Back Numbers : 映画ログ No.41



メールマガジンを始めてからというもの、早く更新しなくちゃ、という常について回っていた切羽詰まった気持ちがかなり薄れ、筆者の精神衛生のためには良かったものの、HPの更新の方は大幅に遅れてしまったので反省しております……ゴメンナサイ。次回からは、HPの方も、もう少し早いサイクルで更新できるように心掛けたいと思います。尚、今回以降、この“お星様”のページの内容はメールマガジンの内容の再録が中心になる予定ですので御了承下さい。(ただし一部には書き換えや修正を行っているものもあります。)

【アシュラ】四つ星
女はただひたすら耐えることが美徳だなんて、いまやインドでも流行らないのね。「もう涙も枯れ果てた」美貌のヒロインが鬼と化し、憎い敵(かたき)をがっつんがっつん叩きのめす圧倒的なパワーは、もしかして暑気払いにはぴったりの内容かもしれない ? 話のあちこちに「そんなアホな」とツッコミを入れてみるもよし、こんな展開でもやはり存在するミュージカルシーンに笑ってみるもよし、金持ちのバカ息子の歪んだ純粋さを熱演するシャー・ルク・カーンの新たな魅力を発見してみるのもいいかもしれない。
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【あの子を探して】四星半
チャン・イーモウ監督の映画では、初監督作品の【紅いコーリャン】以上に好きなものって実は今まで無かったのだが、本作こそはデビュー作と張るくらい好きな作品になるかもしれない。素人を使っているとはとても思えないセリフの間合い、そこから醸し出される絶妙なタイミングのユーモアの演出は正に名人芸 ! そこからは、都市部とますます格差の激しくなっていく(そして拝金主義が浸透しつつもどうにもお金の無い)現代中国の農村の姿が垣間見えてくるような気がする。
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【イギリスから来た男】四つ星
娘の死の真相を探るためイギリスからやって来たダンディな初老の男、テレンス・スタンプ。主人公の錯綜した気持ちを表す、時間軸をわざと掻き回して並べたカットアップが効果的。因果が巡ってやって来るラストのオチもお見事 ! 筋立ては至ってシンプルながら、だからこそ映画が本来持つ面白さが際立つ。同じスティーブン・ソダーバーグ監督の【エリン・ブロコビッチ】と星の数では一緒でも、あちらはあくまでウェルメイドの安心感を前提とする(つまり映画的な冒険自体がそれほどある訳ではない)作品であり、個人的にはこちらの映画こそ【セックスと嘘とビデオテープ】以来の逸品 ! と思えたのだった。
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【エドtv】三つ星
テンポよく面白いストーリー展開で一応最後まで飽きずに見ることが出来る、けれど、この登場人物達ってば、メディアを利用するような言動を取ってみたりもする割には自分達がテレビに映っているということあまりにも無自覚すぎ、その辺、いかにも作り物めいているのが何だかな。アメリカ特有の“有名になりたい病”などへの言及はあるものの、メディア論を喚起するほどの洞察にはいささか欠けているようだし。
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【顔】四星半
全体的には、外向きにはじけるというよりは内側へ向かう圧力をギリギリまで高めたような雰囲気。お話の最初では特にそうなので、ここ何作かの阪本順治監督の作品と同様に、ワカルんだけど何か韜晦しちゃってて一種近寄りがたいあの感じに近くなるのかと思うと、そうはならないのがこの作品のいいところ。主人公が青春に逡巡する男のコなよりは、現実に揉まれて流転を余儀なくされつつもどんどん前向きになっていく女のヒトである方が、エピソードがビビッドで力強いっちゅうかシンパシーを感じやすいっちゅうか。岸部一徳さん、佐藤浩市さん、國村隼さんなど、大好きな俳優さん達ばかりがこぞって素晴らしい演技を披露して、“ちょっと打ち捨てられた人生”の、泣きたいような、でも泣けないような味わいを描き尽くしているのが感涙モノだが、中でも大楠道代さんと豊川悦司さんの姉弟たるや絶品だ。とて、私はやっと少しだけ、阪本監督が何故次回作で【仁義なき戦い】なんてムボーな企画に手を染めようとしたのかが分かったような気がした。トヨエツのヤクザという設定をもう少し拡げてみたくなっちゃったんでしょ、絶対 ?
一体どこで見てきたの !? : 藤山直美さん演じる主人公の吉村正子は、特に前半部では、(メロドラマ好きなところを除いて)体型といい髪型といい性格といい、筆者にあまりにもよっく似ているので唖然とした。
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【仮面学園】三星半
【死者の学園祭】三星半
最近、昔の角川映画を再評価しようという流れが一部にあるようだが、この2本立ては、そういったかつてのプログラム・ピクチャーの面白さがうまく引き出されていて、少なくとも料金分は充分に楽しめる出来になっていると思う。【死者の学園祭】の方は、いかにもオーソドックスな赤川次郎ドラマといった安定感のある手堅さゆえ、逆に篠原哲雄監督独自の色が少々見えにくかった気がしたのが個人的には少しだけ物足りなかったかもしれない。筆者はオバサンゆえ女の子達の顔の区別が全然つかなくて、お話がほとんど訳分かんなくなりかけていたし。が、加藤雅也さんや根津甚八さんといったキャスティングはそれだけで堪能できたし、クシャクシャの泣き顔までがアップに耐える深田恭子サンって実に映画女優向きだなと確認できただけでもよかった。ただ今回に限って言えば、私としては小松隆志監督の【仮面学園】のキッチュさの方がより好きだっただろうか。“仮面を付けていた方がより本当の自分でいられる”とて仮面を付けることが流行する不気味さだけでもアレゴリーとして面白いのだが、何といっても麿赤児さん、大杉漣さん、鈴木ヒロミツさんのスリーショットのキョーレツさといったらない。あと、ヒロインの黒須摩耶さん。彼女の溌剌とした存在感は、今後がとっても楽しみである。
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【ギャベ】三星半
【パンと植木鉢】四つ星
映画がありすぎて困ってしまうから映画祭等には普段あんまり行かないもので、今までそういった機会にしか紹介されていなかったというイランのモフセン・マフマルバフ監督について今までほとんど何も知らず、お恥ずかしながら、今回の劇場公開が彼の映画を観る初めての機会となった。イラン映画ではキアロスタミ監督と並び賞される巨匠だということなのだが、それも納得の、一見シンプルながら饒舌で力強い語り口。その方面の映画がお好きな人にはやはり必見であろう。【ギャベ】とは、イランのある遊牧民族が作る素朴で色鮮やかな絨毯のことであり、また本編の主人公の女の子の名前でもある。豊かな色彩の中に展開される民話調の詩篇といった趣きで、美しいことこの上ないのだが、ひねくれもんの私は逆にそれらしすぎちゃうかなぁ、などと思ってしまったりもした。なので個人的には、映画作りの疑似ドキュメンタリーがそのまま物語になっている【パンと植木鉢】の方が興味深くて好きだったかもしれない。これはある種のメタ映画(“映画内映画”という構造を擁した映画)でもあり、暴力というものに対する監督のステートメントにもなっている、とても色々な側面を持つ実に同時代的な映画になっているのだが、そんなことよりも何よりも、登場人物達のほんわかとしたやりとりの間合いがすごく可笑しい。そこら辺にいそうな清濁併せ持った人々が愛情を込めて限りなく人間くさく描かれているのがまずこの監督さんの映画の特徴で、その辺りも彼の作品が多くの人々に愛されている所以なのだろうか、などと思ったりもした。
ところで : 彼の娘のサミラ・マフマルバフの監督第二作目(一作目の【りんご】は既に日本でも公開済)【ブラックボード】は今年のカンヌ映画祭で何か賞をもらっていたのだが、何と彼の奥さんまでもが長編映画を撮っているのだそうだ。う~ん、そりゃ世界でも珍しいくらいの映画家族なのでは。コッポラ一族も顔負けかも !?
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【行商人】三星半
【サイクリスト】四つ星
【ギャベ】【パンと植木鉢】の欄でも取り上げたモフセン・マフマルバフ監督特集の2作品。【行商人】の方はオムニバスなので、一つ一つのエピソードのベクトルが微妙に違う方向を向いているのが、個人的には少々好みではなかったかな ? (しかしねぇ……捨てちゃうくらいなら最初っから子供なんて作っちゃいかんですよ ! 誰か教えてやれい ! )【サイクリスト】は妻の手術代のため一週間自転車に乗り続ける男(ココリコの『黄金伝説』みたい……わーすいません ! )の周囲で騒ぎがどんどん膨れ上がっていく様が面白い。映画の中にある如く、自分に出来る唯一の行為に自分の全存在を掛ける彼の姿は正に庶民のヒーロー ! でも、チャレンジが終わってもなおペダルを漕ぎ続けていた彼の瞳には、一体何が映っていたのだろう。
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【クラークス】四つ星
タランティーノ映画を見て、駄話の積み重ねでも映画を作れるのだと開眼したというケヴィン・スミス監督。その通りこの映画は、あるコンビニ店員とその周囲の人達の駄話で一日が構成されている。が、この一見ダラダラとしたやりとりの呼吸がいちいち面白く、またそれが全体として見事に起承転結を成しているのがまことに凄い。彼がこの一作で才能を注目されたというのは大いに肯けるところだ。主人公の悪友の、サボってばかりで全然仕事をしやがらないビデオ店員君(筆者の大嫌いなタイプ ! )が、根は真面目とはいえどうも自分の身を嘆いてばかりいる主人公に「全て自分で選んだことの結果だろ ? 」と説教する位置付けがなかなかにディープ。この人のセンスや着眼点って、やっぱりすごく好きだなぁ。
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【グラディエイター】三つ星
数にモノをいわせたのっけの戦闘シーン(多分あそこはCGではないのでは)を始めとして、シネスコサイズを生かして作り込まれた画面には迫力があるので、逆に映画館で見るのには適しているかもしれない。だが、ものものしく見せ掛けてはいても、お話の作りはどこかで見たようなパターンの組合せだし、ヒロインであるはずの人物の描写などが非常にいいかげんで説得力に乏しいこともあり、どうにもチャチな印象が先に立ってしまって、ずっと見てると退屈して来てしまう。それでも、今のりにのっているラッセル・クロウがいい味出してタフガイの主人公を演じているから、何とか最後まで持たせたといったところか。そんな中ちょっと注目したいのは、敵役の皇帝を演じたホアキン・フェニックス君。ハリウッドの見えざるモラルコードにより今回はこの程度の描写に押し止められてしまったけれども、こりゃもっともっとディープな変態役だってイケてしまいそうな予感。彼が本領を発揮する作品が今後待たれる !
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【クレイジー・イングリッシュ】三星半
恥をかけ ! 大声を出し体に叩き込め ! 母音の発音を大切に ! ……いやなかなか理に適っている。しかしこのカリスマ英語伝道師が何より一心に中国全土に広めようとしているのは、何故英語を勉強するのかというその哲学。英語を覚え、アメリカとヨーロッパと日本で金儲けをする ! その動機は、びっくりするほどに強い祖国愛に裏打ちされている。拝金主義の是非はともかく、この自ら狂気と称するまでのエネルギーは、まんま資本主義導入後の新生・中国の熱気なのだろう。これぞ新しい世紀とアジアの行く末を見つめる為に必見のドキュメンタリーかもしれない。
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【最後通告】四星半
映画をたくさん観始めた時期に何を面白いと思ったかでその後の映画の好みはかなり影響を受けるものだ。最近、自分はフランス映画がどうもあまり好きではないらしい(ジャン・ジャック・ベネックスなどの例外を除く)ということをようやく発見し、自分の好みの核にあると長年思っていたヨーロッパ映画なるもののキモが実はダニエル・シュミット、アラン・タネール、ミシェル・ロッドといったスイス出身の監督さん達の映画だったのではないかと考えるに至って、そういえば当時観た【山の焚火】のフレディ・M・ムーラー監督なんか最近どうしてるのかなー ? なんてたまたま考えている時にチラシを見掛けたのがこの映画だ。うーん、こりゃ映画の神様のお引き合わせとしか思えませんな。独りで盛り上がっていて本当にごめんなさい。映画の方は、『ハーメルンの笛吹き』の現代版のアレンジ、といった趣きだろうか。一見地味とさえ映る淡々とした静謐な語り口の中に展開するのは、想像を絶するような負のファンタジーだ。本編の中心人物のヴァッサール刑事の中に僅かな救済の可能性は示されているものの、このままでは世界から全ての子供達が消えてしまうだろう。最初に失踪した12人より更に多くの子供達がいなくなることが暗示されたシーンでは、全身にざーっと鳥肌が立った。人類に未来はあると思うか ? 自分の主張ばかりを延々と繰り返し、物事の本質を見ようとしない人類に未来など無くても仕方がないと、監督は警告を突き付けているのである。
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【サイダーハウス・ルール】四星半
始まって30分で既に涙腺がユルくなってしまっていたのには参った。何重にも交錯するテーマが緻密なドラマとして紡がれるジョン・アーヴィングの美しい脚本に、脇役の一人一人にまで(どう考えても許しがたい悪者にまで ! )愛情が注がれるラッセ・ハルストレム監督のきめ細やかな演出。この映画には、私が映画に対して望む実に多くのものが豊かに存在している。【インサイダー】も【アメリカン・ビューティー】も確かに名作だったけど、私がアカデミーの会員ならこの映画に投票していたことでしょう、というか、中絶やら近親相姦やらという思いっきり物議を醸しやすい事柄を扱いながらも、これだけの評価を得たってことの方が凄いか。
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【サウスパーク<無修正映画版>】四星半
同じ回で見ていた見知らぬ女の子が連れの人に「なんかみんな(ギャグの意味などが)分かってるんだぞーと言わんばかりに無理矢理笑っているみたい」と喋っているのを聞いた。成程、そういう見方もありましたか。確かに初日だったせいもあるのか、普段から『CUT』誌(この映画を大プッシュしていた)を熟読しているようなコアな客が特にたくさん集まっていたみたいで、あの異様なまでの反応の良さと盛り上がりには一種凄まじいものがありました……でもいいじゃんねぇ ? 他国の最先鋭のブラックジョークと、そこでは何が欺瞞とされているかという共通の認識を持てる客層が、カッコつけであれ何であれ曲がりなりにも育ってきているというのは喜ばしいことだと私は思う。【サウスパーク】の魅力は一言ではとても語り尽くせないし、実際に見てみてトレイ・パーカー&マット・ストーンの天才ぶりに惚れ込むか、大嫌いになるか、全くちんぷんかんぷんかのどれかしかあるまい。客層は自ずと選ばれてしまうと思うのだが、そんな映画が主題歌賞とはいえノミネートされてしまったことにこそ、今年のアカデミー賞の最も如実な地殻変動を今更ながら感じてしまった。
問)どうして映画【サウスパーク】中の一曲『Blame Canada』はアカデミー賞の主題歌賞にノミネートされたのでしょう ?
答)『Unclefucker』だと授賞式の際にテレビ放映できなかったから !
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【さくや 妖怪伝】二星半
日本古来の妖怪がザクザク出てくるお話って、それだけで何かココロ惹かれるものがあるのよね。(『犬夜叉』のアニメ化おめでとう ! )そんな妖怪達を、最新SFXを駆使して現代風に味付けして見せるっていうアイディア自体は悪くなかったと思うし、ストーリーなんかもまぁまぁだったと思う、のだけれども、いかんせん演出が平坦というか、抑揚が無くって勢いが全く死んでしまっていたのが残念。やっぱこういうお話って基本的に、血湧き肉踊る冒険活劇になってなきゃ面白くないじゃない ?
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【ザ・ハリケーン】三星半
黙って立っているだけで役柄の歴史や奥行を感じさせてくれるデンゼル・ワシントンはさすが。ただ、大ベテランのノーマン・ジュイソンが監督なだけあって大きく外した出来ではないものの、それぞれのシーンを見ていると少し紋切型でありきたりかな ? という気がしないでもない。有名黒人ボクサーの冤罪事件、という大変興味深い題材の割には、爆発力には欠けていた印象である。
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【サルサ ! 】三つ星
いくらなんでも、キューバ音楽に憧れた白人男性が顔を黒塗りにしてキューバ人になりすますなんておバカな設定が今時ありなワケ ? お話の方も、行き当たりばったりの泥縄でも最後にはみ~んなうまく納まってしまう大甘な展開がなんじゃソラ。でも、こういう話って予定調和のハッピーエンドだっていうことは最初っから折り込み済みなのだろうから、かっこいい音楽とかダンスシーンとかハンサムな主人公(ヒロインは可愛いというよりはたくましいわよね……)とかで適度に雰囲気を楽しめればそれでいいんでしょうかねぇ、きっと。
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【ざわざわ下北沢】三つ星
自分達の街の自分達の映画館で掛ける映画を自分達の手で創ろう ! という意気込みには敬意を表したいので、星半分おまけしておきたい。しかし、映画の方は題名通りにざわざわしていて、ちとしまりのない印象。思うに、市川準のように雰囲気で語るタイプの監督さんの場合、脚本の強度といったものがもっと必要なのではないだろうか。そのばらけた感じこそが正に下北沢的なのだ、と言われれば、どうしようもないのだけれど。
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【シャンハイ・ヌーン】三星半
香港時代にはジャッキー・チェン映画を劇場で見ることはほとんどしなかったのに、アメリカ進出後は結構まめにチェックしているというのは一体どうしたことだろう。アジアの大スターがハリウッドでちゃんとした扱いを受けているのだろうか、といった点が気になるのもさることながら、やはり、ハリウッド映画と香港映画の幸福な化学反応を無意識のうちに期待しているのは大きいのかもしれない。そんな期待に違わず、本作も、娯楽ものとして過不足なく小気味よくまとまっている一編。特にジャッキー・チェンの場合、相方との組合せで持ち味を引き出すという方法が有効なのがますますはっきりしてきたようだが、オーウェン・ウィルソンという正統派のユーモアたっぷりの才人はまさにうってつけのパートナーで、これからの展開も期待できそうである。ただ、続編まで見に行くかどうかは分かりませんけれども !?
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【ジュブナイル】四つ星
映画の最後のタイトルロールに“For Fujiko F. Fujio”といった一文を見つけて大納得。この日本のお茶の間の風景にしっくりくる少年少女向けのSFは、正に藤子不二雄や手塚治虫(タイトル曲を歌う山下達郎の名曲『アトムの子』が劇中に使われている)の系譜の嫡出子なのだ。受け継がれているものがあるんだな。そのこと自体に涙が出た。SFXも、シナリオ上の必然性があって初めて使われている感じで、いかにも使ってまーすというのじゃなくてちゃんと消化されているところがいい。しかしそういえば、男の子3+女の子1+ロボットという組合せも藤子不二雄のお話の型なら、ストーリーも、しばらく前にネット上で流行ったという“ドラえもんの最終回”の1バージョンに酷似していないか !?
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【ジョン・ジョン・イン・ザ・スカイ】三つ星
『シネマ通信』のジェファソン君ってどうしてインタビューの時あんなにふんぞり返って脚なんて組んでたりするのでしょう ? 日本の視聴者はそーいうお行儀の悪いのってあまり好きではないのでは ? ……って閑話休題。やりたいことが沢山あり過ぎたのか、少しばかり詰め込み過ぎのきらいも無きにしもあらず ? 少年時代の回想の部分はよく描けていると思うのだが、比較すると現在のシーンの方は少し冗長だったかも。その辺りをもっと洗練させていれば、更に印象深い佳作になっていたのではないだろうか。
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【白い刻印】四つ星
アル中因業親父とそっくりになっていく因業息子。こ、これって個人的にはちょっとツラ過ぎるテーマ。(でも私は親の世代の因縁は断ち切ったと思うし、山の中に隠遁したりもすることなく一応社会生活を送っているもんね。フンだ。)ということで後味はあんまりにも悪いのだが、隙の無い演出といいニック・ノルティのすんごい演技といい、映画の質としては完璧。故に、これは評価せざるを得まい。
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【白い花びら】三星半
原作が書かれたのが1911年なのだそうで(カウリスマキ監督の地元フィンランドでは有名な物語なんだそうな)、このあまりに今時でないクラシックな展開には現代的な演出を施すのはとてもムリそうなのだが、逆にサイレントという形式にはぴったりなのかもしれない。そして、映像と音楽とのコラボレーションにより映画として完成されるのである。本作はストーリー等を楽しむというよりは、その独特のスタイルの面白さを堪能するべきものであろう。ただ、その味わいがあんまりにもマニアや昔からのファンだけの好みに過ぎて、万人向けとは言えないきらいはあるのだが。
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【スーパーフライ】三星半
一時不仲が伝えられていたスパイク・リーとQ・タランティーノだが、こういう映画を見ていると、二人とも70年代のアフロ=アメリカン映画(最近読んだ本によると“ブラックスプロイテーション”という言い回しを好まない人達もいるんだそうな)の影響を色濃く受けている同じ穴のムジナじゃん ! という気がすごくしてくる。タラちゃんの描く銃撃戦のシーンなんてホントにそのまんまだし。しかし、この映画のBGMの入れ方で私が何故か思い出したのはTVアニメのルパンIII世。地元カルチャーから極東の島国、そして以後の時代まで、その影響のいかに大きかったことか。
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【ソフィーの世界】二星半
原作の大ヒットでハリウッド辺りが権利を買い叩いて適当にこしらえ上げたものかと想像していたら違っていて、本国のノルウェーで創られたらしいというのはポイントが高い。しかし本作は原作以上に「青少年のための哲学入門」といった教材的な色合いが濃いようで、もしかして本国では特にジュブナイル向けに作られた内容なのではないのかという気もしたのだがどうだろう ? でもって、“私は誰 ? ”なんて問いを自問しまくっていた10代の頃に観ていればきっとものすご~く感銘を受けていて、評価も倍くらい違っていたようにも思われるのだが、もうとっくにそういうのに飽きてしまったトウの立ったオバサンが鑑賞するのには、ちょっとどうかといった感じで。
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【太陽の誘<いざな>い】三星半
あんなネットリした視線のおっさんとセクハラにーちゃんしかいない職場なんて私なら絶対ヤだー !! という叫びも虚しく物語は進む。田園風景を描いた画面には圧倒的な美しさがあるけれど、主人公の農夫と家政婦のヒロインと彼らを妨害する野郎しか出てこないラブストーリーって、一人一人に比重が掛かり過ぎてややかったるいかも。が、中年男と中年女を扱うごくストレートな恋愛映画ってところに、もしかして外国で受けた需要があったのかもしれない ?
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【TAXi2】三星半
××プロデュースという類いの作品にはあんまり食指が動かないので、前作の【TAXi】もこの前初めてテレビで見たのだが(すいません)、改造プジョーやカーチェイスの迫力などの車系の面白さで引き付けるのみならず、いいヤツだけど学歴もコネもない、スピードだけが取り柄のアラブ系フランス人の青年がその腕一本でヒーローになるところや、生まれのせいで第一希望が叶えられなかった人生(白人の相方ともども)を滲ませているところ、それでもあくまでも笑えるコメディに仕上げているところなど、いちいち見る人の感情移入を誘うような巧みな作りになっているのに驚いた。でもって、前作の設定をそのまま生かした今回も、パート2だからといってダレることもなく、アップテンポで無駄の無い、娯楽作品として過不足の無いすっきりとした出来になっていると思う。日本人向けには、本気なんだか狙ってるんだか分かりゃしない“妙な日本人”が笑えるというオマケもあるし。とにかくバカバカしくもスカッと楽しめることは請け合い。
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【チューブ・テイルズ】三星半
“地下鉄”というその場限りの運命共同体を舞台にして、ロンドンというコミュニティの様々な断片が映し込まれる。一編一編がほぼ10分以内と短くて、歯切れがいい。オムニバスという形式は全体のバランスの取り方などが案外難しいのではないかと思うのだが、ロンドンの地下鉄にまつわる9本の短編を集めた本作は、テーマ的にも統一感が取れ、スタイリッシュによくまとまっていて、なかなかいい仕上がりになっていると思う。ユアン・マクレガー、ジュード・ロウ、ボブ・ホプキンスといった俳優さん達が監督として参加している、といった話題を特に意識せずとも、充分に楽しめる作品である。ただし、食事の前後に観るのには適していない話も一編含まれているので、デート・ムービーにするのにはちょっと注意して下さいね♪
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【ツイン・フォールズ・アイダホ】三つ星
実際の双子にして本作の監督・主演をしているポーリッシュ兄弟によると、双子という概念を突き詰めたら“シャム双生児”のコンセプトに行き着いたとのことだが、やはり観念が先行していたのかどうにも話が大人しく、立体的なダイナミズムにやや欠けていた印象が。双子の男に女が一人、つきまとう死の匂い、というと、意識しててもしてなくても、どうしてもピーター・グリーナウェイの【ZOO】のインパクトと比べてしまっていたのが、ちと気の毒だったか。
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【ディル・セ 心から】二星半
前半は大河メロドラマ中心で推移し後半は政治的な話も絡めた内容に切り替わる、というのは【ボンベイ】などでも見られた形式で、きっと、インド娯楽映画の形式を踏襲しながらも政治的な主張を盛り込むことを旨とするマニラトナム監督お得意のパターンなのだろう。しかし本作では、前半のシャー・ルク・カーンの片想いの話と、残り1時間を切ったところでようやっと白熱化してくるテロリスト絡みの話だけがストーリーのほぼほとんどなので、ドラマとしての重層感がイマイチ乏しく、これで3時間というのはちとキツい。ラストがまたアレッ !? っていう感じで拍子抜けだったしなぁ。まぁ、シャー・ルク君が割と好きな私としては、彼の熱演を眺めているだけでも、結構退屈はしなかったんだけど。
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【ドグマ】四星半
もろカトリック教会を笑いのめしている内容なので、日本人には馴染みが薄いと判断されているのかな ? でもこれくらいのキリスト教ギャグは笑い飛ばせるくらいの素養はあった方が、世の中、何かと楽しいと思うんだけどな。アメリカのおたく魂の化身、ケヴィン・スミス監督という人は天才だね ! こんなファンキーな神様なら確かに信じてみるのも楽しいかも知れない、と思わせるとは、なぁんて信仰心に篤い映画なんでしょう !?
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【DRUG GARDEN】三星半
ちょっと苦みのある砂糖菓子みたいなテイスト。ドラァグ・クィーンのいる風景は、日本を明るくするに違いない ! “依存”というのは実はものすごく深いテーマだし、この映画のスタイルがイイタイコトをどこまで効果的に反映しているかは微妙なところだとは思うが、監督としての広田レオナさんのセンスの良さは驚くほどで、少なくとも私はとっても好きである。
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【2番目に幸せなこと】三星半
この作品の企画を気に入って出演を決めたということには、最近のマドンナの地に足を着けたものの考え方がひしひしと伝わってきてとても好感が持てた。映画自体もすごーく誠実に創られていて、決して悪くはなかったと思う。だがこれがあまりにも誠実であるが故に、実際にあのような事態が起こったら本当にあのように醜いまでの経緯を辿りそうなのが、シビアに過ぎてちと辛い。必ずしもハッピーエンドである必要はないとはいえ、映画にはカタルシスっつーもんは必要だと思うので、この場合、もう少し分かりやすい形での救いがあってもよかったんじゃないだろうか ?
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【パーフェクト・ストーム】三つ星
海は決して人間の思い通りにならないからなめてかかってはいけない、絶対に無理をしてはいけないというのは我が家の家訓でして。(昔、父親が船を持っていたのだ。)いくら経済的に切羽詰まっていたとはいえ、やがて行方不明になるこの映画の漁師さん達の行動はとても生っ粋の海の男達のそれとは思えず、あまりに迂闊で説得力に乏しい。いかにも都会もんが書いた脚本の人物って感じだ。自然災害のスペクタクルを単にSFXを駆使して見せるだけでは退屈極まりないという【ツイスター】の教訓を得た以降の映画のご多分に洩れず、この映画も前半をたっぷり使って人物描写に努めてみてはいるのだが、そんな調子ではただテンポがダレているようにしか見えなくてむなしいだけ。山くらいある大波が迫り来る様子は船酔いしそうなほどに迫力満点だが、結局それしか印象に残っていないのである。
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【ハネムーン・キラーズ】四つ星
アメリカ映画史上の驚異の突然変異 ! まるで剥き出しのコンクリートのように無機質でシンプルな画面で描かれる殺人鬼カップルの愛憎の道行きは、むしろ今の時代に観賞するのこそ相応しいのかもしれない。意外なまでにしっかりとした骨組みには、クラシックと称されるのに十分に耐え得る風格があると思う。
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【ハピネス】三星半
予告編を見てもっとにぎにぎしい感じを想像していたら、案外静かに展開する映画だったのでびっくりした。少しずつ関わりのある多人数のエピソードが平行して綴られるのってちょっと裏【マグノリア】風 !? (全然違うって !! )でもこれだけアクの強いキャラばかりを集合させると逆に全体の印象が弱まってしまう気もして、その辺り、トッド・ソロンズ監督の前作の【ウェルカム・ドールハウス】のように一人をじっくりとあぶり出す展開の方が、個人的には好きだったかもしれない。ともあれ、人間ってどうしてシアワセになれないのかしら ? なんて、ちょっと真剣に考えちゃったじゃなーい !! こりゃ監督の術中にまんまとハマったってこってすよねぇ。
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【ハンネス・列車の旅】四つ星
ひゃ~懐かしいトーマス・クックの時刻表 !! 実は私も昔、ヨーロッパを列車で旅行したことがありまして、この映画の中のどちらかといえば地味めな風景はそのまんま、私にとってのヨーロッパの原風景にもなっているかもしれない。派手なところは何一つない映画だけど、アキ・カウリスマキ監督のタッチに通じるものがある独特のユーモア感は秀逸。(舞台の半分がフィンランドなのも監督がカウリスマキのファンだからだそうだ。)ということでこの映画のお星様は、ヨーロッパの列車旅行の経験がある人と、そのうち行ってみたいなと考えてる人、鉄道が好きな人、北欧が好きな人、そしてカウリスマキのファンの人と分かち合いたい。
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【フォーエバー・フィーバー】四つ星
今もって様々なところで延々と引用され続けている辺り、ジョン・トラボルタとブルース・リーって70年代当時を代表するものすごいイコンなのだなと改めて思う。で、そんなイコン達に真っ正面からオマージュを捧げているのがこのシンガポール映画。これほど何の奇もてらっていない直球勝負の愛情って、どんな大資本が束になってかかったって真似できるもんじゃない。観終わった後知らずとニコニコしてしまうような、モノホンの善良さ。心が洗われるやうだ。
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【ブリスター ! 】四つ星
我々凡人には計り知れないフィギュアオタクの哲学をここまで正面から描こうとした映画は、もしかしたら世界でも初めてなのではないか。ストレートで分かりやすいストーリーの最後にあっと驚く仕掛けがしてあるのはお見事だったし、様々なタイプのマニアの人がうまく絡んでいく展開もメリハリが効いていて面白かった。この映画の為だけにわざわざ創られたフィギュアキャラも含め、隅々まで手抜かりなくまとまっているのがまたエラい。なかなか侮れない一本であった。
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【フルスタリョフ、車を ! 】四つ星
最初に観た時には全然訳が分からなかった。あんまりにも分からないながら、画面に並々ならぬ迫力と異様なまでの強度があるのだけは伝わってくるので、私としては珍しいことに、さんざん予習をしてから再びトライしてみることにした。すると二回目の途中に、ふっと邂逅がやって来たのである ! 全然訳が分からなかったそれぞれのシーンは総て、監督自身が子供時代に経験したスターリン時代の記憶、その心象風景を、独自の形で再現したものであり、そこには、彼が今までの人生で見つめてきたはずの“ロシア的なるもの”のエッセンスが、様々な形で色濃く反映されていたのだ。前後のシーンに意味的な繋がりを持たせて展開させるという、世界中のほとんどの映画で採用されている映画的文法を、アレクセイ・ゲルマン監督は意識的に断つことによって、今まで誰も見たことの無いようなスタイルを創ろうとしたのだそうだ。そうすることによって、ある一定の方法論にあらかじめ飼い慣らされていながらそのこと自体に全く気づいてすらいない我々の既成概念を、真っ向から挑発しているのである。本作は、観る側に作者の意図に正面から向かい合って取り組むことを要求する、今時希有な映画である。ロシアのレンフィルムなどには“映画は芸術である”という金科玉条が今もって生き残っているようなのだが、今の時代にこの映画が生まれてきたのは、あるいはそのような土壌があって始めて可能な奇跡だったのかもしれない。
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【ボーイズ・ドント・クライ】四つ星
この映画には主に3人の男の子が出てくる。でもってタイトルが“Boys”と複数形になっているということは、殺されてしまった性同一性障害のブランドン(ヒラリー・スワンクの熱演 ! )のみならず、無知と偏見故に彼を殺したジョンとトムもまた閉ざされた環境の犠牲者なのだと監督は寛容の眼差しを注いでいるのである……偉いなぁ。でも、あんまりな無知や非見識もそれはそれで犯罪的で、そんなものは粉々に粉砕されて消滅してしまえ ! と常日頃思っている私には、ちょっと真似できない姿勢かもしれない。ともあれ、もっともっと暗くて観るに耐えない感じの映画かと思っていたのだが、自分の生を精一杯生きて一瞬だけど光り輝いていたブランドン君が、案外爽やかでポジティブなイメージを残してくれていたのが印象的だった。
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【ホワイトアウト】三星半
真冬の雪山や巨大ダムといったスケール感のある舞台が効果的で、きっと和製【ダイハード】を目指したのであろう、近来の日本映画らしからぬ迫力に満ち満ちているのは、よく頑張ったね ! と素直に誉め讃えたい。ストーリー等も基本的には面白いと思うので、後はもう少しそれぞれのエピソードを整理して枝葉を磨き込む、といった作業がなされていれば、もっと文句のつけようのない面白さになったと思うのだがどうだろう。例えば、敵側の仲間割れの過程などが少々分かりにくく、そこでテンポが少し落ちている気がするので、ストーリー上の必然以上にばらまかれる織田裕二のアップのシーンを少し削るなどして(いくら彼のための映画とはいえ)、その分他の説明に回した方が全体のバランスは良くなったんじゃないか、なんて思ったりするのだけれども。
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【M : I-2】三星半
私的には前半はちょっとかったるかったかな ? でも後半の盛り上がりは凄い。トム・クルーズというフォトジェニックなスターを得てこそ、ジョン・ウー監督のアクションはますます美しく映え渡る。誰だ、トム一人が目立ち過ぎだとか言ってるのは ? だからこれは、最初っからそういう方向性で企画されてる映画なんだってば。
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【楽園】三星半
誰に頼まれた訳でもなく一銭にもならないような“仕事”を何のために続けるのか ? そうすることが生理だからである。この映画の舟を造るおじいさんと同様、きっと萩生田宏治監督にとっても、映画を創るという行為そのものがそうなのではないだろうか。ドラマとしては少し静か過ぎるきらいもあるけれど、かように感慨深く、ひとごとではない(泣)テーマを正面から丁寧に描く姿勢には好感が持てたので、このお星様で。
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【ランデブー】二星半
夜の海の底を泳ぐお魚系(昔読んだ少女マンガにそういうのがありまして……)の映画って割と好きなのだ。まだプロへの発展途上の人が創った習作といった趣きの本作だが、そういった夜の手触り感はよく捉えられていて、なかなかいいかもしれないと思った。
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【ルナ・パパ】四つ星
予告編によると、フランス辺りのどこかの雑誌が“中央アジアのクストリッツァ”などと評していたのだそうで、そうした比喩は安易だとは思うのだが、ただ切り口としては確かに多少は分かりやすいのかもしれない。『私の青空』のなずなちゃんにエミリー・ワトソンをちょっとだけ混ぜたような元気で表情のくるくる変わるヒロインや、怒りんぼだけど大変に家族思いのお父さん、戦争の傷で頭は回復していないけどとってもやさしいお兄さんなど、非常にユーモラスで魅力的なキャラクター造形が何といっても秀逸。このエネルギッシュな壊れ方は、どちらかと言えば端正なイメージのあるフドイナザーロフ監督の旧作【少年、機関車に乗る】などと較べ(【コシュ・バ・コシュ】は未見です、すみません)、私としては好きなのだが、一般的な好悪は別れるところかも知れない。ただ、後半の展開がもたついたように見えたのが少し残念だったかな ? 荒唐無稽なラストにはしばし呆然。
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【ロスト・サン】三星半
拳銃を振り回すダニエル・オートゥイユというのも案外悪くないかもしれない。しかし、サスペンスとしてそこそこの雰囲気やまとまり感はあるものの、子供の買春という大問題(性的嗜好の自由とは個人同士がお互い自分の意志で楽しめるという前提においてであり、その点ペドフィリア(小児性愛)には問題があり過ぎる)を一過性の娯楽として消化して終わってしまうことになりはしないか ? といった点に、少し釈然としないものが残らないでもなかった。その辺り、この映画を作った人達はどんなつもりだったのかを聞いてみたいところだ。
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