Back Numbers : 映画ログ No.26



もう言い訳にもならん : 先月あれほど言ったのにも関わらず、更に更新が遅れてしまいました……すみません。嘘つきと呼んで下さい。

【ヴァンパイア・最後の聖戦】二星半
アメリカにはロジャー・コーマンの正統な後継とでもいうべきB級映画の系譜がどこかで途切れずに脈々と息づいているのかなぁ……よく知らんのだが。ヴァンパイアの一本釣り、というアイディアが豪快 ! で、デーハーなSFXじゃなくて火薬の火花に包まれてヴァンパイアさんたちが燃え尽きてしまうところも、何とも手作りぽくっていいかもしんない。
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【女と女と井戸の中】三星半
井戸の中に投げ入れた死体は既に腐臭を放っているかもしれないし、ウジなんぞもわいてしまっているかもしれない。奥の方にはお化けなんかも出てきそうである。でも、そんなに彼女やお金が大事なら、私なら絶対自分で井戸の中に降りていくんだけどなー。ともあれ、オーストラリアといえば乾いていてだだっ広い土地柄を連想させるのに、この映画のウェットな閉塞感ときたらただごとではない。また青という色に人間の孤独な心理を語らせているのも面白い。(青ってそんなに寂しい色だったっけ……あ、【トリコロール】なんて映画もあったか。)井戸はすばり女性の性のメタファーだというサマンサ・ラング監督のインタビューでの発言も併せて考えてみると、更に深読みが出来そうである。解釈というものを可能にする、知的という言葉が相応しいこの手の映画って、すごく久しぶりに観たような手応えを得た。
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【ガッジョ・ディーロ】三星半
(いきなりネタをばらして申し訳ないが、)最後のシーン、いきなりコイツは何を始めるのかと思ったら、これは彼が観光客、つまりガッジョ・ディーロ(よそ者)でなくなった瞬間、自ら進んでロマ(ジプシー)の一人になることにした瞬間の描写だったのである ! この映画のもろもろの流れは、すべてこのシーンに集約されている。観ている最中の印象より、後になって思い出せば出すほど、その余韻の方がずぅ~んと深くなってくる映画だった。
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【完全なる飼育】一星半
そもそも、こういった状況下で愛が生まれ得ると考えること自体、オジサン連中がよく抱きがちな幻想でしかあるまい。ではそのような無理な設定に説得力を与えるだけのエピソードなり演出なりがこの映画に何かあったのかといえば、残念ながら何も無かったように思われるのだが。
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【キラーコンドーム】三星半
な~んでニューヨーク市警の警官がみんなドイツ語をしゃべっておるのだ ? ハリウッドではどこの国の人でも必ず英語をしゃべっていることへのアンチテーゼなのかしら ? いやーん、おバカでステキすぎるぅ ! ストーリーなど度外視のC級ドタバタ劇かと思いきや、実は孤独なおっさんが愛を発見する物語だった(ただし相手は美青年なんだけど ! )というのも結構感動的だったりして ? 後半ちょっと長い気もしたが、この隅から隅まで溢れ出るいかにもドイツのアングラチックなひねくれきったセンスに、私はとにかく腹を抱えて大笑いしてしまったのでした。
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【鮫肌男と桃尻女】三星半
脇に至るまでの登場人物の一人一人、エピソードの一つ一つ、交わすセリフの一言一句までに、石井克人監督が多分非常に深い思い入れを抱いているのであろうことは分かる。確かにそういった部分をじっくり描いている面白さがあるのであろうことも認める。が、そこのところに比重を傾けすぎてしまった結果として、全体のテンポが今一つ重たくのろい感じになってしまったのではなかろうか……私はそこにむしろ、邦画の悪しき伝統の方を感じてしまったのだけれども。まぁ、この映画の前評判を聞いてパルプ・マガジン的な、あるいはビデオクリップ的なリズムの軽快さ、流麗さを、手前勝手に期待してしまったのがいけなかったのかもしれないが。
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【スネーク・アイズ】一星半
彼の人が実は悪役だったというパターンは他の映画にもあったから映画が始まって3分で大体の展開は読めてしまったし、ニコラス・ケイジの演じる精神構造の単純な汚職警官というのもどうにもステレオタイプで全然深みとかが感じられなかったしで、詰まるところ、何が面白いのやらさっぱり分からないままに映画は終わってしまったのですが……。
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【セントラル・ステーション】四つ星
会うは別れの始めというが、決して軽くはない人間同士の出会いと別れの成り行きを、しかも重苦しくもなり過ぎないタッチで描いた本作には、文句を付けられるようなところは全く見当らない。これは万人に勧めることの出来る掛け値なしの秀作であろう。しかし、個人的には「だから何なの ? 」といったような感じもなきにしもあらずだったのだが……(何せひねくれ者だから。ごめんなさい。)
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【天使が見た夢】三星半
自分がいくら辛いからって人に八つ当りをしちゃーいかんだろー、というのは、かつて私が自分自身にそりゃぁもう厳しく禁じていたことである。しかるにこの映画を見て感じるどうしようもない違和感というのは、実は強烈な近親憎悪なのだろうなぁ。良くも悪くも、人間誰しも一度は通って来たことがあるはずの、他者もしくは外界に対してどうしても不器用に立ち回ることしか出来ない季節の痛みを、これだけ直截に切り取ることが出来た監督の才能というのは相当なものなのではないかと思う。が、その表現が真に迫っていればいる程に、個人的にはまともに正視するのがかなり難しかったのだけれども……。
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【ムービー・デイズ】三つ星
いい映画なのだろうことはすごくよく分かるんだけどなー。の中には“古き良き時代を懐かしむ”といった行動原理が全く存在していなくて、そういった行為に対する感性がとっことん鈍いもんだから、どうも評価が今一つになってしまうのである。
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【ユー・ガット・メール】二つ星
ど、どうしちゃったのよノーラ・エフロン監督は !? 最初に日本に紹介された【ディス・イズ・マイ・ライフ】の頃から私ゃずーっと好きだったというのに。今回のこの映画はストーリーも行き当たりばったりで練りが足りなければ、人物描写も矛盾だらけで深みも何もありゃしない。ましてや、Eメールを介したやり取りというテーマに今更特に新しさがあるとも思えないしさー(同じテーマなら数年前の邦画、森田芳光監督の【(ハル)】の方が、数段描写が細やかでいい出来である)。待ってくれよ~、こんな以前当たった主演コンビということだけにおんぶにだっこの企画でしか作れないような監督さんじゃあなかったはずでしょー !?
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【ワン・ナイト・スタンド】三つ星
マイク・フィッギス監督(アンチアル中のうーぴーは【リービング・ラスベガス】は一生認める気はないのだが)はもともとは音楽畑出身の人だったと聞いてな~んか納得。ストーリーや人物というよりは、いかにもおしゃれっぽい雰囲気を重視して映画を作っている感じがするもんな。まぁ万事がお子様向けに傾いている今のハリウッドではそういう姿勢も貴重だと思うのでそれなりに頑張って戴きたい気はするのだが、このお話に関していえば、まず主人公たちの心の動きにのっけから全然入っていけなくて、演技派復帰を目指すウェズリー・スナイプス氏やナターシャ・キンスキー様の健闘も虚しく、全編「ふ~ん」といった感じで終わってしまったのはいかんともしがたい。が、皆様、この映画の一番の見所は実はロバート・ダウニー・Jr.様だったのであるよ ! う~ん、傷つきやすくてナイーブな役柄がこんなにもぴったりハマる人だったとは思いもよらなかった ! ハリウッドにありがちな大味な映画に出演していた彼に今までパッとした印象を抱けなかったのもむべなるかな、私ゃ今回、すっかり惚れ込んでしまったのでした !
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