Back Numbers : 映画ログ No.1



【I Shot Andy Warhol】四つ星
監督さんがもとジャーナリストと聞いて納得。主演のリリ・テイラーさんがまた凄い。日本には、あの主人公を“演じられる”(=計算づくであの役作りをすることができる)女優さんはいないのではないだろうか。ど派手な映画ではないと思うが、こんな映画をきっちりと作ることができるのがアメリカと日本の地力の差ではないか、と、痛く考え込まされてしまった。映画自体の解説は、パンフ(普段は買わないのだが今回買ってしまった)に載っているアーティストの森村泰昌さんの文章が秀逸なので、そちらを御参照下さい。
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【インデペンデンス・デイ】三つ星
しゅうげき、しゅうげき、ばくはつ、ばくはつ、アメリカ万歳 !
1にも2にも、でっかい宇宙船というコンセプトを考えついた時点で勝ちだったかなと。
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【カップルズ】三つ星
若者の悩みの群像劇、なんてもうすっかり他人事になってしまったこんなばばぁを画面に引きずり込むには、もう一ひねり何か欲しかったような気がする。私は【恋愛時代】はとても好きだったので、大変期待をして見に行った割には何か拍子抜けしてしまった。
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【カンザス・シティ】四つ星
たくさん出しゃぁいいってもんじゃない、てな展開の最近のアルトマン監督ですが、これは真ん中のコンセプトがどかん ! と通っていて、俳優(ジェニファー・ジェイソン・リー、ミランダ・リチャードソン、ハリー・ベラフォンテetc...)の演技・絶品のジャズなどなど、全ての要素が有機的に絡み合い、大変かっこいい仕上がりになっていた。さすが巨匠、である。
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【サバイビング・ピカソ】三つ星
典型的スペイン人、であるはずのピカソをイギリス人が撮ったら……う~ん。詳細は次号にて !!
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【ジャイアント・ピーチ】三星半
これはよく考えると決して明るい話じゃないと思うんだけど……疑似家族との関係性を育んでいくというのは、実は多分にアメリカの今日的なプロットなのかもしれない……って誰か書いていたっけかな ? いやいや、基本的にはかわいくてステキでよくできた、いいアニメーションだと思うけど。
ところで、併映の短編の【ビンセント】も秀逸。ティム・バートンって、すごく変わった子どもだったんだわね、やっぱり。
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【大地と自由】四つ星
スペイン内線の国際義勇軍が敗退した背景がこんなに複雑だったとは、全く無知であった。翻って、現在もまだ脈々と続いている世界中の紛争やイデオロギー闘争の背景には、それぞれどんな複雑な状況があることやら……なんて超骨太なテーマを、これだけ美しい人間ドラマとしてつくってみせることの出来る、ケン・ローチ監督の手腕はただごとではない。96年の年間チャートには入れなかったが、政治アレルギーの方もそうでない方にも、これは是非お勧めしたい一本である。
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【太陽と月に背いて】二星半
(これは封切りではないのだが、特別に。)実はこれは封切時に大変期待して観に行ったのだけれど、全体的な評価としてはイマイチであった……特にランボーとヴェルレーヌの関係性がなぁ……もうちょっと突っ込んで描いて欲しかったような気がするのだけれど。ヴェルレーヌの奥さん(ロマーヌ・ボーランジェ)の出方とかもいまいち中途半端でよく分からん、といった感じだったし。でも、ディカプリオ君のランボーは筆舌に尽くしがたいほど美しかった。いやぁ~、私、特に美少年趣味とかは無いはずなんだけれど。もう今後、ランボーと言えば必ず彼のあの姿を思い浮かべることでしょう。ディカプリオ君の分を星半分おまけして、二つ半といったところで。
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【チンピラ】三星半
思えば【竜二】は、東京に来て初めて観た映画だった。【戦メリ】とのカップリングだったんだけど、これが今までに見たこともないようなヤクザ映画で、予想外によくて驚きつつも感動した覚えがある。“ヤクザもんでいるしかない心情”なんてもんが理解し得るものだなんて、思ってもみなかったもんね。あれから10年余。以前に【チ・ン・ピ・ラ】が映画化された時には、予告編を見る限りでは何かテイストが違うような気がしてパスしたのだが、今回のこれは、“おおぉこれぞ金子正次さんの世界だ ! ”と(一人で)大変盛り上がってしまった。青山監督は御自分の世界を突き詰めただけだと思うんだけれど……不思議。主演のお二人(大沢たかおさんとダンカンさん)と石橋凌さんの演技は言うに及ばないけど、何と言っても鮎川誠さんが影の大主役と申せましょう。アユカワのギターが、これからのヤクザ映画のトレンドになったりしてね。(ほんまか ? )
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【月とキャベツ】三星半
筋書き自体はかなりありがちなものなんじゃないかとか、ときどきセリフ回しなどがあんまりにも児童劇団みたいじゃないかとか思った。でも、そうやって切って捨ててしまうにはあんまりにももったいない、素晴らしくいい描写がいくつもある、大変丁寧につくられている映画なので、やはり買いでしょう。主役の人がすっごくよかったのだが、山崎まさよしさんというミュージシャンの方なのだそうだ。また、このしぶいおっさんは誰だろ ? と思って見ていたら、何と鶴見辰吾さんだったのには驚いた。
蛇足 : そういえば、日本の映画をつくる人って、あのひらひらノースリーブのワンピース(しかも透けて見えるやつ)って好きね。
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【トレインスポッティング】
の評価では四つ星なのだが、ここは、96年のベストテン第1位にこの作品をランキングさせたに感想をゆずります
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【バードケージ】二星半
私は基本的に、ヨーロッパ映画とかのハリウッド・リメイクものって大嫌い。でもこれは出てる役者とか粒ぞろいだし、久々に期待できるかも ? と思って行ったらやっぱり大間違いだった。コメディ性を強調しようとする余り、ジーン・ハックマンやダイアン・キートンなどなーんか妙ちきりんなオーバーアクトだったし、もとの作品で描いている筈の、もっと細やかな家族の愛情の繋がり、といったようなものの描写が犠牲になっているんでないの ? まぁそれなりの面白さがないとは言わんが、これをわざわざ映画館に見に行く必要はなぁ……私は感じない。でも、アルバート役のネイサン・レインがとにかく絶品だった(私の大好きなロビン・ウィリアムス様すら、今回は食われていた)ので、少しだけおまけして二つ星半。
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【花の影】一つ星
何なんだこの、御都合主義の権化といった感じの展開わっ !! 【覇王別姫】の出来から言って、このチームはこんなもんでお茶を濁して満足な人たちではないはずだぞっ。中国政府から何かキツい縛りでもあったのだろうか……。
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【秘密と嘘】四つ星
何でこんなにげろげろに混んでるんだ ? と思ったら、これがカンヌのパルムドール受賞作だったのね。うかつうかつ。さすがによく出来ているし、及第点は十二分にクリアーしているのだけれども、イギリスのワーキング・クラスものと言えば、ケン・ローチ(今回よく出てくるな)のリリシズムにイカれてしまった私には、特に最後のあたりの展開なんか、ちょっとばかし甘いかな ? といった印象を受けてしまった。勿論、大変面白かった、という大前提に立っての話ですが。
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【評決のとき】三星半
一言で言えば、面白かった。サンドラ・ブロック、マシュー・マコノヒー、ケヴィン・スペイシーなどもよかったが、特にサミュエル・L・ジャクソンにはまたまた惚れ直してしまった。でも、どうなんだろう ? ジョン・グリシャムの法廷ものにしては最後の詰めのシーンの展開なんかがちょっと甘いような気もするし、白人・黒人・KKKなんかの配置の仕方もちょっとばかし、あんまりにも図式的なような気もする……って、アメリカに住んだこととかがあるわけじゃないので、その辺が実際どんなものなのかが、よく分かんないのだ。まぁ、決して見に行って損するような作品でないことだけは確かだと思うんだけれども。
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【ファーゴ】四星半
可笑しくて、やがてものぐるおしい、白一色の狂気。恐いんだか、ほんわかしているんだか、全くもってよく分からない(多分その両方)。その独特の雰囲気が、よく“コーエン兄弟の新境地”という言葉で評されているようだ。私は、ほてほて歩く妊婦の警察署長(よく考えるととてもスゴ腕)と、その売れないアーティストの旦那が大好き。
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【フェティッシュ】二星半
いかにもタランティーノ(この映画をプロデュースしている)好みの、パルプフィクションな“面白いお話”なんだけど、最後まで見終わると、だから ? と思ってしまった。オチをつけてしまった時点で、それ以上の広がりが拒絶されてしまったと言うか。あの主演の女優さんや筋立てなど、素材的にはすごくいいと思うので、なんだか惜しい気がするな。それはそうと、この手の非現実的なコメディ映画の登場人物を演じるのって難しいのね、と、【フォー・ルームス】のティム・ロス君の苦労を垣間みた気がした。
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【冬の猿】四つ星
言わずとしれた名作のリバイバル。とて、今まで見る機会がなかったので、今回観れてよかった。観終わってから、どうもあのえせ中華風のテーマソングが頭から離れない。
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【フラメンコ】五つ星
さて今回の目玉中の目玉であるが、フラメンコ自体の解説はこのページの主旨を逸脱してしまうような気もするので、他のページに回したいと思う。とにかく、フラメンコそのものが十二分に感動的なのに、それを余すところ無く伝えようとするカルロス・サウラ監督の手法がこれまた素晴らしい。シンプルの極みの背景に、ヴィットリオ・ストラーロ撮影監督の凝りまくったライティングが超美しく(これはもう、わびさびの世界だ ! )、画面の切り取り方も実に的確である。映像として、記録として、これだけ美しいものが存在しているというだけでも、私は幸せだ。ビデオの解説(映画館で既に売っているのをその場で購入してしまった ! )にもある通り、歴史に残る“貴重な映像資産”であることは間違いない。もし機会があれば、是非一度は御覧になってみて戴くことを強くお勧めする。
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【誘惑のアフロディーテ】四つ星
前作【ブロードウェイと銃弾】に引き続き、今回もまた凄い。一時のゴタゴタを乗り越えて、ウディ様は完全に創作のテンションが戻られたようである。よかったよかった。ところで、この発想が貧困な邦題だけは、何とかならんか。
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【世にも憂鬱なハムレットたち】三星半
そんな大甘でいいわけ ? と思うくらいに、安心して見られるハッピーなお話。各キャラクターの設定がしっかりしているので、安定感があり、楽しめる。どうしてあんな二重苦・三重苦の積み重なりが、そんなにすんなり解決してしまうのかなんて、まぁ堅いこと言わなくてもいいじゃないの。
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【リチャードを探して】四つ星
の96年第1位の【デッドマン・ウォーキング】(ティム・ロビンス監督)といい、ショーン・ペンの【クロッシング・ガード】といい、アメリカの俳優さんの監督作品はここのところ、相当にクオリティの高いものが相次いで公開されているように思うが、この映画にもはっきり言ってぶっ飛びましたぜ。これは自らも巻き込んだドキュメンタリーと言うべきか、アル・パチーノにおける“リチャードIII世(シェークスピアの戯曲・パチーノの舞台での当たり役)なるもの”の再構築と言うべきか。とにかく見たこともないような斬新な構成。初監督作にこんなものを持ってくるなんて、やはりこの人の表現することに対する執着心は尋常なものではない。また、この映画に映っているパチーノの顔は、他の映画では見たこともないくらいに生き生きとしているんだな、これが。たかが俳優映画と侮るなかれ。これはかなり必見の部類に入る映画かも知れませんぞ。
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【私の男】一星半
おっと最後がこの作品かい。一つ星半を付けたが、正直言って私は、この映画について語るには、世界で最も不的確な部類に属する人間なのではないかと思う。この監督の思い描く“女性なるもの”と、が一般的に想定する“女性なるもの”の定義は、全く集合部分を描くことが出来ないからだ。私から見ればこのヒロインは、男性にとってみればかわいいだろうに決まっている都合のいい(非現実的な)理想像、にしか見えない。この映画で共感できるところがあるとすれば、心よりも肉体で感じとるものに真実が存在することがあるかも知れない、という部分かな ? でも、それだけで1時間半もこの映画を見ているのはちとつらいんで。
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