Back Numbers : 映画ログ No.10



今月の一言 : 松竹シネマジャパネスクのラインアップ、【OL忠臣蔵】の次は【ご存知 ! ふんどし頭巾】ですかい ? 内容の良し悪しはさておいても、このネーミングに若い人を呼ぶ意思があるとは到底思えないんだが。松竹の人って、どうしてそこまでカマタなセンスに固執したがるのかなぁ。謎である。

【愛する】一星半
エイズやらい予防法廃止の話題が出てくるところから考えると現在の話という設定だと思うんだけど、これはどう見ても今日びの若者の姿じゃないよなぁ……3~40年前っていう感じ。おまけにヒロインの「私は、悪い、女」っていう台詞、ここは己れの原罪(キリスト教で言うところの)に目覚めて自らの行く末を決めていく重要なポイントなんじゃないの ? 全然それらしく聞こえなかったところが致命的だと思う。真摯なテーマは支持するが、表現したい部分をうまく出し切れないまま終わってしまった、ような気がするので残念。
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【地球交響曲<ガイアシンフォニー>第三番】四つ星
生命は、両性生殖のメカニズムを開発したのと同時に、死のメカニズムをも収得せざるを得なかったという。第三番に当初から出演予定であったという星野道夫氏の死も、悲しいことではあっても、やはり生命の流れの一部分であるということだ。星野氏はそのことを知る人だったということを再発見する為だけにでも、この映画は観に行く価値があるだろう。
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【家族の気分】三つ星
またまたセドリック・クラピッシュ監督もの。“家族なんてお互い努力しなければうまく行く筈がない”というところが前提になっているのは万国共通なようで……でもAdieu(さらば)でなくてAu revoir(またね)になっているところがこの映画のミソなのでしょう、きっと。
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【<<神代辰巳 女たちの賛歌>>】四つ星
先年亡くなった神代辰巳監督の回顧特集。プログラム的にもとても充実しており、前売の3回券も3600円ととてもお得なので、敢えてここで御紹介してみました。はこの機会にと思い【赫い髪の女】【四畳半襖の裏張り】を観たのですが、後は何を観ようかしら、楽しみ。
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【GO NOW】三星半
単なる闘病ものとかではなくて、あくまで“与えられた状況の中でどのような選択をするか”ということに焦点があたっているのがすごくいいと思う。あらゆる困難を承知の上で、敢えてこのラストを持ってきたところもナイス。
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【新・欲望の街I/古惑仔旋風、再び】三星半
これはもう是非一度ビデオ屋さんで【欲望の街】シリーズを借りてきて、この作品で香港のスターダムにのしあがったチェン・イーキンやチャン・シウチョンの勇姿を御覧になって戴きたい。ハマればそれでよし、面白くなければ続きもののこの映画を見に行く必要は全然無かろう。本作は前2作に較べ格段にスケールアップ(予算アップ)していて、モブ・シーンの迫力なども倍増。敵役のチョン・イウヨンもすごくよかったな~。
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【スリーピー・ヘッズ】三つ星
ニューヨークの日本人というと、昔フジテレビの深夜にやっていた【Bananachips Love】っていうドラマを思い出してしまいましたなぁ。ポスターなどのイメージからしてもっとドンパチとかやっちゃうような映画かと思っていたら、案外ユーモアがあってかわいらしい感じの映画だったし、雰囲気もちょっとだけ似ているところがあるかも知れない。永澤俊矢さんのゴーカイさが良かった !
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【世界中がアイ・ラヴ・ユー】二星半
何故今更ミュージカルなのか ? 内容的にあんまりにもスカスカだから胡麻化したかったの ? ウディ・アレン監督らしくバランスは取れていたかも知れないが、正直言って見ている間、「早よ終わらんかいなぁ~」とそればかり思っていたのですが……。
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【デス&コンパス】四つ星
色といい音楽といい、パズルのように配置された構成といい、すっごく好み。今までのアレックス・コックス監督の映画で一番好きかもしれない。しかしの中では昔好きだった頃のグリーナウェイの印象に近いものがある、と言ったらやっぱり怒られるかな ? (コックス監督はグリーナウェイ嫌いらしいから。)
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【東京日和】三星半
これが荒木経惟の世界だっつーのは嘘だろう。これはあくまで荒木経惟に題材を借りた竹中直人の世界以外の何物でもあり得ない。過去と現在をカットバックさせる方法は少し流れを悪くしている印象を私は受けたのだが、それでもこのラストシーンで、分かっていても泣かされてしまった以上、これはやはり評価せざるを得ないだろう。あざとい、実にあざとい。いやいやいい意味でね。
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【バウンスkoGALS】四つ星
世間的には多分、コギャルの風俗描写辺りが話題になりそうな気もするが、これは実は日本に生きる人の一部が忘れ去ろうとしているプライドとか自立とか夢とかいうことを描こうとした映画なのであって、コギャルというのはその題材として選ばれているに過ぎないのだと思う。(本物のコギャル映画はコギャルの人達の誰かにしか撮れないと私は思うので。)よくよく観ていると原田眞人監督がごく理屈っぽく創ってある部分も見えてくる気がするのだが、それらが非常にうまく組み立てられ、主人公のイキのいい女子高生3人を中心とする登場人物の振る舞いの中に実に見事に消化しているので、創りものっぽさなど全く感じる暇もなくあっという間に“旅立ち”のラストシーンを迎え、涙させられてしまう。これは今までの原田監督の演出の中でも最も成功した一つになったのではなかろうか。そして、本当にコギャルの皆さんの多くがこの主人公たちの夢やプライドに共感するのなら、日本の将来もそんなに暗くはないのかもしれない。
ここだけはちょっとどうか… : あんなに物わかりのいいヤクザばかりじゃないはずだ、危険である。オーラスの笑い声はホラー映画みたい……作り直すか、いっそ無い方がベターでは。それと、やっぱり題名は何とかして欲しかったなぁ(そういえばこれもシネマ・ジャパネスクものです)。
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【ブエノスアイレス】四つ星
この映画には、泣きたくなるほど心を揺さぶられてしまったシーンが幾つかあった。それ故にこそ私は、映像の力で押し切っている他の部分とのアンバランスさを感じてしまい、今までウォン・カーウァイ監督を映像のスタイルこそで評価していたのだな、と強く思ってしまった。映像と俳優さんの演技の相乗効果で胸に迫ってくるあの泣きたくなるようなシーンの数々が全編に渡って見られていたならば、さぞやもっとものスゴいことになっていただろう。新たな一歩を踏み出したこの作品を契機に、それは今後に期待したいものだなぁ、と切に思ったのであった。
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【ベスト・フレンズ・ウェディング】三星半
登場人物の心の動きの描写がとても細やかで、ハリウッドのコメディにありがちな無理くささが無く、すんなり自然に見られるのがいいと思う。(この監督さんは確かオーストラリアの御出身ですよね。)ところで、一時アメリカの評論家筋から酷評され続けていたジュリア・ロバーツさんですが、最近はいい出演作が相次いで、評価も安定してきたようなので良かったなぁ。【プリティ・ウーマン】はそんなに好きじゃなかったけれど、前々から実は結構いい映画を選んで出ている人だし、そんなに目の敵にされるほど悪かぁないだろう、とずっと思っていたもので。
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【ベント/堕ちた饗宴】三つ星
これは元々舞台劇だったという話を聞いたのだが、この人数構成や場面設定ならば、閉ざされた空間で展開する舞台の方がやはり向いているかもしれない。とは言え、ミック・ジャガーの女装とフィリップ・グラスの音楽だけでも充分満足したから、まぁいいか。
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【マルタイの女】四つ星
伊丹十三監督の映画は常にある程度のクオリティは保証されているけれども、今回はいつも以上に、社会性をうまく盛り込んだテーマも小気味よいストーリー展開も、宮本信子さん・西村雅彦さんを始めとする俳優さんの最高の演技も、素晴らしくぴったり噛み合っていたのではなかろうか。これはひょっとして、【マルサ】以来だと言ってもいいくらいの完璧な出来映えになっているかもしれない。余談ですが、うーぴーは以前から山本たろーちゃんの大ファンでして、【突然炎のごとく】以来、誰かこの人をいい映画に使ってくれないものかしら ? と常々思っていたのだが、今回、伊丹映画に欠かせない“おっぱいむしゃぶりつき”の大役を仰せつかっているのを見て、何とも感慨深いものがありました。
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【ミクロコスモス】三つ星
昔よく見た“驚異の映像”系のTV番組といった趣き。それ以上のインパクトはなかったかなァ。理科の教材にはいいと思うので、どうせなら夏休み公開とかにした方がよかったんじゃないかな ?
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【Lie lie Lie】二星半
この映画を見て二つ発見したことがある。多分根っからすごく真面目な人なんだろうトヨエツさんのコメディ演技に、私はどうしてもある種の苦しさを感じてしまうこと。鈴木ホナミさんの演技には、どうしてもよそよそしさを感じてしまうこと。これは好き嫌いの問題になってしまうのかもしれないが、私がこの映画に入り込めなかったのは、どうもその辺りのような気がする。
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