Back Numbers : 映画ログ No.85



2008年に観た全映画です。

【アイアンマン】三つ星

ロバート・ダウニー・Jr.さんが好きだから見に行った……ただそれだけ。今回はアイアンマンができるまでということで、恐らく最初から続編を作るつもりだったのだろう。前半はちとかったるかったが、ハイテク・マシンが出来上がってからの後半はそれなりには盛り上がった。

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【相棒 -劇場版-】四つ星

登場人物を極力出してよくまとめてあり、見応えも十分あり、TVシリーズのファンは概ね満足したのではないかと思う。背景には結構重たいテーマを据えているのもチャレンジングでいいんじゃないだろうか。何より、和泉聖治監督が久々に劇場版映画を撮れて、しかも大ヒットしてよかった ! ただ、個人的には、仕掛けも謎解きも思ったよりあっさりした感じで、若干波長が合わなかった部分があったかもしれない。しかし犯人は右京さんが謎解きをしてくれなかったら一体どうするつもりだったんだろう……。

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【アイム・ノット・ゼア】三星半

年齢・性別・人種の違う6人にボブ・ディランを演じさせ、ボブ・ディランなる人物を解説しようと試みるトッド・ヘインズ監督の実験作。手法的には興味深いけど(でもトッド・ソロンズ監督が【おわらない物語 アビバの場合】で似たよなことをしていたような)、始まって10分で、私はボブ・ディラン自体にあまり興味がなく、従って、このお話にもあまりついていけないことに気がついてしまった……。

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【アウェイ・フロム・ハー 君を想う】四つ星

最愛の妻がアルツハイマー病で自分のことを忘れていってしまう、しかも若い頃さんざん浮気をして妻を苦しめた罪の意識に苛まれることになる……こんなどうしようもない状況を静かに見詰めるこの老成した視点、監督をしているサラ・ポーリーさんがまだ20代の女優さんだなんて信じられない !! 本作は【スウィート・ヒアアフター】のアトム・エゴヤン監督が製作しているとのことだが、カナダ映画って地味な印象だけど実は割と秀作が多いよなーと思い起こした。

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【秋深き】三星半

原作は『夫婦善哉』とかを書いた織田作之助さんという方のものらしく、1947年に亡くなっているというのでもう随分昔に書かれた話で、これをそのまま現在に持ってくるのでは随所に無理があるのではないだろうか。私は、旦那の幼稚とも思えるくらいの嫉妬深さと(好き好んで元売れっ子ホステスを嫁にしといてそれはあり得ねぇ)、理科の先生とは到底思えない非科学的な態度(切らなきゃ治らない癌は切るしかないわよぅ)には、ちょっとついて行けなかった。でも、八嶋智人さんと佐藤江梨子さんの役者としての魅力に大いに助けられた感じで、2人の純な愛情描写は悪くなかった。

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【アキレスと亀】四星半

芸術の背中と色濃い死生感と独特のユーモア。悲劇的であればあるほど喜劇的だというパラドックス。北野武監督がついに開いた新境地 ! (前作を観てそろそろ来て欲しいと思っていたが。)私的には【菊次郎の夏】以来の名作だと感じたが、昔と比べより舌鋒は鋭くなり、より凶暴な狂気を帯びているような気がする。

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【悪夢探偵2】四つ星

人間の心の醜くて嫌~な部分を、これでもか、これでもかと粘着質に描いている感じ。(最後には若干救いがあるけれど。)塚本晋也監督らしくてよいけれど、ただ、真冬という公開時期にホラーというのはどうなのよ ? とはちと思った。

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【明日への遺言】三星半

極東軍事裁判の実話の映画化らしい。藤田まことさん演じる主人公の岡田資中将は、一方的に断罪されるのではなく、法に則って弁論を尽くして自ら裁かれるということで、好きだ嫌いだのの感情論ではなく理性の上に平和への礎を築こうとしたのかもしれないと思った。昔の立派な軍人さんってこういうイメージだったんだろうなー。ただ、観客の年齢層はやっぱり高めだったかもしれず、私も小泉堯史監督でなければ見に行っていたかどうかは分からない。

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【アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生】四つ星

フォーマット自体はいかにもアメリカにありがちなドキュメンタリーの型を一歩も出ておらず、最初それがちょっとイラッとしたが、内容は滅法面白い。あの写真もこの写真もアニー・リーボヴィッツだったのね、と知るだけでも見た甲斐があろうというもの。その天才ぶりを追っているのも興味深いのだが、その私生活にはもっとびっくり。彼女がスーザン・ソンタグ女史(高名な評論家です)の恋人だったとは知らなかった……。また、60年代のカウンター・カルチャーの時代に青春真っ盛りだったとすれば現在は60歳近い筈なのに、映画に出てくる彼女の子供たちってえらく幼くない ? と思ってたら、なんと2001年に51歳で1人産み、その後の2005年に代理母出産で双子を授かったんだってぇ……凄すぎて言葉になりません。

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【あの空をおぼえてる】四つ星

一家で一番可愛がられていた妹が事故で死に、親がなかなか立ち直れず、気ぃ使いのお兄ちゃんがどんどん追い込まれていく……という話。プロットだけ聞くとベタな感じでも、冨樫森監督の手にかかると、間違いなく品のある繊細な描写になるんだよね~。子役の広田亮平くん・吉田里琴ちゃんや、パパ役・ママ役で新たな役柄に挑戦した竹野内豊さん・水野美紀さんなど、役者が皆秀逸だった。個人的には、再びご飯を食べ始めた水野美紀さんを見て友人役の中嶋朋子さんが泣くシーンが好きだ。

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【アフタースクール】四星半

騙されまいと頑張って……やっぱりまんまと騙された ! 目を皿のようにして観ていてもまんまと一杯食わされる作劇上のトリックがやはり最大の見どころだと思うが、オトナの放課後というちょっと甘酸っぱいテーマもなかなか見逃せない。いずれにしても、大泉洋さん、佐々木蔵之介さん、堺雅人さんの主演の三人の演技力がなければ成立しなかった作品だろう。これだけハードルが上がってしまったのでは、内田けんじ監督は次回作はさぞや大変だと思うが、何年でも待ってますので、どうぞ今度も世紀の大傑作をお願いします !!

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【アメリカを売った男】三つ星

既に内容が思い出せない……検索したら、実在したFBIの二重スパイの話、と出ていたが。いくらクリス・クーパーさんが主演だからってそこまで地味じゃなくても、と見た当時思ったような。

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【アメリカン・ギャングスター】四つ星

上品なギャングと粗暴な警察官……デンセル・ワシントン御大とラッセル・クロウ御大の演技はいつもながら完璧。でも、アメリカ人ってやることが大味だな~という印象を見ながら持ってしまい、彼等のメンタリティに入っていけないのがしんどかったような気がする。

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【歩いても 歩いても】四星半

お盆で実家に集まったある家族をただひたすら描写する、ただそれだけの、起承転結の存在しない珍しいドラマかもしれない。ただそのうち、この家の過去や現在のあれこれがじんわり浮かび上がってきて、それがまるで我がことのように思えてきたりするのだが。是枝裕和監督の観察眼と構成力と、台詞を書く力はやっぱりもの凄い。それを受けて立つ出演陣(阿部寛さん、夏川結衣さん、原田芳雄さん、樹木希林さん、YOUさん……)の演技力も、いちいちもの凄い。

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【イースタン・プロミス】四星半

デヴィッド・クローネンバーグ監督の新作。ロンドンに暗躍するロシアン・マフィア絡みの東欧女性の人身売買などが下敷きになっているかなり重い内容だが、それはあくまでも話のバックグラウンドであって、登場人物たちの人物描写とその関係の緊張感こそが最大のみどころだと思う。悶絶するほどシブかっこいいヴィゴ・モーテンセンさんと、彼等の組織に関わることになってしまうナオミ・ワッツさんも素晴らしいが、「チンピラを演らせたら三国一」のヴァンサン・カッセルさんが相変わらず堂に入っているのが嬉しかった。

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【いつか眠りにつく前に】二つ星

このヒロインの行動にはちっとも共感できない。スキスキオーラを出してる相手に応えられないなら予めもっと冷たくしとけよとか、何があっても添い遂げるくらいの根性がないのなら中途半端なことすんなよとか。そもそも男の方も情けないっちゅうか。時代的なものを差し引くとしてもこの展開はどうなのよ。現代のシーンの姉妹の葛藤というのも非常に図式的、全体的によくあるシーンのつぎはぎって感じで、萎えてしまうことおびただしい。ヴァネッサ・レッドグレイヴ様とメリル・ストリープ様の邂逅のシーンだけがやたら出来が良いのが浮いていた。

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【愛おしき隣人】三星半

スウェーデンのロイ・アンダーソン監督の、ちょっとだけ世間とずれているようにも見える人々の、物悲しいようなじんわりくるような寓話。派手さはないけど味があって嫌いじゃない。

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【犬と私の10の約束】三星半

犬を飼ってる人には身につまされて泣けるシーンがいっぱいあるのかもしれないが、クサイと感じられてしまう部分も少なくなく、ベタで説明しすぎかと思えば、ある面では説明不足。特に、肝心の愛犬と主人公の関係の描き方が実は希薄なのではないかと感じられた。主人公が大人になって急に身勝手になるのも図式的じゃないかなぁ、獣医のくせにそりゃないよ。劇中で高島礼子さんが描いたことになっている斉藤きよみさんのイラストは可愛く、高島さんの美しく慈愛に満ちた母親像が一番印象に残った。

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【イントゥ・ザ・ワイルド】三星半

“腐った人間世界から隔絶したい”とか言いながらバリバリの文明の利器である鉄砲を担いで歩き回ることに自己矛盾を感じない主人公のあまりのナイーブさには、正直「バカじゃないの ! 」という感想しか出てこなかった。人間は脆弱な生き物なので、人間社会から全く隔絶して生きるなんてほぼ不可能で、だからそこで矛盾を引き受けながら生きるしかないんだって分からないもんかなー ? でも、後からよく考えると、ショーン・ペン監督は、主人公の頭でっかちさ加減を指摘するような視点もちゃんと織り込んでいて、それでもなおかつ大自然へ向かおうとする衝動を抑え切れなかった青年を、それはそれとして見守るような気持ちで描いているのかなぁとも思った。愚かで無謀としか思えなくても、それでも突き動かされるものがあるのならまぁ好きに生きればいいんじゃない、それもまた人生だろう、と最後には珍しいものを見る心境になっていた。

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【WALL・E ウォーリー】四つ星

ウォーリーやイブの造形は素晴らしく、ピクサー社のさすがのポテンシャルの高さを充分感じさせてくれる。しかし私は、鉄腕アトムは平気でも、実用ロボットがやたら人間くさい動き方をするのには非常に違和感を感じる。ロボット差別 ? でも誰が一体そんな不必要なプログラミングを末端の一機械に施すというのだ ? そもそも、あの宇宙船の動力源や資源源は ? とか、他の人類はどうしたの ? とか、未来にだってフィットネスおたくはいるだろうとか考えだしたら矛盾だらけなのが気になって、何だか思うほどには楽しめなかった。自分には最早、お話をシンプルに楽しむような素直な心が失われてしまったのだろう、と思うと若干落ち込んだ。

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【うた魂♪】三星半

よくなる素材はいくつもあっても、そこを丁寧に出し切れないのが名作との境目になるのだろう。自己中でナルシストのヒロインをユーモアをもって笑うのかと思ったら、ヒロインが反省して頑張る的な路線にいつの間にやら変わってしまうのがどうにも中途半端だし、ゴリさんのキャラが立っているのに生かしきれていないのも勿体なさすぎ。そもそもマユゲが薄すぎるヒロインをあまり可愛いと思えなかったのがかなり致命的だけど……。

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【裏切りの闇で眠れ】三星半

要するにフランスのやーさんの話だな。やさぐれたブノワ・マジメルさんの崩れ方はいいんだけど、三池崇史モノでこういう話は慣れっこだから、どうもかったるくってさあ……。

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【うん、何 ? 】三星半

錦織良成監督の“しまね三部作”の二作目で、雲南市で撮ったので「うん、なん ? 」と読むそうな。やまたのおろちの神話の里という日本の原風景的なロケーションの中で、普通の高校生の誰にでも起こり得るような悩みや成長をじっくり丁寧に描いているのだが、昨今、こんなテンポの映画ってあまり見かけないような気がするので好感が持てた。

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【永遠のこどもたち】四つ星

スパニッシュ・ホラーの新たな金字塔……とまでは行かなかったかな ? いわくつきのお屋敷で、行方不明になった息子を探して子供達の幽霊に囚われていく母親の鬼気迫る存在感には見応えがあったけど、物語の枝葉が多すぎて中途半端になってしまったエピソードも多く、全体的にもっと整理が必要な感が否めなかった気がする。

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【エグザイル 絆】三星半

名作という人も多いのだけれど、ジョニー・トー監督作って私には合わないことがままあるみたい……何でだろ ?

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【エリザベス:ゴールデン・エイジ】三星半

今回はクライヴ・オーウェンさんが出てるから見に行ったんだけど。エリザベスが権力を掌握するまでの権謀術策をうだうだ描いていた前作に比べ、今回はスペイン無敵艦隊撃破やスコットランド女王メアリ・スチュアートの死刑など、幾分ダイナミックな史実が描かれている。けれど、全体的にのっぺりした印象なのは相変わらずかなぁ……。

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【L change the WorLd】三星半

【デスノート】で人気の“L”がスピンオフ ! Lのキャラクターの深化には成功していると思うけど、いかんせん、敵役のテロ集団とやらの描き方がいい加減すぎて、安っぽく見えてしまう。松ケン君の熱演が勿体ないったら。

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【牡牛座 レーニンの肖像】三星半

ソクーロフ監督の歴史映画は史実を知っているのが前提で事前に予習するべきものだったのだ ! と今になって気づいたなんてマヌケだ……。レーニンの晩年についてはこれから勉強させて下さい。靄が掛かった薄緑色の画面はきれいだった。ソクーロフ監督の歴史映画にはそれぞれテーマカラーが設定されているのだな、とこれも今になって気づいた。

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【王妃の紋章】四つ星

中華的重厚長大非人間的ドラマ。超キンキラキンのセットは権力の虚しさの象徴なんじゃないかと思うと、一種異様な哀愁を帯びてくる。この過剰さはもしかしたら非常に中国的なものなのではないのだろうか。チャン・イーモウ監督は、よくも悪くも、中国の本質を知り尽くしているのだろうと思った。

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【大いなる陰謀】三つ星

政治家、マスコミ、インテリ、そして最前線に立つ兵士……アメリカの戦争の現場を描いているということになるのかもしれないが、アメリカ人以外には百も承知の図式なので今更感が否めないし、台詞中心で理屈だらけの頭でっかちな構成は映画的スペクタクルに欠けるように思う。トム・クルーズさんにとっては意欲作になるはずだったのだろうが、空回りしてしまった感じがする。

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【オーケストラの向こう側 ~ フィラデルフィア管弦楽団の秘密】四つ星

その昔、最初に買ってもらったクラシックのアルバムが10枚組みのコンピレーションで、その次が確かユージン・オーマンディ指揮のフィラデルフィア管弦楽団の『惑星』だったと思う。懐かしー。あちこちからコメントを細かく寄せ集めてパッチワークにするアメリカ式のドキュメンタリーって最近あまり好きじゃないのだが、“音”の正体って何だろう ? といういろいろな形での問いかけには感銘を受けた。アメリカの知性の在り方の最上の部分の一つを見た気がした。ただ、楽団員にはアメリカ人以外の人が少なくないんだけど……。

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【丘を越えて】四つ星

昭和初期の“モダン”が花開いた時代を舞台に描いた物語。西田敏行さんが菊池寛を演じているが、全体的には一応フィクションらしい。池脇千鶴さんの洋装コスプレが可愛い ! 西島秀俊さんがカッコイイ ! そして『丘を越えて』って本当に名曲だったんだなぁとしみじみと思った。この後、暗い時代に真っ逆さまに突入していくことを知っているだけに切なくもなるが、描写の一つ一つがしっかりと創り込まれており、登場人物の一人一人の背景がじっくり滲み出てくる表現の厚みが観ていて飽きず、フィクションの世界を構築する“つくりもの”としての映画の楽しさを久々に堪能した気がした。高橋伴明監督がこんな自由闊達な作品をお創りになるなんてちょっと意外だったかも ? (失礼 ! )

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【おくりびと】四星半

上品で静謐な、不思議な明るさのある世界。日本人って生き死に系の話に弱いんだなーとは思ったが、よく出来た作品であることは否定のしようがない。滝田洋二郎監督にとっても本木雅弘さんにとっても、評価される作品になってよかった。

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【俺たちに明日はないッス】四つ星

欲情だけの青春は、いっそ混じり気がなくて純粋なのだろうか。柄本家の次男坊で天才肌と聞く時生さんが演じる悶々とした高校生、あんな男の子って本当にいそうだ。彼の10代の代表作になったのではないかと思う。個人的には、男子からみた欲望の対象としての女子というだけでなく、女子から見た欲望の対象としての男子という視点が盛り込まれているのが興味深く、さすがにこれは男性監督にはなかなか描けない部分ではないかと思った。今年は【百万円と苦虫女】も公開になったタナダユキ監督はこれからますます楽しみだと思う。

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【おろち】二つ星

谷村美月さんは好きなんだけど、こんな老成した役柄やこの台詞回しはちょっと合わないのでは……。途中から出てきたのが“彼女の意識が入り込んだ別の人間”だってのが最初訳分かんなくて混乱し、その後も登場人物たちの過剰な行動が理解しがたく、 ? マークがいっぱいなまま映画は終わってしまった。木村佳乃さんのメーター振り切れた怪演だけがやたら面白かったけど。

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【母べえ】四つ星

黒澤明監督のスクリプターを長年務めた野上照代さんのご家族の戦時中のお話なのだそうで、治安維持法で検挙された父親のエピソードや、当時の庶民の暮らしぶりなどが描かれる。何だか話があっちこっち行っている印象もあったんだけど、詰まるところ反戦映画なのだと分かれば納得できた。ただ、吉永小百合さんは、小さい子供のいるお母さん役にはさすがにもう違和感を感じたのだが……。

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【隠し砦の三悪人】四つ星

黒澤明監督のオリジナルを唯一の金科玉条としていたら違和感ありまくりの出来かもしれない。(あの妙な副題とかは絶対やめて欲しいよね。)でも樋口真嗣監督や脚本の中島かずき氏(劇団☆新感線の作家さん)のインタビューを読むと、作り手側の意識として最初からオリジナルとは全く違う方向性を目指していることを明確にしているので、少なくとも、オリジナルをリスペクトするあまりリメイクの意義が感じられないものになってしまった【椿三十郎】よりは、エンターテイメントとして見どころ満載の本作には見るべきものがあったのではないだろうか。フィクションを3D世界に喚起するマツジュンの力には改めて目を見張ったが、だからこそ、ラブ・ストーリーを入れるなら入れるで、この際最初からがっつり行っとけばよかったのにと思う。あと、宮川大輔さんをキャスティングした人は天才じゃないかと思った。

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【崖の上のポニョ】四つ星

今までの宮崎駿作品のような描き込みに描き込みを重ねる類いの緻密さからは大きく舵を切って、例えばストーリーボードのスケッチのような絵を背景としてそのまま利用するなど、うんとラフにのびのびと創っているように見受けられる。(とは言え、作画はすべて手書きで枚数的には今までで最高になったのだそうだが。)宮崎監督は、日本の映画界にも世界のアニメーション界にももう十二分に貢献してきたので、今後は好きなものを好きなようにお創りになっていけばいいのではないかと思う。
ただ、本作は、表面上は男の子と女の子の可愛いらしいお話とも取れるけど、宗介君を追いかけて波の上を走るポニョを見て私はなんだか道成寺の安珍と清姫を思い出してしまったし、宗介君がもし何かの事情で心変わりしてしまってたらおそらく人類はあっさり滅びてしまってる訳で(まぁそれも自業自得だと宮崎監督なら言いかねないのだが……)、実はすごい恐い話のような気がするのだが……。あと、街があんなになってしまっているのに大人たちはどうしてみんなあんなに鷹揚なんだろうとか……う~ん、やっぱり深読みのネタには事欠かないような映画のような気がする。

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【陰日向に咲く】三星半

演出の物足りなさが、それぞれの俳優さんの演技のうまさで何とかカバーされている印象を持った。ストーリーの味わいを考えてみるに、もっと違う形の演出の掘り下げ方があったのではないか ? と少し残念に思われた。折角の原作と豪華キャストが勿体ない。

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【ガチ☆ボーイ】二星半

【メメント】やら【博士の愛した数式】やらで記憶障害ものは食傷気味なところに何を見せてくれるんだろうと思ったら、泥縄式の話運びがあまりにも表面的かつ図式的で心底げんなりした。少なくとも、脳障害を抱えた人やその周囲の人々の描写としてはあまりにも安易すぎるところが多すぎるんじゃないだろうか。佐藤隆太さんを始めとする若手俳優の皆さんによるフレッシュな演技がなければもっともっと低い点数にしていたところだ。

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【かつて、ノルマンディーで】四つ星

日本でも数々の作品が公開されているドキュメンタリー映画作家のニコラ・フィリベール監督が、30年前に助監督をした劇映画の出演者に会いに行く話。この映画以外ではほとんど業界と関わりのない素人の皆さんが、その映画の思い出をどこかに持ちながら生きてきた30年という歳月を敬愛を込めて描き出しているのが愛おしい。ごく普通の人間の営みこそが最も興味深いものなのだと教えてくれているようだ。

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【悲しみが乾くまで】四星半

最愛の夫が死んだ女性と、その夫の親友のダメダメ男の関わりを、安易に恋愛に堕したりしない説得力のある目線で描く。スサンネ・ビア監督の手腕は、アメリカで創っても全く澱んだりしていなくて素晴らしい。ベニチオ・デル・トロさんとハル・ベリーさんにとってもベスト・アクトの1本になったのではないだろうか。

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【神様のパズル】三星半

天才美少女とダメダメ大学生が宇宙を作る話…… ? 素材としては面白そうなのに、いろいろと説明不足だったり、ディテールがイマイチだったりで、どうも煮え切らない感じ。この無理やり感が往年の角川映画らしいといえばらしいかもしれないけど……。三池崇史監督は恋愛と音楽の扱い方が下手くそだなぁとつくづく感じ、困ったら谷村美月さんの胸のラインばっかり映すのはええ加減にせんかい ! と思った。

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【カメレオン】四つ星

外国の様々な暴力の現場を渡り歩いてきて、若い身空なのに既に人生枯れている、という主人公の造形が面白く、シリーズ化されてもいいかも ? と思うくらいだった。阪本順治監督作品にしてはいい意味でさっくりと撮られた印象があるが、折り目正しく端正な演技がイメージされる藤原竜也さんのポテンシャルはまだまだこんなもんではなく、もっともっと壊れる余地があるらしい、ということを証明してみせただけでも、この映画には功績があると思う。水川あさみさんも初めていいなと思った。

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【歓喜の歌】四星半

原作は立川志の輔さんの新作落語とのことなのでストーリーの面白さは折り紙つきだろうが、おそらく映画化に際して新たに付け加えられたのであろうママさんコーラスの皆さんの日常に関する細やかなエピソードが、映画に格段の深みを持たせていると思う。また、いい加減を絵に描いたような主人公は、自分の周りにいたら恐らく最も嫌いなタイプに属する人なんじゃないかと思うが、そんな人物を憎めない奴として軽妙に演じて全く飽きさせない小林薫さんには心底唸った。松岡錠司監督の人物描写はやっぱり一級品で、ますます磨きがかかっていると思った。

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【カンフー・パンダ】三星半

ジャック・ブラックさんがカンフーおたくのパンダの声をするというので楽しみにしてたのだが、期待が大き過ぎたかな ? 全体的にちょっと描写を端折り気味なのが気になって、特に、ダメダメだった主人公があんまりにもあっさりと成長しすぎるのが物足りない気がした。でも、同じ週に見たジャッキー・チェン&ジェット・リー両御大の出演作よりはよっぽどカンフー愛に満ち溢れているんじゃないかと思ったけど。

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【きみの友だち】三星半

自分が経験した訳ではないのに、学生時代にこんな情景があったような、ノスタルジックな感慨がある。秀作だと思うけど、類型的といえば類型的な感じもするかもしれない。

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【休暇】四つ星

時に死刑執行をも担当する刑務官の日常を描いた映画。主人公の小林薫さんや死刑囚役の西島秀俊さんなどの隠れた豪華キャストの力演で、一見地味ながら底力のある作品になっていると思う。

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【宮廷画家ゴヤは見た】二つ星

何だこの邦題、市原悦子かいっ ! と突っ込む間もなく、ミロス・フォアマン監督作品とはとても思えない中身のあまりの雑さに愕然とした。ハビエル・バルデムさんやらナタリー・ポートマンさんやらの豪華キャストが泣くぞ。何より、ゴヤの偉大な画業を、ハリウッドの中途半端なコマーシャリズムでよってたかって汚してんじゃないっ !!

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【銀色のシーズン】二つ星

ありきたりな題名を見て嫌な予感はしたんだけど、瑛太さんにつられてついつい見に行ってしまったのが失敗。主人公達の悪ふざけと甘えた加減が度を過ぎているのは若気の至りと思ってまだ許すとしても、詰め込みすぎた割にはあまり展開しない要素がどれもこれも中途半端で、挙句の果てにクライマックスでは妙な“溜め”の方向に走り、何一つカタルシスが得られないという娯楽映画としてあるまじき終わり方をする。大体、脚本が雑すぎる。それならそれで、ものごっついスキーのシーンを10割増で増やすとかしたらどうなのよ。【海猿】と同じ監督さんの映画とは思えない。

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【銀幕版 スシ王子 ! ~ニューヨークへ行く~】三星半

詰め込みすぎ、人が死にすぎ、堂本光一くんの王子様的要素におんぶにだっこしすぎ ! 堤幸彦監督のある種の作品らしい愛すべき出鱈目さはあるけれど、行き過ぎも考えもので、もっとキャラクターを愛せる要素が欲しかったかなぁと思う。でも北大路欣也さんの怪演には一見の価値があるかもしれない。

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【グーグーだって猫である】三星半

犬童一心監督は大好きな監督さんで、この映画もおそらくとてもいい映画になっているのだろうと思ったが、吉祥寺界隈に住んでほぼ四半世紀になる私は、今更吉祥寺のことを解説されても取り立てて何の感想も抱けないし(大体、パッケージ化されたブランドとしての吉祥寺にはちっとも興味がないし)、主演の小泉今日子さんに合わせて40代独身に設定された主人公は、自分と似たよなものなので別に誰かに解説してもらう必要も感じられない。つまり、私にとっては、この映画から新しく受け取れる要素がほとんどなかったような気がしたのだ。残念。

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【クライマーズ・ハイ】四つ星

未曾有の航空機事故に遭遇した地元の新聞社の奮闘、その社内力学や駆け引きのアンサンブルはすこぶる見応えがあり、原田眞人監督の真骨頂が出ていると思う。ただ、主人公の迷いや事故への鎮魂の念が、映画全体としてのカタルシスに今一つ結びついておらず、少し弱い気がしたのが残念だった。

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【ぐるりのこと。】四星半

うつ病になった妻とその妻に寄り添う夫の10年間を描いた映画で、想像したよりも更に淡々とした感じの作品だったが、観終わった後、なぜか自分まで憑き物が取れたみたいなすっきりした気持ちになった。人生の膿を静かに飲み込んでじんわり消化してくれるみたいな。橋口亮輔監督は、どんな思いを飲み込んできたらこんな映画を創れるのだろう。リリー・フランキーさんも木村多江さんもとてもはまり役で素晴らしかった。

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【K-20 怪人二十面相・伝】四つ星

由緒正しい冒険活劇の香りがした。特に、松たか子さん演じるお嬢様のお転婆ぶりが楽しかった。佐藤嗣麻子監督にはこういう作品は合っているのかもしれない。ただ、金城武くんの滑舌の悪さがちょっと目立ち過ぎてしまっていたような気はするのだけど。

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【結婚しようよ】二星半

家族揃ってごはんを食べるという考えにあまりにも固執しすぎるお父さんがどうも不自然というか、いびつな権威主義なんて要らんと思うのだが、そこらがどうも上手く現代的な感性に消化されていないような気がする。というか、なんかいちいち感覚が古いように思うのだが……。佐々部清監督も、好きな作品と嫌いな作品で落差があるなぁと思う。

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【光州5・18】三星半

光州事件の歴史を風化させまいとする気概は立派だ。自国の軍隊が民衆に向かって銃を放つ、その異常さは映像表現にするとひとしおだと改めて感じた。しかし、ベースがべったりとお涙頂戴もので、ドラマ自体の出来としてはいかがなものだろうかと思ったのだが……。

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【告発のとき】三星半

トミー・リー・ジョーンズさんはやっぱり名優だし、シャーリーズ・セロンさんの演技はすごく確かだ。でも、そのドラマが暴く真相というのが、またしても世界中でアメリカ人以外みんな知ってることだったりするので、あぁやっぱりとうんざりしてしまった。こういう映画はアメリカ国内だけで上映しとけばいいじゃん、輸出する必要なし。

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【コッポラの胡蝶の夢】三星半

こういう一種耽美的な感じは、私はあんまり乗れなかったが、ハリウッドじゃまず撮らせてくれないような映画を自腹で好きに撮っているコッポラ監督のチャレンジャーぶりはいいなと思った。

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【コドモのコドモ】三星半

小学生が子供を産むという展開は何かのカリカチュアなんだと思うけど(生物学的にはあり得ないらしいし)、実写にしてしまうと思った以上に不気味だ。演出や子供達の演技のおかげで、映画としてはよくできていると思うのだけれど、いろいろなあり得なさが相俟って私の臨界値を超えてしまって、どうにも受け入れ切れなかったような気がする。

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【子猫の涙】三星半

ボクサーの森岡栄治さんの破天荒な人生。武田真治さんはこの人の無茶苦茶な部分を演じるには根が上品過ぎるような気がする。また、彼に辟易する娘の気持ちも描ききれていないと思う。森岡さんの人生自体に敬意を表して少しおまけします。

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【この自由な世界で】四星半

いい年こいても日々の生活に汲々としていた本作のヒロインは、今までのケン・ローチ監督の作品の中で一番身近に感じたかもしれない。ただ、彼女にはある種の才覚があり、それが行き過ぎて道を踏み外していくことになるのだが……。舞台もテーマも違うけれど、この映画と【闇の子供たち】は、どちらもベースに世界の富の偏在の問題が横たわっている。自由だの平等だのといった概念は、人類の努力目標でしかないもので、現実からは遠くかけ離れている。「自由世界」だなんてたわ言を言うのは余程オメデタイ人達だけだ。

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【小森生活向上クラブ】三星半

悪を穿って日々の“生活を向上させる”はずが、加速度的にどんどん手に負えない状況になっていくのに我を失っていく古田新太さんの表情はさすがの面白さ。ただ、話がはちゃめちゃになりすぎて、最後はついていけなくなって唖然としてしまったような。

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【コレラの時代の愛】二つ星

のっけの紋切り型から悪い予感がしたけれど、ストーリーが進むごとにどんどんひどくなっていった。マルケスの原作を無理矢理ハリウッドの公式に当て嵌めてなんとなく映像化した感じだが、本作で一番大事なところはおそらくそこじゃない。結局何が言いたいんだか不明なものが出来上がる。センス全くなし。ヒデェ。ハビエル(・バルデム)さんもいい加減仕事選んで欲しいよなーとちょっと思った。

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【今夜、列車は走る】三星半

失業した鉄道員たちの群像劇、だけど職場は何でもいいような ? (ラストシーンに繋げたかっただけじゃない ? )時間が前後する構成もそんなに必然性あるかなぁ……。悪くはないけど、ぴりっともしない感じ。こんなんで『第三世代のケン・ローチ』とか惹句に書くなよーと思った。レベルが違いすぎるでしょ。

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【The ショートフィルムズ みんな、はじめはコドモだった】四つ星

オムニバスのどの作品も、監督も出演者も豪華で出来もよく、2008年の最後にふさわしい見応えのある映画になっていて満足した。阪本順治監督の『展望台』なども好きだが、李相日監督の『タガタメ』が特に印象に残った。藤竜也さん演じるお父さんの重い絶望と、クドカンさん演じる死神のノリの軽さが、絶妙なコントラストだ。

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【ザ・マジックアワー】四つ星

一定以上の水準を楽々クリアしているとても出来のよいコメディだと思うけど、ただ、私は個人的に、ウソの上に更にウソを塗り固めていかなければならないという話が昔から病的に苦手なので、ちょっとしんどかった。佐藤浩市さんが涙ぐむシーンは、映画なるものへの思いが満ち溢れているようでとても素晴らしかったけど。ところで、過剰露出と批判的な声もあった三谷幸喜監督のプロモーション活動だが、監督は、映画にかかったコストを少しでも回収しようと、自分にできることはなんでもするつもりで頑張っただけだと思うよ。私は偉いと思うけど。

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【三本木農業高校、馬術部】四つ星

実話ベースのお話だそうだが(しかし副題はクドすぎる)、主人公を含む馬術部の数名の3年間に渡る山あり谷ありの成長を、ゆったりしたテンポでじっくり描いているのに好感を持った。脇を固める柳葉敏郎さんや松方弘樹さんがうまいので、フレッシュな役者陣の演技も安心して見ていられる。同じ佐々部清監督作でも本作は好きだなぁと思った。しかし、こんな立派な農業高校が実在するってすごい。

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【幸せの1ページ】二星半

今までのジョディ・フォスター出演作は、どれもそこそこの質は保証されていたように思うんだけど……こりゃヒデェ。今まで一番の駄作じゃない ? 御伽噺的な設定に甘えるのも度が過ぎていて不愉快でしかない。

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【しあわせのかおり】四つ星

師弟関係(藤竜也さん×中谷美紀さん)の話を真正面から描いている作品って、珍しいんじゃないだろうか。料理がどれもこれも素晴らしくウマそうで、地道な描写が真に迫っていて好き。三原光尋監督の手腕がうまく生かされた良作だと思う。

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【GSワンダーランド】四つ星

妙な企画ものかと思ったが、グループサウンズの流行に翻弄される人々と、その中で一風変わった青春時代を送った主人公達(栗山千明さん×石田卓也さん×水嶋ヒロさん×浅利陽介さん)を、案外しっかりとした構成力と描写力で描いていて、一定のクオリティのある作品になっていると思う。武田真治さんや高岡蒼甫さんの怪演も光ったけれど、岸部一徳さん(言わずと知れた元ザ・タイガーズのリーダー ! )が、昔は逆の立場だったはずのプロデューサー側の人間をのうのうと演じているのが凄すぎるかも。

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【シークレット・サンシャイン】三つ星

【ペパーミント・キャンディー】や【オアシス】のイ・チャンドン監督作ということで何とか頑張って観たけれど……私はこの主人公の女性にどうしてもついていけない。彼女がここまで周りの人を置き去りにして自分の悲しみに耽溺するきっかけになったのが、誘拐された子供が殺されるなんて誰も口を差し挟む余地のない悲劇にしているところが、ますますあざといような気がした。自分に子供がいたりしたらまた違った感想になるのかなぁ……う~ん。

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【Genius Party Beyond】三つ星

【Genius Party】の前作は凄いと思ったんだけど、今回はお話が全然頭に入ってこなかったような気がするなー。

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【ジェシー・ジェームズの暗殺】四つ星

アメリカでは伝説と化していて今まで何度も映画化されているという強盗犯ジェシー・ジェームズを演じたブラッド・ピットさんもさることながら、彼を裏切って暗殺したロバート(ボブ)・フォード役のケイシー・アフレックさんの表情が、映画の展開につれて変化していく様が見事だった。(ちなみに実際の主役はケイシーさんの方なのだが。)それでも、馬×鉄砲=眠気の個人的な方程式に抗うのはやっぱり大変だったけど……。

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【ジェリーフィッシュ】三つ星

ちょっと満たされない日常の中でちょっとした幸せを見つける、とかいった“感性”的なものが、かったるいなーと思うようになってしまった……。ちなみに、舞台は特にイスラエルでなくてもいいのだろうと思う。

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【実録・連合赤軍 あさま山荘への道程<みち>】五つ星

あさま山荘事件について描いた映画の中でも恐らく決定版になるであろうのみならず、若松孝二監督のフィルモグラフィーの中でも間違いなく集大成的な作品になるのではないかと思う。正視するのが辛い話なのは百も承知だが、敢えて言いたい。これは一度は観るべきだ。この歴史は無かったことにしては決していけないのだと思う。

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【ジプシー・キャラバン】四つ星

日本でもおなじみのバルカン・ブラスのタラフ・ドゥ・ハイドゥークスやファンファーレ・チォカリーア(映画内ではファンファーラ・チョクルリーア)、スペインのアントニオ・エル・ピパ・フラメンコ・アンサンブル、マケドニアの“ロマの女王”エスマ、インド出身のマハラジャといったロマ(ジプシー)のミュージシャンとダンサーのスーパースター達の共演によるアメリカ横断ツアーの様子を描いた映画。ロマと一口に言っても出自はバラバラで、彼等をひとまとめにしてツアーってアメリカの興行主はなんて雑なことを考えるんだろうとも思ったが、彼等が時間が経てば経つほどお互いに対する理解を深め、ロマであるという共通の認識の下に結束していく様子は、とても感慨深いものがあった。音楽やダンスも勿論かっこよい。

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【ジャージの二人】三星半

互いの事情は垣間見えるものの、事件らしい事件は何も起こらない。でもなんかそれが印象に残る。鮎川誠さんと堺雅人さんをキャスティングした時点でおそらく8割方成功しているのだろうと思う。ただ全体的にもう少し抑揚があってもよかったのかもしれない。

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【JUNO/ジュノ】四つ星

一見口は悪いし独立独歩なように見えても、まだ大人になりきれていないところのあるヒロインのアンバランスさを体現しているエレン・ペイジさんの繊細さは素晴らしい。ただ、生んで養子に出せばいいといったような、親子関係に関する様々な感覚の違いはちょっと驚いた部分も多かった。勉強させてもらいました。

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【純喫茶磯辺】三星半

「アレ」という台詞が多用されたり、言うべきことを言えずに口ごもってしまうシーンが多く見られたりするのは、由緒正しく“日本人的”ということになるのかもしれない……ただ私はそういうのは限りなく苦手だ。宮迫博之さんのダメ親父ぶりと仲里依紗さんとの親子関係は印象に残るんだけどね。

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【少林少女】三つ星

なんでラクロスなのかさっぱり分からない……いっそタイトルを『少林ラクロス』にすればよかったんじゃないの ? ストーリーが粗雑すぎるし詰め込みすぎで、結局どれも中途半端。柴咲コウさんが折角アクションを頑張っているのに、勿体なさすぎる。

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【シルク】二つ星

玄関先に狛犬が置いてあったり(神社じゃないんだから ! )、囲炉裏の部屋に掛け軸が掛けてあったりする(煤だらけになっちゃうじゃん ! )のを見ただけで完全に萎えてしまうのは心が狭いのでしょうか……こんなので日本文化に理解がありますとか言ってのける神経が、私には全く理解できない。しかし、そういった異文化ディスコミュニケーションの問題を差し引くとしても、このお話は抑揚がなく冗長すぎるような気がした。

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【次郎長三国志 大馬鹿者でござんす。】四つ星

俳優を何年続けたって、それだけで監督ができるようになるものではないと思う。超一流の役者陣の魅力を魅せ切り、役者の艶をたっぷり堪能できる津川雅彦さん(監督業をする時は一族を背負うマキノ姓を名乗っていらっしゃる)の演出はスゲェと思う。ただ、今回のお話自体は今一つ中途半端なところで終わってしまったような気がした。オリジナルとの兼ね合いでしょうがないのかな ? 続編を創る予定はないのかな ?

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【Sweet Rain 死神の精度】三つ星

死神って随分ヒマなことをやってるんだなぁと思った。最後まで見ても、オチも「だから~ !? 」って感じだったなぁ……。

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【スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師】四つ星

ティム・バートン監督作品らしく完成度は高いし、ミュージカル仕立てになっている分、1999年に公開された別バージョンよりは面白いかとは思ったが、やはりこのストーリー自体があまり好きになれない。また、ジョニデさん演じる主人公が次々と殺人を繰り返していくシーンが想像以上に生々しく血みどろで、表現としては真摯で正しいと思うんだけど、果たしてこれは、テレビ広告を打ったりしてガンガン売り込んだりしていい作品なのかな ? と疑問に思った。実はPG-15(15歳未満要保護者同伴)作品だったって、公式ホームページにもほとんど書いてなかったけど。売らんがな、が先行してるんだろう、いい加減だな。

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【スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー】三星半

14~5歳という主人公の少年少女たちは随分幼く見えるし、音楽の使い方とかやたら70年代っぽい。何か違和感があるなーと思ってたら、実は1969年作品のリバイバル上映だった……失礼しました。ちなみに日本では、1970年に【小さな恋のメロディ】と同時公開されて、当時は【純愛日記】という邦題だったんだそうな。スウェーデンでは永遠の初恋ものとして超有名な作品らしい。【愛おしき隣人】のロイ・アンダーソン監督のデビュー作なんだそうだ。

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【スカイ・クロラ The Sky Crawlers】四つ星

押井守監督の新作。しかし、ショーとしての戦争を必要とする平和な世界という設定がよく理解できなかったし(人類ってどこまで行ってもおバカだっていう前提なんですね)、“大人にならない子供たち”といってもこの映画で何をもって大人と子供を区別しているのかもよく分からなかった。……そもそも昔から“終わりなき日常”という概念があまり理解できてない私に、この映画は理解できないんじゃないかなーと思った。(だって人間はぼやぼやしてるとすぐ死んでしまうものだし、人生はそんなに暇ではないんじゃないかと。)それでも見入ってしまうくらいの表現力があるのは凄いと思うけど。

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【スピード・レーサー】四星半

原作の『マッハGoGoGo』はもっとレトロなイメージがあったけど(実はそんなに覚えていないんだけど……)、それのどこがどう脳内変換されたら、これだけ極彩色でポップでスピード感に溢れた世界になるのだ !? ウォシャウスキー兄弟の頭の中は一体どうなっているの !? このビジョンは天才的としか言い様がない。私は一番好きな小説である『かもめのジョナサン』の一番好きなフレーズ、「スピードは純粋な美ですらあったのだ」というのを思い出したが、スピードは芸術であり、哲学でもあるのかもしれない。主人公のスピード・レーサー君は、心配事はあっても余計な憂いや悩み事はない、完全無欠で混じりっけのない無垢な天才で、今のこの世にこんな主人公を成立させることができるということ自体も非常に驚きだった。
ただ、このスピード感と情報量は小さな子供に見せるにはちょっと速すぎるのかもしれず(年寄りの評論家連中は無論問題外で)、ファミリーものの軸を根底に据えたこのシンプルな世界観は(本作ではそこがキモだと思うのだが)【マトリックス】を観てウンチクなんかを語っていた人達には逆にちんぷんかんぷんで、となると、この映画を楽しめる層ってかなり限られてくるのかもしれない……。でも、誰が何と言おうと、私はこの映画が好きなんだからしょうがないじゃん !!

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【スルース】一星半

カッコつけの思わせぶりな演出だけで、見てる側の気持ちの動きが特殊な状況設定に全くついていかない。マイケル・ケイン大先生とジュード・ロウ先生の演技力を以ってしても救えない。ケネス・ブラナー監督のある時期以降の演出には全然感心できないのだが、いよいよもう見に行くのはよした方がいいなと思った。

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【ゼア・ウィル・ビー・ブラッド】四つ星

テーマソングと化しているブラームスのヴァイオリン協奏曲(第3楽章)が耳に残ってカッコイイ。ポール・トーマス・アンダーソン監督がこんな大河ドラマみたいな映画を創るなんて ! ただ、結局ダニエル・デイ・ルイス様の強烈な因業じじいぶりしか記憶に残ってないというのは、映画としてどんなもんなんだろうか……とふと考えた。

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【世界で一番美しい夜】三つ星

狐つきとか蛇になった男とか、天願大介監督の今までのモチーフの集大成……なんだろうか ? すっげぇ変な映画 ! 大体、セックスさえしていれば世界は平和になるというのは、妊娠や出産や子育てを全く無視した完全に男側の発想で、あまりに牧歌的でお気楽過ぎないかな ? そもそも、好き放題妊娠して好き放題子供が生めるような社会じゃないから出生率下がるんでしょ。

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【接吻】四星半

万田邦敏監督の旧作【UNLOVED】の不条理さやしつこさは全然好きになれなかったけれど、死刑囚に一方的に恋する本作のヒロインは、エキセントリックではあるけれど一本芯が通っていて、目を離せなくなる圧倒的な力があると思った。映画ファンならこの映画の小池栄子さんを観る義務がある !!

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【潜水服は蝶の夢を見る】四つ星

左目の瞬きだけで本を書いた全身麻痺の男性の実話の映画化。こんな究極の状況にある主人公(マチュー・アマルリックさんの熱演 ! )の気持ちなどあまりにも想像を絶しているが、その片鱗を感じさせてくれるような丁寧な演出だと思った。ジュリアン・シュナーベル監督の映画で初めて心からいいと思った。

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【全然大丈夫】四つ星

一般的な労働にはからきし向いていないウルトラ不器用人間を演じた木村佳乃さんの負のオーラが凄い(この人はやっぱりもの凄く上手い ! )。自分には甘いのに他人には厳しいという性格の欠点を指摘されて狼狽する荒川良々さんが笑える。岡田義徳さんのどうかと思うようなお人よしぶりは、でもきっとこんな人いそうだと思う。みんな全然大丈夫。何だか幸せな気持ちになった映画だった。ココリコの田中直樹さんの役の男前ぶりが素敵 !

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【そして、私たちは愛に帰る】四つ星

トルコ系移民二世のドイツ人、ファティ・アキン監督が描いた、トルコとドイツに関わる三組の親子の物語。All you need is love.この邦題は、平凡なようだが、この映画のテーマをズバリと表していて秀逸だと思う。

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【その土曜日、7時58分】四つ星

原題の「悪魔がお前の死を知る前に」をそのまま使えばよかったのではないかな ? どんどん泥沼にはまっていってどんどん不幸になる兄弟(フィリップ・シーモア・ホフマンさん×イーサン・ホークさん)を描く乾いたタッチが秀逸。シドニー・ルメット監督のさすがの名人芸。

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【その日のまえに】四星半

死というものを真正面から捉えて見つめながら、でもあくまでも軽やかに戯れ続ける。大林宣彦監督作品の世界観の一つの集大成、ではないだろうか。永作博美さんと南原清隆さんの夫婦の描写があんまりにも素晴らしい。

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【ダークナイト】四つ星

バットマン・シリーズって概ね暗いものが多いけど、クリストファー・ノーラン監督の本作は、ここまで暗くなくてもいいんじゃないだろうかと思うくらい暗い。しかも勘違い野郎と化した主人公のバットマンにも全然救いがないし……。アメリカの世相ってそんなに暗いんだろうか(と思ってたらその後、金融危機が起こったりしたのだが)。ただ、あのジャック・ニコルソン様のジョーカーに伍するジョーカー像を作り出した故・ヒース・レジャーさんの姿はしっかりと目に焼き付けておくべきだろうと思った。合掌。

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【ダージリン急行】四つ星

今時「インドで自分探しの旅」ってありかよ !? と思ったが、このうだうだした感じが、ウェス・アンダーソン監督らしいっちゃらしいかもしれない。エイドリアン・ブロディさんが好きなので、彼のC調な演技が見られるだけでも満足できたけど。三兄弟が、いつも重そうに持ち歩いているあのカバンの山をいつ捨てるのかな~と思っていたら、これが存外重要なシーンだった。このカバンはマーク・ジェイコブス(ルイ・ヴィトンのデザイナー)の特注オリジナルなんだそうです。

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【大丈夫であるように Cocco 終らない旅】四つ星

Coccoさんがごはんをおいしく食べられるようになるようにお祈りしています。

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【タカダワタル的ゼロ】三星半

前作を見に行ったその流れでなんとなく見に行ってしまった。みんなすごく楽しそうなコンサートだけど、『いせや』の古い建物と同様、もう存在しない風景なのね……。『いせや』は新館が建ったけど、高田渡さんはもうフィルムの中にしかいないのだった。

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【タクシデルミア ある剥製師の遺言】三星半

久々に見たヨーロッパ産キワモノ系映画 ! スケベ、大食い、剥製師、の三代に渡る物語は、そのまま性・食・死に対する人間の三大欲求を象徴しているかのようだ。昔、好きだった頃のピーター・グリーナウェイ監督の映画を思い出した。ただ、グリーナウェイ映画はもっと絵的に綺麗だったと思うけど……。

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【たみおのしあわせ】三星半

男二人(オダギリジョーさん×原田芳雄さん)の生活は純粋無菌培養状態、でも彼等をとりまく環境はどろーんとして悪意に満ちていて、あまり救いもないような……。結局【卒業】のパロディをやりたかっただけでは ? とも取れるけど、ラストシーンは意味がよく分からんかった。

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【タンゴ・イン・ブエノスアイレス 抱擁】三つ星

庶民の文化に色濃く根付くタンゴ。大好きなピアソラの曲なども結構掛かっていたのはいいけれど、ドキュメンタリーとしてはちょっと冗漫でポイントが絞りきれていない感じだったかも。

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【チーム・バチスタの栄光】三星半

阿部寛さんが厚生労働省の役人に見えない以上に、竹内結子さんは致命的なくらい医者に見えない。医者なら献体解剖くらいやったことあるはずだし、専門分野じゃなくてもあらましくらいは授業で習うのでは。通りすがりのトーシロの女の子じゃないんだからさ……。ストーリーはいいけれど、淡々と流れてしまって山場感に欠ける印象。全体的に、もっと盛り上がってもよかったはず。

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【チェチェンヘ アレクサンドラの旅】三星半

ソクーロフ監督が戦場に寄せる感慨よりも、旧ソ連圏ではお年寄りは人生の師としてすごく敬われているんだなーということの方が印象に残った。うーん、この話のテーマはそこじゃないだろうって ?

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【地球が静止する日】三つ星

ジェイデン・スミス君(ウィル・スミスの息子さんだ ! )が演じる子供が、子供とはいえあんまりにも分からず屋でトラブルメーカーで腹が立ってしまう。それは彼の孤独や不安が原因なのさ、なんてことが分かるほどちゃんとした描写なんてないし。宇宙人のキアヌ君がどうして変心したのかも不明。総じて脚本が粗雑なんだよっ。高い予算が泣くぞ。

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【チャーリー・ウィルソンズ・ウォー】一星半

フィリップ・シーモア・ホフマンさんが出てるからつい魔がさして見に行ってしまって……大失敗。アメリカがかつてアフガニスタンにジャブジャブ軍事費を投入したのがその後のアル・カイダの温床を作り出したと言われているのに、お手柄お手柄、みたいな ? よくもまぁこんな能天気な映画を作れたもんですな(怒)。映画を作っている人達がそのことを知らないわけじゃないらしいと映画の最後で示唆されるのが、余計に始末が悪い。もしかすると、脚本の段階ではもっと皮肉を込めた物語になるはずだったのかもしれないけれど、少なくとも、この映画のトム・ハンクスさんからはそんな気配は微塵も感じられなかった。

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【つぐない】二つ星

アカデミー賞で何部門かにノミネートされていた作品で、誉めている人は非常に誉めているようだが、私は全く駄目だった。年齢がいくつだろうが性別が何だろうが、人を陥れる類いの嘘って赦されようがないわよぅ。また、起こってしまったこと自体は取り返しがつかないという点では、つぐなうことはある意味本質的に不可能なことで、その不可能性にいかに迫って行くかがつぐなうことの本質だと思うのだが、本作の主人公の言動はそうしたところにはさっぱり肉迫して行かず、終始自己満足の範疇でぐるぐる回っているようにしか見えなかった。ラストシーンを見てアホか ! と叫んだウルトラ・プラグマティストの私はきっと冷たい人間なのだろう。

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【妻の愛人に会う】三星半

ライティングのタッチといいセンスといい、ふた昔前の韓国映画を見ているみたい。それが悪いんじゃないけれど、私はこのテンポをかったるく感じた。男女間の軋轢のどうしようもなさをネットリ描くのが好きな人なら楽しめるのかもねー。

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【敵こそ、我が友 ~戦犯クラウス・バルビーの3つの人生~】四つ星

アメリカが元ナチス親衛隊を戦後にスパイとして使っていたというだけで充分衝撃的なのに、このクラウス・バルビーは、その後ボリビアに渡ってチェ・ゲバラの暗殺にも関わったという……。「皆が私を利用したのに裁かれる時は私一人だ」という発言には欺瞞もあると思うけど(本人はそこに主体的に関わっていたのだろうから、裁かれること自体は仕方あるまい)、裁きは見えるものにしか下されず、つまり形として見えない悪行は堂々と放置されているというのは本当なのだろうと思った。

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【デトロイト・メタル・シティ】四つ星

松山ケンイチさんの相変わらずのなりきりぶりは凄い。笑える展開だけど、「やりたいこと」と「求められること」の解離って実はシビアなテーマかもしれないと思った。映画が終わる頃には、すっかりクラウザーさんのファンになってしまっていたような気がする……。

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【テネイシャスD ~運命のピックをさがせ ! 】三星半

テネイシャスDは、実際に活動しているジャック・ブラックさんのバンド名なのだそうな。下品な言葉が飛び交い、あんまりにもアホアホでおバカ。でも音楽だけやたら本格的。ジャック・ブラックさんの本質に迫るにはきっと外せない一本だろう。

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【TOKYO ! 】四つ星

作家に自由を与えるのはいいことだと思うけど、オムニバスの場合は全体のトーンも大切だから事前の摺り合わせはより重要では?そんなオムニバスの難しさも出ちゃって、個性的ではあっても、全体の仕上がりは若干微妙だった気がする。一番作家性を感じたのはポン・ジュノ監督の『シェイキング東京』だったけど、これでどうやって都市機能が立ち行くのだ ? という素朴な疑問から逃れられなかったのが玉に瑕。1本の作品としては、ちょっと安部公房作品みたいなミシェル・ゴンドリー監督の『インテリア・デザイン』が一番よくまとまっていて好きだった。レオス・カラックス監督の『メルド』は……タイトルからして“糞”だもんねぇ。もしかしてこの人は、人間や映画や、この企画と関わること自体を“糞”だなんて思っていやしないのだろうか ? そうじゃないことを祈っておこう。

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【TOKYO JOE マフィアを売った男】四つ星

亀山千広さん×奥山和由さんって、日本映画界の二大山師の共闘か !? (←誉めてます、多分。)シカゴに実在した日系人マフィアの波乱万丈の人生は、そこいらのドラマより超劇的。両氏は本当はこの話でフィクションの本編を作りたいらしいので、何年か後に似たよな題名の映画が公開されるかもしれません。

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【トウキョウソナタ】四星半

日本はゆっくり沈み行く船のようなものだ、みたいな台詞があった。こんな時代の空気をこれだけ的確に切り取っている映画を見たことがない。黒沢清監督の映画でも分かりやすく、一般の方々にも勧めやすいかもしれない。しかし今年は何本の映画で香川照之さんを見たかしら。どの作品でも欠かせない存在になっているのが凄い。

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【闘茶 ~tea fight~】三星半

闘茶っていう競技は、中国にも日本にも本当にあるんだね ! 戸田恵梨香さんが可愛く、香川照之さんの怪演が相俟って、無国籍的な魅力があっていい。ただ見せ所を整理しきれておらずちょっとまとまりのない印象はあったかもしれない。

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【東南角部屋二階の女】三つ星

地味でもじんわりくる内容を目指すのはいいけれど、題名がもっと何とかならなかったのだろうか。一般の観客に興味を持ってもらうことを予め放棄しているとしか思えないのだが。

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【トゥヤーの結婚】四つ星

半身不随になった旦那さんと一緒に暮らすことを条件に結婚相手を探す、って実際あったお話らしい。お金も大事だが、理解してくれる人がいることはもっと大事。いろいろな問題が内包されているのが垣間見えても、たくましくも健気なこの女の人が幸せになるといいなと思った。

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【どこに行くの ? 】三星半

その昔【追悼のざわめき】を観て、自分の感性に限界が存在していることを悟らされたのよね……。そんな松井良彦監督の久々の劇場公開作。あの得体の知れなさを感じさせつつも、主演の柏原収史さんの美しさに助けられて随分見やすい感じだ。ただ、彼とヒロイン(!)の恋愛関係には少し無理を感じたんだけど……。

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【ドラゴン・キングダム】三つ星

ジャッキー・チェン様やジェット・リー様を脇役にするなんていい度胸だ。しかも、彼等を差し置いて主人公をやっている少年があまりにもパッとしないので、思い切り見る気を削がれてしまった。アメリカで作ってるから、身近な感じのキャラを入口にしようという魂胆だったのかな ? それにしたって、アジアの超スーパースターの二人を迎えてこのサエなさはないんじゃない !?

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【トロピック・サンダー 史上最低の作戦】四つ星

大好きなベン・スティラーさんが、大好きなジャック・ブラックさんや大好きなロバート・ダウニー・Jr.さんとおバカを繰り広げる。ノンクレジット出演のトム・クルーズさんがチビデブハゲのイヤミなプロデューサー役を喜々として演じているのがおかしい。(最近では一番いい役だったんじゃないの !? )ただ、いくらコメディといったって、お話がちょっととっ散らかっている気がするのが残念だったかも。

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【奈緒子】四星半

“原作つき”の映画が少なくない昨今、それらは何故名作と駄作に別れてしまうのか ? それは、何を選び何を省略すべきかの取捨選択だったり、その有機的な組み立て方だったり、ロケハンへのこだわりだったり、役者の演技の引き出し方だったり……。他の表現手段では破綻を来さないかもしれないことが映画ではおかしく見えてしまうことも往々にしてある訳で、そういった一つ一つをないがしろにせず、すべての要素に吟味を重ねて丁寧に紡ぎ合わせた時に初めて、映画という表現として結実する可能性があるのだと思う。そうした意味で本作は、映画化という作業の一つのお手本になっているのではないだろうか。古厩(智之)監督はこんなにも誠実に映画に向き合っているのだと改めて感じた。本作は、マラソンに打ち込む高校生達が軸になっているが、“どうしようもないこと”に抗おうとしてみることにテーマが据えられており、案外大人向けな作品になっているのではないかと思う。今年一番の拾い物かもしれない静かな傑作だ。

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【七夜待】三星半

映画のちらしとか予告編とか見てると、南国への癒しの自分探し旅行みたいなことが書かれててゲロ吐きそうになった。実際このヒロイン、一人で外国旅行するのにそんなにガードが甘いなんてどうかしてる、とイライラするままこともあった。しかし、映画を見てるうちに話がなんか違う方向に行ってしまい、よく分からないままに、結局、緑の生命力に還元されていったような……こりゃタイ版の【萌の朱雀】か ? と思ったのは私だけ ? しかし、河瀬直美監督は“途中まで手探りで作っていた”みたいなことを言っていて、未だにそんなことでいいのかなぁ……とちょっと思ったりした。

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【泪壺】二星半

いくら瀬々敬久監督の映画でも、渡辺淳一原作って知ってたら絶対見に行かなかったわよう……。この話、結局姉妹どんぶりが書きたかっただけじゃねーの !? おまけに話はだらだらしてなかなか進行しないし、このヒロインはどうしてここまでグズグズしてるのか、全くもって説得力が無いし。しかし詰まるところ、この違和感は、ヒロインの存在感がどうしても好みじゃないところに集約されるのかもしれないと思った(顔立ちのせいなのか演技のせいなのか)。いしだ壱成さんの存在感は私は嫌いじゃないんだけどねぇ。

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【≒草間彌生 ~わたし大好き~】四つ星

草間彌生さんって見てて飽きない方ですね~。彼女の創作の秘密みたいなものは分からないけど、モチーフが次から次へと泉のようにわらわら湧いてくる彼女は、天才以外の何者でもないと思った。

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【西の魔女が死んだ】四つ星

どんな人でもある意味ではある種の魔法を使えるんじゃないだろうか。地に足をつけてきちんとした生活を送って、自分をきちんと見詰めなおす、確かに魔法の基本というのはそういうことなのかもしれない。女の子に自分の人生を変えるすべを教える“魔女”のおばあちゃん。長崎俊一監督がこんなにやさしい映画を創るなんて !

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【20世紀少年】三星半

原作をおそらくこれ以上できないくらい正確に映像化していて、さすがは堤幸彦監督だ、とは思った。俳優陣もみんな熱演していて文句ない。ただ、原作の荒唐無稽な世界観は、3D化してしまうとどうもスケールが小さく安っぽく感じられてしまうような。そもそも我が家では、実は原作への評価もそれほど高くないので(中盤以降は間延びしてしまっているように思われるので)、続編を見に行くかどうかは微妙かもしれない。

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【ネガティブハッピー・チェンソーエッヂ】二星半

チェーンソー男と戦う女子高生と、彼女と知り合いになった冴えない男の子。市原隼人さんや関めぐみさんの演じる登場人物は魅力的だし、と、ストーリーも面白くなりそうな要素はいくらでもあるのに、話は淡々と進んでいくばかりで、少しも盛り上がってくれないのは何故だろう。

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【ノーカントリー】四星半

ハビエル(・バルデム)君の演じる、交渉が一切通用しない弾道ミサイルみたいな殺し屋は、見てるだけでトラウマになりそうだ……彼はこの世の不条理な暴力の象徴であるらしい。本作は、21世紀になってからのコーエン兄弟の作品では随一の出来だと思う。

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【ノン子36歳(家事手伝い)】四つ星

バツイチとか出戻りとかということではなく、それなりの年になってもその先に何の希望も展望もなく毎日をだらだらと無為にすごしているというのが、見ていてなんかすごい虚無感に囚われる。そんな中年女の話なんて、熊切和嘉監督には他人事だから興味深く描写できてしまうのかもしれないが、私は自分の人生の欠陥を指摘されているみたいで(このヒロインとは随分違う生き方をしているとは思うけど)、かなり気分が落ちてしまってしばらく浮上できなくなってしまった……。それだけよく描写できてるということになるのかもしれないけれど。またあの相手役の男の子の意図的なサエなさも見てて落ち込んでしまうわよねー。

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【パーク アンド ラブホテル】四つ星

とあるラブホテルの屋上の、子供からお年寄りまでが集うふしぎな公園。このラブホテルの経営者と3人の女性との関わりを描くオムニバスみたいな構成の映画。この経営者役のりりイさんの存在感と相俟って、特異なアジール(避難所とか結界みたいなもの)的な空間が創り出されているのが心に残る。

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【バグズ・ワールド】三星半

私は結構アリ好きなのだが(変わっているとしばしば言われる)、グンタイアリ(軍隊蟻)やらサスライアリやらはさすがにちょっと異様だと感じる。(グンタイアリは南米、サスライアリはアフリカの、巣を作らずに移動して獲物を襲うアリ。)でもって、アリはハチの仲間だけど、シロアリはゴキブリの仲間だからアリじゃないわよぅ ! 他のアリのドキュメンタリーならおそらく楽しめると思うんだけど、このサスライアリとシロアリの戦いってのはちょっと無理だった……失敗。

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【パコと魔法の絵本】四つ星

舞台劇を基にしているらしいので(=オリジナルが創られたのはおそらくしばらく前)仕方ないかもしれないけど、記憶が一日しか持たない系の話はそろそろ打ち留めにしといた方がいいんじゃないかと思う。でも本編は、世界中でどう転んでも中島哲也監督にしか撮れない創り込んだ世界でやっぱり凄い。役所広司さんや妻夫木聡さんを始め、俳優さんは全員が怪演と呼ぶにふさわしいんだけど、中でも國村隼さんの女装は忘れたくても忘れられません……。

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【裸の夏】四つ星

麿赤兒さん主催の大駱駝艦が毎年行っているという夏季合宿のドキュメンタリー。いろいろな若者がいろいろな動機でやってきているけれど、最終日の発表会に向かう1週間のトレーニングの中で、みんなどんどん余計な考えがふっきれて表現のみに向かっていく様が圧巻。体を使うことの純粋さって凄いよなぁ。

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【ハッピーフライト】四星半

いくら沢山取材して面白エピソードを重ねても、それだけでドラマが出来上がる訳ではなく、こんなふうに一つの映画に昇華させるのはまた別の次元の話だろう。矢口史靖監督は、随分遠くまでやって来て、この先どこまで進化していくのだろう。今回は某TV局に大手広告代理店まで絡んだビッグバジェットで、飛行機の話だけに某航空会社も全面協力で、ベテラン俳優さんも大挙出演。でも監督の映画の本質は変わりなく、観るといつでも大笑いしている映画の神様に会える気がする。

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【花より男子ファイナル】二星半

のっけのシーンで感じた嫌な予感のとおり、全体的に冗長さが否めない出来上がりになってしまっていた。実はTVシリーズをかなり見ていたのでついうっかり見に行ってしまったのだが、TVシリーズの方は、出演陣の熱演にも関わらず、最後に向かえば向かうほど作品の密度はどんどん落ちてスカスカになっていっているようだった。時流に乗っかることも大事かもしれないし、脚本なども含めて企画を大して練ることもせず、さっくり仕上げてとりあえず出してしまうことも、ビジネスとしては間違ってないのかもしれない。でもそういう貧困な発想は想像力の源泉の部分を枯らしてしまい、長期的に見ると結局は自分達の首を絞めてしまうことになるのではないだろうか。

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【ハプニング】四つ星

M・ナイト・シャマラン監督作は、毎回よく突飛なことを思いつくなーと思うけど、アイディアは面白くてもそれが映画的表現としてうまく結実している時とそうでない時の落差が激しい。でも今回は結構成功していたんじゃないかと思う。何が起こっているのか最後まではっきり分からないという曖昧さがスッキリしないという人もいるだろうけれど、人類が何もかも掌握してるだなんて思わない方がいいというメッセージにダイレクトに繋がっていて、効を奏していたんじゃないだろうか。ただ、数々の自殺のシーンがかなりエグいので、心身が弱まっている方は見るのをやめといた方がいいと思うけど。

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【パラノイドパーク】三星半

ある出来事に遭遇した若い男の子の心の動きが終始丁寧に描かれているのだが、だから何という感じで、内容に全然興味が持てなかった。しかし逆に、若い男の子への尽きない興味を作品に昇華させ続けることのできるガス・ヴァン・サント監督ってある意味エライなって思いましたけど……。

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【パレスチナ1948 NAKBA<ナクバ>】四つ星

イスラエルが建国され、大量のパレスチナ難民が発生したという1948年。パレスチナの人々は、故郷から生活基盤から何から何まで根本的に破壊された。その壊滅ぶりは想像を遥かに凌駕していた。中東和平の道のりは非常に険しいものなのだと改めて思い知らされた。

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【バンク・ジョブ】四つ星

銀行強盗が貸金庫に保管されていた英国王室のスキャンダル写真を盗んでしまったというのは実話なんだそうだ。強盗団、MI-5、地元警察、ギャングetc.が入り乱れて三つ巴、四つ巴、それ以上の展開になり、ちょっと混乱はするけれど活劇としてはダイナミックで面白い。ただ、これらが9割方事実らしいとか聞くと笑ってばかりはいられないかも……。

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【ハンコック】三星半

好き好んで嫌われている人を好かれるようにしてあげましょうなんて大きなお世話っていう感じで、前半のお話はどうも恣意的で無理があるような気がする。後半、シャーリーズ・セロンが活躍し始めてからは少しは話が盛り上がるかなぁ。比較的ハズレなしのウィル・スミス主演作にしてはちょっと低調だろうか。

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【ハンサム★スーツ】三星半

定番でお約束的な展開だが、こういうのはこういうので楽しくていいのかもしれない。ただ、TV的なのかどうなのか、必要以上に伏線を張り過ぎなのと、説明過剰なのが気になった。ドランクドラゴンの塚地武雅さんの存在感もさることながら、彼と同一人物を演じた谷原章介さんの上手さが際立っていたと思う。

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【パンダフルライフ】四つ星

パンダがてんこもりで、ただもう反則的に可愛い。特に、数匹でわーっと重なり合っているパンダは犯罪的なくらい可愛い。映画としてどうだとか、そういうものでは全くないのですいません。しかしどうしてパンダはでんぐりがえしが好きなのだろう ?

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【ピアノチューナー・オブ・アースクエイク】三つ星

ブラザーズ・クエイって80年代のアートシアターでは流行っていたよなー。相変わらず内省的でお耽美な作風で、これはもう好き好きだなぁと改めて思った。うーん、私はもういいですけど……。

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【P.S.アイラヴユー】三星半

喪失とゆっくりと向き合うという展開は嫌いじゃないけれど、ここまで手の込んだ仕掛けというのは不自然といえば不自然。で、このラストは……私はあんまり納得できないなー。ハリウッド映画に出てくるアイルランド男ってもっさりしている人が多くて、どこがいいんだか、私には正直あんまりよく分かんない。

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【人のセックスを笑うな】四星半

ヒロインは私なぞと大体同じくらいの年回りなのだが、20歳下の男の子にコナかけるというのは、よっぽど自分に自信があるか、よっぽどずうずうしいか、あるいはよっぽど天然じゃなければできないと思う。この天然記念物的に天然(でちょっとずうずうしい)ヒロインを見事に造形してしまっている永作博美さんと井口奈己監督には恐れ入った。松山ケンイチさんを始め、蒼井優さん、忍成修吾さんと、すべての登場人物が愛らしく、愛おしい。ものすごく大きな出来事は何も起こらず、主人公たちが恋する姿を淡々と追っかけているだけだが、監督にしか出せない独特の空気感を完成させていて凄いと思う。

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【ひゃくはち】三星半

高校野球の補欠部員の物語。原作があるからかもしれないけど、2時間にあれもこれも詰め込みすぎて、ちょっと焦点がぼやけてしまったかもしれない。高校球児を聖人君子にしていないところはいいけれど、主人公の気持ちは分かるようで、いまいち入りきれないところもあるかも。でも主演の斎藤嘉樹くんの存在感はいいと思う。

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【百万円と苦虫女】四つ星

“自分探し”なんてしたくないというヒロイン。“自分探し”って言葉は確かに胡散臭いよね~。そんなことをしなくても自分は否応なしにここにいて、嫌でも向き合わなくてはならないから。それでも何とかかんとかやっていくヒロインを演じる蒼井優さんはめちゃめちゃ可愛くて素敵。ストーリーの転がり方も面白い。目下、タナダユキ監督の資質が一番いい形で出ている作品なのでは ? と思った。しかし、そんなに簡単に百万円貯められる方法があるんなら伝授してくれよ~。

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【ピューと吹く ! ジャガー THE MOVIE】四つ星

最近、悪役でも妙な役でも何でも張り切って演じている要潤さんを見ていると、なんか一皮剥けたな~という感じがする。私は本来はこの手のナンセンスさを売りにしている作品はあまり好きじゃないのだが、本作は、要さんの開き直ったなりきり方も効を奏して、以外にもプチ感動作になってしまっているような気がする。

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【フィクサー】四星半

ある弁護士事務所に勤める“フィクサー”(揉み消し屋)が、ある大企業の集団訴訟の真実に触れて自分が揉み消されそうになる……。練り上げられたストーリーがジョージ・クルーニーさんにぴったり !! 個人的には、ティルダ・スウィントンさんの演じる企業弁護士の人物像が興味深かった。どんなにひどい企業犯罪をしでかしている企業でも、働いている人の大多数は、自分の生活のささやかな向上を望んでいるだけの普通の人間なんでしょうねぇ。

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【ブーリン家の姉妹】二星半

ハリウッド産の歴史モノって、どうしてこんなにセリフが説明的で幼稚くさくて、人物描写が薄っぺらくて、芳醇さのカケラもないんだろう。もう二度とハリウッド産のコスチューム・プレイは見に行きたくないと思った。

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【ブタがいた教室】四つ星

殺して食べるために生き物を飼う。大人でも大概ごまかしている部分を子供の教材にするのはかなり酷だと思うけど、この先生はだからこそ子供達に考えて欲しかったのかなと思った。本作自体は実話を元にしたフィクションだが、子供達が「命の授業」に真剣に向き合う姿を、ある種のドキュメントとして克明に追っている部分には迫力がある。(前田哲監督がこういう手法を使うのは少し意外だった。)そんな生徒達のナビゲート役に徹した教師役の妻夫木聡さんは、役者としてまた一段幅が広がった感じがする。

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【船、山にのぼる】三星半

あるダムの建設に伴う10年以上に渡るアート・プロジェクトの記録。このダム建設やアート・プロジェクトに関わるいろいろな出来事を淡々と収めているのは、この状況に静かに寄り添おうとする誠意なのだと思うけど、ドキュメンタリーってどう転んでも作者の意図を何らかの形で切り取ったものになるのだから、もう少し主張する部分があってもいいんじゃないかなと思う。

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【ブラインドネス】四つ星

パニックものとして、フェルナンド・メイレレス監督の卓越した描写力を感じる。ただ、免疫の問題なら確率的に他にも感染しない人がいるんじゃないかという疑問と、暴力で支配しようとする輩に黙って従ってしまう展開になる部分に関しては、ちょっとだけ納得できなかった。(私なら、女を出せとか言い始めた時点で、それこそ目が見える利点を何とか活かしてどんなことをしてでも奴らの息の根を止めてやろうと思うことだろう。)伊勢谷友介さんと木村佳乃さんが、国際的なキャストの中でも見劣りしてなくて、英語も上手くてカッコよかったね~。

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【ブラブラバンバン】一星半

原作を知ってれば少しは盛り上がれるのかな ? しかし映画を見た限りでは、人物描写もストーリーの描写もまるで出来ていなくてお話にならない。それぞれの人が何を困っているのやら、何を怒っているのやら、何を目指しているのやら分かりゃしないし、彼等が結束していく過程も上達していく過程も分からない。気持ちいい音楽を聴くと暴走するというヒロインのキャラ設定の面白みだけで押し切ろうとしても無理。こんなんで映画を作ったようなつもりになってたら駄目じゃん。

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【ブレス】三星半

キム・ギドク監督作品って、好きじゃないと言いつつ毎回観て、やっぱり好きじゃないと思うんだよなー。このヒロインのエキセントリックさには私はやっぱりついていけない、というかそもそも彼女の顔つきが好きじゃないのかもしれないが……。死刑囚のチャン・チェンさんの眼がものすごく綺麗なのと、彼を愛する同室の囚人役のカン・イニョンさんがよかった。

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【ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン】三星半

アルベール・ラモリス監督の往年の名作【赤い風船】にオマージュを捧げた作品らしい。ホウ・シャオシェン監督らしい静かな描写が光るけど、これといった盛り上がりには欠けるかなぁと思う。

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【ホームレス中学生】四つ星

『すべらない話』でびっくりしたり笑ったりしながら聞いていた話が本になり、映画にまでなってしまうなんて何か不思議な感じだ。家族が“解散”して帰るべき場所=ホームを失ってしまった少年がもう一度その場所を発見するまでを、奇を衒うことなく真正面から真摯に描いた良作になっていると思う。さすがは古厩智之監督だ。主演が小池徹平くんってどうなるんだろうと思ってたけど、問題なかったね~。

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【ぼくたちと駐在さんの700日戦争】三星半

3昔前(1979年と出ている)の、のどかな田舎町の高校生のイタズラ合戦。面白くなくはなくても、びっくりするようなこともないエピソードの連続で、あくまで普通な感じで推移するのってどうなのかなぁ……。

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【僕らのミライへ逆回転】四星半

ハンドメイドのアナクロな世界に「巻き戻し願います」←原題。ミシェル・ゴンドリー監督はこんなふうな、時代遅れかもしれないけどぬくもりのある世界を愛しているんだろう。で、私はそんなミシェル・ゴンドリー監督の世界観がどうやら好きなんだなー。相性もあるんだろうけれど、私は本作は傑作だと思う。特に、本作のジャック・ブラックさんの調子っぱずれな感じがとても好き。彼等がリメイクするいろんな映画の元ネタを知ってるともっと楽しいぞ~。

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【ポストマン】三星半

製作総指揮&主演を務める長嶋一茂さん、【ミスター・ルーキー】で味をしめたのか !? しかしこの郵便配達人の主人公、昔気質と言ったって頑固にもほどがあるし、職場放棄は行き過ぎだし、ちょっと非現実的に過ぎるんじゃないかな ? 感動的な話にしたいのは分かるけど、その方向性は好き好きがあるんじゃないかと思う。

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【ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン ! 】四星半

マジメで優秀すぎるから周りから浮いている主人公、という設定自体が笑える。この主人公は終始一貫至ってマジメなのだが、左遷先の田園都市の警察署でも軋轢が、と思ったらとんでもない真相が……。凄まじくよくできている脚本は文明批評的ですらあるのだが、基本的にはどこまでもコメディで、イギリスのシニカルなコメディの系譜の底力をびしびしと感じる。総じて、日本の人にはアメリカのコメディよりもイギリスのコメディの方が合っているんじゃないだろうか(……いや、これは人によるか)。最近、ビデオ屋さんにあまり行かなくなってしまったので、この映画を映画館で観られて本当によかった !! 署名活動をして下さった皆様、ありがとうございました !

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【マイ・ブルーベリー・ナイツ】四つ星

いつもかっこいいジュード・ロウ様だけど、親切で働き者のこのカフェのオーナー役はまためちゃめちゃ素敵だ。あんな人が好き好きオーラを出してるのに旅に出ちゃうヒロイン(ノラ・ジョーンズさん)の気持ちは、私には全然分かりません !! ま、辿り着くべき場所を理解するための心の旅という訳なんだろうけど。ウォン・カーウァイ監督作にしては平凡な印象もあるけれど、嫌いではない。

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【真木栗ノ穴】三星半

夢かうつつか !? 憔悴しきった風貌の西島秀俊さんも素敵だなぁ。ただ、覗きなんていうある種下世話な欲望のお話なんだから、お話自体はいっそもっとどぎつくした方がよかったんじゃないだろうか。

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【まぼろしの邪馬台国】三星半

働き者の堤幸彦氏が監督する、邪馬台国を研究したすごくユニークな郷土史家夫妻の話。地元の財界の有名人でもあった破天荒な旦那と、その彼を献身的に支える妻の人物像はそれなりに興味深かった。けれど……以下は【母べえ】を参照して下さい。

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【マルタのやさしい刺繍】四つ星

たかだかランジェリー・ショップを開くことに対し男どもはどうしてここまで保守的なの ? とスイスの田舎から遠く離れた東京人としては思う。そんな理不尽な障害にもめげず徐々に活路を見いだしていくおばあちゃんたちのしなやかさとたくましさが楽しい。背景に横たわる歳月の重さもさりげなく感じさせてくれる秀作。

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【ミラクル7号】四つ星

チャウ・シンチー映画とは思えないキュートさ ! で、あの妙な宇宙生命体がだんだん可愛く思えてくるから不思議だ。実際は女の子だとはとても思えないシュー・チャオちゃんの演じる主人公の成長物語としても、ビンボーだけど実はとてもイカすパパであるチャウ・シンチーさんとの親子の物語としても素敵だ。

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【モンゴル】四つ星

チンギス・ハーンて思ってた以上に波乱万丈な道を歩いていたのねー。お話はちょっとごちゃごちゃしている印象もあるけれど、全編モンゴル語で頑張った浅野忠信さんの熱演はやはり見逃せない。

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【ヤーチャイカ】三星半

スチール写真を継いだ“写真映画”という、写真の1コマ1コマの行間にある思いを掬い取ろうとするこの形式は、実写映像と比べ、共に詩人で共同監督である覚和歌子さんと谷川俊太郎さんの資質には合っていたのではないだろうか。ただ、いくら別の作品なんだからと自分に言い聞かせても、同じ形式で撮られたクリス・マルケル監督の名作【ラ・ジュテ】と否応なく比べてしまっており、どうしてもレベルの差を感じてしまったのだけれど。あと、自分たちを“ヤーチャイカ”(かもめ)と呼び合う人達も今時あんまりいないのではないかなぁ……。

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【靖国 YASUKUNI】四つ星

私が同じテーマでこういった作品を作ったら、絶対何かもっとバイアスの掛かったものになると思う。でも李纓監督は、靖国神社の存在に肯定的な人も否定的な人も、いろんな立場や考え方の人を並べてみせ、判断は観客に任せるようにしていると思う。どちらの人々も現実的に存在している以上、これは非常に見識のある方法に違いない。言いたいことはいろいろあるが、ここで私の個人的な考えを延々述べてもしょうがないので一つだけ。日本人として生まれてきてしまった以上、靖国問題は避けて通ることは出来やしないのだと、この映画を観て思い知らされた。

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【山桜】四つ星

篠原哲雄監督もついに時代劇からお呼びがかかったか。葉っぱのついた桜も風情があって素敵だし、ヒガシ君(東山紀之さん)はひたすら凛々しいし、概ねは好きだったんだけど、昔のこととはいえどうしてこんな家に嫁にやったのかとか、その家に留まる覚悟を決めている割には反抗的なんじゃないかとか、田中麗奈さんの骨格ってイマイチ着物が似合わないのではないかとか、細かい疑問が降り積もる。あと、私は一青窈さんがさほど好きではないので、ラストシーン辺りから思いっ切り情感たっぷりに曲を流されたのには閉口した。なんか最近、そういう雰囲気で押し切ろうとする映画多いよなー。もっと表現に節度を持ってくれよぅ。

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【山のあなた 徳市の恋】三星半

清水宏監督の【按摩と女】という往年の映画の“リメイク”じゃなくて“カバー”なんだそうだけど、石井克人監督が今の時代にこの作品を作ろうとするその意義は、正直最後までよく分からないままだった。緑や陽の光に溢れた映像は綺麗だし、昔の鄙びた湯治場の雰囲気は趣きがあるし、もともとモダンさがある作品だったのかひどく退屈するということもなかったけれど……。演技力には定評がある草なぎ君だけど、今回ばかりは、盲目の人というよりは盲目の人の形態模写をやってる人という雰囲気だったかも。

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【闇の子供たち】五つ星

人身売買に幼児買春に臓器売買というヘビーな題材にも関わらず、客席は大入り満員だったのが印象的だった。この映画が創られたところで、またその映画を観たところで、何も変わらないのかもしれない。けれど、この映画は創られるべきだったと思うし、現状では最善の形で創り出されたと思うし、創られたからにはなるべく多くの人に目に晒されるべきで、目を背けないでいることがせめてもの責任だと思った。困難な仕事に立ち向かったキャストの皆さんと、阪本順治監督を始めとするスタッフの皆さんには心から敬意を表したい。

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【夢のまにまに】三星半

日本の映画美術界最大の巨匠・木村威夫氏による劇場用映画の初監督作品。辛いエピソードも出てくるが、これは監督自身の体験に基づくお話なのだろうか。それでも時はただ過ぎていくものという境地は、木村監督や主演の長門裕之さんのように、年を経なければたどり着くことのできない地平なのだと思う。

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【容疑者Xの献身】四星半

普段あんまりドラマ・コンシャスではない私が、『ガリレオ』は何でかしら必ず観ていた。(福山雅治さんがかっこいいと言われる理由が、大変遅ればせながらようやく分かりました……。)その映画版である本作は、ドラマ版の延長としても違和感無く見れるけれど、単体の映画としても、絶望、救い、自己犠牲、そして真実という得体の知れないものについて描いたかなり突っ込んだ内容になっており、非常にバランスの取れた作品になっていたのではないかと思う。完全商業路線の映画でもここまで表現できる。やはり、どういう形で映画が作られるかではなく、結局は企画に携わる人々の意思が作品を導くのだと思った。キー・パーソンである堤真一さんの脂の乗り切った演技が特に素晴らしく、個人的には、本来の主役である福山さんや柴崎コウさんを完全に食ってしまっていたのではないかと思う。
TV版も映画版も脚本は福田靖さんということで……やっぱり ! 福田さんは『救命病棟24時』『HERO』『海猿』『CHANGE』【20世紀少年】など多くの注目作を手掛けていらっしゃって、2010年のNHK大河ドラマも担当することになったそうだ。これからもがんがんご活躍戴き、日本の映像文化をどんどん面白くして戴けると嬉しいです。

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【4ヶ月、3週と2日】四つ星

昨年のカンヌのパルムドール受賞作。中絶が禁止されていたルーマニアの旧チャウシェスク体制下で、中絶を行うことを余儀なくされたルームメイトのためにひどい目に合う女子学生の話。監督には旧体制を告発する狙いがあったのだと思うが、ルーマニアという国にあまり縁のない身としては、中身のドラマの方により目が行ってしまう。が、女性ならば誰でも、世界中のどこかでこんなことが起こっているということを、多かれ少なかれ肌で知っているんじゃないだろうか。だからこの作品はむしろ、若い男の子に観せてトラウマを植え付けて避妊は大事だよーと教育するのにいいんじゃないかと思った。

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【落語娘】四つ星

中原俊監督はエピソードをきちんと紡いでお話をしっかり組み立て、題材がはまればとても面白くなる監督さんだという印象がある。とにかく落語が大好きだから、女性への門戸が開かれているとは言い難い落語界で奮闘するヒロインと、生臭いことこの上ないけど人間的には包容力のある師匠との師弟愛を、きちんと描いているのが面白い。ミムラさんという女優さんの本当の魅力を初めて見ることができた気がするけど、それにつけても津川雅彦さんの力量はもの凄いと改めて感じた。

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【ラスト、コーション】五つ星

“ラスト”は「last」ではなくて情欲の「lust」、“コーション”は「caution」で戒め、中国語の原題は『色|戒』となるそうだ。激しいベッドシーンがよく話題になっていたが、二人の関係性が転換するせめぎ合いのシーンとして真正面からしっかり描写する必然性があったのだと思う。(ちなみに、アン・リー監督は【愛のコリーダ】を参考にしたのだとか。)1万人のオーディションから発掘されたというタン・ウェイさんもとても初主演とは思えない度胸のよさだけど、その彼女を受けの演技で何倍にも魅せるトニー・レオンさんの、エレガントを形にしたような佇まいが、もう筆舌に尽くしがたい !! アン・リー監督は、世界中の現役の映画監督の中でも最高峰の一人なのだと、この映画を観て初めて確信できた。

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【落下の王国】三星半

ターセム監督の前作の【ザ・セル】と同様、画は超絶的に綺麗なんだけど……。最近の私はストーリーが弱いとどうもついていくのがしんどくなってしまったような……。

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【ラブファイト】四星半

殴り合いで確かめ合う愛って新機軸。北乃きいちゃんがめっさかわいいのもさることながら、林遣都くんがチクショー !! と叫びながら顔をくしゃくしゃにしかめるところが凄くよい。彼等のこの瑞々しさを観ておくべき ! 役者って、いい作品に出会ってこそ磨かれていくのだ、と再度実感した。

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【リアル鬼ごっこ】三星半

【バトル・ロワイアル】と『20世紀少年』を混ぜたような印象 ? あの鬼さんのビジュアルは秀逸で、話の展開は力強いけれど、あの程度の超能力もどきで日本に王政を敷くという設定には、やっぱりちょっと無理があるような気がする。

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【リボルバー】三つ星

【ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ】をモノローグばっかりにして明るいところを全部削った感じ ? 内面世界をぐるぐる回るような内容は他の人から見たらよく分からないかも……。あのガイ・リッチー監督がどうしてこんなに内省的な作風になってしまったの !? と思ってたらついに離婚しちまいましたなぁ……。

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【レッドクリフ partI】四星半

金城武さん演じる主人公の諸葛孔明についにハトを飼わせちゃったところに、久々に中華圏で映画を創ったジョン・ウー監督の気合いを見た。圧倒的なスケール感で多くの登場人物をダイナミックに動かしているのが迫力たっぷり。三国志ってこういう話だったのか ! と初めて分かった。(不勉強ですみません。)しかし、よく出来ているなぁとは思うんだけど、個人的には「トニー・レオンかっこいい」しか最後に印象に残ってなくて困っちゃったなぁ……。

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【私は貝になりたい】四つ星

役者としての中居正広さんは、SMAPの中で一番、人間の闇の部分を捉えたエッジの効いたお芝居が出来る人だと思う。この中居さんの鬼気迫る演技に、感情的にドワーッ !! と持って行かれた。ただ、オリジナルよりも家族ドラマに重きを置いたせいなのかもしれないが、この主人公なら、自分の人生に起きた様々な不条理な不幸のために貝になってしまう前に家族のことを心配するんじゃないのかな ? とちょっと思ってしまったのだが。

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