Back Numbers : 映画館で見た映画2021



2021年に映画館で見た全作品です。(大体見た順に掲載しています。)

【天国にちがいない】(5/10)
原題:【It Must Be Heaven】
監督・脚本・出演:エリア・スレイマン
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、タリク・コプティ、アリ・スリマン、他
製作国:フランス/カタール/ドイツ/カナダ/トルコ/パレスチナ
ひとこと感想:パレスチナのエリア・スレイマン監督の久々の新作。この映画を見て面白かったと言っている方々は偉いなぁ。正直、私には掴みきれなかった。監督と私では体感している世界のテンポやノイズの量が違いすぎていて、私には監督が提示する世界を受け止める器がないのだと思った。もっと何度も何度も鑑賞して、噛み締めて噛み締めて初めて監督の描こうとする世界の味が見えてくるのではないかと思う。
ただ、映画の公式HPに書かれている「現代のチャップリン」とかいったフレーズは、そりゃ違うだろうと言わせて戴きたい。チャップリンの作品にはやっぱり根っこにスラップスティックがあって、物理的な感性をダイレクトに殴ってくるダイナミズムがある。それはスレイマン監督の、厳しい環境にあればこそ培われてきたのであろう独特の乾いたユーモアの在り方とは全く異なるものだと思う。

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【ヤクザと家族 The Family】(8/10)
監督・脚本:藤井道人
出演:綾野剛、舘ひろし、尾野真千子、北村有起哉、市原隼人、磯村勇斗、寺島しのぶ、若松了、豊原功補、菅田俊、康すおん、二ノ宮隆太郎、駿河太郎、小宮山莉渚、他
製作国:日本
ひとこと感想:【新聞記者】で高い評価を受けた藤井道人監督の新作なのだが、ヤクザというまた全然違うテーマを扱っていて感心する。今のヤクザの世界はおそらく昔とは全く違うものになっているのに、映画の中のヤクザが昔のままであることに違和感を感じることがたまにあったのだが(昔の映画のヤクザもある種のファンタジーだったのだろうという点はさておき)、この映画は今日のアップデートされたヤクザ像を提供してくれた。多分、今後の映画の中のヤクザは、この映画の表現を一回通過したものでなければならなくなるのではないかと思う。
主人公の綾野剛さんは勿論、主人公が惚れ込む組長の舘ひろしさんや、兄貴分の北村有起哉さん、主人公に憧れる半グレの磯村勇斗さんなど、役者の皆さんが本当にみんな素晴らしく、映画をますます分厚く見応えのあるものにしていたのがよかった。
ただ、これで配信ドラマのシリーズを作るというのはどうなのかな。これはこれで完結してるので、これ以上話を掘っても安っぽくなるだけなんじゃないかという気もするんだけど。

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【すばらしき世界】(9/10)
監督・脚本:西川美和
原作:佐木隆三
出演:役所広司、仲野太賀、橋爪功、梶芽衣子、六角精児、北村有起哉、白竜、キムラ緑子、長澤まさみ、安田成美、他
製作国:日本
ひとこと感想:西川美和監督作品。アウトローな人生を生きてきた主人公を演じる役所広司さんを見ていると【Shall we ダンス?】と同年公開の【シャブ極道】が頭に浮かんだ。一般常識を踏み越えた向こう側にいる人を演じられるのが役所さんの希有な資質なのは当時も今も変わらない。
主人公は本当は腕っぷしで全ての片がつく世界の方が居心地がいい。でももうそんな世界で生きることは許されない。その境界線で苦闘する主人公の姿は、先日公開された【ヤクザと家族 The Family】の登場人物達にも重なった。暴力に頼る彼らに同情はできない、が、彼らはどこに向かえばいいのだろうか。
仲野太賀さん、橋爪功さん、六角精児さん、北村有起哉さんらを始めとするすばらしき役者の皆さんがこれでもかという名演をぶつけ合っているのだが、特に、主人公が一時身を寄せる組織の組長の妻役のキムラ緑子さんと、主人公の身元引受人の妻役の梶芽衣子さんの絶品の演技には本当に唸った。

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【モルエラニの霧の中】(7/10)
監督・脚本:坪川拓史
出演:大杉漣、大塚寧々、香川京子、水橋研二、菜葉菜、小松政夫、中島広稀、草野康太、久保田紗友、坂本長利、他
製作国:日本
ひとこと感想:長らく公開が遅れていた室蘭在住の坪川拓史監督の作品。7本の短編のオムニバス形式で3時間半(!)もあるけれど、丁寧に紡がれた1つ1つの話が心に沁み入り、あまり長さを感じなかった。もうこれが本当に最後の新作になるだろう大杉漣さんの姿も切なかったが、小松政夫さんももしかすると最後にお見掛けする作品になるだろう。その円熟味が詰め込まれたあまりに素晴らしい演技に、かつて『みごろ!たべごろ!笑いごろ!!』に熱狂した身として涙せずにはいられなかった。

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【私は確信する】(5/10)
原題:【Une intime conviction】
監督・脚本:アントワーヌ・ランボー
共同脚本:カリム・ドリディ、イザベル・ラザート
出演:マリナ・フォイス、オリヴィエ・グルメ、ローラン・リュカ、フィリップ・ウシャン、スティーブ・ティアンチュー、他
製作国:フランス
ひとこと感想:フランスの実際の未解決事件を基にした裁判映画。主人公は、推定無罪の原則が無視され犯人だと決めつけられる被告を救おうと奔走するのだが、どうもモヤッとした感じが残る。やはり司法映画だけは論理が明快なアメリカ映画が圧倒的に面白いと再認識して終わった。

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【あの頃。】(6/10)
監督:今泉力哉
脚本:冨永昌敬
原作:劔樹人
出演:松坂桃李、仲野太賀、山中崇、若葉竜也、芹澤興人、コカドケンタロウ、大下ヒロト、木口健太、中田青渚、片山友希、山崎夢羽、西田尚美、他
製作国:日本
ひとこと感想:今泉力哉監督の【あの頃。】。松浦亜弥さんにハマった主人公が「ハロー!プロジェクト」のアイドルの熱狂的なファンの人達と共に過ごした時代を懐かしむ。今泉監督が自家薬籠中とする青春群像劇としては見応えがある作品だと思う。
ただ、自分の手前勝手な記憶では、あの頃のアイドルファンには外部の人を寄せ付けないアンタッチャブルな雰囲気があったのだが、それに比べると映画の中の彼らはあまりに小ざっぱりと映るかも。まぁ、松坂桃李さんから発せられる爽やかビームで周りが浄化されてしまうのは致し方ないのかもしれないが。

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【痛くない死に方】(8/10)
監督・脚本:高橋伴明
原作:長尾和宏
出演:柄本佑、奥田瑛二、坂井真紀、宇崎竜童、大谷直子、余貴美子、他
製作国:日本
ひとこと感想:高橋判明監督の新作は、柄本佑さん演じる医師の成長を通じて在宅終末期医療を描いた作品だった。どこでどんなふうに死ぬのかという命題は誰も避けられない。だからこの映画を観て、いろいろなことを考えてみるきっかけになればいいのではないかと思った。
今回「リビング・ウィル」なるものの存在を初めて知ったのだが、これはもっと一般的に知られてもいい概念ではないだろうか。日本尊厳死協会が発行しているフォーマットで、死を目前にした段階の医療について、延命措置を望むかどうかなどの選択を事前に意思表示しておくことができるのだそうだ。
しかし今回、市川準監督の【病院で死ぬということ】をふと思い出して検索してみたら、やたら厳しい評価が目についてのけぞった。もうざっと30年前の映画になってしまうが、当時は逆に、人が死ぬ時は家で看取るのが当然という昔ながらの観念がまだ一般的に残っていた時代で、そんな中あの作品は、実はもうほとんどの人は病院で亡くなっているんですよという気づきを提示して大きなインパクトがあったのだ。あれから30年。大抵の人が病院で亡くなるのが当然と受け止められるようになった世の中で、今度は家で死ぬことを模索する作品が出てきたことに、時の流れを感じた。

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【シン・エヴァンゲリオン劇場版:||】(9/10)
原作・脚本・総監督:庵野秀明
監督:鶴巻和哉、中山勝一、前田真宏
(アニメーション)
声の出演:緒方恵美、林原めぐみ、宮村優子、坂本真綾、三石琴乃、山口由里子、石田彰、立木文彦、清川元夢、関智一、岩永哲哉、岩男潤子、山寺宏一、神木隆之介、他
製作国:日本
ひとこと感想:エヴァンゲリオンが本当に完結する日が来るとは。思えば職場の後輩に初期の放送の録画ビデオを借りて見たのが最初で、熱烈なファンにはならずともいつも凄いなぁと思いながらの、つかず離れずの四半世紀でした。庵野監督が長年の様々な思いを昇華させて決着をつけることができたのなら本当によかったなぁと思います。長い間本当にお疲れ様でした。監督の今後のご活動も楽しみにしています。

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【ノマドランド】(9/10)
原題:【Nomadland】
監督・脚本:クロエ・ジャオ
原作:ジェシカ・ブルーダー
出演:フランシス・マクドーマンド、デヴィッド・ストラザーン、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:アマゾンの繁忙期にアメリカ全土からノマドワーカーが集まるドキュメンタリーをテレビで見たことがあるが、車に総ての生活物資を詰め込み、1つの仕事が終わったら次の仕事を求めて全国を渡り歩く生活は、不安定で、実際なかなか過酷だと思う。でも本作ではノマドワーカーを、アメリカ全土の行きたい場所を家とすることを選んだ自由な存在として描き出す。おそらく死ぬまで働かなきゃいけないコースに乗っかっている中高年な自分としては、いろいろ思うところが多すぎる。私は彼らのように誇り高く生きられるだろうか。
(しかし、非正規の労働環境がひたすらブラックで、住所を持たない人に厳しい日本では、映画のようなノマドワーカーになるのはムリゲーだろうな。)
好きな女優を聞かれたらジーナ・ローランズと答えてきたが、いい加減フランシス・マクドーマンドを加えなくては。皺の目立つ化粧っ気のない顔も、年齢を感じさせる背中も惜しげもなく晒す彼女は、この役を演じるのが運命であったかのよう。彼女はいつでも大きなインスピレーションを与えてくれる。

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【ミナリ】(8/10)
原題:【미나리 (Minari)】
監督・脚本:リー・アイザック・チョン
出演:スティーヴン・ユアン、ハン・イェリ、アラン・キム、ネイル・ケイト・チョー、ユン・ヨジョン、ウィル・パットン、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:レーガンが大統領だった頃のアメリカの韓国人移民一家の物語。低賃金労働生活からの脱却を夢見た夫は質の悪い農地を購入してしまうが、何とか仕事を軌道に乗せようと奮闘する。妻が祖国から呼び寄せた母親は、次第に子供達とも打ち解ける。
聖書から多くのモチーフを取り入れているらしいので、その辺りに詳しい解説を参照すると更に堪能できるだろうと思うが、シンプルに移民の苦労を描いた物語として見ても十分感銘を受けることができる。
妻の母親はいわゆるおばあさんらしくない一風変わった人物で、トリックスターとして物語に変化をもたらす。禍福は糾える縄の如しで、これからの一家の幸福を予感させるのではないかと思った。

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【騙し絵の牙】(9/10)
監督・脚本:吉田大八
共同脚本:楠野一郎
原作:塩田武士
出演:大泉洋、松岡茉優、佐藤浩市、宮沢氷魚、池田エライザ、中村倫也、佐野史郎、木村佳乃、和田聰宏、坪倉由幸、斎藤工、塚本晋也、リリー・フランキー、小林聡美、國村隼、他
製作国:日本
ひとこと感想:映画館で吉田大八監督の【騙し絵の牙】も鑑賞。【罪の声】と同じ塩田武士さん原作だが、なんと、小説を書く段階で既に大泉洋さんを主人公としてあて書きしていたそうだ。(ということは、最初から映像化が念頭にあったのか?)
舞台は老舗の大手出版社で、様々な手を駆使して部数拡大を図ろうとする雑誌編集長と、伝統ある文芸誌を追われ編集長にスカウトされる新人編集者を中心に、様々な人々の利害関係が入り乱れる。虚々実々の多くのエピソードが盛り込まれた目まぐるしい展開が息もつかせぬ面白さで、その中に現在の出版業界の厳しい現実も見え隠れする。大泉さんや松岡茉優さん、佐藤浩市さん、木村佳乃さん、國村隼さんを始めとする贅沢な俳優陣が物語を何重にも分厚くしている中で、我が家の坪倉由幸さんや石橋けいさんが大泉さんの部下役で好演していて目を引いた。

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【BLUE/ブルー】(7/10)
監督・脚本:𠮷田恵輔
出演:松山ケンイチ、東出昌大、柄本時生、木村文乃、他
製作国:日本
ひとこと感想:𠮷田恵輔監督によるボクシング映画。誰よりもボクシングが好きだけど才能に恵まれなかった主人公・松山ケンイチさんに、天才だけどパンチドランカーになってしまうボクサーや、なんとなく始めたボクシングにハマってしまう新人ボクサーなどが絡む。
三者三様の人生に、どんなふうにボクシングが根を下ろしているのかが丁寧に描かれていて、とても見応えがあった。𠮷田監督はご自身が長い間ボクシングをなさっているのだそうで、本作も満を持して手掛けられたのだろうし、実際、新たな視点からの作品になっていたと思う。
しかし正直、ボクシングものはもうお腹いっぱい……。どんなに好きな監督さんが作っても、もう当分見に行きたくない。

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【砕け散るところを見せてあげる】(6/10)
監督・脚本:SABU
原作:竹宮ゆゆこ
出演:中川大志、石井杏奈、井之脇海、清原果耶、松井愛莉、北村匠海、矢田亜希子、木野花、原田知世、堤真一、他
製作国:日本
ひとこと感想:久々に拝見したSABUさんの監督作。原作者はラノベやゲームシナリオなど幅広く手掛けていらっしゃる方らしく、ストーリーには独特のフックと精神的な病みを抱えた暗い熱量があって引き付けられた。が、どこか平坦さも感じられ、行き当たりばったりでちぐはぐな印象も同時に受けた。
でも、最初から最後までどうも違和感がつきまとい続けていた最大の理由は、もしかするとヒロインが今一つ好きになりきれなかったという個人的な好みに由来するものかもしれない。
SABU監督の映画に堤真一さんが出るのは18年ぶりとのことで少し懐かしい気持ちになったのだが、これがまた激しい役で……。最近映画で見かける堤真一さんて何だかろくでもない性格の役ばかりで少し悲しい。でもどうやら大河ドラマで補填されているようで、ちょっとほっとしたけど。

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【街の上で】(7/10)
監督・脚本:今泉力哉
共同脚本:大橋裕之
出演:若葉竜也、穂志もえか、古川琴音、萩原みのり、中田青渚、成田凌、他
製作国:日本
ひとこと感想:今泉力哉監督の最新作。若葉竜也さん演じる主人公は下北沢で日々をゆるりと生きている古着屋の店員。彼の日常の交遊関係を中心に描いた群像劇になっているのだが、いい人でも悪い人でもないごく普通の人物である彼の何とも言えない吸引力が映画の核になっていて、映画の力を何倍にも押し上げているように思った。
下北沢も変わりつつあるとは言え、吉祥寺などに較べればまだ独特の文化の香りが色濃く残っているような気がする。主人公やその周辺の人物に仮託されて描かれている下北沢的な文化や生活、ひいては下北沢の街自体が本作の本当の主役なのかもしれない。

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【茜色に焼かれる】(8/10)
監督・脚本:石井裕也
出演:尾野真千子、和田庵、片山友希、永瀬正敏、オダギリジョー、大塚ヒロタ、芹沢興人、鶴見辰吾、嶋田久作、他
製作国:日本
ひとこと感想:尾野真千子さん演じる主人公とその息子には次々と理不尽なことが降りかかる。彼女が「まぁ、頑張りましょう」と言うばかりであまり怒りを表さないので当初は不思議な感じがするが、息子へのいじめに対しては最初からちゃんと怒りを表明しているので、生きる足しにならない余計なエネルギーを使わないように怒りをセーブしているだけではないかと思い至る。それでも徐々に感情を表に出し始める彼女は、周りから見るとどこにスイッチがあるのか分からない「難しい人」なのかもしれないが、真っ直ぐに生きようとする強さが美しい人だと思った。
尾野真千子さんの存在感は想像以上だし、永瀬正敏さんの佇まいも大好きだったけど、主人公の息子役の和田庵さんや、同僚役の片山友希さんが大変素晴らしかった。もしかすると石井裕也監督は、秘めた才能を持つネクストブレイクの俳優さんを発掘するのが上手いのではあるまいか。

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【くれなずめ】(6/10)
監督・脚本:松居大悟
出演:成田凌、高良健吾、若葉竜也、浜野謙太、藤原季節、目次立樹、城田優、前田敦子、滝藤賢一、近藤芳正、岩松了、飯豊まりえ、内田理央、他
製作国:日本
ひとこと感想:高校時代の仲良し6人組が5年後に再会する話。それぞれの人物の感情が細やかに描かれているのだが、どうもしっくり来ない。しかしこれはどちらかというと、若い男性の心情があまり分からず寄り添いたいという気持ちも無い自分の側の問題なのではないかという気がする。

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【いのちの停車場】(7/10)
監督:成島出
脚本:平松恵美子
原作:南杏子
出演:吉永小百合、松坂桃李、広瀬すず、西田敏行、みなみらんぼう、小池栄子、泉谷しげる、松金よね子、石田ゆり子、柳葉敏郎、森口瑤子、南野陽子、佐々木みゆ、田中泯、他
製作国:日本
ひとこと感想:在宅医療をテーマにした映画では、先立って公開された高橋伴明監督の【痛くない死に方】の方が実際の姿に近かったのではないかと思うが、本作は在宅医療の在り方といったようなことより、人間のいくつもの生死のドラマを描くことに傾注していたのではないかと思う。それは方向性の違いであって良し悪しではないのだが、自分がどちらを見たかったかというと伴明監督のアプローチの方だったかもしれない。

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【HOKUSAI】(5/10)
監督:橋本一
脚本・出演:河原れん
出演:柳楽優弥、田中泯、阿部寛、永山瑛太、玉木宏、瀧本美織、津田寛治、青木崇高、城桧吏、辻本祐樹、浦上晟周、芋生悠、他
製作国:日本
ひとこと感想:誰も実際の葛飾北斎を見たことはないので、何が正解だと言うことはできないはずなのだが、北斎の人生のドラマを想像して構築したと言うよりは、北斎の人生の名場面集をイメージ映像として羅列したという感じで、どうも心に迫ってこない。田中泯さんや柳楽優弥さんは北斎役としてピッタリだと思うし、他も綺羅星の如くのキャストが並んでいるのだが、勿体ないなぁという感想に終始してしまった。

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【アメリカン・ユートピア】(10/10)
原題:【David Byrne's American Utopia】
監督:スパイク・リー
(ドキュメンタリー)
出演:デヴィッド・バーン、ジャクリーン・アセヴェド、グスタヴォ・ディ・ダルヴァ、ダニエル・フリードマン、クリス・ギアーモ、ティム・カイパー、テンデイ・クーンバ、カール・マンスフィールド、マウロ・レフォスコ、ステファン・サン・フアン、アンジー・スワン、ボビー・ウーテン・III世
製作国:アメリカ
ひとこと感想:シンプルなセッティングの舞台上で、曲を演奏しながらのフォーメーション・ダンスだけで見せ切る圧倒的パフォーマンス!凄ぇ!デヴィッド・バーン先生、歌声も体のキレも全然衰えてない。かつて【ストップ・メイキング・センス】にハマった自分のような世代には懐かしい曲もいっぱい。でも、私らのようなオールド・ファンだけじゃなく、トーキング・ヘッズ何それ?な新世代の皆さんにも、絶対に見てもらいたい作品だ!

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【明日の食卓】(8/10)
監督:瀬々敬久
脚本:小川智子
原作:椰月美智子
出演:菅野美穂、高畑充希、尾野真千子、外川燎、柴崎楓雅、阿久津慶人、和田聰宏、大東駿介、真行寺君枝、烏丸せつこ、藤原季節、渡辺真起子、山口紗弥加、菅田俊、山田真歩、水崎綾女、大島優子、他
製作国:日本
ひとこと感想:瀬々敬久監督の小説を原作にした新作。「石橋ユウ」という名の子供を持つ全く接点の無い3人の女性が主人公で、菅野美穂さん、高畑充希さん、尾野真千子さんという豪華なキャストで見応えはたっぷりだったのだが、いささか疲れた。全くタイプが違うそれぞれの家庭の様子が丁寧に描かれているのだが、どこの家の男も言い訳ばっかりで非協力的で自己中心的なクソばかり。どうしてこれで母親ばかりが子供の親としての責任を取らされるのよ?とまームカついたよね。どの女性も曲がりなりにも自分の生きる道を見つけることができたみたいでまだよかったけど。大島優子さんが意外なシーンでワンポイントだけ出ているのだが、この起用が非常に効果的で技あり!だった。

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【ヒノマルソウル 舞台裏の英雄たち】(6/10)
監督:飯塚健
脚本:杉原憲明、鈴木謙一
出演:田中圭、土屋太鳳、山田裕貴、眞栄田郷敦、小坂菜緒(日向坂46)、古田新太、落合モトキ、八十田勇一、菅原大吉、濱津隆之、他
製作国:日本
ひとこと感想:リレハンメルオリンピックのスキージャンプ団体戦で銀メダルを獲得し、次の長野オリンピックではテストジャンパーとして貢献した西方仁也氏の実話を元にした物語。25人のテストジャンパーのうちの4人の話に終始していて、他の人達ももう少し登場させて欲しかった気もするがまぁいいや。お話としては、テストジャンパーの4人や、西方氏の家族、原田雅彦選手や葛西紀明選手などの心情がバランス良く綴られている秀作だと思ったのだが……いかんせん、これは見る時期が悪すぎた。吹雪の中、自らの危険を顧みず飛ぶテストジャンパー達を見ても全然感動できないというか、五輪は命のリスクを賭けてまで強行するほど価値があるものじゃない!という思いの方がどうしても勝ってしまう。飯塚健監督を応援したくて映画館に見に行こうと前から決めていたんだけど、この状況は不運としか言いようがないんじゃないだろうか。

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【名も無い日】(7/10)
監督・原案:日比遊一
脚本:新涼星鳥
出演:永瀬正敏、オダギリジョー、金子ノブアキ、真木よう子、藤真利子、岡崎紗絵、井上順、草村礼子、今井美樹、木内みどり、中野英雄、大久保佳代子、宍倉秀磨、窪塚俊介、他
製作国:日本
ひとこと感想:次男の訃報を聞き故郷に戻った写真家の長男は、実家を継いでいた次男が孤独死していたことを知らされる……。写真家でもある日比遊一監督が自分の体験を元に描いた物語。監督は長男の立場から、永瀬正敏さん演じる長男がオダギリジョーさん演じる次男の死を受け入れられず苦しむ姿を主として描いているが、筆者の性格からして、誰にも相談できずに独りどんどん死に囚われていく次男の心情もよく分かる気がする。これに金子ノブアキさん演じる三男を始めとする周囲の人々も加わり、人が喪に向き合うということが丁寧に紡ぎ出されているのが強く印象に残った。登場人物が多くて話のフォーカスが多少曖昧になっていたような気もしたのだが、そこに監督の体験が反映されているのであれば、それはそれでよいのだろうと思う。
永瀬正敏さんはオダギリジョーさんの監督作【ある船頭の話】に出演していたり、最近では二人とも【茜色に焼かれる】に出演していたりする(共演シーンはないので残念)。そろそろこのお二人が主演でがっつり絡むお話が見たいので、誰か創ってくれないだろうか。

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【Arc アーク】(5/10)
監督・脚本:石川慶
共同脚本:澤井香織
原作:ケン・リュウ
出演:芳根京子、寺島しのぶ、岡田将生、清水くるみ、井ノ脇海、中川翼、中村ゆり、倍賞千恵子、風吹ジュン、小林薫、他
製作国:日本
ひとこと感想:不老不死となった女性が主人公のSFを原作にした【蜜蜂と遠雷】の石川慶監督の新作。しかし、そもそも論として、永遠の命なんて欲しいか?という疑問が。人間は生きていれば、たまには回復不能なほどダメージを受ける出来事にも遭遇するし、長く生きれば生きるほどその確率は高まって、心の奥底に澱が溜まるように消せない傷跡が増えていく。それでもいつかは必ず死ねると思うから、何とか頑張って生きていられるのだ。死は果てしない絶望からの救いであり解放でもあるのだから、永遠に生きるなんて恐ろしすぎるでしょ。それに、もし実際に不老不死が可能になったとして、人類はその道を選択しますかね?資源にだって限りがあるから人間ばかりそんなに増やし続けられないだろうし、そうしたら固定化した古い面子ばかりで終わらない時間を延々と繰り返すの……?そういう考えなので、人間は誰でも永遠の命が欲しいに違いないと言わんばかりの前半の展開は違和感がありすぎた。小林薫さんがある役柄で登場してからは少し盛り上がったけど、全体的に冗長でもったいぶっていると感じてしまったのはどうしようもあるまい。

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【いとみち】(7/10)
監督・脚本:横浜聡子
原作:越谷オサム
出演:駒井蓮、豊川悦司、黒川芽以、横田真悠、古坂大魔王、中島歩、宇野祥平、ジョナゴールド(りんご娘)、西川洋子、他
製作国:日本
ひとこと感想:青森が舞台の小説を原作にした横浜聡子監督の新作。主人公はヒアリングに苦慮するほどのヘヴィな津軽弁。青森の様々な場所でロケしたり、おそらく一般の青森の方々にもたくさん出てもらったりしていて、監督の青森愛がそこかしこに溢れているのが感じられる。主人公の家族や友人、バイト先の面々などの登場人物も魅力的で、そのひたむきさが愛しくなってしまうような映画だった。

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【1秒先の彼女】(6/10)
原題:【消失的情人節 (My Missing Valentine)】
監督・脚本:チェン・ユーシュン
出演:リー・ペイユー(パティ・リー)、リウ・グァンティン、ヘイ・ジャアジャア(ジョアン・ミシンガム)、ダンカン・チョウ、他
製作国:台湾
ひとこと感想:【熱帯魚】【ラブゴーゴー】のチェン・ユーシュン監督の最新作。人より時間を早く消費しているらしい主人公の女性と、人より時間を遅く使って余らせているらしい男性の邂逅という奇抜な設定ながら、主人公達の人間的な魅力のおかげで、ユーシュン監督の持ち味であるほのぼのとした味わいが醸し出されている。だけど、この男性が彼女にしたことは、極悪非道とかそういうのではないにしろ、今時相手の気持ちを確かめずにやったらアウトなやつじゃないかなぁ。その辺り、もう少しストーリー上の工夫があったらよかったんじゃないかと思う。

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【アジアの天使】(7/10)
監督・脚本:石井裕也
出演:池松壮亮、チェ・ヒソ、オダギリジョー、キム・ミンジェ、キム・イェウン、佐藤凌、芹澤興人、他
製作国:日本
ひとこと感想:まず、このざっくりし過ぎなタイトルはもうちょっと何とかならなかったかなと思う。アジアってどこだよ。インドかサウジアラビアか、モンゴルだってアジアですけど?あと、天使を実写で出す必要があったかな。ビジュアルのインパクトに引き摺られ過ぎて一瞬何の映画か分からなくなってしまったのですが……。などと不満を書いてみたが、他は概ね好きな映画だった。子連れで韓国にやってきたものの頼りにしていた兄がいい加減で振り回されてしまう作家と(池松壮亮さんも子供がいる役を演じるようになったのね)、亡くなった両親の代わりに兄妹を養うため嫌々ながら細々と芸能活動を続ける元アイドル歌手。この二人の家族が偶然出会って一緒に旅を続けるうちに、おのおのの心境に変化が訪れる、そんな姿が繊細に描かれていてよかった。まだまだ何も解決してないけどきっと大丈夫、と思わせてくれるラストが上手いと思った。
これは完全に余談なのだが、池松壮亮さんて誰かに似てるような……とずっと引っかかっていたのが、フィギュアスケートの宇野昌磨さんだ!と判明してスッキリした。完全に手前勝手なイメージなのだが、お二人とも何かこう、子犬っぽさがあるのよね。成人男性を捕まえて何言ってんの、という感じですが。

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【唐人街探偵 東京MISSION】(8/10)
原題:【唐人街探案3】
監督・脚本:チェン・スーチェン(陳思誠)
出演:ワン・バオチャン(王宝強)、リウ・ハオラン(劉昊然)、妻夫木聡、トニー・ジャー、三浦友和、長澤まさみ、 浅野忠信、染谷将太、鈴木保奈美、シャン・ユーシエン(尚語賢)、ロイ・チウ(邱澤)、ジャニス・マン(文詠珊)、六平直政、奥田瑛二、シャオ・ヤン(肖央)、チャン・チュンニン(張鈞甯)、アンディ・ラウ(劉徳華)、チャン・ズーフォン(張子楓)、他
製作国:中国
ひとこと感想:前から薄々気づいていたのだが、自分が世界で二番目に好きな俳優はどうやら妻夫木聡さんらしい。(一番は役所広司さん。三番目は随時検討中。)その妻夫木さんが本シリーズの前作【唐人街探案2】に出演していると聞いて見たくて仕方なかったのだが、シリーズ第3作の本作は日本の製作会社が大幅に関わっていることもあり、日本でも無事公開されることになってよかった。そのうちシリーズ全作が配信などされるようになると更に嬉しいのだが。
本作は中国人の叔父と甥の探偵コンビが世界中のチャイナタウンで事件を解決するというシリーズものなのだが(中国国内の話だといろいろ制約が多いので外国を舞台にしているらしい)、本編の舞台はコロナ以前の東京。おそらく史上最もド派手で最もコミカルな妻夫木さん(でも頭が抜群に良くて根はいい奴という大変おいしい役どころ)をメインキャストの一人としてたっぷり見ることができるのがひたすら嬉しいし、日本のエース級の俳優陣が大きな役で惜しみなく投入されているのも見応え十分。主役の二人は勿論キャラが立ってるし、もう一人のメインキャストとしてタイの大アクションスター、トニー・ジャー氏が出演しているのもゴージャス。お話は、シリアスなバックボーンを絡ませながらも基本テンポのいいコメディなので、現実にはあり得ないようないくつかの日本の描写(戦闘シーンや裁判のシーンなどが結構凄いことになってる)も、敢えてそうしている感じであまり気にならなかった。(でも気にする人はマイナス評価をつけるところかもしれない。)サービス精神満載でとにかく楽しく、資金が潤沢に注がれているシーンの数々には、ハリウッドやボリウッドを凌ぐ勢いの第三極として急速に台頭してきた中国映画界のスケール感をこれでもかと感じることができた。これからの世界の映画界や日本の映画界の行方を占う上で是非見ておいた方がいい作品なのは間違いないと思う。それにしても、これだけのビッグバジェットの映画で脚本まで任されているチェン・スーチェン監督という人はおそらく大変な才人なのだろう。14億人から輩出される人材の豊富さはさすがに半端ない。
しかし、中国のメガヒット作が日本ではあまり一般公開されていないのは何故なのだろう。ネトフリで見た【流転の地球】などは相当面白かったのに。契約上の難しさや金額上の折り合いなどもあるのかもしれないが、日本映画界の一部に中国映画界の現状を受け止めるのを避けている雰囲気があったりしないだろうか。しかし、コロナ以前の2019年の日本の年間興収が2611億円だったのに対し、中国映画市場の累計興収は642億6600万元(日本円にすると1兆円以上)。市場規模ではもう全然勝負にならない。これから確実に落ち目になる日本という国でこれからも映画を創り続けていくことを考えるならば、中国映画界が日本にまだしも興味を持ってくれている今のうちに少しでも関わりを持っておいた方が、将来的に様々な可能性を残しておけるんじゃないだろうか。

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【竜とそばかすの姫】(6/10)
監督・脚本:細田守
(アニメーション)
声の出演:中村佳穂、成田凌、染谷将太、玉城ティナ、幾田りら、役所広司、佐藤健、森川智之、津田健次郎、小山茉美、宮野真守、森山良子、清水ミチコ、坂本冬美、岩崎良美、中尾幸世、他
製作国:日本
ひとこと感想:細田守監督の新作となれば、作画を含め一定の水準以上のクオリティがあることは見る前から分かっていて、その期待は裏切らない作品だとは思うけれど、今回は様々な設定に少しずつクエスチョンマークが溜まって、全体的にそれなりの疑問を感じてしまったように思う。まず、主人公はなぜそこまで竜のことが気になってしまったのか、あまり描けていないのではないか。理屈で考えれば、孤独を感じている主人公が竜の孤独に共鳴したということなんだろうけど、何だかあまり気持ちがついていかないままにお話が進んでしまい、置いてけぼりをくらってしまう。あと、いくら歌が天才的に上手いといったって、おそらく何千万とか何億とかの人がいる仮想世界で、ちょっと歌ってみたからってそんなに瞬く間に大スターになったりできないんじゃないだろうか。一番解せなかったのは終盤の下りで、あれは普通に警察通報案件じゃない?大人が何人もいるのに何もせず見ているだけで、女子高生を一人危険な現場に向かわせるって、それはちょっと……。私はチームでブレストをしていいとこ取りで脚本を作るような形式はあまり好きではないけれど、細田監督クラスの多くの人が見ることが事前に分かっているような作品を制作するのであれば、信頼できるブレインを何人か置いて意見を求め、あまりに不可解な点は事前に脚本を練り直して改善しておく、くらいのことはさすがにした方がいいんじゃないかと思う。

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【犬部!】(7/10)
監督:篠原哲雄
脚本:山田あかね
原案:片野ゆか
出演:林遣都、中川大志、大原櫻子、浅香航大、田辺桃子、安藤玉恵、しゅはまはるみ、坂東龍汰、田中麗奈、酒向芳、螢雪次朗、岩松了、他
製作国:日本
ひとこと感想:北里大学に実在したという犬猫の保護・譲渡活動のサークルのノンフィクションを原案にした作品。おそらくストーリーは大幅に脚色されており、時々行き過ぎてしまうくらい熱心な主人公のあまりのスーパーマンぶりが心配になってしまうけれど、主人公たちの成長物語に犬猫の保護活動の様々な側面が巧みに溶け込んでいて、自然に話を追ううちに新たな知見を得られたりもする、人にお薦めしやすいいい映画だなーと思った。

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【イン・ザ・ハイツ】(8/10)
原題:【In the Heights】
監督:ジョン・M・チュウ
脚本:キアラ・アレグリア・ヒュデス
原作:リン=マニュエル・ミランダ
出演:アンソニー・ラモス、コーリー・ホーキンズ、レスリー・グレイズ、メリッサ・バレラ、オルガ・メレディス、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:【クレイジー・リッチ!】などを手掛けてきたジョン・M・チュウ監督が、リン=マニュエル・ミランダ氏原作のニューヨークのワシントンハイツを描いたミュージカルを映画化。(ミランダ氏は本作にアイスクリーム屋のおじさん役で出演。)ヒスパニックコミュニティの若者の夢と現実が、白人の音楽とも黒人の音楽とも違う圧倒的なラテンのビートに乗って展開する。ここまではっきりラテンミュージックを前面に出したミュージカル作品は初めて見たかもしれない。この迫力は一度見ておくべき価値があると思う。

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【キネマの神様】(6/10)
監督・脚本:山田洋次
共同脚本:朝原雄三
原作:原田マハ
出演:沢田研二、菅田将暉、永野芽郁、野田洋次郎、北川景子、寺島しのぶ、小林稔侍、宮本信子、リリー・フランキー、前田旺志郎、志尊淳、松尾貴史、片桐はいり、原田泰造、広岡由里子、北山雅康、他
製作国:日本
ひとこと感想:山田洋次監督が、映画の撮影所が華やかだった時代への郷愁を描いた映画。だと思うんだけど、私はどうしても、自分に一番立場の近い主人公の娘に感情移入してしまい、終始「ふざけんなこのクソ親父!」という感想しか出てこなかった。山田洋次監督が「どうしても自分に厳しくなりきれず、その甘さや我儘ゆえ近しい人にすら苦労を掛けるタイプ」の人にも慈愛に満ちた目線を向ける方だというのは分かっているつもりだけれど、近年、その優しさが自分と同年代の男性だけに向けられて、周りの人間(特に妻や娘)はそれを黙って受け入れるのが美しい、といった傾向になりがちなのはもう少し何とかならないか。(百歩譲って妻は自分で選んだ人生でも、子供はそうじゃないし、自分に仇なす親を捨てたいと思う気持ちを申し訳なく感じる必要なんて一切無いぞ。)ということで、私は今回も平松恵美子氏に脚本に入ってもらって、もう少し現代的な感覚の軌道修正を加えて欲しかった。もしくは、もしかして志村けんさんであれば喜劇人特有のペーソスや人当たりの良さで乗り切れたのかもしれない部分を、ストイックでアーティスト気質な沢田研二さんのキャラクターに合わせてもう少し手直しすべきだったのではないかと考える。

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【孤狼の血 LEVEL2】(8/10)
監督:白石和彌
脚本:池上純哉
原作:柚月裕子
出演:松坂桃李、鈴木亮平、村上虹郎、西野七瀬、中村梅雀、吉田鋼太郎、宇梶剛士、寺島進、斎藤工、渋川清彦、早乙女太一、かたせ梨乃、音尾琢真、毎熊克哉、中村獅童、滝藤賢一、三宅弘城、矢島健一、宮崎美子、筧美和子、青柳翔、他
製作国:日本
ひとこと感想:Part2の製作発表を聞いて、役所広司さんのいない【孤狼の血】なんて!と思ったけれど、そういえば【ゴッドファーザー】だってマーロン・ブランドが出てるのはPart1だけだもんね……。ということで、松坂桃李さんにはアル・パチーノよろしく今後も頑張ってシリーズを牽引して戴きたい。この【…LEVEL2】の白眉は何たって、骨の髄まで悪い奴の鈴木亮平さんだと思うけど、彼と松坂桃李さんの化学反応や、村上虹郎さんの演じるチンピラの哀愁や、 中村梅雀さんの人を食った存在感など、見どころがいっぱい。とにかくずっしり重い密度の高い見応えが欲しくて、ヤクザ映画が大丈夫な人なら、是非見るべき作品だと思う。

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【子供はわかってあげない】(7/10)
監督・脚本:沖田修一
共同脚本:ふじきみつ彦
原作:田島列島
出演:上白石萌歌、細田佳央太、千葉雄大、豊川悦司、斉藤由貴、古舘寛治、湯川ひな、中島琴音、兵頭公美、きたろう、高橋源一郎、他
アニメーション監督:菊池カツヤ
声の出演:富田美憂、浪川大輔、櫻井孝宏、鈴木達央、速水奨
製作国:日本
ひとこと感想:とにかく原作の大ファンな上、映画化を手掛けるのが沖田修一監督ということでずっと楽しみにしていた。大部分は原作のイメージそのままに映像化されていて概ね満足したけれど、不満があるとすれば、劇中アニメの再現に注力しすぎな割に、門司くんのお兄さんが朔田さんのお父さんの教団を調査する下りがまるっとカットされていたこと。お兄さんが実は優秀な人であることや、お父さんと教団との関わりなどが分かりにくくなっていて勿体ないなと思った。でもこれはもしかすると、映画の流れを分かりやすくするために、朔田さんと門司くんの関係だけにフォーカスしようという判断がなされた結果なのかもしれない。主演の上白石萌歌さんと細田佳央太さんには、きっと今しか演じられないであろう弾けるような若さの輝きがあって(言ってることが婆くさい…)、人生のこの時期にこういう役柄を引き当てることができる芸能運の強さを感じた。

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【ドライブ・マイ・カー】(9/10)
監督・脚本:濱口竜介
共同脚本:大江崇允
原作:村上春樹
出演:西島秀俊、三浦透子、霧島れいか、岡田将生、ジン・デヨン、パク・ユリム、安部聡子、他
製作国:日本
ひとこと感想:妻の不倫を目の当たりにしても怒ることすらできず、妻の死後心を閉ざしていた男が、自分の弱さを受け入れることができるようになるまでの物語。主人公の繊細な感情を体現した西島秀俊さんもいいけれど、それ以上に、三浦透子さんが演じる運転手の、一見無愛想ながら一人で生きてきた強さがある特異なキャラクターの佇まいが絶品。二人が互いに少しずつ影響を与え合いながら変化していく様が素晴らしく、これは、時間を掛けすぎるくらい掛けて対象をじっくり見つめる濱口竜介監督でなければ捉えることができない地平なのではないかと思った。他に、少し性格にクセのある俳優を演じた岡田将生さんが見せてくれる新境地も是非見てみて欲しいと思う。

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【空白】(8/10)
監督・脚本:𠮷田恵輔
出演:古田新太、松坂桃李、藤原季節、田畑智子、伊東蒼、寺島しのぶ、趣里、片岡礼子、他
製作国:日本
ひとこと感想:𠮷田恵輔監督がこの映画で描きたかったことはなんだろうと考えて監督のインタビューなども読んでみたが、どうも説明が難しい。「怒り」と「赦し」とか、戦える人と戦えない人とか。古田新太さん演じる主人公は、おそらく人生の中で常に「怒り」という感情でしか自分を表現できなかった人間で、娘の不条理な死を受け入れられずその「怒り」を周囲に手当たり次第にぶつけまくるが、様々な人と相対する中で少しずつ変化していき、最後には現実を受け入れられるようになる。もしかして、そもそもあなたがそんなに怒りんぼでなければ娘は万引きに手を染めたりせず死んだりすることもなかったのでは?と言ったところで詮無いが。もう一方の主人公と言うべき松坂桃李さんは、彼女の死の責任をかなり理不尽な形で背負うことになり、戦うことはおろか怒ることすらできないままな人生がどんどん詰んでいく。そんな彼に懸想するパートのおばちゃん役の寺島しのぶさんの存在は、映画を分かりやすく説明しようとすると一瞬ノイズのようにも感じられるのだが、彼女の存在が他の様々な登場人物の人生の奥行きまで想起させ、映画に分厚く複雑な位相を作り出しているように思う。それはやはり説明が難しいのだが、圧倒的な吸引力を感じずにはいられない。個人的には、古田新太さんに毒づきながらも彼の本質を理解して寄り添おうとする弟子役の藤原季節さんがとてもよかった。私は彼の存在を見て何か救われたような気がした。

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【護られなかった者たちへ】(10/10)
監督・脚本:瀬々敬久
共同脚本:林民夫
原作:中山七里
出演:佐藤健、阿部寛、清原果耶、倍賞美津子、林遣都、永山瑛太、緒形直人、吉岡秀隆、岩松了、波岡一喜、西田尚美、原日出子、鶴見辰吾、岩松了、三宅裕司、諏訪太郎、石井心咲、奥貫薫、他
製作国:日本
ひとこと感想:東日本大震災後の混乱を身を寄せ合って生き延びようとした3人がその後辿る道筋と、それに巻き込まれる人々。サスペンスとして話を牽引しながら、弱者が声を上げることを諦めさせる方向に向かいがちな日本のシステムそのものを糾弾し、そのシステムに蹂躙された人々や、そのシステムの運用を担わされた人々に目を向けさせようとする。これは今語られなければならないことを真摯に語っている映画だ。瀬々敬久監督の数々の名作の中でも最高傑作の1本になるのではないだろうか。

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【浜の朝日の嘘つきどもと】(8/10)
監督・脚本:タナダユキ
出演:高畑充希、柳家喬太郎、大久保佳代子、甲本雅裕、佐野弘樹、神尾佑、竹原ピストル、光石研、吉行和子、他
製作国:日本
ひとこと感想:高畑充希さんが、高校の恩師の大久保佳代子さんと交わした「廃業寸前の朝日座を立て直す」という約束を果たすため、柳家喬太郎さんが経営する朝日座にやって来るという話。タナダユキ監督自身の映画への思いがそこかしこにぎっしり詰め込まれているのもいいけれど、個人的には大久保佳代子さんがめちゃめちゃいい。少し惚れっぽいけど独立独歩で人への気遣いができるまっとうな大人というキャラクターは、大久保さんへの当て書きのようにも思えるが、大久保さんのこういうところが好きな女性ファンは結構多いのではないだろうか。この大久保さんと高畑さんの世代や立場を超えた友情にドロップアウト気味だった高畑さんが救われる話は、穏やかな笑いに包まれているけれど、泣きたくなるような切なさがある。
本作は先立って放送されたというテレビドラマとも連動しているそうで、出番これだけなの?と肩透かしを食った竹原ピストルさんは実はドラマの方のメインキャストで、このタイトルもドラマの方がよりしっくり来た。既に数社の配信元から配信されているので、映画を気に入った方はドラマの方も是非チェックしてみて下さいね。

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【由宇子の天秤】(8/10)
監督・脚本:春本雄二郎
出演:瀧内公美、光石研、河合優実、梅田誠弘、他
製作国:日本
ひとこと感想:主人公の由宇子はドキュメンタリー監督で、ある事件の真相をテレビで放送してもらうべく取り組んでいるが、父親がしでかしたある出来事に対処しようとしているうちに、事態がどんどん抜き差しならない方向に転がっていく。由宇子は様々な局面で選択を迫られるが、その判断の前提を覆す理不尽な真実が次々と明らかになる。自分なら由宇子と同じ方法は取らなかったかもしれない。嘘や隠蔽は大体バレるだろうし、真実を明らかにしたいだけなら他の方法もあるだろうし、何はともあれ母胎の安全を最優先にすべきだと思うから。けれど、自分がその場で当事者になってみなければ、どういう選択をしたかは実際全く分からない。玉虫色に見え方が変化する「真実」の危うさと、それに対処する難しさを紡ぎ出す春本雄二郎監督の手腕が実に見事だと思った。
何と言っても、由宇子を演じる瀧内公美さんの存在感が素晴らしい。他にも【ドライブ・マイ・カー】の三浦透子さんなども併せて見ていると、男性の過剰で一方的な性的幻想ではない等身大の女性の姿を描く萌芽が日本映画界にもやっと出てきたのではないかと、少し期待したい気持ちになった。

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【コレクティブ 国家の嘘】(7/10)
原題:【Colectiv】
監督:アレクサンダー・ナナウ
(ドキュメンタリー)
製作国:ルーマニア/ルクセンブルク/ドイツ
ひとこと感想:ルーマニアの首都ブカレストにあるクラブ「コレクティブ」で火災が発生した後、助かったはずの軽症の入院患者が次々死亡。あるスポーツ紙が取材を進めると、製薬会社が病院や政府と癒着し薄めた抗菌剤を売って利益を得ていることが判明するが……。アメリカ型のドキュメンタリーと違い、ドラマチックに調査が展開し手に汗を握ったりするのではなく、意外な事実がいきなりするっと提示されたりするテンポ感に最初は少々面食らう。しかし、話が進むほどにルーマニアの現状の腐敗ぶりがますます明らかになり、投票率が低く政府寄りのプロパガンダに牛耳られているどこかの極東の島国とよく似てることが思い起こされて暗い気持ちになる。ロシアや中国なんかもそうだと思うが、現政権寄りの大政翼賛体制にメディアも牛耳られ大衆に仇なす政権が維持されるというこういう世界的な現象に、何か名前があるんじゃないだろうか。

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【TOVE トーベ】(6/10)
原題:【Tove】
監督:ザイダ・バリルート
脚本:エーヴァ・プトロ
出演:アルマ・ポウスティ、クリスタ・コソネン、シャンティ・ロニー、ヨアンナ・ハールッティ、ロベルト・エンケル、カイサ・エルンスト、他
製作国:フィンランド/スウェーデン
ひとこと感想:ムーミンの作者トーベ・ヤンソン氏の若かりし時代を描いた物語。ヤンソン氏がのっけからかなり奔放な恋愛観を持っていたことにまず驚いたが(そこに至る過程こそを知りたいようにも思ったが、残念ながらその辺はすっ飛ばし)、初めての同性の恋人が自分以外の複数の相手と付き合っていることや、厳格な芸術家であった父親に認めてもらえないことなどの数々の苦しみに向き合う経験が、後年の確固たる信念を持つ毅然とした作家像の礎(いしずえ)になったのではないかと思えた。想像とは違っているところは多々あったが、だからこそ氏の人生に新たな興味を覚えた。

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【燃えよ剣】(8/10)
監督・脚本:原田眞人
原作:司馬遼太郎
出演:岡田准一、鈴木亮平、山田涼介、柴咲コウ、尾上右近、山田裕貴、伊藤英明、たかお鷹、坂東巳之助、安井順平、谷田歩、松下洸平、金田哲(はんにゃ)、村本大輔(ウーマンラッシュアワー)、阿部純子、高嶋政宏、柄本明、市村正親、他
製作国:日本
ひとこと感想:岡田准一さんがインタビューで、土方歳三は「いつか自分が演じるだろうと思っていた唯一の人物」だったと仰っていたが、土方歳三をいつか演じると思っていたと臆面もなく公言して許されるのは日本中でも岡田准一さんだけなんじゃないだろうか。豪華キャストでフィクションも交えながら綴られる土方歳三の生涯はひたすら眩しく、その強さにこだわった剣は泥臭くも骨をも砕かんばかりに凄まじい。(土方関連の殺陣は当然のごとく岡田さんの振り付けとのこと。)その後政権を牛耳った薩長からすれば逆賊であったはずの新選組の物語が語り伝えられてきたのは、土方歳三という人物があの混乱の時代に誰よりも純粋に理想に殉じていたサムライだったからなのかもしれない、と改めて思った。
本作の錚々たるキャスティングの中で、特に異彩を放っていたのがウーマンラッシュアワーの村本大輔さん。あの早口で何かを呟き続ける粘着質っぽい特異なキャラクターは、物語の絶妙なアクセントになっていた。彼はこの先、どこかから俳優としてお呼びが掛かる可能性があるのではないだろうか、役柄が限られるとは思うけど。

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【かそけきサンカヨウ】(7/10)
監督・脚本:今泉⼒哉
共同脚本:澤井香織
原作:窪美澄
出演:志田彩良、井浦新、鈴鹿央士、菊池亜希子、中井友望、鎌田らい樹、遠藤雄斗、石川恋、梅沢昌代、西田尚美、石田ひかり、他
製作国:日本
ひとこと感想:二人暮らしの父親がいきなり再婚。しかも相手は素敵な人。その状況を理解できないほど子供ではないけれど、かと言って総てをすんなり受け入れられるほど大人でもない。そして気になる人のことはままならない……。そんな十代の主人公の微妙な「かそけき」心情を、一つ一つ丁寧にすくい上げるように描いているのが素晴らしい。本作には原作があるようだが、おそらくこの原作を今泉力哉監督以上に繊細に表現できる人は、今の日本にはいないんじゃないだろうか。主演の志田彩良さんや鈴鹿央士さんの瑞々しさが好きだった。それにしても井浦新さんがお父さんなんてうらやましいなぁ。井浦さんのような人の子供に生まれたい人生だった。

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【ボストン市庁舎】(9/10)
原題:【City Hall】
監督:フレデリック・ワイズマン
(ドキュメンタリー)
製作国:アメリカ
ひとこと感想:フレデリック・ワイズマン監督が全米の様々な市庁舎にドキュメンタリーの撮影を打診したところ、ボストン市のみがこれに応じたそうだ。この時にボストン市の市長だったマーティン・ウォルシュ氏は、前職が北米の労働組合の総裁、この映画の撮影後にはバイデン大統領の指名で労働長官に就任したという人物。ウォルシュ氏には、市民の一人一人の要望に応えるためにこそ市政が存在する意義があるという哲学があり、行政サービスの隅々にまでその精神が行き渡っているのが見て取れる。ワイズマン監督が描きたかったのは、このように民のために尽くし民の生活を防衛しようとする姿勢こそが民主主義の根幹であるという思想と、アメリカでも有数のリベラルな都市であるボストンという土地においてさえ民主主義は常に現在進行形で学び直されようとしているという現象そのものではないだろうか。民主主義が形骸化して人権が蹂躙されまくり、民が疲弊し、社会も経済も痩せ細る一方の、どこかの極東の島国の政治家達に見せてやりたい。

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【偶然と想像】(7/10)
監督・脚本:濱口竜介
出演:古川琴音、中島歩、玄理、渋川清彦、森郁月、甲斐翔真、占部房子、河井青葉
製作国:日本
ひとこと感想:今年【ドライブ・マイ・カー】が世界中で高く評価された濱口竜介監督自身の脚本による『魔法(よりもっと不確か)』『扉は開けたままで』『もう一度』の3本の短編のオムニバス。偶然の作用で変化していく状況に翻弄される登場人物がそれぞれどのような選択をしていくのかという展開の描写に見応えがある。個人的には占部房子さんと河井青葉さんが演じる『もう一度』が特に面白かった。勘違いから始まった出会いが、お互いの人生に欠けた部分を思い起こさせ、人生で最も深い域にまで達した共感に導かれていく様は、女性達の間に実は普遍的に存在している強いシスターフッドの物語であるように感じられた。

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【私はいったい、何と闘っているのか】(8/10)
監督:李闘士男
脚本:坪田文
原作:つぶやきシロー
出演:安田顕、小池栄子、岡田結実、ファーストサマーウイカ、金子大地、菊池日菜子、伊澤亮太、SWAY(劇団EXILE)、伊藤ふみお、田村健太郎、伊集院光、白川和子、他
製作国:日本
ひとこと感想:何をやってもいつも一人で空回りしてしまう一見サエない主人公は、実は周りの人達に対し常に気を配り、全身全霊掛けて家族を守ろうとするめっちゃいい男。彼自身は今一つうだつの上がらない自分の人生に焦燥感があるようだけど、妻も子供達もそんな彼自身の人柄をちゃんと受け入れながら彼に絶大な信頼を寄せている。それで一体何の不満があるというの?お父さんとしては世界一幸せなんじゃないの?と思った。安田顕さんは当て書きなんじゃないのと思えるほどの名演で、哀感と温かみとくたびれた色気が醸し出すこの味は本当に余人をもって代えがたい。心から夫を愛しガッチリ家族の支柱になっている妻役の小池栄子さんも素敵だったけど、意外なところでは、テレビのバラエティとは全然違った顔を見せる岡田結実さんやファーストサマーウイカさん(化粧っ気ゼロで最初誰かと思った)の芸達者ぶりにも唸った。

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