Back Numbers : 映画ログ No.68



【おばあちゃんの家】四つ星

おばあちゃん、優しすぎるぞ。こんなワガママな子は夜中の真っ暗闇の山の中にうっちゃってしまえー !! と思った。でもこういうのが、今時の都会の子供がド田舎に行った時に示すごく自然な反応なのかもしれないが。
このおばあちゃんはロケ地での現地採用だということだし、ドラマといってもドキュメンタリーに近い要素もあるのかも。この辺り、監督の映画的臭覚はスゴいのかもしれない。
日本の人にも受けやすい題材なのだろうし(館内はとにかくメチャ混みだった !! )、おじいちゃんおばあちゃんや田舎といったものにネガティブな思い入れのない人なら号泣できるのかも。私的には……う~ん、悪くはなかっんだけどね。

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【鏡の女たち】三星半

吉田喜重監督の重厚長大なタッチは相変わらず。反核のメッセージも非常に真摯。完璧に構築されている世界なので、あとは好みの問題か。
でも私的には、この女性観と音楽のセンスがどうもねー。どちらも30~40年前のものみたいで……。

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【きみの帰る場所 アントワン・フィッシャー】三星半

本作の脚本も手掛けたアントワン・フィッシャーさんの子供時代の過酷な実体験を、真正面から丁寧に真摯に描いているのがいいところで、でも、ひねくれて萎縮してしまった心をもう一度もとに戻してやるなんてそんなあっさりと運ぶことじゃないんじゃないの ? と思えてしまう辺りがもの足りないところかなぁと思った。
結局映画を見て、デンゼル・ワシントンさんってやっぱり非常に真面目でまともな方なんだなぁという認識が、また新たになりまして……。

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【キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン】四つ星

父性愛とかが一応テーマらしいが(ディカプリオ君のパパ役のクリストファー・ウォーケンが絶品 ! )、そんなことを深く考えずとも楽しめる、小粋という言葉がよく似合う佳品。何せスピルバーグだのトム・ハンクスだのといったハリウッドのプロ中のプロのワザが結集しているのだからして……。
でも私、個人的には、嘘つきの話って生理的に駄目なんですよね……いつ嘘がバレるのかとハラハラするのが心臓によろしくないので。
しかし、一番問題なのがこの邦題。それなりに英語が出来る人じゃなければ、パッと聞いても何のことだか分かりゃしないだろう(ちなみに"捕まえられるもんなら捕まえてみろ"の意)。変な邦題をつけられてイメージを歪められてしまうのを危惧するアメリカの映画会社の人の気持ちも分からないではないが(というか、過去に日本の配給会社の人が散々勝手にフザけた邦題をつけてきた報いなのかもしれないが)、それにしたって、日本での公開時には日本人の感性にアピールするものをつけなけりゃしょうがないじゃないの。興収にだってダイレクトに響いてしまうでしょうにねー。

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【クローサー】四つ星

香港製の"チャリエン"(【チャーリーズ・エンジェル】)に【マトリックス】的エッセンスを気持ち振りかけた、といった趣き。でも私は"チャリエン"より好きかもしれない。さすがに本場だけあって、アクションとかがスマートなんだよね。
スー・チー、ヴィッキー・チャオ、カレン・モク。3人ともこの映画での役柄が、今まで見た中で一番可愛く色っぽく、カッコよかった!コーリー・ユン監督、こりゃなかなかの手腕ですぞ。
でも(本題とはちょっとズレちゃうけど)『世界監視システム』という発想自体にはもう少し疑問を持って欲しかったなー。結局、"正義"の警察が市民をみっちり監視するってことなんですか ? げげーっ !!

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【サイドウォーク・オブ・ニューヨーク】四つ星

微妙に関わりあうニューヨークの6人の男女の姿を描いた作品。この6人それぞれのライフスタイルや心情などが、(偽の)インタビュー形式なども交えつつ少しずつ明らかになっていくのが素晴らしい ! (しかし、あの歯医者のヤローは、本当に見事なまでに最低男だよね。)
エドワード・バーンズが監督をしている作品には好きなものが多いんだけど、中でも本作が一番好きかもしれない。メジャーな大作に俳優として出演しつつ、こういったパーソナルな感性の佳作をコンスタントに創り続けられるというのは、ハリウッドでも誰もが羨ましがるようなポジションなのではないのだろうか。
ちょっとお堅いインテリ女性を演じるヘザー・グラハムがとっても嵌っていてよかったんだけど、この人、たくさん出ていてどれもなかなかの演技力を発揮している割には、コレといった決定的な評価に結びつかなくてちょっと損してるかも。(でもまだ若いんだし、今後いくらでもチャンスはあるか。)

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【CHICAGO】四つ星

特にカッコよかったのがキャサリン・ゼタ・ジョーンズ姐さんとクィーン・ラティファ姐さん、そして『刑務所のタンゴ』を演じるお姉さま方(出番の割にはクレジットが大きかった筈だ)。この辺りをガッチリ印象づけておいて、あとの人は、それらしく見える効果的な振り付けやカット割りの技術で繋げている気もした。(勿論、どの人の踊りも一定以上の水準ではあるんだろうけれど。)
メディアに翻弄されるショウビズの皮相な世界は、今の時代に鑑賞されてこそ正にぴったりかもしれない。
でもこの映画を見ていると、このダンスはやっぱり舞台でじっくり見たいぞ、と思ってしまうのが困りものかも。

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【少女の髪どめ】四つ星

それまで男だと思っていた子が女の子だったというだけで、そこまで熱烈な恋に落ちるものか……日常的な男女が出会う機会の度合い自体が全く違う文化の下なら無くはない話なんだろうか ?
まぁそういった展開自体はそういうものなんだとして、傍若無人だった少年が、彼女を思うことで、どんどん目に見えて思いやりが深く、感受性の豊かな男性になっていくところがいいなと思った。

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【スパイダー 少年は蜘蛛にキスをする】二星半

デヴィッド・クローネンバーグ監督が敢えてSFチックな風合いを抑えてじっくり内面の描写を……してみると、ただ単に抑揚のない地味なだけの映画になってしまったみたい。
筋としてもそぉんなに目新しいとも思えなかったし、レイフ・ファインズが「オレの俳優としての力量ってスゴいだろう ! 」、と見せつけたがった映画にしか見えなかった……よっぽどクローネンバーグ監督のファンだという人以外には、それほど勧められない。

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【24アワー・パーティ・ピープル】三星半

何せ最近は体がロックを全然受け付けなくなってしまっているのに加えて、この時代のマンチェスター・サウンドに何の思い入れもなければ、レイヴ文化も全然分からない。なので全編、ふぅんという感じしか抱けなかったが、その辺が分かる人には堪えられない映画なんだろう。
でも主人公のトニー・ウィルソンのキャラは面白かったかも。イギリスの山師ってこんななんでしょうかしら。モンティパイソンの人達といい、オックスブリッジ卒のインテリって一体何考えてんのか分からない……。

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【D.I.】四つ星

中東事情を身近に感じにくい一般的な日本人の感覚からすると、(解説文にあるように)この映画を見て大爆笑 !! という訳にはなかなかいかないんじゃないのだろうか。そりゃ、この映画の背景になっている諸々の状況が、ストレスと緊張を孕んだ毎日のシビアな現実である人達とは、同じような反応にならなくて当然だと思うんだけど。
でも、それだからこそこの映画は見ておくべきだと思うんだよね。ごく当たり前に恋もすれば笑ったり悲しんだりもするパレスチナの人々が、笑い飛ばそうとしているものが何なのかを見極めるために。

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【ばかのハコ船】三つ星

性格も自己中の根性なし、仕事も駄目、浮気するのも中途半端……何をやってもいい加減で何一つままならないこの主人公の男って、あまりにも情けなくて、あまりにもイタい。でも、痛いものをここまで痛いがままに描けるというのは、これはきっと大したことに違いない。
後はラストシーンだけ、もう少し練って欲しかったかなぁ。てなところで、山下淳弘監督の次回作にも期待してみたい。

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【ピノッキオ】三星半

松(ピノ)から出来てるからピノッキオなんだとか、本当は鯨じゃなくて鮫に食べられるんだとか、実はここまで困ったちゃんだったのねとか、いろいろな発見が。アレンジされてしまったディズニー版ではなくて、たまにはブンガク的に、本家本元の筋立てに立ち帰ってみるのも悪くあるまい。
ロベルト・ベニーニ監督本人がピノッキオを演じた(ピノッキオの魂を演じたのだと言い張っている)のはあまり好評じゃなかったみたいだが、この企画自体がフェリーニの発案だったってことを考えれば、ある種ゲテモノで当たり前なんじゃないかなぁ。何せパゾリーニも輩出した国なんだし、やっぱりイタリアってヨーロッパ一計り知れないディープな場所なんじゃないのだろうか、と思う今日この頃。
なので私としては結構楽しめたのだが、確かに子供にこれをいきなり見せてもワケ分かんないだろうなぁとは思った。何せ館内にいたどこかの子供なんて怖がって泣いてたくらいだし……。

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【ブラック・ダイアモンド】三つ星

ラッパーのDMXさんとWの主役で、悪役を追っかけるのもチーム編成になってしまったもので、(ジェット・)リー様の出番が少ないったら !!
お話の方も、見せ場を作るために色んなエピソードを入れ込んで無理矢理繋げた印象。う~ん、今一つ。エンディングでの脇役2人組の与太話が一番面白かったかも。
しかしアメリカ人は相変わらず核をなめとるなー。あれだと普通、空港も全部吹っ飛んでリー様も死んどるっちゅーの。

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【北京ヴァイオリン】四つ星

お父さん、アナタいい人過ぎるって。息子のためならなりふり構わないお父さんの姿って、こりゃもーすげぇあざといくらいまでにベタなのかもしれない。それでも、この父と息子の絆にはうるっと来てしまった。
この少年の弾くヴァイオリンの音色が素晴らしいので、それだけでついガードが緩んでしまうんですよね。何だ、チェン・カイコー監督、やりゃあ出来るんじゃん。もう二度と、中途半端なプロデューサーに踊らされたおポンチな映画なんか作らないで下さいね。

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【ベッカムに恋して】三星半

ロンドンに暮らすアジア系の移民コミュニティというと【マイ・ビューティフル・ランドレット】辺りを思い出してしまうのが古い……本作は、家族の反対に関わらずサッカーを続けようとする女の子の話なので全然違うけど。(ちなみに監督さんも移民系の女の方だそうです。)
素敵ないいお話だなぁとは思うんだけど、内容の予測が割とついてしまうところと、演出がこなれきれていない部分がところどころに見受けられてしまうのが難点だったか。
女の子と恋仲になるコーチ役のジョナサン・リース・マイヤーズ(【ベルベット・ゴールトマイン】他)が、いい役をもらってるという感じでよかった。あと、ライバルの女の子のお母さん(フェミニン趣味で体育会系の娘との断絶に悩む)がなかなか笑える !

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【棒たおし ! 】四つ星

すっごい真っ当な切り口の青春もの ! 松本稔さんのこの脚本、だてに城戸賞を取ってない ! 前田哲監督もさすがに手堅い良いお仕事をなさっていらっしゃる。
男子高校生役leadの皆さん(って誰が誰だか分かっていなくてごめんなさい……)もなかなかの好演。単なるアイドル映画と片付けてしまうには勿体なさ過ぎる水準の高さ ! こりゃかなり必見の部類かもしれません。

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【ぼくんち】三星半

阪本順治監督も「ある種の"ユートピア"=現実にはありえない世界」を描いたとおっしゃっていたことだし、本作は、原作の筋立てとスピリットだけを踏まえて、あとは全く監督御自身で構築し直した世界なのだとお見受けした。
子役がヘタ !! という感想をよく見かけたんだけど、この世界観だと、子役がやたら上手だったらかえって気持ち悪いんじゃないのかしら……。
そんなこんなで、私はなるほどな、と思ったのだが、原作が好きな人などにはいまいち、ということになってしまっても仕方がないのかもしれない。
でも思ったんだけど、阪本監督は、基本的にはやっぱり視点が超キビしい人なんじゃないんですかね。だから、本人がいくら創りたくても、実は人情ものは生理的に難しいんだったりして……。

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【魔界転生】三星半

かつての深作版がケレン味たっぷりの演出で見る者の度肝を抜くものであったとすれば、本作は(CGでの演出も取り入れつつも)正統派のチャンバラ時代劇の文脈に流し込んで再構築する試みであったように思う。平山秀幸監督のそのチャレンジ精神は是非とも買いたかったんだけど……。
佐藤浩市さんはやっぱりカッコよかったし、演技ワンパタの窪塚君もまぁなんとか見れる範囲に留まっていた。でもなぁ……時間の関係でしょうがないかもしれないんだけど、折角ゴーカな配役の魔界衆がゾロゾロ出てくるのに、皆あっさり出番が終わってしまうんだもーん !! 結果、すごく物足りなくて消化不良な感じが残ってしまったのだった……。この配役でやるんなら3時間は必要じゃないすかねぇ。私、それでも全然OKなんですけど。

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【ミレニアム・マンボ】三つ星

ホウ・シャオシェン監督は、どこかしらの時点で、今の若者達の逡巡する姿を見詰めなければいけない、と思ったのかもしれない。で、ホウ監督的にはその分析は成功しているのかもしれないが、それって他の人が見て、果たしてどこまで面白かったり意味があったりするものなのだろうか ?
スー・チーさんのフォトジェニックなところにまだ救われているけれど、それがなければ見ているのもかなり苦しかったかも。
しかし本作って逆に、夕張の映画祭のことに言及してみたかっただけだったりしないか ? (しかもかなり無理矢理に。)

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【MOON CHILD】三星半

アジアン無国籍ものの体裁を取りつつ、結局はヴァンパイア&青春友情ものだったのね。ま、ありていに言えばそんなにみっちりと内容があるわけではないんだけど、雰囲気や意匠はそれなりに面白いんじゃないかと思った。
原案も手掛けたというGacktさんは、演技もなかなかで磨けば光りそうだったけど、HYDEさんはちょっと……う~ん、申し訳ないけど、ちょっとナルさん入ってましたかしら。
そんなところが少し珍品になりかかっている所以かとも思ったけれど、どんな企画でも受けて立って自分の映画にしてやろう ! という瀬々監督の気概は買っちゃろう ! と思った。(あぁ、結局、単なる監督のファンなもので……。)
しかし、若~い人ばっかりの場内で、監督のファンだから来ているというのはもしや私一人だったのでは……。

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【《ヤマムラアニメーション図鑑vol.1》】四つ星

いろんな手法を変幻自在に操るテクニックの確かさ、柔軟さ。国内の作家だというのに今まで山村浩二さんを存じ上げなかっただなんて、不明を恥じ入るばかりである。
ちなみに私は少ぉし毒を含んでいるような作品の方が好きなのだが、『水棲』『バベルの本』『頭山』などが特に面白かった。特に話題の『頭山(あたまやま)』は、落語がモチーフになっているのだが、荒唐無稽なナンセンスさと和テイストを現代的に翻訳しているところが実に見事だった。落語ってこんなに面白いものだったのね。

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【許されざる者】四星半

また武智鎮典脚本のヤクザもの~ ? と言いながら、加藤雅也×北村一輝×藤竜也なんていったら見に行かない訳にはいかないじゃないかぁ !! あぁ、こりゃまた三池監督の思うツボ……。
上記の三人は当然イイに決まってるとして、中年ラリパッパおやじを嬉々として演じている石橋蓮司さんがまたスゴかった !
敢えて難点を言えば、申し訳ないけれど相田翔子さんかな……お人形さんみたいに可愛らしいばかりで、雅也サンと惚れ合ってる恋女房って感じが全然しないんだもの。やっぱり三池監督は、女を描くのだけは苦手なんだな、フッフッフ……。
でも概ね120%満足。おなかいっぱい堪能させて戴きました !

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【わたしのグランパ】四つ星

筒井康隆の痛快な原作&菅原文太さんにぴったりの役柄。アクションもあり、ほろりとさせる部分もあり、これはとても手堅い出来といった印象。
その手堅さに好感が持てると言えばそうだけど、その分地味な印象になってしまったといえばそうかも。もうちょっとはっちゃけた感覚があってもよかったかな ?
この作品もサントラがどうもねぇ……ムーディなジャズっぽい音楽って、私の感覚からすると、この映画には合っていないような。

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【WATARIDORI】四星半

小さい鳥はずっと一生懸命羽ばたいているが、大きい鳥は一旦気流に乗ったらグライダーみたいに優雅に滑っている(その代わり飛び上がるまでが大変)。特に大きな鳥が群れをなして飛ぶところなんて、こんなに見事な生き物が地上に創られていたのかと思うくらい、実に実に美しい。(鶴なんかも綺麗だけど、特にペリカンが超カッコイイ !! )実は私達が知っている鳥の姿というのは、近所を少しだけ飛んでいる鳥とか動物園の鳥ばかりで、長距離を飛行する姿なんてほとんど見たことがなかったんだ……ということに初めて思い至った。
アマゾンの極彩色のオウムもアンデス山脈のコンドルもアメリカのハクトウワシも南極のペンギンも、みんな渡り鳥だったとは ! (飛ばなくても波に乗るのもあり。)超小型飛行機&カメラを開発し、鳥達に卵の頃から慣れさせてやっと取ることが出来た驚異の映像は、一生に一度は観ておくべき !!
どの鳥も、ただ真っ直ぐ前を見つめて一心不乱に飛んでいる。その姿を見つめているだけで滂沱の涙が……。

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