Back Numbers : 映画ログ No.25



今月も言い訳 !! : ひぇ~~っ !! ついに本ホームページ上最悪に更新を遅らせてしまった !! 年明けに仕事先が変わって、またその後ずうっと残業続きなもので……などと言い訳をしてみたところでどうしようもありません。み、皆様、来月は頑張ってもっと早めに更新致しますのでどうぞお見捨てにならないで !!

【アイ・ウォント・ユー】三つ星
痛みを感じるほどの激しい愛の描写は美しく強烈で素晴らしいと思う。が、後半になって「刑務所に会いに行ったが彼が会ってくれなかった」という彼女のセリフを聞いてどうも話が分かんなくなってしまったのだけれど ? 刑務所にいる時彼女に会おうとしなかった彼は、何故今になって彼女に執着を見せるのか ? 彼女はかの事件の記憶を闇に葬ってしまいたいと思っているのなら、どうしてわざわざ刑務所へなんか行ったのか ? 思うに、かの“忌まわしい事件”に対して二人がそれぞれどう考えているのかが、少々説明不足だったのではないだろうか。
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【生きたい】一星半
大竹しのぶが演じているのが躁鬱病の娘だと言われても説得力がないというかあまりそんなふうには見えないし、またその設定がストーリー上でうまく機能していないように見受けられる。結果、登場人物の心の動きがどうもよく分からないままに、お話にあまり入り込めずに終わってしまったように思う。また【午後の遺言状】の時の瑞々しさとは打って変わって、台詞回しも幾つかのシーンの作り方も、どうにも野暮ったく見えてしまったのも気になったのだが……“巨匠”相手にそのようなことを言うのも何ではあるが。
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【おもちゃ】二つ星
確かに深作欣二監督だけあって、破綻の無い語り口はとにかく巧いし、登場人物の描写は生き生きとして力強いし、厚みのある画面は美しいしで、映画としてたいへんよく出来ているとは思う。しかし、予告編を見た時から抱いていた「どういう意図でこのような映画を今の時代に敢えて作ろうとするのだろう ? 」という疑問は、映画を最後まで観終わってもついに解消されるがなかったのだが。「貧乏から抜け出すためならばどんなことにでも耐えられる」という女の子の横っ面を金持ちが札束ではたいて買うところに、かつてある種の文化が成立していた事実自体は、今更特に否定しても仕方がないことだとは思うが、(そのことが映画の中で断片的にであれ言及されているだけまだましなのだとも思うが、)時代の変化に伴ってそのような文化が根底から消えていくのだとしても、それは結構なことだと思いこそすれ、私は何のノスタルジアも感じることができないのである。
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【鯨捕りの海】三つ星
日本という国で何百年もの間営まれ続けてきた“捕鯨”は、生命というものへの圧倒的な畏敬と畏怖の念を伴わないことには成立しなかった一つの文化であった。この映画は一見すると教育映画みたいな風情があるが、鯨捕りの映像自体が何よりも雄弁に物語るので、それほど気にはならなくなってくる。が、“捕鯨”の文化の全てをより包括的に伝えるためには、1時間半という時間ではあまりにも短すぎたのではないか。更に追い掛けて掘り下げたものを見てみたいと思ったし、そのためには、例えば小川紳介監督がかつて日本の農村の文化を伝えるのに要したような長尺、また何年にも及ぶ取材期間がどうしても必要になってくるのではないだろうか。それくらい、鯨捕りの文化にはまだまだ語るべきことがたくさんあるだろうと思われるのである。
私見 : ヴァイキングを祖先に持ち、鯨を食べる文化を以て世界平和を志向する白夜とオーロラとフィヨルドの国、ノルウェーは私の心のふるさとである ! 日本はノルウェーみたいな国ともっと仲良くして、独自の価値観を育むことを考えた方がいいと思うぞ(かなり真剣)。
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【出発】一星半
このテのフレンチ好きな人々には受ける要素があるのかもしれないが、私は主人公が何を感じて行動しているやらその心の動きがさっぱり分からず、話の進行に最初から全くついていけなかった。映像的にも、色々考えて取っているのかなぁという気は一応するのだが、しかし非常に斬新というほどのものは特になかったように思うのだけれども。
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【ニンゲン合格】四つ星
他者にとって自分が存在しているということは、他者に記憶されているということ。そのような意味合いからしても、私にとっての14才から24才の間は正に“人間失格”していた期間だったのだが、生き続けていくということは、それがその後の人生を続けていく気力が全く奪われてしまうようなものである可能性も含めて、自分がある時間を過ごした記憶を得ることなのだと思う。例えば、ある期間をずっと眠って過ごしていたとしたら、それはその時間を“失った”というよりは、得る筈だったその時間を“得られなかった”とことになるのではないか。しかし意味の無い時間の記憶をただ漫然と得るよりは、短い間でもそれが意味のあるものであった方が、その人が本当に“生きた”ことになるのかもしれない。……映画を観ながら、そのようなことをつらつらと考えていた。少ない科白の行間の間(ま)にこそ最も多くを語らせる黒沢清監督のこのスタイルは、完璧に名人芸の域である。素晴らしいの一言。
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【のど自慢】四つ星
トシを取ってしまったのか、最近めっきり涙腺が弱くなってしまっていけない。この映画を観ていると、「映画に映っている人も映っていない人も、とにかくみんな頑張れ ! 」、なんてどうもガラにもないような殊勝なことを思ってしまうよなぁ。完璧な人物配置もストーリーのバランスも素晴らしい上に、「こんな人が ! 」と思ってしまうような実力派の俳優さん達を脇に至るまでたっぷり贅沢に配しているキャスティングも凄い。とても厚みのある豊かな作品に仕上がっているし、どんな人でもどこかしらに自分が共感を寄せることができる人を見つけることが出来るだろうから、おじいちゃんおばあちゃんから中高年、20代の人から学生さんまで、ありとあらゆる人にお薦めすることが出来る、これぞ現代日本の“国民映画”になり得る映画なのではないだろうか。ちなみに私は、紆余曲折を歴ても未だに仕事のうまく行かない大友康平さんの演じるパパと、そんな彼を心から愛していて一生懸命支え続ける松田美由紀さんの演じるママ(全くハマり役 ! )、そしてその子供達の一家が特に良かった。人生で一番大切なものを既にバッチリ得ている彼こそは、実は誰よりも人生に成功している人なのではないかと思った。
でも一つだけ文句を言いたい ! : 本編中で室井滋の演じていた“赤城麗子”のキャラで映画をもう一本作ることになった、のはまぁいいんだけど、映画が終わった直後に大喜びでその宣伝をぶちかますなんてのは非道すぎるんじゃないの ? 映画が終わった後の余韻を楽しむ時間は、映画を観た者それぞれの権利として残しておいて欲しいんだけど !! また、この映画は別に“赤城麗子”だけが主役じゃないんだし、各人が思い入れるキャラは人さまざまな筈なのに、感動の幅を自ら狭めるような真似をするなんて、東宝の人達は一体何を考えているのやら。
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【まひるのほし】三つ星
思うに、他人とコミュニケートする能力がすごくあって、自分の感じていることや考えていることをほぼ支障なく周りの人間に伝えることの出来る人なら、絵を描いたりものを書いたりしたいとかいう欲望に取り憑かれることなんて、そもそもないんじゃなかろうか。つまり、表現するということを志向したがる人間は誰しも、他人とのコミュニケーション能力に何らかの形でハンディキャップを負っているのであって、それはいわゆる“障害”というものを抱えていても抱えていなくても変わらないのではないだろうかと思う。しかるにこの映画は、いわゆる“障害”ということに特に焦点を当てることは敢えて避けているから、何人かの“味のある人間”が表現を志向する姿をもっと普遍的な視点から捉えたものになっていると思われるのである。
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【メリーに首ったけ】四つ星
【キングピン・ストライクへの道】の時よろしく、メインストリームから外れた非主流派の人々の姿をお話に折り込んで描くのは、ファレリー兄弟の得意技のようである(監督達は“そうすると笑えるから”と説明しているようなのだが)。一見ハチャメチャに見えるのだが、例えばメリーさんが決して二枚目とはいえない主人公と仲良くなる過程などにしても決して無理がなく(キャメロン・ディアスもいいけど、ちょっと情けないけどいい奴のベン・スティラーがまたとてもハマり役 ! )、全体的に案外ちゃんとお話を成立させているところも、彼らの非凡な才能を感じる。また、アメリカ製のコメディの感覚はそのままでは分かりにくいことがしばしばあるのだが、この映画のギャグはとても分かりやすいというか、万国共通で笑える部分を的確に形にしており、場内でどっかんどっかん笑いが来ていたのがとても印象的であった。
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【ラッシュアワー】三星半
東洋一のスーパースター、ジャッキー・チェンのスターのオーラやノーブルさを殺すことなく、香港製のジャッキー・チェン映画と変わらない形でそのまんま出せているところがとてもいいと思う。とはいえ彼一人だと、アメリカの観客には“この人は一体何者 ? ”てなことになりかねなかったと思うのだが、そこはクリス・タッカーとの絡みがうまく効いて、アメリカ国内でもうまくアピールすることが出来たみたいで良かったな。
余談 : この映画の中でブルース・スプリングスティーンの『War』が使われているのだが(歌ってる人は違うみたいだけど)、先日公開された【スモール・ソルジャーズ】でも確か同じ曲を使っていたような。最近TVのCMでも使われているみたいだけど、何でこの曲、今時分に流行ってんのかなぁ ?
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【リング2/死国】三星半
【リング】を見てからというもの、中田秀夫監督のホラー映画にはもう決して行くまいと固く心に誓っていたのに……どぁい好きな長崎俊一監督の新作と併映だと見に行かない訳には行かないじゃないか !! うぅ、長崎監督のバカ。でもさすがに【死国】は期待に違わなかったというか、単なるホラーというよりは、強い思いに囚われて身動きが出来なくなってしまった人間の哀しみが描かれている作品になっているところがすごくいいと思った。(あれでは夏川結衣さんの役はあんまりにもマヌケではないか ? とか、似合っているとはいえ筒井道隆くんの役どころがあんまりにも優柔不断だ、とか、あのサバ折り技が笑えて仕方がない ! とかいったところはまぁ御愛敬。)それと比較するとしたら、どちらかといえばフィジカルな、本能的な恐怖感にガンガンくるような部分で攻めて戴きたかった【リング】なのだが、さすがに2にもなると、ネタは大体分かっているから前作ほどの不意打ちを食らうこともないし、他のお話との整合性を取ろうとするとどうしても話が複雑で小難しくなってしまうしで、正直言ってやはり前作ほどのインパクトを出すことは難しかったのではなかろうかと思う。しかし、超混雑していた場内の大方を占めると思われた中高生の皆様(4~5人の団体で来ていることが多い)のお目当てはやはり【リング】の方だったみたいで(もう【学校の怪談】よりは大人向けのものが見たいよね)、彼らはそれなりに満足していたみたいではあり、逆に【死国】の方の情感は少し分かりにくかったのか、今一つ反応が良くなかったみたいである。【死国】の上映中、隣の席のガキ……もとい、中坊と見られる男の子達の煩かったことといったら !
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【りんご】三つ星
イランという国は、イスラム諸国の中では比較的女性の社会進出に寛容な国であると聞く。18才で本編を撮らせてもらえたサミラ・マフマルバフ監督はやはり環境的に恵まれていたと思うのだが、演出力に更に磨きをかけ、今後抱えざるを得なくなるだろう色々な困難もなんとか克服して、世界の他の地域の若い映画人の人々と共に、次世代の映画を背負って立てるような大きな存在になって戴きたいなぁと切に願ってやまない。
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