Back Numbers : 映画ログ No.67



【青の炎】三つ星

要するにここを創りたかったんだろうな、と思われるような印象的なシーン(ズバリ、予告編で使ってるところ)はあるんだけど……。
人を殺したいと思うほどに煮詰まった思いを抱え持つ空間の重たさって、あんなもんじゃないですよ。何なんだこの、てんで明るい一般家庭のノリは。これは役者が悪いんじゃなくて(というか、主演の二宮和也君と松浦亜弥ちゃんはかなり良かったのだが)、はっきり明確に演出の失敗なんじゃないかと私は思う。どうして蜷川さん。

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【エルミタージュ幻想】三つ星

ソクーロフ先生版近世ロシア史&エルミタージュ美術館案内、っていう発想自体は面白いと思った。
でもやっぱり……眠かった。今回は全部で何分起きていられたかしら。どうしてソクーロフ先生はあの“必殺 ! つぶやき声”がお好きなんざましょう。そう言いながら見に行っている私も何なんだか。

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【オー・ド・ヴィ】三星半

鰐淵晴子さんと岸谷五朗さんの関係がやっぱりみどころかな。彼女を見つめる岸谷さんの表情にはすごく説得力があると思った。
小山田サユリさんと松重豊とさんの関係はよく分からん、というか、分かりたくないぞー。
岸谷さんのお友達(のようなもの)役の寺田農さんと村田 充さんがいい味出してた。
ミステリーとしてはちょっと尻切れトンボ。雰囲気とかの方が大切でストーリーはそれほど重要じゃなかったのかもしれないが……。
概して、篠原監督の映画って、クライマックスっぽい部分に突入してからちとしつこい傾向があるように思う。(丁寧に説明したい、というのが監督の生理なのかもしれないけど……。)そんなこんなで、前半の勢いに較べ、後半がかなりごちゃごちゃしてしまったのが惜しい気が。もう少し整理した方がよかったのでは ? しかしあの、舟に乗って手を振ってる→イカ食いのシーンはマンガみたい……敢えてウケを狙ったので ?
あがた森魚さんの曲はとってもいいんだけど、後半、パターンが尽きてきてちょっと単調だったかも。それにしてもこの人は昔からバンドネオンがお好きみたいですね(私も好きですが)。
“大人の悪徳”を折り込み済で回ってる気だるげな世界といいますか。お子様が見ても良さが分からんタイプの映画かも。映画としては100点満点じゃないけれど雰囲気は非常に好きでした。

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【女はバス停で服を着替えた】三星半

大人の恋愛と銘打っているが、かつてロマンポルノの雄として名を馳せた小沼勝監督の作品としてみれば、非常に上品で大人しい印象。嫌いじゃないな。エンケンさん(遠藤憲一さん)も出ているし。
製作が『鹿追映画製作委員会』となっており、撮影にもロケ地の北海道鹿追町のバックアップを受けているようだ。それも一種の“村おこし映画”なのかな ?
しかし、サルサをモチーフに持ってきたのはちと失敗だったかも。主人公のお二人はすごく練習なさったとは思うんだけど、やはりそれ自体で観る人を魅せる領域には今一つ。なので折角のクライマックスで、少し泥臭さが出てきてしまったように思う。残念。

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【過去のない男】四星半

カウリスマキ監督もなんか優しくなったなー。身も蓋もないようなシビアな話なのは相変わらずでも、ささやかながらもちゃんとした救いがあるんだもんなー。
予告編で「♪ホノルル~ホノルル~ぅ午前2時~……」とクレイジーケンバンドの『ハワイの夜』が流れてきた時はどうしようかと思いましたが、映画の中で見ると、これが歌詞の意味までピッタリ嵌まっていたので驚いた ! しかも何故か主人公が日本酒に片手に寿司まで食ってるというオマケつき !! わ~何だかすごい愛情を感じてしまうんですが。

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【歓楽通り】二星半

尽くすだけ尽くして全く何の見返りも求めない男 ? ありえねー ! と思ってしまった時点で、お話に全然入っていけなくなってしまった。それでも何とか見るに耐えたのは、主演のパトリック・ティムシット氏の存在感が主人公に一定のリアリティを与えていたおかげだろう。
大体が娼館なんてところが、あんな砂糖菓子みたいな場所じゃないと思うし。これはある種の夢みたいな世界(特にパトリス・ルコント監督にとっての)を描いたのだからそれでいいんだと言う人もあるけれど、そもそもその“夢”に全くついていけない人には、お呼びじゃない映画ってことになりそう。

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【キープ・クール】三星半

チャン・イーモウ監督には都会の現代劇は描けない……なんてことはなかった。会話のやりとりの中に流れる軽妙なユーモアはさすが。
でも中盤以降、場面が固定されてしまった中で、(ポスターの女の子は出てこなくなるし)、会話が似たようなトーンで延々続くのには、ちょっとダレてしまった。
それより何より、このやる気の全く感じられない邦題だけは何とかして欲しい。内容とも合っていないし。折角素敵な原題『有話好好説(もっとゆっくり話そうよ)』があるんだから、もっと活かす手を考えるべきだったのでは。

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【ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲】三星半

様々な映画のパロディなども入っているけれど、基本的には今までずっとジェイ&ボブを見続けてきた人と楽しむさよならパーティみたいな内容かなぁと思った。
ジェイとボブには、結婚してコドモが出来ても養老院に入ってもずっとコンビを続けて欲しかったような気もするけれど、こういう形で青春時代にケリをつけてしまうのも、これはこれでよかったのかもしれない。
かのルーク・スカイウォーカーことマーク・ハミル氏の出演シーンは必見かも ! そういえばレイア姫(キャリー・フィッシャー)も出てるしなー。ケヴィン・スミス監督、ホントに好きなんだなぁ。

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【戦場のピアニスト】四星半

近作を見る限り、ポランスキー監督ってもうあまりやる気がないというか、枯れてしまった人かという気がしてた(スミマセン)。でも、この話(監督の記憶にあった戦争やホロコーストの風景)をいつか形にしたくてずっと胸に暖めていたんだとしたら凄い。そのこと自体に感動してしまった。
他の映画だったら悲鳴と涙とどアップ映像とBGMでエフェクトがかかりまくりの残虐なシーンが、基本的に引きの映像であまりにも淡々と、しかも数限りなく出てくる(まるで感覚自体がマヒしてしまったかのように)のがかえって恐ろしすぎる。戦争を現実に目の当たりにするとこんなふうなのだろうか。
主人公が生き残ってしまったのは、ものすごい偶然の積み重ねである同時に、素晴らしいピアニストである彼を死なせたくないという気持ちが周りの人々の意識に少しずつ働いていたということも影響していたと思う。人間の総ての営みの中で芸術がどれだけ重きを置かれているか、芸術家がどれだけ尊敬されているか、といった事情は、一般的な日本人の感覚とは少し違った面があるような気もする。いずれにせよ、エイドリアン・ブロディの鬼気迫る演技は必見。
でもこれがアカデミー賞をたくさん取ったりしたら、ちょっと嫌かも。第二次世界大戦でヒーローだった時点で記憶が止まっていて、今現在“絶対的な悪”と戦っているつもりの人々が、喜々として票を入れるかと思うと……。(しかし本当に戦争を始めてしまったらアカデミー賞どころの話じゃないんじゃないんですか ? )

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【ふたりのトスカーナ】三つ星

第二次大戦映画の秀作……なのだろう。でも描き方自体はそんなに目新しいものではないと思う。
それにどうも個人的に、子役が好きじゃない。役柄自体の性格もあまり得意じゃないんだが(どうしてなのか詳しい分析はせんとこう)、前からうっすら思っていたんだけど、イタリアの子役ってちょーっとオーバーアクション気味ではありませんか ? で、子役が好きでなければこの映画の魅力は多分半減すると思うので。

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【ヘヴン】四つ星

脚本を書いた故キエシロフスキ監督が自分で監督をするのが世界で一番よかったに決まっているけれど、それが叶わないとすれば、望み得る範囲内で最良の、ほぼ完璧な出来栄えだったのではないか ? トム・ティクヴァ監督は、この映画をあるべき形にするのに必要とされる技術と感性の総てを駆使して、今回の映画化を成功させていたと思う。【ラン・ローラ・ラン】みたいな一発芸的な映画だけの監督さんじゃなかったのね。懐の深いお方だ。
ジョヴァンニ・リビシさんは絶対、ケイト・ブランシェット様と【ギフト】で共演した際のつてで今回の脚本を手に入れ、監督に役のオファーをアピールしたんだと思う。この二人が、映画が進むにつれどんどん双子みたいに似てくるのが、何かぐっと来ます。(ソウルメイトっていう奴ですか ? それじゃ軽い ? )
オープニングのシーンと呼応させて考えてみるに、ラストシーンはやはり心中のシーンだったのだと私は解釈する。この終わり方には相当びっくりしてしまった(成程、だから【ヘヴン】か !! ) 。これは今まで観た中でも五指に入る心中シーンだったのではないだろうか。(【バタフライ・キス】は入れるとして、あとの3つは何??)

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【Mr.ディーズ】三つ星

アダム・サンドラーさんはどうして日本で受けないのか、分析すれば論文の1本くらい書けてしまいそう。かくいう私ももしかしてサンドラーさんの映画は初めてだった ?
しばしばバカにされかねないくらいおマヌケであっても、根が善良で自分なりのライフスタイルや信念がある人が、アメリカではMr.ナイスガイなんだろうか。(最も、サンドラーさんがこのキャラを敢えて演じてみせているのは知性以外の何者でもありえないだろうけど。)日本でも落語とかなら“与太郎”さんタイプのキャラってありえるけど、実際には要領よくない人(or要領よくなろうとしない人)には居場所が与えられないみたいな世知辛いところがもっとあるんじゃないのかな。
目的のためならどんなウソをついてもいいと思っている奴なんて、私は好きではない。いくら後で改心するからと言っても、ウィノナ・ライダーの役どころは微妙。しかしこんなウソに引っ掛かるなんてあり得るの?? それもサンドラーさんのキャラの人柄を表現しているにしたって。
ジョン・タトゥーロやスティーブ・ブシェミも出てます……変な役で。あぁ、もっと使い方を考えて欲しいなぁ。
でも結局は……金かよ !! と思わされるラストの映画がハリウッド映画では少なくなかったりして。裁判映画では特に多いよね、【エリン・ブロコビッチ】とかね。

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【モーヴァン】三つ星

サマンサ・モートンは今までの役柄(【ギター弾きの恋】とか)とは別人みたい。化けるね~この人。
でも、こういうタイプの若い女の子の心の動きなんて私にはどうでもいいみたいで、どうも興味が沸かないなぁと思った途端強烈な眠気が……。リン・ラムジー監督の前の映画もなんか駄目だったなぁ。私はこの監督さんとは相性がよくないのかもしれない。

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【リロ&スティッチ】四つ星

面白かったよー、普通に。登場人物の造形も含めたハワイなる場所の描写がよかった。ここに宇宙的な展開が絡むところが、なんかすごいけど。
でもスティッチ君は、ディズニー始まって以来の暴れん坊とかいう触れ込みの割には、大したアップダウンもなくあっさり改心してしまうし、てんでいい子でやんの。これなら、(ディズニー・オリジナルじゃないけど)ピノキオ君とかの方がよっぽど陰影に富んでいて面白いキャラなんじゃないのか。
この映画はこれで悪くはないけれど、【千と千尋…】と作品としての力量を較べると、桁が1つ違ってしまうのではないか。ただ、アカデミー賞は最も優れている映画ではなく、その時々のハリウッドで最も権勢のある映画に与えられる賞だからなぁ。(その権勢を推し量るいろいろな要素の一つとして、かろうじて質の問題が入っているといったところか。)しかし、戦争を始めてしまったんだから、本来もう、アカデミー賞どころじゃないんじゃないはずなんだけどね。

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【ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔】四星半

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