Back Numbers : 映画ログ No.79




【愛についてのキンゼイ・レポート】四つ星

大学時代に何かの資料で『キンゼイ・レポート』を読んで、世の中には凄いことをする人がいるもんだなぁと思ったものだ。偏見のモノサシによって異常・正常というレッテルを貼られ、すっかり歪められていたセックスなるものの概念に、相違における許容というスタンダードを持ち込んだのは非常に偉大な仕事だったんじゃないだろうか。これは、アメリカ人のセックスに対する意識に多大な影響を与えただけでなく、例えば日本のような国にも、直接的にも間接的にも、多くの影響を与えたはずである。
キンゼイ博士は、一言で言うと、マジメが過ぎるくらいマジメな人。博士はこんな人だったのか、という興味だけでも面白く観れたのだが、全く何も知らない人でも、彼の真実の探求に対するパラノイアックなまでの執着ぶりやワーカホリックぶり、自らの信条を実践する一風変わった私生活などに、ついつい引き込まれてしまうのではないかと思う。ともかく、リーアム・ニーソンが久々の主演というだけでも、かなり嬉しかったりして。

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【アイランド】三つ星

将来的に、これに近いようなことをやろうとする企業が出てくる危険性は無くはないのかもしれない、と思うと、これは論議されるべき命題をいくつも含んでいるプロットのように思われるのだけれど、そんなディープさは見事なまでに素通りして、カーアクションにガンファイトにラブシーンに……という典型的に底が浅~いハリウッド娯楽大作に仕立て上げているというのは、ある意味、スゴいことなのかもしれない。清水玲子さんのコミックス『輝夜姫』とちょっとだけ設定が似てるかなと思ったのだけれども、無論、『輝夜姫』の方がずっと壮大で奥深い。だったら、この映画を見るお金を貯金してそっちを買っときゃよかったかもしれないね。

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【アバウト・ラブ 関於愛<クワァンユーアイ>】二星半

日本・台湾・中国のオムニバス。私の好きな加瀬亮さんや塚本高史さんが出ているもので(例の上手じゃない女優さんが出ているのには目をつぶって)つい見に行ってしまったんだけど……。言葉が通じない二人、というテーマは少し目を引いたけれど、結局、よくある若い人達の煮え切らない関係の話に終始してしまったように思えてしまった。折角の合作なのになー。なんか勿体ない。

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【いつか読書する日】四つ星

田中裕子さん演じるヒロインが、夜明け前の坂道を駆け上って牛乳配達をしている時、ガラス瓶がカチャカチャと規則正しくリズミカルな音を立てるのが耳に残る。きっとこのヒロインは、秘めた思いを押し殺しながら独りで暮らした長い年月を、こんなふうに、人にペースを乱されることもなく、軽快に走り抜けてきたのだろう。ずっと密かに思い合ってきた岸部一徳さんが×××……というエンディングは、一瞬、何だそりゃ~と思ったりもしたけれど、きっとこのヒロインは、このエンディングの後も、以前とほとんど同じように、変わらぬ地道な“生活”を続けていくということが言いたいのかな、ということに思い至った。彼女は、まるで呼吸をするみたいに自然に、仕事に通い、独りのご飯を作って食べ、周りの人には気を配り、時には読書をしたりしながら、自分の“生活”を紡いでいく。この映画では、その“生活”が最も大切なものとして描かれていて、このストーリーは、ヒロインの“生活”に映り込んでくる風景であるかのようにも思えた。これは、今までありそうでなかった視点で、緒方明監督は、実はもの凄い独自の境地を開拓したんじゃないのだろうか。
で、これはまるでもって、若い人向けの題材ではないと思う。30代以上限定ということでどうぞよろしくね。

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【頭文字<イニシャル>D THE MOVIE】四つ星

字幕版で見たのだけれど、今回ばかりは日本語吹き替え版でも見てみたかった。日本のコミックスが原作とはいえ、一応香港映画だから、まさかそのまんま日本を舞台にしていて、主人公の乗るハチロクにはやっぱり「藤原とうふ店(自家用)」などと書かれているとは思わなかったので……。キャストも香港・台湾・日本の混成チームなら、日本でロケまで行っている。アンドリュー・ラウ監督、アラン・マック監督を始めとする香港映画人のフットワークの軽さにはつくづく感心する。
まぁ筋はそんなに大したことないですよ、究極的には車で走りっこするってだけですから。でもその競走シーンが見ていてゾクゾクする。車のことはからきし分からん私でも、ヘアピンカーブの連続に速度を落とさず突っ込んでドリフト走行してるのを見るとスゲェーっ !! て思う訳ですよ。高橋レーシングチーム、バンザ~イ !! あなた方は日本の誇りだ ! あ、そうそう、主人公のお父さん役のアンソニー・ウォンは今回もカッコよかったですよ。私の大嫌いな飲んだくれオヤジの役だというのに……。

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【ヴェラ・ドレイク】五つ星

マイク・リー監督のお父様は産婦人科医で、お母様は助産婦だったという。監督は、両親とはそのような話はしなかったし、この映画は自分の経験から出来上がったものではないと仰っているが、そういう問題に関して人一倍センシティブであり続けてきたという側面はあったのではないだろうか。
舞台は第二次大戦後のロンドン。セックスに関して、野郎どもはお咎め無しで、女性達ばかりがその皺寄せを黙って耐えなければならない不条理な世界。主人公のヴェラ・ドレイクは、ダンナから「黄金の心を持つ女性」と賞されるほどに(普通ダンナは自分の奥さんのことをそこまで褒めないよね)、誰でも親切で、働き者の、本当に心根の美しいおばさんで、だからこそ、お金も受け取らず、誠心誠意人助けの気持ちから、女性達を密かに中絶させるという行為に手を染めていたのである。
彼女は自分の行為自体を悪いこととは考えていなかったはずだ。何故なら、彼女自身、昔そのことによって救われたらしいという経緯があったことが仄めかされているから。逮捕された彼女が周りの人間に何度も謝ったりしているのは、自分の行為の道徳性が云々というよりは、彼女が何よりも大切にしていた平穏無事な日常や、世界の秩序を壊してしまったと感じたことに因るのだろう。終盤のあるシーンで、彼女は同業者達に出会い、彼女らが同じ行為を確信犯的に何度も繰り返していることを知る。もしかしたら、彼女もまた、求める人がある限り、これからも同じことを繰り返すのではないだろうか、と思った。
こんなお話が、総ての登場人物の驚異的な演技によって、非常に繊細な人間ドラマとして紡がれているのが圧巻である。付き合っている人がいる女性は、是非ともカップルで観に行ってみよう。彼氏の反応が芳しくないようなら、もしかして別れた方がいいかもしれないよ ?

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【姑獲鳥<うぶめ>の夏】四つ星

原作者の京極夏彦氏ご自身が、実相寺昭雄監督の映画の空気感を、その世界感のベースの1つにしているみたいなので、今回の組み合わせは理想的と言えるのだろう。今回は珍しく原作を読んでみたのだが、セットもそのまんまだし、俳優さんもそれぞれよく嵌まっているし、原作の世界観をぴったりと再現できていたと思う。ただ、400ページ以上ある原作のすべての要素を映画に持っていくのはやはり至難の業で、筋書きを追っかけることに終始して終わってしまった感があるのが、ちょっと勿体なかったかな。

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【運命じゃない人】四星半

ある一晩のすったもんだを、関わった5人の視点それぞれの視点で切り分けていくと……。とにかくこの完璧なパズルのような脚本が凄い。ただ話が入り組んでいるということではなくて、それぞれのキャラクター(日本一のお人好しの主人公、彼の中学時代からのツレであるなかなか有能な私立探偵、いわくありげな主人公の元カノ、元カノの愛人らしきヤクザの組長、そして、こっぴどく振られたばかりで半ばヤケになっている女性)が立っていて、皆それぞれに人間くさく魅力的に描かれているからこそ、お話にもついつい肩入れしてしまうのよね。こんなにもきちんと計算されていて、しかも人間の存在のおかしみみたいなものまでちゃんと出ている脚本を書ける人が日本にいたなんて驚きだ ! これこそ、今すぐにハリウッドにでも売り込んで高く買ってもらってもいいくらいなんじゃないの ?
演じている役者さんも、板谷由夏さん以外あまり存じ上げない方が多かったのだが、それぞれ完璧な存在感を作り上げており、日本の役者さんはいつの間にこんなに層が厚くなったのだ ? と驚かされてしまった。特に、主人公の中村靖日さんという方の“凡人オーラ”とでも呼べるような独特の存在感が凄い。これは狙って出せるものではないんじゃないか。この人、やりようによってはとても面白い役者さんになる可能性があると思うのだが。
“30過ぎたら運命の出会いとか自然の出会いとか一切ないから”、という台詞が秀逸。とにかく、内田けんじ監督のこれから先の作品には、絶対に要注目だ !!

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【映画 日本国憲法】四つ星

私は基本的に、今までいろいろ見てきた映画やら読んできた本などから、日本が先の大戦までに中国や韓国を始めとするアジアの国々でやってきたことは、百代くらい祟られて呪われても仕方がないんじゃないかと考えている。そして、日本政府がどう考えていようが、アジアの国々の人々は、先の戦争で与えられた被害や苦痛に対して日本から充分な謝罪を受けていないと思っていることは確かだとも思っている。そんな訳で、憲法第9条の存在が、彼等に対しての謝罪の代わりとなり、一定の安心感を与えてきたという意見には、ある程度の説得力はあると考えている。現在、“現実的な”人々が9条の改訂を声高に叫んでいるけれど、9条を放棄して、戦後のアジア外交の枠組自体を根本的に壊し、まがりなりにも積み重ねてきたその歴史を無に帰してしまうのは、“現実的に”考えて利益になることなんだろうか ? そもそも、改憲派の人々が“国際貢献”とか言っているのは、実はアメリカの提唱する世界観やアメリカの国益に貢献するというだけの話で、それを支持しているのははっきり言って世界中でアメリカだけなんじゃないのか ? 実際の自衛隊の存在とどれだけ齟齬を来たしていようが、建前としての9条は絶対に死守するべきではないかと、私はこの映画を見て、改めて思った。勿論、この意見は皆様に強要するものではないけれど、これから未来に向けて、人類はどういう方向性を選択していくべきなのかということは、いつかどこかで、何かの形で考えてみて戴けると嬉しいかもしれない。

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【おまけつき新婚生活】三星半

借家人つきでコンドミニアムの権利を買い取るということ自体、日本にはあまり無い発想なんだけど、その店子のばーさんがいわくつきで、新しく大家になった新婚夫婦が散々な目に会わされる……こんなばーさんにそこまでヒドいことをされても、この夫婦、表面上はニコニコ愛想良く応対しようとしているのが、そもそも納得できないんだが。もしかすると、そもそも文化的に、日本人とアメリカ人は他人との距離の取り方が違っているとかいうのがあるのかもしれないが、例えば騒音がうるさすぎるとか何とかでちゃんと証拠を取って、アメリカ人の大好きな法的手段に訴えればいいじゃんか。とにかくブラック・コメディとして膨らませるために、細かい設定は無視してかなり無理矢理引っ張っている感じが、どうしても否めない。オチも、えーっていうような感じで、後味もかなり悪し ! せっかく、私の大好きなベン・スティラー様が出ているとはいえ(奥様役はドリュー・バリモアです)、これは見ていて釈然としなかったなぁ。

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【亀は意外と速く泳ぐ】三つ星

今年の亀は泳いだり飛んだり大変だ……という冗談はさておき。本作は、今年【イン・ザ・プール】も公開になった三木聡監督作品。脱力系の笑い、って言えばいいのかな ? 微妙なトホホ感が、ハマれる人なら面白いのかもしれないけれど、なんかこの煮え切らない感じに、私は終始、いらいらしていた。こういうのが楽しいというのは平穏無事でいいのかもしれないけれど、私にはそんな毒にも薬にもならない話なぞどうでもいいことのように感じられて、そんな映画を見ている時間があったら他のことがしたい、と思っちゃったんですよね……。

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【亀も空を飛ぶ】四星半

掘り当てた地雷を業者に売って日銭を稼いだりしているような子供達の境遇も充分ひどいけれど、兵士達に強姦され子供を生んだ難民の少女の辿る運命の悲愴さとなると、もう筆舌に尽くしがたい。でも彼等を見ていても不思議なほどに“可哀そう”という気持ちにならないのは、おそらく、彼等自身が自分達を“可哀そう”とは微塵も思っていないからだ。彼等は、「助けて下さい ! 」といくら叫んだところで誰も助けてくれないことを端から知っている。そのことが余計に胸に突き刺さる。バフマン・ゴバディ監督の映画は、クルド人がどうこうといった政治的意図よりも何よりも前に、まずドラマとして胸に迫ってくるのだということを、もっと世間に知らしめるべきだと思う。

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【逆境ナイン】三つ星

とりあえず、島本和彦さんの原作のテンションをそのまま映画に持って行ったのは天晴れだろう。後は好き好きの問題で、ハマれる人には面白いんじゃないかと思うが、やっぱり私は、もともと、原作の世界観自体があまり得意じゃないみたいな気がする。こんな一見馬鹿馬鹿しい“逆境”を、「これが逆境だ~ ! 」とか叫びつつ、自らわざわざ求めてまで熱くなりたいというのは、その人の人生がいかに波風立たない平和なものであるかということを証明しているんじゃないかとも思えるのだが……私の人生、悲しいかな、ギャグでそういうことやってる余裕は無いのかもしれない。

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【銀河ヒッチハイク・ガイド】三星半

銀河バイパスが建設されることになり、地球は取り壊しとなりました……で何の因果かたまたま生き残ってしまった主人公が、宇宙のあちこちに引き回される。とにかく序盤は、畳み掛けるような展開で一気に引き込まれたけれど、後半は変わった意匠にも目が慣れてきてしまったり、地球創生の秘密なぞにはあまり興味を引かれなかったリで、残念ながら少々ダレてしまったかな。ところで、IQ16万でうつ病のマーヴィン君というロボット、ちょっとデカすぎやしませんか ? 小さいasimo君くらいのサイズならかわいかったかなぁと思うのですが……。

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【コーチ・カーター】四つ星

高校のクラブ活動というのはそのうち絶対終わってしまうもの。華々しい栄光を一瞬掴んだとしても、生徒達のその後の人生はどうするんでぃっ !! ……てことで、生徒達をビシビシ鍛える一方、勉強の成績を上げることも強要したバスケのコーチが実在したそうな。このコーチのカーターさん役はサミュエル・L・ジャクソンで、よく説教クサイという感想を見かけるんだけど、そうかなぁ……これでも、昔のスパイク・リーなんかと較べたら全然大したことないんだけど。とにかく、高校終わっても人生は続く、というのも、礼儀作法が出来ない奴は何をやっても駄目だ、というのも正しい指摘だと思うので、同じスポーツ映画でも、そういう切り口で作ってみるのも新鮮でよかったかなぁと思う。起承転結がしっかりしていてドラマとしても申し分ないし。

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【最後の庭の息子たち】四つ星

ボリビアのウカマウ集団製作。上映会に行ったことがなくて、お恥ずかしながら、彼等の映画は初めてだった。彼等の生きていく姿勢の表明のようなものは勿論あちこちに透けて見えるのだけれど、もっと政治的メッセージが前面に出ている映画を予想していたら、登場人物達の心情に寄り添ったドラマとしてきちんと成立しているものだったので、意外と言っては失礼かもしれないけれど、少し驚いた。また、定職が無くてぶらぶらしている都市の無軌道な若者なんぞも描かれていたりしたので、案外、どこも国も似たようなものを抱えている部分もあるんだなぁとも思ったりした。後はとにかく、アンデス山脈の山間の大地と、あの空の広さと鮮やかさ。今まで見たことの無い風景だった。

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【サマータイムマシン・ブルース】二星半

部室のエアコンのリモコンが壊れたので、たまたま手に入れたタイムマシンを使って、壊れてない昨日のリモコンを取ってこようと……なんかどうでもいいような話で、全然興味が湧かないのですが。青春時代の無邪気で楽しい馬鹿騒ぎというものにも、私は全然ノスタルジーを感じないタチだしなー。舞台劇の映画化ということで、舞台で見ればまた違った印象になるのかもしれないが……とにかくすみません。私には合わなかったです。

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【サヨナラCOLOR】三星半

初恋の憧れの君の他に、お手軽に欲求を満たすための現実のオンナだのがいて、セクハラしまくりでも職場を辞めさせられたりせず、みんなにニコニコと受け入れられている中年ハゲおやじ(監督も兼任の竹中直人氏)、挙句の果てにはその憧れの君からも…… ? ってソンナバカナ !! 現実にはそんな都合のいい話、ある訳ないでしょ !! ハナレグミの美しい主題歌や死にオチにごまかされてる場合じゃないっての。ま、男性にとっては、ある意味、こんなふうな話って(思う人には気持ちを捧げまくるという側面も含め)、理想的なんでしょうかねぇぇ。お勉強のつもりで見ているとある意味面白いかもしれないか ?

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【さよならみどりちゃん】四つ星

真性のロクデナシ男を好きになってしまった女の子が主人公の、南Q太さんのコミックスが原作。イケメンで愛想はいいけれど人を人とも思っていないような男といい、そんな男と知りながらずるずると関係を引き摺ってしまうヒロインといい、まるっきり私が好きではないタイプのキャラクターなので、演じ方なり演出の仕方なりを間違えたら、おそらく1分たりとも見ていられない話になっていたはず。これを最後まで、嫌になることもなく結構惹きつけられて観てしまったのは、やっぱり古厩(智之)監督ってセンスあるんだなぁと思った。勿論、微妙なキャラクターを的確に演じていた西島秀俊さん、星野真里さんのおかげも、とても大きかったのですが。

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【四月の雪】四つ星

筋自体は、どこかで見たことあるようなよくある不倫カップルの話。そんなウダウダした話でも嫌にならずに観ていられるのは、ヨン様とソン・イジェンさんの熱演と、主人公達の感情を丁寧に掬い上げるホ・ジノ監督の演出のおかげだと思う。映画としてはかなり完成度は高いと思うんだけど、ただ、このストイックな演出法は、起伏がはっきりしているドラマの演出方法に慣れているかもしれないファンの一部の皆様には、静か過ぎると映ってしまう可能性があるかも……難しいものですねぇ。

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【7人の弔<とむらい>】四つ星

題名自体は黒澤映画のもじりみたいなのだが(同じダンカンさん脚本の【生きない】もそうですね。ダンカンさんは本作では監督もなさっています)、そんなところからこんな映画を1本作り上げてしまうことが出来る発想力って、単純に凄いと思う。この映画に登場する、借金の返済のために子供を臓器売買業者に売り払ってしまおうとする親達は、ちょっと極端にカリカチュアライズされているとは思うけど、でも残念ながら、子供の命をあまり大切には思っていない親というのはどうやら世間には存在しているらしいから、ある部分では真実を映し出している側面はあるのではないか。
いくら私が、女を強姦する奴と子供を死に至らしめようとする奴は死んでも当然だと思っていたとしても、この結末に爽快感を感じる、ということ自体後味が悪い。でも、子供は親を選べず、馬鹿な大人も撲滅することが出来ないのなら、子供自身が強くなる以外に無いというのは、ある意味、本当のことなのかもしれない。ダンカンさんの世界観には独特のシニカルさがあるのだな、と思った。ただ、御本人は、メッセージ性などを込めたかった訳ではない、といったようなことをおっしゃっていたようなのだが。とにかく、監督の次回作も期待してみたいと思う。

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【SHINOBI】三つ星

結論から言うと、危惧していたほどには悪くもなかった。それはおそらく、主人公の二人のシーンにそれなりに情感があったのと、アクション・シーンがそれなりに見れるものだったから。でもそのうち、筋立てのあんまりな底の浅さにイライラしてきてしまい、それは終盤に向かえば向かうほど強くなってきてしまった。思うにこの下山天という監督さんは、ある種のプロデューサーさんやクライアントさんが想定した通りのイメージのものを作ることが出来る人なのではあるまいか。要望通りのものが作れるから仕事が途切れることもないけれど、平凡な頭で発想する以上のものを創造することもできない。でもそこんところ、もう一歩先の前人未踏の領域にまで踏み込めないとつまらないものなんじゃないんだろうか、映画というものは。

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【17歳の風景 少年は何を見たのか】三星半

自転車でただひたすら走るこの風景を見ていて、【白 THE WHITE】という映画が思い出されて仕方なかったのはまぁ置いといて。私には、画面を見ていても、少年が母親殺しに至ったという動機や追い詰められたその心情が思い浮かびにくかった。ただ、この風景の積み重ねが、ずっと見ていると何か胸に溜まってくるものがあるという感触は分からないではなく、もともとこの少年に近い心情を抱えている人なら、同じ風景の中にもっと違ったものが見えてくるのかもしれない。現在の自分は、幸いなことに、追い詰められた心情からはかなり程遠いし、大体が、追い詰められたら他人よりも自分を殺してしまう人間だから、もともと、この映画の良き観賞者ではないのだろう。

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【自由戀愛<ジユウレンアイ>】四つ星

大正時代のブルジョアの皆さんの、なんやこいつらー !! という設定を救っているのがキャラクターの説得力。まずは豊川悦司さん。愛人が妊娠したから子供が出来ない正妻を離縁する、という家族の決定に反対もせず、元正妻も愛しているからと言って愛人にしてしまうようなウツケた男をうっかり誠実な男に見せてしまうのは、相当な離れ業だと思う(まぁこの男、自分の気持ちには誠実なのかもしれないが……)。長谷川京子さんも、無邪気が過ぎて無神経、挙句に墓穴を掘ってしまい、多少苦労に揉まれはするが最後まで浮世離れしたキャラクターであり続けるヒロインに、ある一定のリアリティを持たせているというのは相当スゴい。木村佳乃さんも好演だったと思うんだけど、最初からバリバリのキャリア・ウーマン・タイプに見えてしまったのが少しだけ分かりにくかったかな。昔の普通の人妻→働く未亡人→野心的な愛人→名家の正妻→子連れの家出妻→『青鞜』に傾倒する職業婦人、という変化の幅がもっと見え易いと、「自由恋愛」というタイトルに謳われているこの3人の不思議な関係性が、更にくっきりと浮かび上がってきたのではないかと思う。ともあれ、原田眞人監督がこういう映画も創れるというのが凄く意外なのだが、今回は相当面白かったです。

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【深紅】三つ星

脚本が野沢尚さんの遺稿ということで見に行ってみた。ある殺人事件の加害者の娘と被害者の娘、という着眼点は鋭くて、この二人の身の上に社会の色々な病理が投影されているところはさすがだと思ったんだけど……要するにこの二人、お互いの酔狂に付き合っているだけとも見えなくもないのだが、そういった関係性に至るまでの細かな心の動きの描き方が部分的にかなり雑で、最終的には何だかよく分からなってしまったような気がする。噛んでしまいそうなムズカシイ台詞が表面で上滑りしていて、キャラクター自身が発している言葉に聞こえなかったところが多々あったのも気になった。ヒロイン達の存在感自体は悪くなかったように思うので、全体的に、演出をもっと粘って欲しかったような気がするのだが。

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【シンデレラマン】四つ星

家族を何よりも大切にする男気溢れるボクサーが、貧乏という逆境を撥ね退けて奇跡のカムバック ! あぁもうこれはまるでもって、ラッセル・クロウのために用意されたような役柄ではございませんか。でもって監督がロン・ハワードで、奥さん役もレニー・ゼルヴィガーでしょう ? そりゃ100%感動的な映画になるに決まってる。観てみたら期待に違わぬ出来だった。文句のつけようがありませんっ。

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【スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐】四つ星

【スター・ウォーズ】は基本的に勧善懲悪の世界、そこで悪を描こうとするのはやっぱり本質的に難しいことなんじゃないかな、というのが、新3部作全体の感想となってしまった。本来、善や悪というのは絶対的なものではなく、相対的な見え方の問題で、勧善懲悪というのはその視点のある側面をごくシンプル化したものである一方、どうしてそれが悪として成立するのかということをちゃんと描こうと思ったら、そこにはかなり多層的で複雑な視点が必要となってくるんですよね。で、物語の単純化と複雑化が相容れなくて、表現の上で、あちこち大小の軋みが見えたのが今回の作品だったように思われてならない。
そんな中、新シリーズでの一番のミスキャストは実はナタリー・ポートマンだったんじゃなかろうかと思った。彼女は、ただそこに立っているだけで複雑なニュアンスを体現してしまうという得がたい資質を持っているため、アミダラさんは実は物事をそんなに深く考えている訳ではないシンプルなお姫様キャラなのだということになかなか気づけず、余計に混乱してしまったような気がする……。
勿論、旧シリーズと直接繋がっていくようなシーンは多々あり、そういうところを見るとやはり、おおぅ、と思ったりするので、それなりには楽しめるとは思うのだが、一個のドラマとして心から堪能できる出来栄えだったかどうかというと、それは少し疑問に思う。でもまぁ、長年お疲れ様、の意味も込めまして、お星様の数はこんなもんで。

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【せかいのおわり】四つ星

ワガママ身勝手な一方の女の子のキャラクターはあんまり好きになれなかったけど(でも、こういうキャラクターをきちんと演じられるのはエライと思うけど)、彼女のことを好きで好きでたまらない幼なじみの男の子や、その男の子のことを優しく見守っているバイセクシュアルの店長さんのキャラクターは秀逸だと思った。店長さん役の長塚圭史さんもよかったけれど、幼なじみの男の子役の渋川清彦(KEE)さんは本当に本当に素晴らしかった !! この登場人物達の間の取り方や空気の作り方が抜群によい。これは風間志織監督の演出が効を奏している部分もあるのだろう。
彼等が暮らす部屋の熱帯魚の水槽が“完全なる世界”のメタファーにもなっていて、この水槽が壊れてしまうところに、微妙なバランスを保ってきた彼等の世界の終焉が示唆されている。この、ミニマルな個人レベルの世界の終りに、この世の終りを導くかもしれない世界情勢の混沌までを重ねあわされるのは少し大仰かなとも思ったりもした。けれど、彼等の閉じられた世界の物語だけだと、もっとこじんまりとした印象になってしまっていたのかもしれないから、微妙なところかもしれないですね。

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【ターネーション】四つ星

これはもうまるっきり、個人製作のアート・ドキュメンタリーだよね。だから、劇場用ストーリー映画しか見たことがない人がいきなり見たらビックリして、もしかしたら拒否反応を起こしてしまうこともあるかもしれない。逆に、最近特にアート色を強めているガス・ヴァン・サント監督や、インディー畑出身のジョン・キャメロン・ミッチェル監督(【ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ】)がプロデュースを買って出たというのは当然のことのように思える。(ゲイの新進アーティストの支援、という面もあるのだろうけれど。)
監督のジョナサン・カウエットは、悲惨というのを通り越しているような自らの境遇を、昔から現在に至るまで色んな機会に撮られてきた家庭用フィルムやビデオなどの映像、写真などを駆使して再構築する。それは、作品にしてしまうことによって自らの過去を客観視して昇華しようとする試みに思える。映画中で垣間見える現在の彼は、恋人(男性)とかなり落ち着いた生活を送っていて、精神的に不安定な状態にある母親を引き取ったり、この作品を創ったりしてみるだけの余裕があるように見受けられ、そこに限りない救いを感じる。見終わってみたら、思っていたよりもかなり好きな感じの作品だったなぁ。

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【タッチ】四つ星

映画化にあたっては若干の変更もあるけれど、筋立てはほぼ原作のそのまんまで、名場面を見せつつ、かと言って、筋を追うのが精一杯の取り急ぎのダイジェストという感じでもなく、うまく空気感を醸し出している。長澤まさみさんも、原作の南ちゃんそのまんまではないはずなんだけど、これが南だ、と観る人に思わせる説得力があり、危惧していた双子の斉藤兄弟も悪くなかった。原田君を演じたRIKIYAさん、母親役の風吹ジュンさんなどの脇の人物も、上手く味を添えていた。これなら、原作を読んだことがある人も、アニメで見たことがある人も、見たことがあってもそれほど興味がなかった私のような人も、また全然知らないという人も、全ての人をそれなりに満足させるであろう出来になっているのではないか。仕事に全く危なげが無い、犬童(一心)監督ってつくづく凄い。

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【チーム★アメリカ ワールドポリス】三星半

確固とした政治的なビジョンやポリシーがあって批判を加えているというよりは、テロ撲滅の名の下に世界のあちこちで破壊活動をしているこのチーム・アメリカみたいな軍隊もどきの人々にしろ、政治的立場を表明することを躊躇しないハリウッド俳優の皆さん(かなりゴーカな面々である)にしろ、とにかく“力”を傘に着ているように見える人々が嫌いで、そういった人々を槍玉に挙げて悪ふざけをしているだけのように見える。でも、アナーキストとは本来、正面から堂々とご立派な意見を述べるようなものではなく、そうしたニッチな存在なのかもしれないが。特に、後半のこのノーテンキな展開は、アメリカと日本の北朝鮮情勢に対する認識の違いを如実に感じてしまったりするし、俳優さん達も、いちいちこんなにヒドい殺され方をしたのではそりゃ怒るわな。(あまりのヒドさについ笑えてしまったりするのだが……。)でも、俳優が何エラソーに意見垂れてんだよ、という雰囲気はアメリカ国内の一部にはあったってことなのかもしれないが。まぁ、あんまり真面目に受け取るよりは、あくまでも例のあのお騒がせ連中(『サウス・パーク』の製作者)のジョークとして軽くいなすくらいなのが丁度いいのではあるまいか。そうそう、この映画、18禁なので念のため。政治的理由なのかと思ったが、これは単にアダルト関係の基準に引っ掛かったんじゃないかなぁ。あぁもう、人形にそんなことさせちゃって。倒錯してるよなぁ。

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【チャーリーとチョコレート工場】三星半

昔のミュージカル全盛だった頃のハリウッド映画を思い起こさせる、豪華絢爛な絵巻物といった趣きは、ティム・バートン監督の面目躍如。この世界の主である、ジョニー・デップさんのウィリー・ウォンカの役作りもとにかく完璧で凄い。でも、筋が最初から大体分かっていてそれほど動きもないからか、なんかそのうち飽きてきてしまったんですね。終盤になって明らかになってくる、実は家族の物語だった、という部分が、もう少し早く動いているとよかったんじゃないかとも思うのですが。

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【NANA】三星半

原作つきの映画の場合、原作から部分的な材料やインスピレーションだけもらって後は好きなように料理するという方法と、なるべく原作のイメージを壊さないように作るという方法の二通りがあると思うのだが、本作の場合は、観客のほとんどがそうであろう原作コミックスの読者を相手に、茨の道とも思える後者を選択した訳だ。で、大谷健太郎監督も制作者の皆さんも、よくぞここまで頑張ったなあと思う。(ちなみに、ウチではが何故か掲載誌を購読しているため、原作はほとんど読んでます。(特にファンという訳ではありませんが。))
このお話は、何と言ってもキャラクターの造形が一番大切だと思うのだが、原作からどれだけ上手くエッセンスを抽出して3D化するかという部分でかなり成功していたのが、大きな勝因だったのではないだろうか。特に、宮崎あおいさんが、彼女の素のキャラクターとは多分かなり異なっているであろうヒロインの奈々ちゃんを、演技力で成立させていたのが見事だったと思う。彼女が映画を引っ張っていたと言っても過言じゃないんじゃないのかな。もう一人のヒロインのナナは、中島美嘉さん以外には考えられないキャスティングだけど、どちらかというと素の存在感で勝負していた部分が大きかったんじゃないだろうか。
逆に、これは違うだろう~ ? と思ったキャラクターがレン君とシンちゃん。松田龍平さんは、やっぱり、これまでトントン拍子でやってきたサラブレッド育ちなのは否めないし、それをカバー出来るほどの演技力を身につけるのもまだこれからといった感じなので、かなり尖ったところのある天涯孤独のレン君の役にはどうだったかな。で、原作のシンちゃんは小柄で華奢な美少年なのだが、これを演じた男の子は、大柄で、ゴツくて、決して可愛いというタイプではないという三重苦……これは俳優さんが悪いんじゃない、全面的にキャスティングした人の責任だ。(多分、彼は今売り出し中の男の子で、どこかのプロダクションからネジ込まれたんじゃないんでしょうか。)この辺り、ツッコミどころも多いので、星としてはこのくらいかなと私は判断致しました。今回はそれほど出番がなかった他のトラネスのメンバーなんかも、続編を作るとなると問題になってくるんじゃないのかな。例えば玉山鉄ニさんのタクミ君や、レイラさんの声質。私のイメージではどうも違っている気がするのだが……。
今回は、奈々ちゃんの目線を中心に描いて、フラれても立ち直ってまた次の恋を頑張ろう ! という辺りで終わっているのが映画としても実にキレイにまとまっていて上手いと思った。けれど、彼女はこの後、ドロ沼の三角関係に陥るはず……続編は今回みたいに爽やかに終われないのは必至ですよねぇ。どうなることやら乞御期待、といったところか。

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【南極日誌】三つ星

こんな無謀な南極探索を強行しようとし続けるこの隊長は、精神状態がかなりおかしくなってるのがあからさまだというのに、どうしてみんな言いなりになってしまうのかなー ? それぞれの隊員の南極に掛ける思いがそうさせるのか、はたまた、南極という土地の魔力がなせる業なのか、それとも……ということで、心理ホラーの線(理屈はよく分からなくても、とにかく人間て恐いですねーと脅す)と、心理サスペンスの線(状況を理詰めに説明していって、人間存在に対する恐怖心を焙り出す)を両方求めようとして、結局どっちつかずで終わってしまったみたいな気がする。隊長を演じるソン・ガンホ様を始めとする皆様の熱演も、結局どこかで空回りしてしまったみたい。意気込みは感じられる作品なんだけど、惜しいよな~。

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【鋼の錬金術師 シャンバラを征く者】四つ星

TVシリーズの続きということで、見てもよく分からんだろうなーと思いつつ、ざっくりしたあらすじくらいしか知らない状態で行ったのだが、これが結構面白かった。よく考えてみりゃ私、ガンダムもエヴァンゲリオンも、作者の描きたかったものをちゃんと理解していたにはほど遠い状態だったように思うのだが、それらの作品よりは確実に、メッセージみたいなのがストレートに伝わってきたような気がしている。勿論、もっときちんと観ている青少年の皆様なら、もっとちゃんと楽しめるんじゃないかと思うけど。
ナチスが台頭する時代のドイツ、という設定自体が、なかなか勝負しているかもしれない。時代趨勢への不安から軍事力を容認する勢力が台頭してくるというのは、まるで今の日本みたい。その後のストーリー展開も、昨今の頭が筋肉の戦争予備軍映画よりはよっぽど、戦うことの怖さを描いているように思えて、好感が持てた。ところで、マブゼってなんかいわくありげな名前だなぁ、ありゃ、何かコレ【ジークフリード】のセットに似てるな……と思っていると、フリッツ・ラングその人だったのでびっくりした。こんな人をわざわざ出してくるというのは、一応、映画制作そのものに対するオマージュが少しは込められていたりするのかな ? ともあれ、ちょっと嬉しかったりして。

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【8月のクリスマス】三星半

普段リメイクものにはあんまり食指は動かないのだが、何せ、山崎まさよしさんの前回の主演作【月とキャベツ】での演技が今でも心に残っているものだから。(【月とキャベツ】は、このHPの第1号で感想を書いてました。懐かしいな~。)リメイクでもヒロインの女の子がちょっとだけワガママに見えてその分感情移入しにくかったのと、成り行きが分かっているお話に興味が湧きにくかったところはあったのだけれども、最後にはやっぱり山崎さんの演じる主人公の気持ちに動かされてしまい、ついつい泣かされてしまった。この人のこの天性のカンって一体何なんだろう。映画好きの立場としては、もっともっと演技の方でも仕事してもらいたいかも、と切に思った。というか私も、もっと山崎さんのアルバムとかちゃんと聴かないとだめですね(←今更何言ってんだって感じですが)。

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【ハッカビーズ】二つ星

哲学的な実存が孤独な自己で……う~ん訳分からん。これは、観念に振り回される人々をカリカチュアライズしたブラックコメディ……なんだろうか。もしかしたら、アメリカのインテリさんなら笑える内容なのかもしれないけれど、日本に住む私達にはどうなのだろうか。折角の豪華キャストな映画ではございますが、あんまりオススメはできませんです。

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【Be Cool】四つ星

ジョン・トラボルタ演じるチリ・パーマーというプロデューサーが、ユマ・サーマンを相方に得て、アブナイ橋を渡りながらも音楽業界で成功していく。同じエルモア・レナード原作の【ゲット・ショーティ】の続編らしいのだが、続編ということはほとんど意識する必要もなく、ショウ・ビズ界の血生臭さすぎる人間関係の中を(ラッパーの人達なんて、実際、本気で武装しているみたいだからなぁ。あぁ、アメリカって無法地帯……)、涼しい顔をして泳いでいくトラボルタさんのクールな姿を楽しめればいいんじゃないんでしょうか。
音楽を題材にしているだけあってサントラがなかなかカッコよくて、近年のハリウッド映画では最高レベルに好み。俳優さんも、ハーヴェイ・カイテルさんにザ・ロックさん、エアロスミスの皆さんと、脇を固める面々が、お話の味を一段と濃くしている。(セドリック・ジ・エンターテイナーさんの終盤の演説のシーンには、黒人であるF・ゲイリー・グレイ監督のちょっとしたこだわりを感じる。)そんな中でも特筆すべきは、マヌケな三流プロデューサー役のヴィンス・ヴォーンさん。この人は、ヒーロー然とした主人公よりも、こういうちょっとクセのある役どころをやった方が本領が発揮できるのではないか、ということに気がついた。以前、“凡庸”なんて書いてごめんなさいっ ! 今回は最高に素晴らしかったです。

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【ヒナゴン】三星半

後半、少し話がごちゃごちゃしてしまったのが少し残念。もしかして原作に忠実なのかもしれないが、もう少し映画用に、枝葉を整理してシンプルなプロットにしてもよかったんじゃないのかな。(例えば、恩師の先生に会いに行くところなんか、エピソードとしては胸に迫るけど、そこで違うテーマが立ち上がってしまい、完全に寄り道になってしまっているように思う)。でも、この広島県の山間の街(比婆郡西城町……昔、このお話のモチーフになった「ヒバゴン」が話題になった場所だそうです)の佇まいや、それぞれの登場人物の故郷に対する思いなどが丁寧に描かれているのにはとても好感が持てるし、登場人物も、それを演じる俳優さんも、とても魅力的なのがよろしい。井川遥さん、松岡俊介さん等もすごくよかったけれど、何と言っても、伊原剛史さん演じる元ヤン町長・イッちゃんの造形は素晴らしいですよね。あと、ダチョウ倶楽部の上島竜平さんが、意外にも抑えた演技で好演していたので、かなりびっくりしてしまった。

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【HINOKIO】三星半

引きこもりの子供用の身代わりロボット(主人公の少年が操縦していろいろと外部の情報を得る)で、軽量化のためにボディを檜にしてあるからヒノキオさんなのだそうな。このヒノキオさんの造形がとにかく素晴らしいので、星半分おまけしておこう。お話の方は、引きこもりのお話のみならず、親子関係やら、友達関係やら、淡い恋心のお話やら何やらかにやら、ちょっと詰め込みすぎてしまったみたいで、ごちゃごちゃした印象になってしまったのが惜しい。バーチャル・リアリティと現実のシンクロという筋立ても生かしきれなかったみたいだし、すみれちゃんやらえりこちゃんやらの存在もどうも中途半端で、もう少し整理できればよかったかなと思うのだが。

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【ふたりの五つの分かれ路】四つ星

離婚のシーンから始まって、恋が芽生えるまでに遡る、今はやりの逆回転映画のフランソワ・オゾン版。こんなダンナは縛り首だー ! どうしてこの奥さん、こんなに我慢しているのかしらと思ったら……成程、そういうことだったの。順番どおり並べたら面白くもなんともないような話でも、逆にしたらミステリー性が出るなんて、確かに賢い着眼点なのかもしれない。それより何より、俳優さん達(ヴァレリア・ブルニ・テデスキとステファン・フレイス)の抜群の演技力と、それを見せ切る演出、そしてお話の切り取り方の上手さのおかげで、この何の変哲もないような夫婦が重ねてきたであろう時間の濃密さが感じ取れるような気がしてきてしまうのが凄い。夫婦をするってそれだけで莫大なエネルギーを使うことなのね、というのが、他人事ながらよく分かるような気がした。
それにしても、オゾン監督って日本での人気も随分上がったみたいで、私は最初予定していた時間の回には入れなかったほど。びっくりしたぁ。

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【フライ, ダディ, フライ】四星半

この映画を観た後、金城一紀さん原作の同じゾンビーズ・シリーズの『レヴォリューションNo.3』をその日のうちに買って読んでしまい、次の日に最新作の『SPEED』も買って読んでしまった。本作の原作はまだ読んでないが、多分原作よりも、主人公の中年サラリーマンの鈴木さんと朴舜臣(パク・スンシン)君の2人に特にスポットを当てた作りになっているのではないだろうか ? 岡田准一さん演じる舜臣君はただもう本当にカッコよく、堤真一さん演じる鈴木さんは、もう今年の主演男優賞ものと思えるほどに、その表情が素晴らしかった。この演技に星をもう半分おまけしておこう。この表情を的確に引き出しているのは、成島出監督の演出力のなせる技なのだろう。それにしても堤さん、よく走らされていたなぁ……少し【弾丸ランナー】の頃を思い出してしまった。

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【亡国のイージス】

日本人よ、これが戦争だ……ですか。彼が何国人の設定になっているのかは知らないが(おそらく日本人じゃないことは確かだろう)、普通そういう台詞って母国語で呟くものじゃないのかな。そう思うとこの話は、どこの世界に差し出しても通用するようなまともな政治サスペンスというよりは、あくまでも日本国内の観客だけを相手に、どこかの適当な国を敵国に設定して戦争ごっこがしたいだけのもののようにしか思えなくなってきてしまった。私は、こんな映画が見たいがために、今まで阪本順治監督を応援してきた訳ではない。残念だ。

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【星になった少年】三つ星

象は本当にたくさん出てくるから、象好きの方ならとりあえず満足できるかもしれないかな。特訓したというだけあって、柳楽優弥君の象さばきは本当に自然で無理がなく、彼が象使いだという設定には説得力があり、彼がタイの象使いの学校で修行する前半のシーンなどはかなり秀逸。では何が悪かったのかと言えば、その前後の日本のシーン。核の1つになっているはずの主人公の少年と母親との関係の話が、母親役の女優さんの演技のせいで、みんな死んでしまっているのがよろしくない。
話の筋から考えると、この母親も相当個性的というか変わっている人なのだが、果たしてこの女優さんは、そんなキャラクターのアクの強さを出せていただろうか ? ……その部分に説得力があれば、主人公との絡みのドラマがもっと厚みのあるものになって、映画自体にもっと膨らみが出ていたんだろうに、折角の大森寿美男さんの脚本が生かされなかったみたいで残念。この女優さん、一生懸命なのは分かるんだけど、いくら頑張っていても、役柄の奥行きや背景に横たわるものが全く伝わってこないのだ。思うにこの方は、“演技者”である前に“きれいな女優さん”という部分に拘泥してして、どこかでその自意識を捨てられない部分があるんじゃないのかなぁ、などと思ったりする。

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【マダガスカル】四つ星

野生に憧れるシマウマと、彼を止めようとする親友のライオン、しっかり者のカバの姉御に神経質なキリン。動物園暮らしの仲良しの彼等に、物語を引っ掻き回すやりたい放題のペンギン4人組(4羽組?)。デフォルメ・タッチのデザインのキャラクターの造形が上手く、彼等をここまでしっかり動かせているだけでも、この作品は成功しているんじゃないかと思う。しかしこれ、一見ハッピーエンドに見えるけれど、実は悲しい話なのではあるまいか。一度飼い馴らされてしまった者達は、もう二度と自然には戻れないという……。
最近は吹き替え版もかなり頑張って作っているのは知っているけれど、ベン・スティラーやクリス・ロックの映画を見たことある人なら、是非字幕版も試してみて欲しい。まるで宛て書きかと思うほどハマっていて、特にベン様ファンの私は、ライオンのアレックス君が画面に出る度に、それだけで笑えて笑えてしょうがありませんでした !

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【マリといた夏】三つ星

少年時代の記憶、みたいなものをテーマにした韓国製のアニメ。どのエピソードも割とどこかで見たことがあるみたいで、パンチに欠けるようなきらいはあるけれど、画(え)がとてもきれいでやさしい印象を受けるのは好感が持てるかな。

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【メゾン・ド・ヒミコ】四星半

人間てそんなに簡単には分かり合えない。それでも一緒にいることは出来る。ほとんど性格ブスと言ってもいいくらいの不機嫌な柴崎コウさんの、今まで一生懸命生きてきたゆえの頑なさが分かってきて段々と可愛く見えてくるところといい、ゲイの青年役のオダギリジョーさんの毒気すら孕むこれでもかの色気といい、どこを切ってもカリスマ的なゲイの男性にしか見えない田中泯さんといい(【たそがれ清兵衛】で誰よりも武士らしい武士をやっていた人と同一人物とは思えない ! )、メゾンの住民の人達といい、何もかもが不思議な魅力に溢れていて、いとおしく思える。誰かがこれをファンタジーだと揶揄していたが、これが現実離れしたお伽噺であることのどこに不都合があるのかな。誰か説明してくれないか。
しかし、本作のオダギリジョーさんの色気のオーラって尋常じゃなかった。よく考えてみると、妻夫木聡さんも【ジョゼ…】に出ていたのが今までで一番魅力的だと思ったし、【金髪の草原】の伊勢谷友介さんも他では見たことのない側面を見せてくれていたし……。犬童一心監督って、男優さんの新たな魅力を引き出すことに長けているのでしょうか。女優さんならともかく、男優さんでそういう話ってあまり聞いたことがないんですけども……。

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【モディリアーニ 真実の愛】三つ星

モディリアーニ本人に関しては事前のイメージをあまり持っていないからどんなふうに描かれていても大丈夫だろうと思ったし、科白が英語なのも覚悟していたのだが、終始、なんか違う……の違和感がつきまとってしまっていた。原因は、登場人物の一人であったピカソにあったような気がする。ピカソという人は、実物が相当強烈なイメージを持っている人なので、違和感の無いようにキャラクターを造形するというのは実は至難の業なんじゃないのかな。特に、私のようなピカソ・ファンならば、その印象はもっと強くなるから……(私ゃ昔、アンソニー・ホプキンスが演ったのさえ満足できなかったからなぁ)。アンディ・ガルシアの熱演もどこか二の次になってしまった。ガルちゃん、すまない。あなたのせいじゃないと思う。

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【妖怪大戦争】三星半

私は昔から妖怪って割と好きなのだが(子供の頃はよく、ろくろっ首や唐傘小僧の絵を描いて遊んでいたりしたものです)、3Dで重量感があって色味が濃ゆい、いかにも着ぐるみ然としたこの映画の中の妖怪達って、なーんかイメージが違うなぁと思えて仕方がない。(それ以前に、メーキャップが凄くて誰が誰だかさっぱり分からなくて、後でクレジットを見て、あんまりにも凄い人達が大挙してご出演なさっているのに気がついてクラクラしたけれど。)妖怪ってあくまで、自然界の精霊の一種みたいなものではありませぬか。私の想像の中の妖怪は、なんかもっと実体性に乏しいというか、透明感がある存在で、表現として許容できるのは、2D世界の絵画やマンガやアニメがギリギリの線なのかもしれないなぁ、なんて思ったりした。
でもって、今、何故妖怪なのか ? と聞いてみたって、なんかネタになりそうだから ? くらいの答えしか帰って来そうにないんだよねー。まぁ、三池崇史監督が例によってさっくりとまとめているから面白くなくはないんですが、私にとっては、終始、どうも何かの違和感がつきまとってしまっていた。

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【容疑者 室井慎次】四つ星

ある熱心な【踊る大捜査線】ファンの人は、本作はイマイチだと言ってました。曰く、室井さんにはヒーローでいて欲しいのに、この扱いは理不尽だし酷すぎる。こんなふうに虐められる様なんて見たくないのだと……。そうですねー。私が今までのシリーズ中で本作を一番面白く感じたのは、私がもともと、それほど熱心な【踊る…】ファンではないからかもしれないのですが。
でも、完全無欠で揉まれることのない人なんて、本当には強くはなれないんじゃないんでしょうか。そして、脚本家の君塚良一氏(今回は監督も兼任していらっしゃいます)も、もしかしてそう思っていらっしゃるからこそ、室井さんに試練を与えたのではないでしょうか ? 氏がいわば、この【踊る…】の世界を創造した神様のような存在なのだとすると、室井慎次というキャラクターは、それだけ神様に愛されている人ってことになるんじゃないんですか。
今回、室井さんは、白も黒もはっきりしない魑魅魍魎の世界に投げ込まれてしまいます。訴えられたというのも限りなく言いがかりに近い理由である上(だが理論的は確かに全くシロとも言い切れない)、馬鹿げたパワーゲームの犠牲になってどんどん立場が悪くなってしまいます……もしかして、健やかな青少年の皆様には、本人には何の責任もないのにどんどん不利な状況に陥っていってしまうなんて、そんな理不尽さは見るに耐え難いものなのかもしれません。でも、残念ながらそんな話は、実際の世の中にはいくらでもあることなんじゃないんでしょうか。
室井さんが青島君と交わした“約束”は、シリーズの大きな支柱になっていますよね。でも、青島君の言うように「上に行く」いうことは、こんなにバカな人達や、こんなにバカげた物事と戦って、戦って、それでも勝ち上がっていかなければならないということを意味しているんじゃないでしょうか。しかも、こんなゲームに迎合したり取り引きしたりして得られる小手先の勝ちでは、本当の意味で“約束”を果たすことにはならない、だから正攻法で立ち向かうという一番の茨の道を行くしかないということを、室井さん本人がきっと一番よく分かっていらっしゃる。脚本家は、そこに“勇気”という言葉を使っているのではないでしょうか。そして、室井さんなら、あちこちの現場の人達の揺るぎない信頼をいくつも獲得しながら、再び勝ち上がってくることが出来るはずだと、思われてならないのです。
本作は、青島君との“約束”の中身を具体的に描くための映画なのではないかと思いました。だから、シリーズ中でも実は極めて重要な作品になるんじゃないのかなと個人的には思っています。ここまで書ける人が書いているからこそ、このシリーズは強いんですね。こんな大きなブロックバスターに乗っけてここまでのことをやってのける君塚良一氏の偉大さが、今回、本当によく分かった気がします。

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【ライフ・イズ・ミラクル】四つ星

内戦下のボスニアの田舎の村で、捕虜となった息子と人質交換するために捕えられた敵側のムスリムの女性と恋に落ちてしまったオジサンのお話。猥雑でエネルギッシュなクストリッツァ節は相変わらずだけど、内戦の戦禍が生々しかった【アンダーグラウンド】の頃に較べると、戦争へのシニカルな視点はあっても、攻撃的な調子は随分と影を潜め、大分ユーモアや大らかさにくるまれた表現になっているように思える。人生への愛、息子への愛、ヒロインへの愛と苦悩、夫婦間のゴタゴタ、戦争への目線など、いろいろな要素が詰め込まれ過ぎて、ちょっと統制が取り切れなかったような感じがしないでもないが、結局言いたかったことは、こんな不条理な人生の中で希望を持とうとすること自体が奇跡的、ということだったのかもしれないね。

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【ライフ・オン・ザ・ロングボード】四つ星

早期定年退職したおじさんが、1度くらいしかやったことのないサーフィンをやってみたくて南の島へ……。筋立てはそれこそ非常にシンプルなので、2時間近く持つのかなーと内心危惧していたのだが、そんな心配は全くなかった。むしろ、都会とは違う時間軸の中で、日がなサーフィン、たまに仕事、という生活を送るのがすごーく気持ちよさそうに見えてきて、こんなふうなライフスタイルも悪くないのかなー、などとうっかり思わされてしまうような力があった。(厳しい現実をそれほど描いていないから、というのもきっとあるんだけれども。)
主人公の大杉蓮さんは実際にサーフィンは初心者で、この映画の中でやっと波の上に立てるようになったそうだ。彼や、彼にサーフィンを教える勝野洋さんがバリバリとサーフィンをする姿ももう少し見たかったような気はするけれど、逆に、運動神経が壊滅している私のような人間でも、千回とか一万回とか練習すればひょっとして立てるようにくらいはなるのではないか ? と思わせるところがあったのが新鮮だった。超絶上手い人がテクニックを競い合うだけではない、サーフィン映画って、こういう方向性もあったのね。

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【リンダリンダリンダ】四つ星

若干メジャーな作品になっても、山下淳弘監督の作風はやっぱりあんまり変わってないのがすごい。ただ、学園祭のためにバンドを組む女の子達のお話だから、ストーリーはさすがに分かりやすいものになっていたけれど。監督独特のこのユルユルの空気感が、学園祭ってパッと盛り上がるハレの部分だけでなく、実はそこに至るまでのうだうだとしたケの時間こそが一番大切なものだったんじゃないかな、と思い起こさせてくれた。そういった部分に共感する人が結構多かったからこそ、この映画はヒットしているんじゃないのだろうか。バンドの女の子達(前田亜季さん、香椎由宇さん、関根史織さん)を始め、女の子達がみんなよかったんだけど、成り行きでバンドに加わることになった韓国人留学生役のペ・ドゥナさんの、いかにもそういう存在に見える呼吸の掴み方が特に素晴らしい。実は今まで、彼女の出ている映画はあんまり見ていなかったのだが、もっと見るようにしなくっちゃね。
それにしてもブルーハーツの曲って、非常に強いエバー・グリーンな力があるのだと、改めて思い知った。でもって、甲本雅裕さん(部活の顧問の先生として出演)て甲本ヒロトさんの弟さんだったんですね。知らなかったです。

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【ロボッツ】四つ星

アメリカのマンガによくあるようなデフォルメのタッチって普段はあまり好きではないのだが、色使いや造形その他のセンスの良さなのか、とても可愛らしく見やすく3D化されていたのにまず感心。プロットは都会に出てきた若者が夢をつかむというシンプルなものだけど、破綻のない作りもさることながら、細かいところまで遊び心が満載で、最初から最後まで安心して楽しめる。いいと思うなぁ。私はこれ、好きだなぁ。

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【ワースト☆コンタクト】三つ星

哀川翔さんと板尾創路さんの夢の組み合わせ。ただ、前半から中盤に掛けて、伏線を張ることに時間を費やし過ぎていてちょっとかったるく感じられる部分もあり、かと言って、それを受けた終盤のゴタゴタが盛り上がったかと言えば、そんなでもなかったような。お終い辺りの展開も……昔【DEAD OR ALIVE】という映画があったから、そんなにインパクトはなかったかもねぇ。板尾さんの役柄も、何故だかあまり新鮮味が感じられなくて、ちょっと残念だったんだけど、でも、翔さんのピシっとまっすぐな美しい立ち姿と、くるくると変わるいろんな表情を見ているだけでも、ある程度は元が取れたような気がしたので、まぁいいか。

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