニー・ホプキンスは噂通りに圧巻で、これは彼に賞が行ってしまうのもやむを得ないと思った。

【ファーザー】(8/10)
原題:【The Father】
監督・脚本:フロリアン・ゼレール
共同脚本:クリストファー・ハンプトン
出演:アンソニー・ホプキンス、オリヴィア・コールマン、マーク・ゲイティス、イモージェン・プーツ、ルーファス・シーウェル、オリヴィア・ウィリアムズ、アイーシャー・ダルカール、他
製作国:イギリス/フランス

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引き続きU-NEXTを視聴:

【霊的ボリシェヴィキ】:【リング】【女優霊】などの脚本を手掛けてきた高橋洋氏の監督作。ボ、ボリシェヴィキ?これはホラー?というよりオカルトなの?全く見たことないタイプの作品だなぁとは思った。
【非行少女ヨーコ】:降旗康男監督の初監督作品。時代的なものなんだろうけど、女の子の扱いがあんまりだ……。
【リボルバー】:沢田研二さんが拳銃を奪われた警察官を演じる藤田敏八監督作。男としてあまりにもだらしない沢田さんに全く共感できないのが逆に新鮮かも。
【ジャッカルの日】 :ド・ゴール大統領の暗殺を依頼される殺し屋とフランス警察との攻防を描いたフレッド・ジンネマン監督作品。変に盛り上げたりしない淡々としたシンプルな描き方が古さを感じさせない。
【黄金の七人】:イタリアの著名な泥棒コメディ。でも美女キャラの平坦さが今となっては全然面白く映らないような。
【シアター・プノンペン】:クメール・ルージュに運命を翻弄された女優の娘が母の足跡を知ろうとするカンボジア映画。確か岩波ホールで公開されてた。
【Viva!公務員】:以前イタリア映画の特集で上映していた1本。ヨーロッパって何故か、無知すぎて傲岸不遜だけどなぜか自信だけはたっぷりな主人公が結局大成功してしまうコメディが時々あるよね……。
【日々と雲行き】:上記と同じイタリア映画の特集の1本だけど、こちらは打って変わってシリアスで、友人に会社を乗っ取られ失業した男がなかなか次の仕事に行き着けない話。そうなのよ…そうそううまくいくもんじゃないんだよね…ううぅ…もの凄く身につまされた。
【マフィアは夏にしか殺らない】:同上のイタリア映画の特集の1本。パレルモで育った男の子が主人公のコメディっぽい作風なんだけど、1992年までのパレルモってマフィアが要人をそんなにカジュアルに殺してたの……?イタリア、血生臭すぎて恐すぎでしょ……日本のヤクザだってそこまで大っぴらじゃなかったよ。
【ヒューマン・ハイウェイ】:ニール・ヤングが映画を監督したことがあるなんて知らなかった!作風はジム・ジャームッシュからストーリーテリング力を引っこ抜いたような感じかな……。

オリヴィエ・アサイヤス監督の未見作【冷たい水】と【パーソナル・ショッパー】を見つけたのでそれぞれU-NEXTとアマプラで視聴。【冷たい水】は思春期のザラついた感覚を描いているということだけど、私のようなババアが見ると、それがどうした、となりがち。【パーソナル・ショッパー】は……うわぁ何だコレ。双子の兄を亡くしたという女性が霊を見たり、霊かと思ったら違ってたり。しかし、彼女が「パーソナル・ショッパー」(セレブの服やアクセサリーの買物を代行する仕事)である必然性は何?若い女性のアイデンティティの不確かさを描いているということなのだが、謎成分が多すぎて……まぁ逆に、印象に残るといえば残るかもしれないが。

武田梨奈さんの出演作を多く見逃していたのでまとめて視聴。(【進撃の巨人】はおそらく今後も見ないことでしょう。)【ボクはボク、クジラはクジラで、泳いでいる。】は和歌山県の「太地町立くじらの博物館」を舞台にしたご当地映画。武田さんの役の性格づけにはちょっと無理矢理感が否めないような。【世界でいちばん長い写真】は、高杉真宙さん演じる引っ込み思案な高校生男子が、パノラマ写真を撮ることにハマって変わっていく話。今回見た映画では一番好きで、高校生らを見守る姉御的な役柄の武田さんが新鮮だった。【DRAGON BLACK】の武田さんはあまりにもチョイ役で残念。【三十路女はロマンチックな夢を見るか?】は、30代になることをそこまで思い悩む女性という設定は今時あまりに古くさいんじゃないの?というそもそもの部分で引っかかってしまった。『ヘヤチョウ』『遺留捜査』のドラマ出演作は、それぞれなかなか重要な役でよかった。

U-NEXTで1年以内の劇場公開作を多く見たのでまとめて感想を。

【アンモナイトの目覚め】:メアリー・アニングという実在の女性古生物学者をモチーフにした物語。彼女が裕福な既婚女性と知り合って恋愛関係になるというのは全くの創作らしいのだが、メアリー役のケイト・ウィンスレットさんらの熱演もあり面白かった。
【海辺の家族たち】:【マルセイユの恋】【幼なじみ】【キリマンジャロの雪】のロベール・ゲディギャン監督作。父が倒れたためきょうだい3人がマルセイユ近郊の故郷の町に帰ってくるという話なのだが、フランスの家族のリユニオンものだと、正直、先年見たセドリック・クラピッシュ監督の【おかえり、ブルゴーニュへ】の方が好きだったかな。(そういえばあちらも3人きょうだいの話だった。)
【サンドラの小さな家】:DVの夫から逃れた女性が、小さな子供を抱えながら自分の手で家を建てようと奮闘する物語。絶句するような出来事も起こるけど、主人公が周囲からの協力を得ながら自分の人生を再建しようと頑張る姿は胸熱だった。今回見た映画の中では特に人様にお勧めしたい。
【ストレイ・ドッグ】:カリン・クサマ監督作で、半分世捨て人のような鼻つまみ者の女性刑事が、過去にやらかした出来事の落とし前をつけようとする物語。生来の美しさを完全封印したニコール・キッドマンさんのやさぐれっぷりに、彼女の熱意が窺える。その出来事というのが結構なことなのでそりゃお前よう……となってしまうが、娘のことだけは何とかしたいと願いつつ空回りする彼女の姿が切なかった。

【アンモナイトの目覚め】(7/10)
原題:【Ammonite】
監督・脚本:フランシス・リー
出演:ケイト・ウィンスレット、シアーシャ・ローナン、フィオナ・ショウ、ジェマ・ジョーンズ、アレック・セカレアヌ、ジェームズ・マッカードル、他
製作国:イギリス/オーストラリア/アメリカ

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【海辺の家族たち】(5/10)
原題:【La Villa (The House by the Sea)】
監督・脚本:ロベール・ゲディギャン
出演:アリアンヌ・アスカリッド、ジャン=ピエール・ダルッサン、ジェラール・メイラン、ジャック・ブーデ、アナイス・ドゥムースティエ、ロバンソン・ステヴナン、他
製作国:フランス

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【サンドラの小さな家】(8/10)
原題:【Herself】
監督:フィリダ・ロイド
協同脚本:マルコム・キャンベル
脚本・出演:クレア・ダン
出演:ハリエット・ウォルター、コンリース・ヒル、他
製作国:アイルランド/イギリス

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【ストレイ・ドッグ】(6/10)
原題:【Destroyer】
監督:カリン・クサマ
脚本:フィル・ヘイ、マット・マンフレディ
出演:ニコール・キッドマン、トビー・ケベル、タチアナ・マズラニー、セバスチャン・スタン、他
製作国:アメリカ

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【きまじめ楽隊のぼんやり戦争】:何か正体の分からないものと理由も知らず戦っている人々の寓意的な物語。タイトルが反映している極めてきまじめな作風ゆえ、ちょっと気持ちが入りづらかったかもしれない。
【ゾッキ】:竹中直人さん、山田孝之さん、齊藤工さんが監督を務めた作品。原作の味をどれだけ反映しているかは分からないが、ものすごく大それた事件が起こったりする訳ではなくて、日常の延長線上の出来事が拾い集められている感じ。見る側に強い感情を呼び起こすというよりは、まず何よりも自分達が映画作りを楽しむことを優先しているように見えた。
【無頼】:井筒和幸監督作で、敗戦後から高度成長期を経たバブル崩壊後までを生きたあるヤクザのクロニクル。でも、【ヤクザと家族 The Family】を観てしまった後では、ヤクザをこのような描き方で描くことにはもう限界があるのではないかと思ってしまった。
【詩人の恋】:ヤン・イクチュンさん主演の韓国映画。中身はミリしらだったので、詩人が恋する相手が年下の男の子だったのにびっくりした。あまり誰からも歓迎されない思いを抱える苦悩や、長年自分を支えてくれた妻との葛藤などが生々しかった果ての、この着地点にはう~んと唸ってしまった。救いは無くても人生は続いてしまうなんて、なんと残酷なことか。

【きまじめ楽隊のぼんやり戦争】(5/10)
監督・脚本:池田暁
出演:前原滉、今野浩喜、中島広稀、清水尚弥、橋本マナミ、矢部太郎、片桐はいり、嶋田久作、きたろう、石橋蓮司、他
製作国:日本

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【ゾッキ】(5/10)
監督:竹中直人、山田孝之、齊藤工
脚本:倉持裕
原作:大橋裕之
出演:吉岡里帆、鈴木福、満島真之介、柳ゆり菜、南沙良、安藤政信、ピエール瀧、森優作、九条ジョー(コウテイ)、木竜麻生、倖田來未、竹原ピストル、潤浩、松井玲奈、渡辺佑太朗、石坂浩二、松田龍平、國村隼、他
製作国:日本

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【無頼】(6/10)
監督・脚本:井筒和幸
共同脚本:佐野宜志、都築直飛
出演:松本利夫(EXILE)、柳ゆり菜、中村達也、ラサール石井、小木茂光、升毅、木下ほうか、他
製作国:日本

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【詩人の恋】(7/10)
原題:【시인의 사랑】
監督・脚本:キム・ヤンヒ
出演:ヤン・イクチュン、チョン・ヘジン、チョン・ガラム、キム・ソンギュン、他
製作国:韓国

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ちょっといろいろ煮詰まってしまったため、『モブサイコ100』を2期まで一気見。一見地味だけど最強超能力者の中学生・影山茂夫(モブ)君と、うさんくさい霊能詐欺師だけど大人の良識でモブ君を支える霊幻新隆(れいげんあらたか)師匠のコンビが面白い。有り余る力の扱い方や慎ましい性格とのギャップに思い悩む主人公というのは、これまでにない新機軸のヒーロー像だなと思った。

U-NEXT視聴作品:

【ファブリックの女王】:マリメッコの創業者アルミ・ラティア氏を描いた物語。劇中劇などを用いた斬新な作風もさることながら、ラティア氏の人生の波瀾万丈ぶりに驚く。何これ、めっちゃ面白い!
【ジョージア、ワインが生まれたところ】:世界最古のワイン生産地と言われるジョージアでクヴェヴリ製法(素焼きの壺を土中に埋めて固有種の葡萄を野生酵母で発酵させる製法)を守ってきた人々のドキュメンタリー。ワインは文化であり、文化を守り続けるのはどの国でも大変なことなのだなと思った。
【二郎は寿司の夢を見る】:銀座の有名な鮨店「すきやばし次郎」店主の小野二郎氏のドキュメンタリー。食べ物系のドキュメンタリーはどうしても内容が漫然とするところはあるよね……。そういえばどうして店名が「二郎」じゃないのか?と思い検索してみたら、「次郎」の方が字面がかっこいいからだって。
【丘】:ショーン・コネリーがイギリスの陸軍刑務所に収容された囚人兵を演じるシドニー・ルメット監督作。まぁ古今東西、軍隊ってろくなもんじゃないわよね。
【レッスン!】:ニューヨークのスラム街の荒廃した高校でソーシャルダンスを教えるダンサーをアントニオ・バンデラスが演じる15年程前の映画。バンちゃんはカッコよかったけどお話はイマイチだったかな。
【結婚演出家】:映画監督が奇妙な人々と関わり結婚式の演出を依頼される。マルコ・ベロッキオ監督作には不思議なまったり感があるなぁ。
【荒野に生きる】:西部劇はやっぱりカラキシアカン……。
【パフォーマンス/青春の罠】:主人公のチンピラが関わり合いを持つ退廃的なロック・スターをミック・ジャガーが演じる。ニコラス・ローグ監督がサイケデリックを解釈するとこうなるのか?
【ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ】:建築家アイリーン・グレイは傑作とされるヴィラ「E1027」を手掛けるもル・コルビュジエに手柄を横取りされかける。最近見た考古学者のメアリー・アニングの映画といい、才能を正統に評価されなかった女性の発掘や再評価が欧米の映画界で流行っているのかな?

冷戦下のソ連を舞台にミハイル・バリシニコフとグレゴリー・ハインズがダンスで友情を育む【ホワイトナイツ/白夜】、女性弁護士のグレン・クローズが疑惑の依頼人ジェフ・ブリッジズとデキちゃう【白と黒のナイフ】、ラルフ・マッチオがミュージシャンの卵を演じるロードムービー【クロスロード】などを視聴。映画を集中的に見始めたのが1980年代の後半なので、1980年代の前半から半ば頃に話題になっていた映画は見ていない作品が意外に案外たくさんあるみたい。

いまおかしんじ監督の【葵ちゃんはやらせてくれない】、【農家の嫁は、取り扱い注意!】(Part1 天使降臨篇&Part2 有機ある大作戦篇)、旧作の【こえをきかせて】、越川道夫監督の【アララト 誰でもない恋人たちの風景 vol.3】などを視聴。【葵ちゃん…】は一応タイムスリップ仕立てだけど、昔デキなかった女とやる、やらないのストーリーに合わせるためキャラの設定が犠牲になっているように感じられた。【農家の嫁…】は娯楽作としてパッケージ化されてる作品で、農家の新妻のヒロインやその夫、妻の友人達などのキャラが立ってて、とても楽しめた。【こえを…】は接点のない男女がテレパシーで通じ合うという話。【アララト…】は体が麻痺してしまった画家の夫との関係に悩む妻の話で、自分の辛さを妻に遠慮なくぶつけまくる夫が理不尽さMAXでイガイガしたけど、まだしも希望が感じられる終わり方だったのでよかった。

【葵ちゃんはやらせてくれない】(4/10)
監督・脚本:いまおかしんじ
共同脚本:佐藤稔
出演:小槙まこ、松嵜翔平、森岡龍、他
製作国:日本

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【農家の嫁は、取り扱い注意!】(7/10)
監督・脚本:いまおかしんじ
出演:フミカ、石橋保、丸純子、和田瞳、宮下順子
製作国:日本

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【アララト 誰でもない恋人たちの風景 vol.3】(6/10)
監督・脚本:越川道夫
出演:行平あい佳、荻田忠利、春風亭㐂いち、他
製作国:日本

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アンリ・ヴェルヌイユ監督の【地下室のメロディー】、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の【悪魔のようなあなた】、ミケランジェロ・アントニオーニ監督の【太陽はひとりぼっち】といった1960年代のアラン・ドロン主演作を続けて鑑賞。若い頃のアラン・ドロンはほんとに美しい、けれどストーリー的にはやはりちょっと時代性を感じるかな。

佐々部清監督の遺作となった【大綱引の恋】を視聴。鹿児島県薩摩川内(せんだい)市の川内大綱引を題材にした作品で、様々な出来事が起こりつつ最後は順当に落ち着く筋書きだけど、監督とご当地映画の相性の良さを再確認できる手堅く誠実な作品だった。佐々部監督のご冥福を再度お祈り申し上げます。

【大綱引の恋】(6/10)
監督:佐々部清
脚本:篠原高志
出演:三浦貴大、知英、比嘉愛未、石野真子、西田聖志郎、中村優一、松本若菜、升毅、朝加真由美、小倉一郎、恵俊彰、沢村一樹、他
製作国:日本

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【5月の花嫁学校】:『セラフィーヌの庭』『ヴィオレット ある作家の肖像』のマルタン・プロヴォ監督作。ジュリエット・ビノシュ演じるガチガチに保守的だった校長が一変する展開には面食らったが、フランスにはかつてたくさんあった専業主婦養成学校が1968年の5月革命以降に壊滅したというのは本当のことらしい。
【毎日がアルツハイマー ザ・ファイナル】:認知症ケアから人生の終わり方にまで向き合うドキュメンタリーシリーズの最終章。関口祐加監督は常に学びを進めていらっしゃる方なのだなぁと改めて感心した。
【パラレルワールド】:三代目 J Soul Brothersの楽曲を元にした河瀨直美監督のショートムービー。山田孝之さんが高校生役っていくらなんでも無理なんでないの……。
【ジェントルメン】:ガイ・リッチー監督の最新作。昨今の世相を取り入れつつも、最近作の中では初期作品に最も肉迫したテンポ感を感じた。ただ、登場人物がちょっと多すぎかな……。中華系マフィアを演じたヘンリー・ゴールディングさん(父がイギリス人で母がマレーシア人)がカッコよかったなー。
【Summer of 85】:フランソワ・オゾン監督が10代の頃に影響を受けたという小説を映画化。若い日の激しい恋と永遠の喪失、その断絶と向き合うこと。これまでのオゾン監督の作品で登場人物の心情が最もストレートに伝わってきた作品だった。

【5月の花嫁学校】(6/10)
原題:【La bonne épouse (How to be a good wife)】
監督・脚本:マルタン・プロヴォ
共同脚本:セヴリーヌ・ヴェルバ
出演:ジュリエット・ビノシュ、ヨランド・モロー、ノエミ・ルヴォウスキー、他
製作国:フランス

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【ジェントルメン】(8/10)
原題:【The Gentlemen】
監督・脚本:ガイ・リッチー
出演:マシュー・マコノヒー、チャーリー・ハナム、ヘンリー・ゴールディング、ミシェル・ドッカリー、ジェレミー・ストロング、エディ・マーサン、コリン・ファレル、ヒュー・グラント、他
製作国:イギリス/アメリカ

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【Summer of 85】(9/10)
原題:【Été 85】
監督・脚本:フランソワ・オゾン
原作:エイダン・チェンバーズ
出演:フェリックス・ルフェーヴル、バンジャマン・ヴォワザン、フィリッピーヌ・ヴェルジュ、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、イザベル・ナンティ、ローラン・フェルナンデス、メルヴィル・プポー、他
製作国:フランス

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Netflixオリジナル作品で見たいものがたまったので1ヵ月のみ契約。

【ボクたちはみんな大人になれなかった】 :森山未來さん×伊藤沙莉さん出演作。あるテレビマンの恋愛経験を描いた自伝的小説が原作とのことだが、歳取って感性が鈍ると若い人の精神的なうだうだに共感するのは難しくなるんですよね……。
【パワー・オブ・ザ・ドッグ】:ジェーン・カンピオン監督作。自身のホモセクシャルな傾向を薄々自覚するゆえにこれを必死で排除しようとする独善的な牧場主。彼を中心にした人間関係のパワーバランスの濃厚さにむせてしまいそう。
【The Hand of God 神の手が触れた日】:パオロ・ソレンティーノ監督による自伝的映画で、タイトルはマラドーナの「神の手」ゴールから派生したもの。いかにもイタリアっぽい大家族ドラマ的な前半から一転、後半は主人公が自分の行く末に悩む姿が中心になるが、事実をベースにした物語にありがちな冗長さは否めないと思う。

今回見たNetflix作品で特に感銘を受けた作品の一つ【浅草キッド】。ビートたけしさんの自伝エッセイを映画化したものだけど、若かりしたけしさんと言われて全く違和感のない柳楽優弥さんも凄いし、時代に取り残されるたけしさんの師匠の悲哀と誇りを体現した大泉洋さんも凄い。脚本・監督の劇団ひとりさんはこの原作を映画化するのに自分以外の適任はいないと思い定めて準備に7年も掛けたということだが、この才人ぶりには唖然としてしまう。

今回のNetflix視聴作で一番感銘を受けたのが、【マネー・ショート】【バイス】のアダム・マッケイの脚本・監督作【ドント・ルック・アップ】だった。地球に衝突しそうな彗星が見つかってしまい、このままでは確実に滅ぶということがはっきり分かっているのに、あるいは大きすぎる問題を真っ当に直視できず、あるいは目の前のパワーゲームや利益誘導から逃れることができないため、正しい選択を採ることが全くできない……。これがブラックコメディだって?この姿は、自らの存亡を揺るがす数々の問題をどうすることもできない今の人類をまんま描出しているみたいで、全く笑えない。こんなテーマをディカプやメリル・ストリープを始めとするこの綺羅星の如くのキャストで描いてしまうとは。あらゆる配信プラットフォームの中で、オリジナル作品の供給力ということでは、現状やはりNetflixが世界一かもしれない。惜しむらくは、映画内の事件がほぼアメリカの国内問題としてのみ描写されていたのが若干リアリティを欠いていたこと。中露印には申し訳程度に触れられていたけど、こんな大事件が起こったらいくら何でもヨーロッパが黙っているはずないじゃないの。(日本は何もできずにオロオロしてるだけだろうけど。)

【ボクたちはみんな大人になれなかった】(4/10)
監督:森義仁
脚本:高田亮
原作:燃え殻
出演:森山未來、伊藤沙莉、萩原聖人、大島優子、東出昌大、SUMIRE、篠原篤、平岳大、高嶋政伸、ラサール石井、他
製作国:日本

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【パワー・オブ・ザ・ドッグ】(7/10)
原題:【The Power of the Dog】
監督・脚本:ジェーン・カンピオン
原作:トーマス・サヴェージ
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、コディ・スミット=マクフィー、キルステン・ダンスト、ジェシー・プレモンス、他
製作国:イギリス/オーストラリア/アメリカ/カナダ/ニュージーランド

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【The Hand of God 神の手が触れた日】(5/10)
原題:【The Hand of God】
監督・脚本:パオロ・ソレンティーノ
出演:フィリッポ・スコッティ、トニ・セルヴィッロ、テレーザ・サポナンジェロ、ルイーザ・ラニエリ、他
製作国:イタリア

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【浅草キッド】(9/10)
監督・脚本:劇団ひとり
原作:ビートたけし
出演:柳楽優弥、大泉洋、門脇麦、土屋伸之(ナイツ)、中島歩、古澤裕介、小牧那凪、大島蓉子、尾上寛之、風間杜夫、鈴木保奈美、他
製作国:日本

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【ドント・ルック・アップ】(10/10)
原題:【Don't Look Up】
監督・脚本:アダム・マッケイ
出演:レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・ローレンス、メリル・ストリープ、ケイト・ブランシェット、ロブ・モーガン、ジョナ・ヒル、マーク・ライランス、ティモシー・シャラメ、ロン・パールマン、アリアナ・グランデ、他
製作国:アメリカ

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