Back Numbers : 映画ログ No.88



2011年に見た全映画です。

【愛の勝利を ムッソリーニを愛した女】三星半

監督・脚本:マルコ・ベロッキオ
共同脚本:ダニエラ・チェゼッリ
出演:ジョヴァンナ・メッゾジョルノ、他
製作国:イタリア/フランス
ひとこと感想:正妻がありながら、ある女性をカネの面でもカラダの面でも搾取しまくり、さんざん世話になっておきながら邪魔になったら精神病院送り。その子供も精神病院送り。あんまりな理不尽の嵐……ムッソリーニってどんだけ悪者なんだよ。誰だよこんなアホな邦題つけたの。こんなの全然愛に値しないと思う。

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【明りを灯す人】三つ星

監督・脚本・出演:アクタン・アリム・クバト
脚本:タリブ・イブライモフ
製作国:キルギス/フランス/ドイツ/イタリア/オランダ
ひとこと感想:キルギスの映画なんて珍しい、と思ったら、【あの娘と自転車に乗って】と同じアクタン・アブディカリコフ監督作品だった。国内の政変などを背景とした日常を淡々と描写。こういう素朴さが好きな人は好きだろうな。私はあんまり得意じゃなくてすいません……。

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【悪魔を見た】四つ星

監督:キム・ジウン
脚本:パク・フンジョン
出演:イ・ビョンホン、チェ・ミンシク、他
製作国:韓国
ひとこと感想:結構いろんな役柄に果敢に挑戦するチャレンジャーなイ・ビョンホン様が割と好きだが、まるで悪魔のように血も涙もない犯人役のチェ・ミンシクさんのふてぶてしさも捨てがたい。しかし、ビョン様が追い詰められて報復に出る辺りからどっちが悪魔なんだか分からない展開に……。こんな救いのない映画を作る意味がどこにあるの?と書いていた人の気持ちも分からんではない。

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【あしたのジョー】四つ星

監督:曽利文彦
脚本:篠崎絵里子
原作:高森朝雄(梶原一騎)/ちばてつや
出演:山下智久、伊勢谷友介、香里奈、香川照之、他
製作国:日本
ひとこと感想:正直、昔『あしたのジョー』のアニメを観て感じたような切実なハングリーさは感じられず、随分小綺麗な印象だったかも。でも山下智久さんや伊勢谷友介さんが熱演するボクシング・シーンの迫力は充分で、何よりも、香川照之さん演じるリアル丹下段平のあまりの出来のよさにのけぞった。残念ながら、香里奈さんのイメージは葉子お嬢様とは乖離していたけれど。ここはせめて鈴木京香さんや中谷美紀さんのような雰囲気を持つ女優さんをキャスティングして戴きたかった。

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【あしたのパスタはアルデンテ】三星半

監督・脚本:フェルザン・オズペテク
共同脚本:イヴァン・コトロネーオ
出演:リッカルド・スカマルチョ、他
製作国:イタリア
ひとこと感想:イタリアのファミリー企業の跡取り息子はゲイで作家志望だった……。予告編を見てもっと軽快な作風を勝手に想像していたら、思ったより重厚なタッチで家族の歴史や愛情を謳い上げる内容で、とてもイタリア映画らしい映画だなと思った。しかし、こういうありきたりな邦題だとそれだけで見に行く映画の選択肢から外したりするんですよねー。原題の“歩く地雷”は変えてもいいけど、もう少し工夫の余地があるのではないでしょうか。

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【アジョシ】三星半

監督・脚本:イ・ジョンボム
出演:ウォンビン、キム・セロン、他
製作国:韓国
ひとこと感想:眼福眼福。ストーリーは少し作為的で説明的なきらいがあるけれど、一段とかっこよくなったウォンビンさんの姿を楽しめればまぁいいか。

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【あぜ道のダンディ】四つ星

監督・脚本:石井裕也
出演:光石研、田口トモロヲ、森岡龍、他
製作国:日本
ひとこと感想:光石研さんと田口トモロヲさんのまったり中年コンビ最高!石井裕也監督ってば、若い身空で、パッとしない中年男の悲哀がどうしてそんなに正確に描けるのだ !? 父親を無視しているかに見えた子供達も案外ちゃんと分かっているのもいい。アイディアの詰め込み過ぎでもう少し整理した方がいいきらいもあるけれど、そこを差し引いても余りある傑作。ところで、光石研さんのデビュー作って【博多っ子純情】だったのね。再び主役を張れる感慨はひとしおだったことだろう。

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【アレクサンドリア】二つ星

監督・脚本:アレハンドロ・アメナーバル
共同脚本:マテオ・ヒル
出演:レイチェル・ワイズ、他
製作国:スペイン
ひとこと感想:エジプトの古代神信仰が古代文明の破壊を伴いながらキリスト教化されるというテーマは非常に面白いと思う。が、いかんせん、ストーリーは図式的すぎ、セリフは紋切り型すぎる。この味わいもへったくれもないペラ紙のような平坦さは何だろう。アメナーバル監督らしからぬ駄作だ。

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【UNDERWATER LOVE -おんなの河童-】四つ星

監督・脚本:いまおかしんじ
共同脚本:守屋文雄
出演:正木佐和、他
製作国:日本/ドイツ
ひとこと感想:基本的にピンク映画なんで、その辺が大丈夫な人しか勧められないけど。高校の頃に好きだった死んでしまった男の子がカッパになって会いに来るとか、のっけからもうでたらめで、日常に異世界がしれっと乱入するおかしなミュージカルがセックスの合間にあっけらかんと展開し、クリストファー・ドイルのカメラにドイツのポップ・デュオのヘンな曲(日本語)が奇妙な味わいをいや増す。こんなにも大胆不敵な作風なのに、ラストの「また会おうね」の詩情にうっかり涙した。生きることは祝祭なのさ。そう言われているような気がした。

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【アンダー・コントロール】三つ星

監督・脚本:フォルカー・ザッテル
(ドキュメンタリー)
製作国:ドイツ
ひとこと感想:原子炉の廃炉を淡々と追ったドイツのドキュメンタリー。廃炉はとてつもなく時間が掛かる地道な作業だった。本論とはあまり関係ないが、表面上は地味に淡々と推移していて思想は現象の裏側の亜空間に存在している佇まいが、とてもヨーロッパ的だと感じられた。

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【アンチクライスト】四つ星

監督・脚本:ラース・フォン・トリアー
出演:ウィレム・デフォー、シャルロット・ゲンズブール
製作国:デンマーク/ドイツ/フランス/スウェーデン/イタリア/ポーランド
ひとこと感想:登場人物はほぼウィレム・デフォー演じる夫とシャルロット・ゲンズブール演じる妻のみ。マスターベーションのシーンも辞さないシャルロットの演技は特に本当に凄まじく一見の価値ありだが、人間の暗い本質を抉って更に穴を掘るという展開はどうなのよ?女性性なるものへの圧倒的な恐怖感が全編を真っ暗に覆い尽くし、ラース・フォン・トリアー監督の女嫌いに拍車が掛かっているという前評判に違わない。映画としては凄いけど万人には薦められませんわコレ。

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【アントキノイノチ】四つ星

監督・脚本:瀬々敬久
共同脚本:田中幸子
原作:さだまさし
出演:岡田将生、榮倉奈々、原田泰造、松坂桃李、他
製作国:日本
ひとこと感想:アントキノイノチ→某プロレスラー→「元気ですかー !! 」は日本の人にしか分からないと思うけど、こんなギャグもさだまさしさんらしいと言えばそうなのか。思えば、『精霊流し』『雨やどり』『関白宣言』『秋桜』『パンプキンパイとシナモンティー』『案山子』『無縁坂』……など、それぞれが歌詞と言うよりは一編の短編小説みたいで、さだまさしさんはストーリーテラーとしての資質が元々ものすごくあったのね、と今更ながら思った。瀬々敬久監督はこの原作の「無縁社会や孤独死を若い二人の視点から描いていた点に惹かれた」そうだ。監督のことだから、遺品整理業という職業や、命というものに関わる二人のそれぞれのエピソードなどを含めた結構エグい描写にも手抜きにはないのだが(それでもかなりオブラードに包んでいるとは思うけど)、この結構な難役を真正面からまっすぐに演じている岡田将生さんと榮倉奈々さんがとてもいい。やはり真のスターダムというものは作品そのものの価値によってしか形成されないのだと強く思った。(注:バラエティ番組における芸人さんは笑いそのものが“作品”なのだが、俳優さんは本来そうではないのだ。)だから日本の芸能界は、その“価値”を産み出すことのできる監督さんや脚本家さんやスタッフの人達をもっともっと大切にするべきなんじゃないかと思うんだけど。

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【アンフェア the answer】三星半

監督・脚本:佐藤嗣麻子
原作:秦建日子
出演:篠原涼子、佐藤浩市、山田孝之、加藤雅也、寺島進、大森南朋、他
製作国:日本
ひとこと感想:『アンフェア』なんて何を今更……。原作の内容なんてとっくに使い尽くしているはずなので、想像だけど、単に是が非でも続編を作りたいがために佐藤嗣麻子監督に丸投げし、無理難題ばかりで脚本がなかなかできなかったから時間が掛かったとみた。ある程度のクオリティでまとめ上げた佐藤監督の手腕は買うけれど、自分の中ではやっぱり瑛太さんが死んだ時点で終わってるわ。豪華キャストにつられてつい見に行って時間を損した。

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【イヴ・サンローラン】四星半

監督:ピエール・トレトン
出演:イヴ・サンローラン、ピエール・ベルジェ、他
(ドキュメンタリー)
製作国:フランス
ひとこと感想:服飾にはまるで興味がないのだが、服飾は本来、人生や人格に影響を与えるほどの力があるものなのだろうなぁ。ドキュメンタリーである本作で描かれるイヴ・サンローランの一代記は当然全編実話なのだが、ファッションが芸術たりえた時代の神話か何かのように見えてしまう。

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【生き残るための3つの取引】二星半

監督:リュ・スンワン
脚本:パク・フンジョン
出演:ファン・ジョンミン、他
製作国:韓国
ひとこと感想:犯人捏造に手を貸し、そのウソを維持するために更にウソを塗り固める刑事とか。どいつもこいつも自分のことしか考えてねぇ。悪いけど誰にも全く感情移入できず、お話に全く入っていけなかった。

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【イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ】三つ星

監督:バンクシー
出演:バンクシー、ティエリー・グエッタ(ミスター・ブレインウォッシュ)、他
(ドキュメンタリー)
製作国:アメリカ/イギリス
ひとこと感想:たまたまバンクシーさんの作品を見たことがあったので、ドキュメンタリーってどんなんかなーとわくわくしながら見たのだが、バンクシーさん本人についての話ではなく、彼が煮え湯を飲まされたあるアーティストをひたすらこきおろすことだけを目的としたような内容だったのでうんざりした。それが図らずも現代美術の世界の空疎さを突いたような内容になってはいるけれど。恨み辛みは他の方法で晴らしてくれませんかねぇ。

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【1911】三星半

監督:チャン・リー
脚本:ワン・シントン、チェン・バオクアン
総監督・出演:ジャッキー・チェン
製作国:香港/中国
ひとこと感想:原題はズバリ『辛亥革命』。ジャッキー・チェンさん自身が中国の激動の歴史の波に翻弄されてきた人なので、主演だけでなく総監督も務めるなど思い入れがたっぷりだ。ただ、プロパガンダ的な色合いがどうしても強かった気がするし、似たような戦闘シーンが続くのはいささか退屈だったんだけど……。

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【一枚のハガキ】四つ星

監督・脚本:新藤兼人
出演:豊川悦司、大竹しのぶ、六平直政、大杉漣、他
製作国:日本
ひとこと感想:一枚のハガキに導かれる戦争未亡人と復員兵。戦争の理不尽さをことあるごとに訴え続けてきた新藤兼人監督の集大成的な内容で、監督の近作では一番よくまとまっていて一番好きかもしれない。本作では監督のお孫さんの新藤風さんが正式に監督補佐を努めているということだが、思うに、監督の考えるエロティシズムは少し女性目線を入れて修正した方がいい作品になることが多いのではないだろうか。

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【一命】四つ星

監督:三池崇史
脚本:山岸きくみ
原作:滝口康彦
出演:市川海老蔵、瑛太、満島ひかり、役所広司、他
製作国:日本
ひとこと感想:私は昔から市川海老蔵さんの言動等が大嫌いだが、この人が武士役をやったら非常に映えるということに異論はない。瑛太くんと親子ってちょっと?だが、まぁそれもよしとしよう。一番の問題は、こんなに悲惨で理不尽なだけのこの話を見て面白いと感じる人がいるのかな?と非常に疑問に思われたこと。描写は素晴らしくて名作のリメイクに恥じない出来だけど、今のこの時代に“侍の美学”を提示するには、それなりの必然性や工夫が必要なのではないだろうか。時代劇はこれからも作り続けられていって欲しいけど、今までと同じやり方では限界があって、いろいろな意味で曲がり角に立っているのではないかと強く思った。

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【イップ・マン 序章】【イップ・マン 葉問】四つ星

監督:ウィルソン・イップ
脚本:エドモンド・ウォン
出演:ドニー・イェン、他
製作国:香港
ひとこと感想:ブルース・リーのお師匠さんであるイップ・マンの半生記。【…序章】の方が先に創られて、そのヒットを受けて【…葉問】が創られたみたい。旧中国から日本軍との因縁を経て苦労しながら新天地の香港に辿り着く【…序章】の方が断然スケールがでかくて面白いと思う。

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【忌野清志郎 ナニワ・サリバン・ショー 感度サイコー !!!】四星半

監督:鈴木剛
出演:忌野清志郎、仲井戸麗市、矢野顕子、細野晴臣、坂本冬美、木村充揮、斉藤和義、山崎まさよし、YO-KING、BEGIN、田島貴男、ゆず、ハナレグミ、グループ魂、布袋寅泰、松たか子、トータス松本、藤井フミヤ、LOVE PSYCHEDELICO、Chara、間寛平、他
(ドキュメンタリー)
製作国:日本
ひとこと感想:忌野清志郎さんの最後のライブ・ツアーの編集版。清志郎さんは本当に伝説になってしまわれた。

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【『INVITATION from SPIKE JONZE』】四つ星

監督・脚本:スパイク・ジョーンズ
製作国:アメリカ
ひとこと感想:【かいじゅうたちのいるところ】の原作者モーリス・センダック氏へのインタビュー【みんなのしらないセンダック】、センダック氏の思い出話を監督本人が茶目っ気たっぷりに演じる【モーリス 万博へ行く】、ロボットの愛と自己犠牲を実写部分を交えて切なく語った愛すべき小編【アイム・ヒア】。どれもスパイク・ジョーンズ監督のセンスと映画への愛が光る作品集だった。

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【ウィンターズ・ボーン】四星半

監督・脚本:デブラ・グラニック
共同脚本:アン・ロッセリーニ
出演:ジェニファー・ローレンス、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:閉鎖的な南部の典型的なプア・ホワイト。周りはどいつもこいつも冷たく、カツカツに暮らしてるのに、母は心を病み、父はなけなしのボロ家を保釈金の担保にしてトンズラ。父を見つけないと家が取り上げられて、幼い弟妹ともども路頭に迷うから、一家を支える17歳の主人公は奔走する。そしてついに邂逅する『冬の骨』とは……。何せ17歳だから、いくら気丈にしていても時々無防備な幼さが垣間見える。そんなヒロインを演じる【あの日、欲望の大地で】のジェニファー・ローレンスがとても素晴らしい。名作と言っていいけれど、人生は辛い、どころではなく、それはそれはシワいお話だった。

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【うさぎドロップ】三星半

監督・脚本:SABU
共同脚本:林民夫
原作:宇仁田ゆみ
出演:松山ケンイチ、芦田愛菜、香里奈、他
製作国:日本
ひとこと感想:芦田愛菜ちゃんの大人に阿るような演技が個人的に好きじゃないというのはさて置いて。必ずしも原作を踏襲する必要は無いと思うけど、この映画には生活感が無さすぎ。家事や育児って、ごはん作って、食べさせて、遊ばせて、フロ入れて、寝かしつけて、掃除して、洗濯して、送り迎えをして、買物行ってと、そういう地道な労働の終わりなき繰り返しだと思うんだけど、自由気ままに暮らしていた20代の独身男性がいきなりそういう生活に放り込まれて、普通はそんなにすんなり移行できないと思うのね。映画的に派手なエピソードや見せ場を無理矢理作るくらいなら、そんな現実的に起こりうるとまどいをもっとしっかり描写して欲しかったなぁと思う。

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【嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん】二星半

監督・脚本:瀬田なつき
原作:入間人間
出演:大政絢、染谷将太、他
製作国:日本
ひとこと感想:セリフや演技のテンポが内容と噛み合っていない印象で、つるつると上滑りして全く頭に入って来なかった。自分と合わなかっただけなのかもしれないが、どうしても話に乗れなかった。

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【宇宙人ポール】四つ星

監督:グレッグ・モットーラ
脚本・出演:サイモン・ペッグ、ニック・フロスト
出演:セス・ローゲン、他
製作国:イギリス/アメリカ
ひとこと感想:ヘンな宇宙人と旅する気のいいギークの2人。キミ達の人生は何だかとっても楽しそうだ。これからのキミ達にも幸あれ!

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【ウッドストックがやってくる!】四つ星

監督:アン・リー
脚本:ジェームズ・シェイマス
原作:トム・モンテ、エリオット・タイバー
出演:ディミトリ・マーティン、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:セックス、ドラッグ&ロックロールの時代の伝説的な祭典・ウッドストック。この愛と幻想の祭典を開催した街の人達はどうだったのかという発想で捉え、ついでに実はゲイである主人公の自己開放と絡めているのが面白いと思った。でも更に興味深いのは、この話を台湾人であるアン・リー監督が描いているという点だったんだけど。

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【運命の子】二星半

監督・脚本:チェン・カイコー
出演:グォ・ヨウ、ワン・シュエチー、ファン・ビンビン、他
製作国:中国
ひとこと感想:チェン・カイコー監督作が出来不出来の差が激しいのは昔から。本作は中国の古典的な復讐劇が原作らしいのだが、ストーリーに感情移入できないままにおいてけぼりになって、なんか全然よく分からないままに終わってしまったなぁ……。

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【永遠の僕たち】四つ星

監督:ガス・ヴァン・サント
脚本:ジェイソン・リュウ
出演:ヘンリー・ホッパー、ミア・ワシコウスカ、加瀬亮、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:ボーイ・ミーツ・ガールと死の観念。モチーフとしてはありがちだけど、これが詩情豊かに綴られていて、ガス・ヴァン・サント監督の近作では随一の出来。死の象徴として登場する幽霊を演じる加瀬亮さんのユーモアと瑞々しさ、リアル感と浮遊感が絶妙に入り混じった存在感が絶品。彼は今後フツーに世界進出していくに違いない。

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【英国王のスピーチ】四つ星

監督:トム・フーパー
脚本:デヴィッド・サイドラー
出演:コリン・ファース、ジェフリー・ラッシュ、ヘレナ・ボナム=カーター、他
製作国:イギリス/オーストラリア
ひとこと感想:気位の高い王様が吃音症を克服し誰からも敬愛される名君になるまでを描いたイギリス映画。やんごとなき方と下々の交流っていちいちこんなにめんどくさいのかな。コリン・ファースのノーブルさは王様役にぴったりだし、久々にキワモノじゃない役でお見かけしたヘレナ・ボナム=カーターもしっかりものの王妃の貫禄があってよかったけれど、こんな小粒な映画がアカデミー賞とは、作品の枯渇はハリウッドも日本も変わんねぇなーと思う。

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【エイリアン・ビキニの侵略】二星半

監督・脚本:オ・ヨンドウ
出演:ホン・ヨングン、他
製作国:韓国
ひとこと感想:韓国のインディーズSFということなのだが、なんかはじけてない感じで今ひとつ。

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【SP 革命篇】四つ星

監督:波多野貴文
原作・脚本:金城一紀
出演:岡田准一、堤真一、真木よう子、香川照之、他
製作国:日本
ひとこと感想:う~ん、本作を見てしまうと【…野望編】はいかにも取って付けたような水増しに見えるなぁ。見る必要すらないかもしれん。しかし、『SP』が最初に企画された頃には、平和ボケの日本に危機感を喚起するという崇高なテーマがあったのだろうけど、震災後の日本では“今そこにある危機”の意味合いがまるで違って見えてしまい、本作のストーリーもシミュレーション・ゲーム的な机上の空論と化してしまったかも。するってぇと、そのツクリモノ感ゆえに、ちょっとハードなボーイズ・ラブものに見えてきてしまって仕方がなかったのですが……。

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【エッセンシャル・キリング】三星半

監督・脚本:イエジー・スコリモフスキ
共同脚本:エヴァ・ピャスコフスカ
出演:ヴィンセント・ギャロ、他
製作国:ポーランド/ノルウェー/アイルランド/ハンガリー
ひとこと感想:一応タリバン兵の脱走劇という背景があるものの、ただただ逃げる、逃げるためにただ殺すという、それだけの“本質的な”衝動をシンプルに描くのが目的のようだ。ヴィンセント・ギャロはもう役者稼業がメインということでいいんじゃないだろうか。

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【お家をさがそう】四つ星

監督:サム・メンデス
脚本:デイブ・エッガース、ヴェンデラ・ヴィーダ
出演:ジョン・クラシンスキー、マヤ・ルドルフ、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:男性が何だか大人になりきれないゆえに、女性は「結婚」という形には踏み切れない。この二人が、“お家”というか、終の棲家だったりその後の人生の方向性だったりを探そうとする。サム・メンデス監督は、戦争ものやスパイものより、こういう身近な素材を丹念に描く方が合っている気がするんだけどなぁ。

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【大鹿村騒動記】四星半

監督・脚本:阪本順治
共同脚本:荒井晴彦
出演:原田芳雄、大楠道代、岸部一徳、佐藤浩市、松たか子、瑛太、石橋蓮司、三國連太郎、冨浦智嗣、他
製作国:日本
ひとこと感想:阪本順治監督と荒井晴彦御大が仲直りして下さったみたいでよかった。彼等の共同脚本を、もう二度と揃えられない鉄壁のアンサンブル・キャストが演じて、それはもう堪えられない濃密な映画的空間が成立する。大俳優の遺作にふさわしい堂々たる出来映えだったけど……本当にもう原田芳雄さんの新作は観られないのか。嘘みたいだ。

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【小川の辺】四つ星

監督:篠原哲雄
脚本:長谷川康夫、飯田健三郎
原作:藤沢周平
出演:東山紀之、菊地凛子、勝地涼、他
製作国:日本
ひとこと感想:篠原哲雄監督は【山桜】に続き2回目の藤沢周平作品への登板。今回の方がより過不足なくまとまっていてよかったんじゃないだろうか。脱藩した妹の旦那を成敗しなくてはならない兄という悲しい物語だけど、何事にも完璧でそつのない兄が妹だけには不器用な素顔を覗かせるのが少し微笑ましかった。しかし、劇中の役柄同様、ヒガシくんは本当に何をやらせても完璧でそつがない。

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【おばあちゃん女の子】【真夜中からとびうつれ】三星半

監督・脚本:横浜聡子
出演:多部未華子、野嵜好美、宇野祥平、他
製作国:日本
ひとこと感想:横浜聡子監督の最新作の短編二編。【真夜中からとびうつれ】は昔のアングラ実験映画みたいだけど、多部未華子さんが超絶かわいいから成立してしまうような。【おばあちゃん女の子】は全然意味が分かんねー!けど、野嵜好美さんの吸引力がハンパなく、なんかぐーっと引きつけられて見ちゃうんだよなぁ。

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【女と銃と荒野の麺屋】四つ星

監督:チャン・イーモウ
脚本:シュウ・チェンチャオ、シー・チェンチュアン
原作:ジョエル&イーサン・コーエン(【ブラッドシンプル】)
出演:ヤン・ニー、ニー・ダーホン、他
製作国:中国
ひとこと感想:チャン・イーモウ監督がコーエン兄弟の【ブラッド・シンプル】を中国の奥地を舞台にした時代劇に翻案したものらしいんだけど……【ブラッド・シンプル】ってこんな話だったっけ !? こんな極彩色のトラジコメディじゃなかった気がするんだけど。

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【カイジ2 人生奪回ゲーム】三星半

監督:佐藤東弥
脚本:山崎淳也
原作・脚本:福本伸行
出演:藤原竜也、香川照之、生瀬勝久、伊勢谷友介、吉高由里子、他
製作国:日本
ひとこと感想:最初から現実離れした話なのでそこはいいとして、前作には現実社会のある種のアレゴリーとなりうる部分があったとしても、今回は単なるゲームの話と化してしまっており、いささか疲れた。3も作られるかもしれないけれど、私はもういいや。しかしおめーらいい加減ちっとは学習しろよなー、と思った。

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【岳-ガク-】三星半

監督:片山修
脚本:吉田智子
原作:石塚真一
出演:小栗旬、長澤まさみ、他
製作国:日本
ひとこと感想:以前から原作を知っているだけに、小栗旬くんは島崎三歩を演じるにはスタイルが良すぎて足が長すぎる!と思ったし、お話も全体的に余計な枝葉をつけすぎだと感じた。特に、久美ちゃんのお父さんが山岳救助隊の元隊長だったとか要らなーい!職業倫理はあっても山には興味がないフツーの女性であるという設定を生かして欲しかった。でも山が本物なことだけは実写ならではの美点で、この風景の美しさだけは原作を凌駕しているのではないかと思えた。

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【風にそよぐ草】三つ星

監督・脚本:アラン・レネ
共同脚本:ロラン・エルビエ
原作:クリスチャン・ガイイ
出演:サビーヌ・アゼマ、他
製作国:フランス/イタリア
ひとこと感想:奥さんがいる初老男性が中年女性に惚れてストーカーまがいの行為をするのがラブストーリー?何がしたいんだアラン・レネ監督?これが孤高の前衛監督の円熟の境地だとか言われても、ハイ・ブロウすぎてさっぱり分からんわ……。

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【家族X】四つ星

監督・脚本:吉田光希
出演:南果歩、田口トモロヲ、郭智博、他
製作国:日本
ひとこと感想:吉田光希監督による第20回PFFスカラシップ作品。職業でも主婦業でもいくら頑張っても幸せになれない病理の描写がシビアで、夫婦役の南果歩さんと田口トモロヲさんの熱演が見事だ。本来答えのない問題なのだろうけど、監督がラストで提示しているように、お互いに対するちょっとした理解の中に光明があるのかもしれない。

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【家族の庭】三星半

監督・脚本:マイク・リー
出演:ジム・ブロードベント、ルース・シーン、レスリー・マンヴィル、他
製作国:イギリス
ひとこと感想:こういう人、いるよね。現実と折り合いが付けられず、自分に自信がないから周りに依存し、些細なことを針小棒大に語り、自分を現実と全然違う重要な存在に見せようして、自分でもそう思い込もうとするような。自分も少しこういうところがあると思うけど。このような人は精神的に不安定なんだろうし、側にいたら大変なのかもしれないけど、この夫婦みたいに受け入れる振りをしてないがしろにするくらいなら、いっそ最初から関わるべきじゃないんじゃだろうか。この人達の態度はすげー上から目線で気分が悪い。マイク・リー監督の描写力は確かに凄いと思うけど、私にはこの映画が傑作だとは思えない。

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【CUT】三星半

監督・脚本:アミール・ナデリ
共同脚本:アボウ・ファルマン、青山真治、田澤裕一
出演:西島秀俊、常盤貴子、笹野高史、他
製作国:日本/フランス/アメリカ/韓国/トルコ
ひとこと感想:映画が純粋な芸術であったことなど歴史上ほとんどなかったと私は考えているし、“本物の映画”という発想自体がお笑いぐさだとも思う。商業主義まみれの駄作をも許容するだけの懐の深さを持っているからこそ映画は面白いんじゃないのかね?でも本作は、そうした純粋映画芸術主義者の皆様にはとてもウケがよろしかったようだ。まぁ監督さんはイランの方だし、国情も映画の歴史もいろいろ違うので一概に言えないのだろうけれど、日本人俳優を使って日本で撮っているからなぁ。その熱意は美しいと思うけれど、自分とは相容れないものを感じる。

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【神々と男たち】四星半

監督・脚本:グザビエ・ヴォーヴォワ
共同脚本:エディエンヌ・コメ
出演:ランベール・ウィルソン、他
製作国:フランス
ひとこと感想:1996年にアルジェリアで実際に起こった武装イスラム集団によるとされるキリスト教修道僧拉致殺害事件を題材にした映画。現地の内戦の激化のため国外退去するようフランス政府に勧告されながらも、修道僧たちは絶望的な状況の中で信仰と結束を深め、自らの意思に従って留まることを選び悲劇的な最期を迎える。信仰というものの本質や信念を貫くことの崇高さをここまで真正面から見据えた映画はあまり観たことがないような気がする。

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【神様のカルテ】三星半

監督:深川栄洋
脚本:後藤法子
原作:夏川草介
出演:櫻井翔、宮﨑あおい、加賀まりこ、原田泰造、岡田義徳、柄本明、他
製作国:日本
ひとこと感想:古い旅館みたいなところで昔ながらの仲間や可愛い奥さんと共同生活をしている一風変わったお医者さんという設定は、ちょっとライトノベルっぽいけどまぁいいだろう。ただ、医療の世界の問題は、もはや個人の頑張りに還元してるだけじゃいけないんじゃないかと思う。全体的に小綺麗なファンタジーの域を出ず、食い足りない印象が残ってしまった。

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【GANTZ】【GANTZ:PERFECT ANSWER】四つ星

監督:佐藤信介
脚本:渡辺雄介
原作:奥浩哉
出演:二宮和也、松山ケンイチ、吉高由里子、田口トモロヲ、他
製作国:日本
ひとこと感想:すごく感動した訳でも何でもないのだが、こうした素材をきちんと創り込んでちゃんと過不足なく面白く見えるようにまとめてあるところに、日本映画界の基本的な力量のアップを感じた。二宮くんと松ケンくんの共演というトピックも一応挙げておくべきだろう。しかし、前後編で観るほどの内容とは思えず、正直かったるかったです。

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【監督失格】四星半

監督・出演:平野勝之
出演:林由美香、他
(ドキュメンタリー)
製作国:日本
ひとこと感想:かつてエリック・クラプトンが『Tears in Heaven』を創った時に、息子の死を商売にするなんてと揶揄する人もあったようなのだが、彼は頭の天辺から足の爪先まで音楽人間なので、自分の悲しみと向き合うのに音楽という手段を用いることしかできなかったということだ。かつて不倫相手ですらあった女優の死が発見されるシーン(部屋の外で置き去りにされたカメラが回っているだけだが)まで映画に収めることに違和感を覚える人もいるかもしれないけれど、きっと平野勝之監督は、永遠の禍根とでもいうべきあまりに深い喪失感と、こうすることでしか向き合うことができなかったのだろう。映画を撮るという行為がこれほどまでに人の人生に深く関わり、これほどまでの呪いにも祝福にもなりうるのだということを図らずも映し出してしまった、ある意味とても恐ろしい映画。林由美香さんが満ち足りた人生を送れたかどうかは分からないけれど、彼女の名前は、ある時代の形見として日本映画史の片隅に永遠に残り続けるべきだと思う。合掌。

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【がんばっぺ フラガール!~フクシマに生きる。彼女たちのいま~】四つ星

監督:小林正樹
ナレーション:蒼井優
(ドキュメンタリー)
製作国:日本
ひとこと感想:【フラガール】を楽しませてもらった責任として本作は見に行かなくてはならないと思って。フラガールの皆さんを始めとする福島のスパリゾートハワイアンズのスタッフの皆さんなどの福島の人々の姿を、テレビ番組などではなかなか見ることができない領域まで多層的に見せてくれるのがありがたかった。これから長い長い戦いになるだろうけれど、自分に何が出来るのか、改めて考えてみなければならないと思った。

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【奇跡】四つ星

監督・脚本:是枝裕和
出演:前田航基/前田旺志郎(まえだまえだ)、他
製作国:日本
ひとこと感想:私ゃ「まえだまえだ」が大好きなんで、是枝監督とコラボなんてもう夢のよう。この子達は何をやらせても達者なので将来が楽しみだ。ネタバレすると、結局、子供達が望んだ奇跡は起こらなかったんだけど、それぞれの現実を飲み込んで成長していく子供達の姿そのものが奇跡的だということなのかもしれない。

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【キッズ・オールライト】四つ星

監督・脚本:リサ・チョロデンコ
共同脚本:スチュアート・ブルムバーグ
出演:アネット・ベニング、ジュリアン・ムーア、ミア・ワシコウスカ、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:レズビアンのカップルと子供達の家族に“精子提供者”の男性が入ってきて引っかき回す。制作費抑えめの一風変わった家族もので才能を見せるのが今のアメリカ映画のトレンドか?(リサ・チョロデンコ監督って【ハイ・アート】の監督さんなのね。お懐かしや。)でも家族の内情がきめ細かく描かれている点は秀逸で、結局、どんな家族でも“普通”の家族なのであり、お互いへの思いやりや努力が必要なことに変わりはないという主張には筋が通っていると感じた。エンディングは本当にこれでいいの?と思わないでもなかったけれど……。

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【キラー・インサイド・ミー】三星半

監督:マイケル・ウィンターボトム
脚本:ジョン・カラン
原作:ジム・トンプスン
出演:ケイシー・アフレック 、ケイト・ハドソン、ジェシカ・アルバ、他
製作国:アメリカ/スウェーデン/イギリス/カナダ
ひとこと感想:田舎の閉鎖的な環境で、主人公である保安官の変態性が発露し連続殺人に至る……何で?としか言い様がありません。

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【クロエ】四つ星

監督:アトム・エゴヤン
脚本:エリン・クレシダ・ウィルソン
出演:ジュリアン・ムーア、アマンダ・セイフライド、リーアム・ニーソン、他
製作国:カナダ/フランス/アメリカ
ひとこと感想:夫の浮気疑惑を確かめるため娼婦を雇った女性が、逆にその娼婦に追い詰められていく。自らの疑念に追い詰められるジュリアン・ムーアの神経質な演技がとても素晴らしかったのだが、この売春婦の人の視点から見ると存外切ない話なのでは……。とりあえず、昔【エキゾチカ】という変態映画を撮ったアトム・エゴヤン監督の本領発揮だなと思った。

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【軽蔑】四つ星

監督:廣木隆一
脚本:奥寺佐渡子
原作:中上健次
出演:高良健吾、鈴木杏、大森南朋、他
製作国:日本
ひとこと感想:甘やかされて育ち、博打中毒で働く能力もないけど何故か愛されて、それ故に嫉妬もされ憎まれるお坊ちゃまと、場末のポールダンサーの恋。ほぼ出ずっぱりで濃密なラブシーンもあり力のある演技が必要なこの映画で、高良健吾くんと鈴木杏さんはほぼベストなキャスティングだったんじゃないかと私は思うけど、ネットでうっかり他の人の感想を検索してみたら、原作への思い入れが強くて自分のイメージと相容れないという人がたくさんいて疲れた……。んー、これで駄目なら一体どうすれば。言っとくけど、この映画に必要な演技力を持ってる若い女優さんなんて、日本の芸能界には多分5人くらいしかいないからな。

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【ゲット・ラウド】四つ星

監督:デイヴィス・グッゲンハイム
出演:ジミー・ペイジ、ジ・エッジ、ジャック・ホワイト
(ドキュメンタリー)
製作国:アメリカ
ひとこと感想:元レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジ、U2のジ・エッジ、元ホワイト・ストライプスのジャック・ホワイトのギター馬鹿一代×3。ギターのことはよく分からない門外漢にも、その道を究めた人々の鼎談は興味深く響く。自分はU2の楽曲の中でエッジさんのギターの音色が好きだったんだなーということも分かった。

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【源氏物語 千年の謎】二星半

監督:鶴橋康夫
共同脚本:川崎いづみ
原作・脚本:高山由紀子
出演:生田斗真、中谷美紀、東山紀之、真木よう子、多部未華子、田中麗奈、芦名星、他
製作国:日本
ひとこと感想:【愛の流刑地】の鶴橋康夫監督作。源氏物語は紫式部と藤原道長の愛人関係を投影したものだったというフィクションは、筋立てとしては面白いんだけど、リアリティが皆無な割にファンタジーにもなりきれていない感じで、全然入っていけなかった。ただ、真木よう子さんの藤壺、田中麗奈さんの六条の御息所、多部未華子さんの葵の上、芦名星さんの夕顔など、源氏物語のヒロインを演じた女優さん達は割とよかった気がする。

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【恋の罪】五つ星

監督・脚本:園子温
出演:水野美紀、神楽坂恵、冨樫真、児嶋一哉(アンジャッシュ)、他
製作国:日本
ひとこと感想:変態小説家の貞淑な妻(神楽坂恵)。昼の仕事と娼婦の二重生活を送る名門の出の大学助教授(冨樫真)。いい旦那と家庭がありながら愛人を持つ女刑事(水野美紀)。東電OL殺人事件に発想を得て創られた本編は、一見、女のドロドロを描いているようでありまがら、案外形而上的な愛の物語なのかもしれないと思った。三人の女優さんの熱演もさることながら、刑事のゲスな愛人役を演じたアンジャッシュの児嶋一哉さんがとてもいい。バラエティ番組での立ち位置とは裏腹に、演技をやらせると飄々として得体の知れない独特のキャラクターと化すのが不思議だ。

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【ゴーストライター】四つ星

監督・脚本:ロマン・ポランスキー
原作・脚本:ロバート・ハリス
出演:ユアン・マクレガー、 ピアース・ブロスナン、キム・キャトラル、オリヴィア・ウィリアムズ、他
製作国:フランス/ドイツ/イギリス
ひとこと感想:ロマン・ポランスキー監督による王道のサスペンス。こいつが黒幕かな、という予感はあったが、当たってやったぁ♪という感じ。しかし、最近のユアン・マクレガーは安定していい味を出すようになってきたね。

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【極道めし】四つ星

監督・脚本:前田哲
共同脚本:羽原大介
原作:土山しげる
出演:永岡佑、勝村政信、麿赤兒、他
製作国:日本
ひとこと感想:獄中で“人生で一番美味かったもの”の思い出を競うというのは面白い発想だな。その思い出はそれぞれの厳しくて切ない人生の記憶に結びついているけれど、食べている瞬間だけは至福だった。前田哲監督の間違いのない職人技をきっちり堪能できる一本。

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【コクリコ坂から】四つ星

監督:宮崎吾朗
脚本:宮崎駿、丹羽圭子
原作:高橋千鶴/佐山哲郎
声の出演:長澤まさみ、岡田准一、他
(アニメーション)
製作国:日本
ひとこと感想:昔『なかよし』で読んだ原作って多分こんな話じゃなかったけど(笑)。まぁ【耳をすませば】と同じく、自分の好きな意匠を描くために原作の筋立てだけを拝借してアレンジするのは宮崎駿さんが脚本を書く時の常套手段で、今回は60年代的なものが描きたかったのだろうなぁと思う。宮崎吾朗監督はこの素材をうまく映像化しているんじゃないだろうか。少なくとも【ゲド戦記】よりはよくまとまっていて好きだわ。

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【この愛のために撃て】四つ星

監督・脚本:フレッド・カヴァイエ
共同脚本:ギョーム・ルマン
出演:ジル・ルルーシュ、他
製作国:フランス
ひとこと感想:【すべて彼女のために】のフレッド・カヴァイエ監督作。前作とは異なるプロットにするために無駄にフクザツで分かりにくくなっているきらいはあるけれど、手に汗握るサスペンスの強度には磨きがかかっていると思う。

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【ゴモラ】四つ星

監督・脚本:マッテオ・ガローネ
共同脚本:マルリツィオ・ブラウッチ、ウーゴ・キーティ、ジャンニ・ディ・グレゴリオ、マッシモ・ガウディオソ
原作:ロベルト・サヴィアーノ
出演:サルヴァトーレ・アブルツェーゼ、他
製作国:イタリア
ひとこと感想:イタリアのナポリには「カモッラ」という古い大きな犯罪組織があって地下経済を牛耳っているのだそうで、本作はその「カモッラ」に関わる人々を描いたもの。オフィシャルホームページによると「高度資本主義社会における人類の繁栄を裏側から逆照射した黙示録的な傑作」なのだそうだが、私の印象ではまんま三池崇史監督や北野武監督のヤクザ映画のテイストが思い出された。ナポリの路地裏のあまりの薄汚さが印象的だった。

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【これでいいのだ !! 映画☆赤塚不二夫】四つ星

監督:佐藤英明
脚本:君塚良一
原作:武居俊樹
出演:浅野忠信、堀北真希、他
製作国:日本
ひとこと感想:佐藤英明監督はあの【踊る大捜査線】の脚本家・君塚良一さんの弟子筋らしい。正直、赤塚不二夫氏の話にはそれほど興味も湧かなかったのだが、その才能で一世を風靡しながら、その後は時代との齟齬にもがくことになる赤塚不二夫氏の姿を一種寓話的に丁寧に描いているのが意外と見せる。浅野忠信さんが赤塚不二夫をどう演じるの?とか堀北真希がこの話に一体どう絡むのよ?とか見る前は違和感を感じていた点も、思った以上にきちんと結果を出せていたので好感度もアップ。総じて期待以上に色濃く映画的な映画だったのだが、この良さがプロモーションでちゃんと伝わっていないようなので勿体ないと思った。

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【コンテイジョン】四つ星

監督:スティーヴン・ソダーバーグ
脚本:スコット・Z・バーンズ
出演:マリオン・コティヤール、マット・デイモン、ローレンス・フィッシュバーン、ジュード・ロウ、グウィネス・パルトロウ、ケイト・ウィンスレット、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:未知のウイルスのアウトブレイクが全世界的に同時多発的に発生した場合、どういった事態が起こりうるか?実力派のスター俳優を湯水のように使い、それぞれの立場の人間を並列に同時進行形で混乱なく描き分けているのが素晴らしい。やはりソダーバーグ監督は、こういう映画をドキュメンタリー・タッチで撮らせたら圧倒的に上手い。

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【再会の食卓】四つ星

監督・脚本:ワン・チュエンアン
共同脚本:ナ・ジン
出演:リン・フォン、リサ・ルー、シュー・ツァイゲン、他
製作国:中国
ひとこと感想:台湾と中国が袂を分かったために引き裂かれた夫婦が40数年ぶりに再会。妻の現在の家族は元夫を家に招いてもてなすが……。人生の機微が丁寧に描かれていて秀逸。じっくりと味わって戴きたいです。

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【サヴァイヴィング ライフ -夢は第二の人生-】三星半

監督・脚本:ヤン・シュヴァンクマイエル
出演:ヴァーツラフ・ヘルシュス、他
製作国:チェコ
ひとこと感想:ヤン・シュヴァンクマイエル監督は、下手に実写に手を染めない時代の方が好きだったかもしれない。悪夢をモチーフにした相変わらずの作風は安定しているとも言えるけれど、過去に確立した自分の作風をなぞっている感もある。これで100分を超えるのは見ていてちょっと厳しいかな。

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【サウダーヂ】四星半

監督・脚本:富田克也
共同脚本:相澤虎之助
出演:鷹野毅、伊藤仁、田我流、他
製作国:日本
ひとこと感想:土方、ラッパー、タイ人、日系ブラジル人、フィリピン人、ヤクザ、政治家、デリヘル、etc.etc.……。ここではないどこかに行きたいけれど、そのどこかはどこにもない。地方都市の疲弊や閉塞感についてほんの少しずつ語られるようになり始めたけれど、それを真正面に見据えるこのような映画こそ、今創られなければならない映画だったのかもしれない。このような映画が自ら立ち現れてきたことこそ、2011年の日本映画界の一番の事件だったのではないかと思う。

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【さすらいの女神たち】四つ星

監督・脚本・出演:マチュー・アマルリック
共同脚本:フィリップ・ディ・フォルコ / マルセロ・ノヴェ・トレ / ラファエル・ヴァルブリュンヌ
製作国:フランス
ひとこと感想:欧米にはバーレスクというアーティスティックなストリップ・ショーがあるらしい。本作で各地を巡業している女性ダンサー達は、私とあんまり変わらないような体型でぶんぶん舞い踊っていて凄まじい。マチュー・アルマリックってこういう熟れきった女性が好きですか……さすがはヨーロッパ人。最近はやりの似非熟女好き芸人達は、この映画を見てハダシで逃げ出すがよい。

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【ザ・タウン】四つ星

監督・脚本:ベン・アフレック
共同脚本:ピーター・クレイグ、アーロン・ストッカード
原作:チャック・ホーガン
出演:ベン・アフレック、レベッカ・ホール、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:監督・脚本・主演を努めるベン・アフレックさんの評判がやたらいいので試しに見てみようと思った。成程、銀行強盗を生業とする街に生まれ育ったのにカタギの女性を愛してしまった主人公の苦悩と心の揺らぎが詳細に描かれているのが秀逸。ベン・アフレックさんの故郷・ボストンへの愛も伝わってきた。

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【ザ・ファイター】四つ星

監督:デヴィッド・O・ラッセル
脚本:ポール・タマシー、エリック・ジョンソン、スコット・シルヴァー、他
出演:マーク・ウォールバーグ、クリスチャン・ベイル、エイミー・アダムス、メリッサ・レオ、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:元天才ボクサーの兄。ほとんどステマネの母。(&存在感ないけど唯一マトモな父……。)恋人に支えられ、過干渉すぎる家族との距離を取り直し、すべての愛情を味方につけて勝った実在のボクサー、ミッキー・ウォードの物語。マーク・ウォールバーグ、クリスチャン・ベイル、メリッサ・レオ、エイミー・アダムスらのレベルの高い役者陣の入魂の演技を楽しむもよし、家族の物語に思いを馳せるもよしで、完成度は高い。

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【SOMEWHERE】四つ星

監督・脚本:ソフィア・コッポラ
出演:スティーヴン・ドーフ、エル・ファニング、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:映画スターが虚飾まみれの生活を反省する、というか娘は可愛いという話。思春期の女の子のはかない美しさを映像に定着させることはなかなか難しいと思うのだが、これを見事にやってのけているというだけでも本作は一見の価値がある。ソフィア・コッポラ監督は、父親とは資質が違うことを早い段階で悟り、自分にできることを探りつつ映画を創ってるところが偉いかもしれない。

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【さや侍】四つ星

監督・脚本:松本人志
出演:野見隆明、熊田聖亜、板尾創路、柄本時生、りょう、ROLLY、竹原和生、他
製作国:日本
ひとこと感想:若様を30日以内に笑わせることができなければ死罪と比較的分かりやすいストーリーがあるから、松本人志さんの監督作の中では随分見やすい印象があるのではないかと思う。(あまりにも尖った作風でなくなったのはご結婚なさったからではないかと勝手に想像してみる。)人間の努力や積み上げたものなどほとんど無駄になり命は浪費されていく、それでも残された者の心に何かを残すかもしれない。松本さんはこんな死生観をお持ちなのだろうかと、勝手に少し納得した気になった。

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【サラの鍵】四つ星

監督・脚本:ジル・パケ=ブレネール
共同脚本:セルジュ・ジョンクール
原作:タチアナ・ド・ロネ
出演:クリスティン・スコット・トーマス、他
製作国:フランス
ひとこと感想:ナチス占領下のフランスで、フランス人もユダヤ人に対して似たよなことをやっていたという黒歴史を元にした物語(興味がある方は「ヴェル・ディヴ事件」で検索してね)。ユダヤ人の女の子のその後を、現代のフランス在住アメリカ人とリンクさせて描くのが有効だったかどうかはよく分からないし、後半はちょっと冗長かもしれないけど、サラの悲痛な叫びとクリスティン・スコット・トーマスの美しさが相俟って、印象に残る作品になっていると思う。

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【サラリーマンNEO 劇場版(笑)】三星半

監督・脚本:吉田照幸
共同脚本:羽原大介、内村宏幸、平松政俊、他
出演:小池徹平、生瀬勝久、沢村一樹、田口浩正、他
製作国:日本
ひとこと感想:『サラリーマンNEO』はNHK視聴者の高齢化対策の一環だったらしい(ケータイ大喜利とかもそうなのかな?)。私はそんなに熱心な視聴者ではなくほんのたまにしか見たことがなかったが、民放が揃って保守化している時代に正しく冒険して革新性を打ち出しているのはNHKだけなのかもしれないと強く印象づけられた。しかし、こんな全力の悪ふざけのためのプラットホームでも、案外しっかりストーリーを組み立てている辺りがさすがNHK?個人的には、セクスィー部長がもっと出鱈目でもよかったんじゃないかと思う。

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【サルトルとボーヴォワール 哲学と愛】四つ星

監督:イラン・デュラン・コーエン
脚本:シャンタル・ド・リュデール、エヴリーヌ・ピジエ
出演:アナ・ムグラリス、他
製作国:フランス
ひとこと感想:十代の前半にボーヴォワールの『第二の性』に極端に影響を受けまくったので、こういう映画があると聞いて懐かしい~と思った。ボーヴォワール役のアナ・ムグラリスって本っ当に美しくて、それだけで眼福。しかしこの映画のサルトルって本当に女にだらしないだけのクソ野郎にしか見えない。思想がどうとかクソ食らえざます。

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【サンザシの樹の下で】四つ星

監督:チャン・イーモウ
脚本:イン・リーチュエン
原作:エイ・ミー
出演:チョウ・ドンユィ、他
製作国:中国
ひとこと感想:時代背景として文化大革命が下敷きにあるけど、ただひたすら初恋のせつなさが描かれている感じ。限りなく【初恋のきた道】(同じチャン・イーモウ監督作)の二番煎じくさいなーとは思うけれど、これだけのうのうと初々しさを描けていればまぁいいか。

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【しあわせの雨傘】四星半

監督・脚本:フランソワ・オゾン
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェラール・ドパルデュー、
製作国:フランス
ひとこと感想:自我に目覚めた専業主婦が発憤する明るく楽しい物語……みたいなドラマをあのフランソワ・オゾン監督が創る訳はなく、やっぱり毒気たっぷりな内容だった。それにしても、オゾン監督の映画は、ステレオタイプ性を逸脱して解放される女性の話が多いのは何故だろう。監督、ゲイなのにな。

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【ジーン・ワルツ】三星半

監督:大谷健太郎
脚本:林民夫
原作:海堂尊
出演:菅野美穂、田辺誠一、風吹ジュン、浅丘ルリ子、他
製作国:日本
ひとこと感想:自分の母親に代理出産を頼んでまでも子供が欲しいと願う産婦人科医である独身女性のヒロインの気持ちが、残念ながら今ひとつ伝わって来なかった。大谷健太郎監督は基本的に好きなんだけど、こういうテーマの場合はもっと深い女性目線を持つことが出来る人の方がふさわしかったんじゃないのかな。いっそ女性監督や女性脚本家を起用するくらいのことをしてもよかったんじゃないかと思うんだけど。

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【死にゆく妻との旅路】四つ星

監督:塙幸成
脚本:山田耕大
原作:清水久典
出演:三浦友和、石田ゆり子、他
製作国:日本
ひとこと感想:借金で首が回らなくなり、末期癌の妻をワゴン車に載せて全国を旅する男。自分はどうなってもパートナーにはちゃんと治療を受けさせた方がいいんじゃないの?と私なら思うが、傍目にはどう思われても何が幸せかなんて本人達にしか分からないわよねぇ。あれだけ心を尽くしてもらえれば妻として幸せなのかもしれないとも思う。

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【灼熱の魂】四星半

監督・脚本:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
原作:ワジディ・ムアワッド
出演:ルブナ・アザバル、メリッサ・デゾルモー・プーラン、マキシム・ゴーデット、他
製作国:カナダ/フランス
ひとこと感想:レバノン出身のカナダ人劇作家ワジディ・ムアワッドの戯曲『焼け焦げるたましい』を、【渦】のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が映画化。中東からの移民であった母親の軌跡を子供達が追ううちに、ショッキングな事実が判明する。えげつない暴力と不寛容を断ち切れるのは愛だけ。世界を本当に救うことが出来るのはこの真の強さだけかもしれない。

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【シリアスマン】四つ星

監督・脚本:ジョエル&イーサン・コーエン
出演:マイケル・スタールバーグ、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:「何にもしていないのに」どんどんトラブルに巻き込まれるユダヤ人男性。本人は大変だけど端から見ていると何か可笑しい。同コーエン兄弟の【バートン・フィンク】をもっとユーモラスにした感じかな?コーエン兄弟作品はもっと出来の悪い映画も公開されていると思うのに、この公開規模の小ささはちょっと残念だ。

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【人生、ここにあり!】四つ星

監督・脚本:ジュリオ・マンフレドニア
共同脚本:ファビオ・ボニファッチ
出演:クラウディオ・ビジオ、他
製作国:イタリア
ひとこと感想:イタリアでは1978年に精神科病院が廃絶され、その後、精神障害者の人々の互助組織として協同組合が作られる動きがあったのだそうだ。本作はそんな時代の実話を元にしているとのこと。勿論こんなケースばかりじゃなかっただろうし、もっとエグいことだってあっただろうけど、理想の実現に向けて努力しようとする方向性を選ぶことは大切だと思った。しかしこの薄ぼんやりとした邦題は戴けない。映画の内容が伝わらないし、ちっとも面白そうに思えない。

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【スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団】四つ星

監督・脚本:エドガー・ライト
共同脚本:マイケル・バコール
原作:ブライアン・リー・オマリー
出演:マイケル・セラ、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:【ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン ! 】のエドガー・ライト監督の新作。ファンキーな女の子に惚れ、次々と現れる彼女の元カレ達と戦う羽目になる主人公。ヘンなオタクだと思ってたけど、意外とちゃんと戦う姿にちょっと感動する。独特のまったりしたギーク感は好き嫌いが分かれそうだけど、私は嫌いじゃない。

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【ステキな金縛り】三星半

監督・脚本:三谷幸喜
出演:深津絵里、西田敏行、阿部寛、中井貴一、浅野忠信、木下隆行(TKO)、他
製作国:日本
ひとこと感想:三谷幸喜監督の想定する面白さのセンスは、自分とはどんどんズレてきているような気がする。裁判の証人が幽霊だなんて馬鹿馬鹿しー!と笑い飛ばして見てればいいんだろうけど、あんまりにもあり得なさすぎてどうしても冷めちゃうのよねー。個人的に、深津絵里さんの彼氏役のTKOの木下さんがよかったです。

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【スマグラー おまえの未来を運べ】四つ星

監督・脚本:石井克人
共同脚本:山口雅俊、山本健介
出演:妻夫木聡、永瀬正敏、松雪泰子、満島ひかり、安藤政信、高嶋政宏、我修院達也、小日向文世、阿部力、他
製作国:日本
ひとこと感想:ちょっと暴力的なピカレスク、でも強烈キャラクターの雨あられで楽しい!どの人の演技も忘れ難いけど、特に高嶋政宏さんの変態100%の演技は映画ファンなら見ておかなければならず、安藤政信さんは是が非でも今すぐ日本に呼び戻さなければならない !! と思った。

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【スリー☆ポイント】三星半

監督・脚本:山本政志
出演:蒼井そら、村上淳、他
(一部ドキュメンタリー)
製作国:日本
ひとこと感想:行き当たりばったりにも見える妙なドキュメンタリー(?)とドラマが混在した妙な映画。テーマ性から解き放たれた「ボーダレス」がテーマだと言われたって……う~ん。でも山本政志監督のすることは何でも問答無用で面白く感じてしまったりするんだよなぁ。単なるファンですみません。

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【世界のどこにでもある、場所】二星半

監督・脚本:大森一樹
出演:熊倉功、他
製作国:日本
ひとこと感想:遊園地つきの動物園で精神病院のデイケアっていう設定に無理があると思うし、そもそも精神病院という設定にファンタジーを求めるなんて時代遅れに過ぎると思う。作者の独りよがりな思い入れがだらだらと続く70年代っぽい不条理劇が成長していない感じで、ちょっとこれはどうだろうと思った。

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【ソウル・キッチン】四つ星

監督・脚本:ファティ・アキン
共同脚本:アダム・ボウスドウコス
出演:アダム・ボウスドウコス、モーリッツ・ブライプトロイ、他
製作国:ドイツ/フランス/イタリア
ひとこと感想:ハンブルグの場末のレストランの、ごちゃまぜでハチャメチャな雰囲気がなんか好き。レストランの経営維持に奔走する主演のアダム・ボウスドウコスと、そのちゃらんぽらんな兄貴役のモーリッツ・ブライプトロイの兄弟がいい味出してる。

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【ソーシャル・ネットワーク】四つ星

監督:デヴィッド・フィンチャー
脚本:アーロン・ソーキン
原作:ベン・メズリック
出演:ジェシー・アイゼンバーグ、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:日本でもすっかり浸透した感のあるフェイスブック(自分は使う気はないが)の創始者であるマーク・ザッカーバーグ氏を描いた映画。この話がどこまで事実に則しているかは不明だけど、映画の中のザッカーバーグ氏はいかにも上から目線の歪んだエリート意識のカタマリで、こんなふうにまともに人と繋がれないような奴が幸せになれる筈もないと思わされる。ただ、アメリカにおける新ビジネスがどのように成立して拡大していくのかを描いているのが非常に興味深かったし、そんな新たなスキームに置いてけぼりにされる人間の姿を冷徹に描いてるのが新しいなと思った。

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【その街のこども 劇場版】四つ星

監督:井上剛
脚本:渡辺あや
出演:森山未來、佐藤江梨子、他
製作国:日本
ひとこと感想:NHKで放映したドラマの再編集版。実際に阪神・淡路大震災を経験した森山未來さんと佐藤江梨子さんが、震災15年目の前日に神戸に戻ってきた2人の若者を演じていて、胸に迫った。震災の経験を簡単に口にすることは難しく、見ず知らずの2人が、なりゆきで夜の街をとぼとぼ歩き、お互いの経験を少しずつ語り始める、そんな距離感が正しいと思った。

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【孫文の義士団】四つ星

監督:テディ・チャン
脚本:チュン・ティンナム、グオ・ジュンリ、ジェームズ・ユエン、ウー・ビン
出演:ドニ―・イェン、レオン・ライ、ニコラス・ツェー、ファン・ビンビン、ワン・シュエチー、レオン・カーフェイ、フー・ジュン、エリック・ツァン、サイモン・ヤム、他
製作国:香港/中国
ひとこと感想:孫文が辛亥革命を起こすため同士と密談を行う、その1時間に舞台を絞ってほぼリアルタイムで見せるって新しい。有名スターを湯水の如く使いつつ、重層的なストーリーの上に屍の山が累々と築かれていく、その潔さもまた新しい。体制の変革っていつだってこうした犠牲の上に築かれるというメタファーなのだろうか。しかし残念なのは、こういう戦いのシーンが延々続くと、ワタクシは眠気のスイッチが自動的に入ってしまうのだ。

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【第4の革命 エネルギー・デモクラシー】四つ星

監督:カール・A・フェヒナー
(ドキュメンタリー)
製作国:ドイツ/デンマーク/ノルウェー/フランス/スペイン/マリ/バングラデシュ/アメリカ/ブラジル/中国
ひとこと感想:原発廃止は、できるかできないかではなく、やるかやらないかの選択の問題であり、やると決めて全ての社会的リソースと技術を注ぎ込んで実現するべきではないかと私は思う。古い経済スキームにこだわる経団連会長とかは日本の将来のためにさっさと引退すべきなんじゃないのかなマジで。

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【ダンシング・チャップリン】四つ星

監督:周防正行
出演:ルイジ・ボニーノ、草刈民代、ローラン・プティ、他
(ドキュメンタリー)
製作国:日本
ひとこと感想:草刈民代さんの引退に際し、周防正行監督が手掛けたバレエ映画。ローラン・プティ氏が振り付けルイジ・ボニーノ氏が踊る『ダンシング・チャップリン』を、舞台の製作過程も交えて映像化したもの。世にバレエ映画は数々あれど、映画を熟知した本職の映画監督がバレリーナの妻を撮るという、こんな映画は二度とないだろうと思う。

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【タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密】四つ星

監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:スティーヴン・モファット、エドガー・ライト、ジョー・コーニッシュ
原作:エルジェ
出演:ジェイミー・ベル、アンディ・サーキス、ダニエル・クレイグ、他
製作国:アメリカ/ベルギー
ひとこと感想:スピルバーグ監督の入魂作……らしいのだが、どう転んでも原作の絵本の方がカワイイわよねぇ。よくできてはいるんだけど……。

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【探偵はBARにいる】四つ星

監督:橋本一
脚本:古沢良太、須藤泰司
原作:東直己
出演:大泉洋、松田龍平、小雪、西田敏行、他
製作国:日本
ひとこと感想:思ったより本格的なハードボイルドじゃないですか。映画だと案外二の線の役柄も多い大泉洋さんと、飄々とした独特のキャラを作り上げている松田龍平くんの名コンビ誕生 !! これならシリーズ化もまぁ許す。

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【津軽百年食堂】四つ星

監督・脚本:大森一樹
共同脚本:青柳祐美子
原作:森沢明夫
出演:藤森慎吾/中田敦彦(オリエンタルラジオ)、福田沙紀、他
製作国:日本
ひとこと感想:おじいちゃんの代から現代まで続く津軽のとある食堂の歴史を描く。こういう映画を見ると、大森一樹監督の職人的な手腕は確かな筈なんだがなーと思う。オリエンタルラジオの二人は普通によくて好きだったけど。

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【冷たい熱帯魚】四星半

監督・脚本:園子温
共同脚本:高橋ヨシキ
出演:吹越満、でんでん、黒沢あすか、神楽坂恵、他
製作国:日本
ひとこと感想:人間はグロテスクな生き物だという事実を容赦なく叩きつける超劇薬映画。絶対的な悪とでも呼べそうな存在をぞっとするほど人間臭く演じ切ったでんでんさんの存在感が圧倒的で、その悪に染まりながらも染まりきれない小市民の中途半端さを演じ切った吹越満さんとの対比が抜群に面白かった。覚悟して観るべし。

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【ツリー・オブ・ライフ】三星半

監督・脚本:テレンス・マリック
出演:ブラッド・ピット、ショーン・ペン、ジェシカ・チャステイン、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:テレンス・マリック監督が太古の昔から紐解くあるアメリカ人一家の家族史。カウンター・カルチャー以前の古き良きアメリカン・ファミリー像が崩れるところとか、きっとアメリカ人的にはグッとくるんだろうけど、あいにく私はアメリカ人じゃないもんで……。しかし、ショーン・ペンが息子でブラピが父親なのね。メンチを切り合ったら絶対ショーンが勝ちそうだから逆だと思ってたんだけど。

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【ツレがうつになりまして。】四星半

監督:佐々部清
脚本:青島武
原作:細川貂々
出演:宮崎あおい、堺雅人、他
製作国:日本
ひとこと感想:今は無き『ぶ~け』で昔お見掛けしていた細川貂々さんがこのようなマンガを描き、それがこのような映画になるなんて何だか不思議な感じ。もはや国民病だけどまだまだ偏見も根強いうつ病(例えば私の母の世代などだと全く理解できない人も少なくないようなのね)を、ある若夫婦が絆を深め愛を育む軌跡として、あくまでごく普通の日常目線から描いているのがいいところで、本作では佐々部清監督の誠実で丁寧な仕事ぶりが活きていると思う。うつのツレさんを演じる堺雅人さんと、ツレさんに寄り添うマイペースなハルさんを演じる宮崎あおいさんは、あまりにもナチュラルで息もピッタリで神々しいくらい。こんな夫婦だったら素敵かもと思わずちょっとうらやましくなってしまうほどだった。

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【天国からのエール】四つ星

監督:熊澤誓人
脚本:尾崎将也、うえのきみこ
出演:阿部寛、ミムラ、桜庭ななみ、他
製作国:日本
ひとこと感想:沖縄の国頭群に仲宗根陽さんという方がいて、夢を持つ高校生達が音楽に打ち込めるようにと私財を投じて無料の音楽スタジオを作ったのだそうだ。残念ながら若くして癌で亡くなられたということなのだが、こんなに偉い人が現実にいたなんて凄いなぁ。本作も、その仲宗根さんの遺志を汲むように丁寧に誠実に創られていて、とても好感が持てた。

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【天使突抜六丁目】二星半

監督・脚本:山田雅史
出演:真鍋拓、瀬戸夏実、他
製作国:日本
ひとこと感想:【堀川中立売】を製作したシマフィルムの京都シリーズ第二弾。京都には天使突抜(てんしつきぬけ)という地名が本当にあるらしいが、六丁目は架空の番地らしい。迷宮のような吹き溜りから抜け出す幻想とか、だらしなくもの考えてないありがち白ワンピースの女(純粋無垢な存在ってことにしたいんだろうけど)とか、70年代の観念的なアングラ映画みたい。まぁ好き好きなんだろうけど、個性と言うよりは進化の拒否と感じてしまうなぁ。

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【デンデラ】三星半

監督・脚本:天願大介
原作:佐藤友哉
出演:浅丘ルリ子、倍賞美津子、山本陽子、草笛光子、山口果林、白川和子、他
製作国:日本
ひとこと感想:天願大介監督のお父様である今村昌平監督の【楢山節考】のアンサー的なストーリーと言うけれど。姥捨山に捨てられた老女達が自活する様はちょっと興味が湧くけれど、彼女達は何をどうしたかったのか、どうも説明不足で描き切れておらず、結局よく分からなかった気がする。これだけのビッグネームの女優さん達に大挙出て戴いて、ちょっと勿体ないような。

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【とある飛空士への追憶】四つ星

監督:宍戸淳
脚本:奥寺佐渡子
原作:犬村小六
声の出演:神木隆之介、竹富聖花、他
(アニメーション)
製作国:日本
ひとこと感想:マッドハウスの最新作。原作はライトノベルらしいのだが、映画の感想をうっかり検索してみたら、原作に思い入れがあるらしい人達がこぞって酷評しまくっててびびった……う~ん、設定も割としっかりしてるし、絵はキレイだし、自由って何かということがテーマだとするとなかなか深いし、そんなに悪くないと思うけどな。ただ、アニメの女の子のパターンって変わり映えしないなぁとは思いましたけど。

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【東京公園】三星半

監督・脚本:青山真治
共同脚本:内田雅章、合田典彦
原作:小路幸也
出演:三浦春馬、榮倉奈々、小西真奈美、染谷将太、井川遥、他
製作国:日本
ひとこと感想:見ず知らずのおっさんにいきなり話しかけられて、人の後つけて写真を撮るストーカーみたいなバイトなんて引き受けないでしょう普通。下手すると犯罪ですよソレ。あと、なんか中途半端に幽霊が出てきたり。このように話がいきなり恣意的に進む感じに、私はどうも馴染めなかった。それぞれの役者さんの演技自体は嫌いじゃないんだけどね~。う~ん。

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【トーキョードリフター】二星半

監督:松江哲明
出演:前野健太
(ドキュメンタリー)
製作国:日本
ひとこと感想:同じ松江哲明監督×前野健太主演の【ライブテープ】という前作を踏襲しているのだそうで、震災後、節電で暗くなった東京の街のあちこちで延々と歌う様が収められている。本人達には何らかの強い思いがあるのだろうと思う……が、知らない人から見たらマスターベーション的な所業にしか映らないような。

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【トゥルー・グリット】四つ星

監督・脚本:ジョエル&イーサン・コーエン
原作:チャールズ・ポーティス
出演:ジェフ・ブリッジス、ヘイリー・スタインフェルド、マット・デイモン、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:いくら女の子が主人公とはいえ、西部劇ってどうも頭に入ってこないや……。映画としての出来がいいのは分かるんだけど、個人的な共感度は低いかもしれない。

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【トスカーナの贋作】三つ星

監督・脚本:アッバス・キアロスタミ
脚色:マスメ・ラヒジ
出演:ジュリエット・ビノシュ、ウィリアム・シメル、他
製作国:イタリア/フランス
ひとこと感想:偽物の夫婦を通した偽物についての考察?何を描きたかったのかキアロスタミ。あまりにも抽象的な観念に走ってしまっていて、映画としてのダイナミズムを欠いているように思われたのだが。

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【DOG×POLICE 純白の絆】二つ星

監督:七高剛
脚本:大石哲也、小森陽一(原案)
出演:市原隼人、戸田恵梨香、他
製作国:日本
ひとこと感想:警察の捜査なんてチームプレイが基本でしょうが。この命令違反ばっかりやってる若造は馬鹿なの?最後まで同じ轍を踏み続けるとかありえない。私は市原隼人くんは大好きなのだが、彼のスタッフは彼の出演作の傾向をそろそろ本気で考え直した方がいいと思う。

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【ドリーム・ホーム】四つ星

監督・脚本:パン・ホーチョン
共同脚本:デレク・ツァン、ジミー・ワン
出演:ジョシー・ホー、他
製作国:香港
ひとこと感想:香港のパン・ホーチョン(彭浩翔)監督が凄いらしいと噂は聞くのだが、なかなか作品にお目に掛かる機会がなかった。(特集上映も見逃してしまった……。)本作では、高級マンションを手に入れることだけが自分の幸せだと思い込んでしまい、妄執に取り憑かれたように連続殺人に走る女性の姿がグロテスクに描かれている。不動産価格が異常なまでに高騰しているという香港社会の状況が背景に投影されているのも興味深い。監督の他の作品も是非見てみたいと思った。

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【ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路】三星半

監督・脚本:ルネ・フェレ
出演:マリー・フェレ
製作国:フランス
ひとこと感想:あのモーツァルトには才能に溢れた姉がいた、なんてそんな実話があったのね。しかし、例えば芸術と愛憎に引き裂かれて破滅した【カミーユ・クローデル】なんかの激しさに較べれば、結局は父の意向に従って芸術の道を諦めさっくり嫁に行ったという本作の主人公は随分おとなしく、ちょっと物足りない印象を受けてしまったかもしれない。

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【ハードロマンチッカー】四つ星

監督・原作:グ・スーヨン
脚本:具光然
出演:松田翔太、永山絢斗、柄本時生、他
製作国:日本
ひとこと感想:世間的な評価はあまり高くないみたいだけど、私はグ・スーヨン監督の映画が割と好きだ。しかし、監督自身の半自伝的な小説が原作だという本作は、あまりに暴力的すぎるところがいささかしんどい。昔の監督はよっぽどイライラを持て余していたんだろうね……。この映画の中での監督の分身なのであろう松田翔太さんが時折見せるスネたような目つきは嫌いじゃなかったけど。

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【鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星】四つ星

監督:村田和也
脚本:真保裕一
原作:荒川弘
声の出演:朴ロ美(ロは王へんに路)、釘宮理恵、他
(アニメーション)
製作国:日本
ひとこと感想:マスタング大佐の出番がちと足りないことだけがちょっぴり不満だったが、ハガレンはきっちり面白くていいんでないかい。まだ当分はスピンアウトが出来そうな気配がするな。

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【朱花の月(はねづのつき)】三星半

監督・脚本:河瀬直美
出演:こみずとうた、大島葉子、明川哲也
製作国:日本
ひとこと感想:女性は男性にセックスを授けて“あげている”のだから女性のすることは全部正しい、みたいなセックス原理主義を女性性と言われても困ってしまう。河瀨直美監督の映画には独特の時間が流れていて、それはいつも凄いなとは思うけど、人によって好悪は相半ばかもしれない。

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【バビロンの陽光】三星半

監督・脚本:モハメド・アルダラジー
共同脚本:ジェニファー・ノリッジ
出演:ヤッセル・タリーブ、他
製作国:イラク/イギリス/フランス/オランダ/パレスチナ/アラブ首長国連邦/エジプト
ひとこと感想:イラク国内で祖母と父親を捜す旅に出るクルド人の少年。現在のイラク国内ってこんな感じなのだろうかと、少しだけ垣間見ることができたような気になった。現実は過酷でも、人間同士の繋がりが確かに存在していることを僅かに感じられることに、少し救われた。

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【はやぶさ HAYABUSA】四つ星

監督:堤幸彦
脚本:白崎博史、井上潔
出演:竹内結子、西田敏行、高嶋政宏、佐野史郎、山本耕史、鶴見辰吾、筧利夫、生瀬勝久、他
製作国:日本
ひとこと感想:砂浜から一粒の砂粒を拾うかのような作業を繰り返し、一つ一つの課題をクリアして積み上げた偉業は、奇跡と言うより努力の賜物だった。科学とはかような地道な努力の積み重ねなのだということを真正面から描いてみせ、学者の卵である主人公の女性(竹内結子さんの好演)に重ねて科学に携わることの心のゆらぎまで表現する。そんな映画って他にあまり思いつかず、そうした意味でこれは意外な傑作なのではないかと私は思った。こんなアプローチの映画までサクッと創ってしまえる堤(幸彦)監督ってどれだけ頭脳明晰なんだろ……。ところで、これから東映や松竹からも“はやぶさ”ものが公開されるけど、こういうのは旬の話題性や早い者勝ちって面もあると思う。仕事の早い東宝や20世紀フォックスはさすがによく分かってらっしゃるなぁと思った。

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【ハラがコレなんで】三つ星

監督・脚本:石井裕也
出演:仲里依紗、中村蒼、石橋凌、他
製作国:日本
ひとこと感想:石井裕也監督、こりゃいけませんわ。監督がオリジナリティを追求しようとする姿勢は買うけれど、本作ではちょっとこねくりまわし過ぎて現実離れし過ぎてしまったみたい。そもそも“粋”というキーワードにこだわり過ぎたところに無理があって、行き当たりばったりに妊娠しておきながら問題なんて昼寝すれば解決するなどと豪語しているヒロインなんて既に性格破綻者だよ。大体、腹が痛いと言ってる妊婦に長距離運転させるなんて展開は200%ありえず、どんなことをしてでも運転席から引きずり下ろして病院にブチ込むべき。もっともっと時間を掛けて脚本を練っておくれ~!頼むから。

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【パレルモ・シューティング】四つ星

監督・脚本:ヴィム・ヴェンダース
出演:カンピーノ、他
製作国:ドイツ/フランス/イタリア
ひとこと感想:死を内包する街・イタリアのパレルモ。ここで写真を撮るから【パレルモ・シューティング】。煮詰まっちゃってるファッション・カメラマンがパレルモで女性と出会い自分を取り戻していくという物語。ヴィム・ヴェンダース監督のヨーロッパ回帰を印象づけられたが、そもそもヨーロッパ的とは何なのか?よく分からないけど、自分と自分以外の何か(他人だったり物質だったり思想だったり)との距離の取り方かなぁと思った。

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【ヒア アフター】四つ星

監督:クリント・イーストウッド
脚本:ピーター・モーガン
出演:マット・デイモン、セシル・ドゥ・フランス、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:死に直面する人々の話と言うより、行き場のない悩みが図らずも解決する話に思える。自分の才能を持て余す霊能力者(マット・デイモン)や、双子の兄を亡くした弟の描写などが秀逸。しかしあまりにもがっつり津波のシーンが出てくるので、日本での公開が中止になったのは致し方あるまい。

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【光のほうへ】四つ星

監督・脚本:トマス・ヴィンターベア
共同脚本:トビアス・リンホルム
出演:ヤコブ・セーダーグレン、ペーター・プラウボー、他
製作国:デンマーク/スウェーデン
ひとこと感想:デンマークのトマス・ヴィンターベア監督の描く北欧の社会の底辺。アルコールやクスリが横行する貧しい環境は、本来子供を作ったりするのには相応しくないと思われるのだが、それでも子供は出来てしまう。その子供は愛や希望にはなりえても、やっぱりうまく育てられなかったりする。救いはありそうでなさそうで、やっぱりないような。これは北欧だけではなく、日本を含めた世界中に広がっている物語であるような気がする。

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【白夜行】四つ星

監督:深川栄洋
脚本:深川栄洋、入江信吾、山本あかり
原作:東野圭吾
出演:堀北真希、高良健吾、船越英一郎、他
製作国:日本
ひとこと感想:ウチの母などのように、堀北真希さんの演技力の凄さがよく分かっていない人にはこの映画を見せてあげたい。クールビューティーも似合うと私は思うよ。本編はちょっと長くても見応えはあるけれど、いつも変わらない彼女の手口に屈しない人が皆無なところとか、高良(健吾)くんの扱いがちょっと中途半端かなところとかは、もう少し脚本に手を入れてもよかったんじゃないかなぁとも思う。

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【BIUTIFUL ビューティフル】三星半

監督・脚本:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
共同脚本:アルマンド・ボー、ニコラス・ヒアコボーネ
出演:ハビエル・バルデム、他
製作国:メキシコ/スペイン
ひとこと感想:闇社会で生きる死期が近い貧しい男が子供達のために奔走する。ハビエル・バルデムさんは相変わらずの熱演なんだけど、な~んか刺さらなかったんだよな……。

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【ファンタスティックMr.FOX】四星半

監督:ウェス・アンダーソン
脚本:ノア・バームバック
原作:ロアルド・ダール
声の出演:ジョージ・クルーニー、メリル・ストリープ、他
(アニメーション)
製作国:アメリカ
ひとこと感想:ロアルド・ダールの『すばらしき父さん狐』を原作としたウェス・アンダーソン監督の超ステキなストップモーション・アニメ !! きっと今の技術ならもっとスムーズな動きにすることも可能だと思うのだが、伝統的なストップモーション・アニメ的なぎこちなさを敢えて残してあるように思う。ストーリーのキーワードは「野生」であることだと思われるけど、そちらの意味については今度見直す機会があった時に考えてみたい。

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【ブラック・スワン】四つ星

監督:ダーレン・アロノフスキー
脚本:マーク・ヘイマン、アンドレス・ハインツ、ジョン・J・マクローリン
出演:ナタリー・ポートマン、ヴァンサン・カッセル、ミラ・クニス、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:黒鳥を踊るには人間のどす黒い部分も知らなければならない?そんなプレッシャーから心身共に追い込まれていくヒロイン。こんなガラスみたいにひ弱な神経でアーティストなんてやってられるのか(バレリーナは踊る芸術家だ)とふと疑問に思うけど、そんなヒロインを全力で演じているナタリー・ポートマンの迫力に圧倒されて何も言えなくなる。しかし、現役ダンサーへのインタビューではこんな人が実際半分くらいはいるらしく、案外リアルだったりするのだろうか。

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【プリンセス トヨトミ】三星半

監督:鈴木雅之
脚本:相沢友子
原作:万城目学
出演:堤真一、中井貴一、綾瀬はるか、岡田将生、沢木ルカ、他
製作国:日本
ひとこと感想:大阪には豊臣秀吉の子孫を盟主に仰ぐ「大阪国」が存在していた !? ライトノベル的な発想は面白いけれど、父子関係しか重視しない時代錯誤的な設定は女性から見ると白けてしまうし、精神的な問題にしか帰結しないのであれば、これをわざわざ受け継ごうとするのは動機として弱いのではないだろうか?なんかうざったいホラ話だなぁという域を出なかったように思うのだけれど。

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【不惑のアダージョ】四つ星

監督・脚本:井上都紀
出演:柴草玲、西島千博、他
製作国:日本
ひとこと感想:更年期の修道女が主人公なのだそうで、わざわざ閉経とか大声で言わなくていいじゃんと思うけど、更年期を直接扱った映画というのは珍しいと思うので、ズバリ同年代の自分としては非常に興味深く思う。性的な介入を無理矢理入れる必要はなかったんじゃないのかなぁと思うけど、自分の“女性性”に重きを置いていない生き方をしていても、自分の存在価値が一つ減じられるように感じられて焦燥や落ち着かなさを感じる、そんな心情を繊細に描いているのが優れていると感じられた。

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【ブンミおじさんの森】四つ星

監督・脚本:アピチャッポン・ウィーラセタクン
出演:タナパット・サーイセイマー、他
製作国:タイ/イギリス/フランス/ドイツ/スペイン
ひとこと感想:虫の声が鳴り止まず、妙なモノがざわざわ蠢く森の奥深く。死んだ妻がやって来たり、失踪した息子が猿になって来たり、前世や来世の話がごちゃまぜになったりと、不思議なシーンが次々と普通に並列する。これがタイ式マジック・リアリズムなのか?理屈はよく分からないが、確かに不思議な味わいではある。

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【ペーパーバード 幸せは翼にのって】四つ星

監督・脚本:エミリオ・アラゴン
共同脚本:フェルナンド・カステッツ
出演:イマノル・アリアス、ルイス・オマール、他
製作国:スペイン
ひとこと感想:フランコ政権下のスペイン。妻と子を内戦で殺されたヴォードヴィリアン(舞台芸人)と、そのゲイの相方と、彼等に拾われる孤児の少年の物語。芸人同士の絆や、権力への反抗が絵巻のように描かれる。ちょっと詰め込みすぎのきらいもあるけど、久々に見応えを感じたヨーロッパ映画だった。

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【僕たちは世界を変えることができない。】四つ星

監督:深作健太
脚本:山岡真介
原作:葉田甲太
出演:向井理、松坂桃李、柄本佑、窪田正孝、他
製作国:日本
ひとこと感想:この年なので、カンボジアのポル・ポト政権の虐殺について少しは知っているけれど、素で知らなかったんだろうなぁという若い役者さん達の反応をドキュメンタリー風に捉えているのが効を奏していると思う。若い人っていい意味でナイーブなんだなぁとちょっと見直した。映画ファンの方はビデオ屋で【キリング・フィールド】を借りて見ておこうね。

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【僕と妻の1778の物語】四つ星

監督:星護
脚本:半澤律子
原作:眉村卓
出演:草なぎ剛、竹内結子、谷原章介、他
製作国:日本
ひとこと感想:SF作家の眉村卓さんが奥様が亡くなるまで毎日短編を書き続けたという実話を映画化したものらしいが、本編は、病(やまい)の現実よりもひたすら理想化された妻を描こうとしたファンタジーだと映った。ただ、妻の病を嘆く作家の苦悩はよく伝わってきて、やっぱり草なぎ君はうまいなぁと思った。

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【星を追う子ども】三星半

監督・脚本:新海誠
声の出演:金元寿子、他
(アニメーション)
製作国:日本
ひとこと感想:新海誠監督の新作は長編SFだったのでびっくり。しかしなんかえらくジブリっぽくない?思ったら、ネットでも同意見が多数。嫌いじゃないけど、これを作るならいっそジブリでやったらいいんじゃないのかなー。

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【マーガレットと素敵な何か】三星半

監督・脚本:ヤン・サミュエル
出演:ソフィー・マルソー、他
製作国:フランス/ベルギー
ひとこと感想:田舎街の出身なので映画などほとんど見ずに育ったけど、それでも【ラ・ブーム】という映画の題名を知っていたくらい当時は超有名だった。本作を見に行った動機は大人になったソフィー・マルソーを見たかっただけ。素敵な人になっていて何よりだ。本作の感想は……過去の自分が今の自分に何か言ってきたりしたら私ならゾッとするわ~。(そもそも昔は未来の自分なんてもの自体を想定すらしていなかったが……。)それにしても、ビジネスの場面でもいきなり人生について語り出してしまうところとか、さすがフランス映画だなぁと思った。

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【マーラー 君に捧げるアダージョ】三星半

監督・脚本:パーシー・アドロン&フェリックス・アドロン
出演:ヨハネス・ジルバーシュナイダー、他
製作国:ドイツ/オーストラリア
ひとこと感想:パーシー・アドロンって【バグダッド・カフェ】の監督さんですよ皆さん!しかし、【マーラー】といえばケン・ラッセル監督の強烈な作品が記憶に刻まれているので、本作はちょっと大人しすぎる気もしたな。

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【毎日かあさん】四つ星

監督:小林聖太郎
脚本:真辺克彦
原作:西原理恵子
出演:小泉今日子、永瀬正敏、他
製作国:日本
ひとこと感想:西原理恵子さん原作の映画化作品では【パーマネント野ばら】の次によく出来た作品だと思った。忌野清志郎さんが歌うテーマソングの『誇り高く生きよう』が素晴らしく、iPodに入れて今でもよく聞いている。まーウチの父親もそうだったんだが、アルコール依存症って心の病気なんだよね。私も十代の頃にそれを教えてくれる人がいたらよかったのに。

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【マイ・バック・ページ】三星半

監督:山下敦弘
脚本:向井康介
原作:川本三郎
出演:妻夫木聡、松山ケンイチ、他
製作国:日本
ひとこと感想:各作品が高く評価されている山下敦弘監督の最新作。しかし本作は、映画評論家である川本三郎氏の全共闘時代の思い出話以上のものではないのではないか?妻夫木聡さん×松山ケンイチさんの演技のおかげで一見見応えはあるけれど、全共闘世代の話を若い人が創ったらどうなるの?という実験以上の意味があるとも思えないのだが。この映画を映画関係者が褒めている図式は、仲間内の自己耽溺にしか見えなくてちょっと気持ち悪い。

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【マイブリッジの糸】四つ星

監督・脚本:山村浩二
(アニメーション)
製作国:日本
ひとこと感想:【頭山】の山村浩二監督作。馬のギャロップの連続写真を撮って映画の発明にインスピレーションを与えたとされるエドワード・マイブリッジと、ある母と娘のイメージを紡ぎ、「時」の情景を描き出した短編アニメーション。

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【MAD探偵 7人の容疑者】三星半

監督:ジョニー・トー、ワイ・カーファイ
脚本:アウ・キンイー、ワイ・カーファイ
出演:ラウ・チンワン、他
製作国:香港
ひとこと感想:犯人や犠牲者の追体験をすることで真相に迫ろうとする、傍目には完全にイっちゃってる捜査方法で事件を追う探偵。とても奇妙だけど他にない味わいの映画だけに、下手するとちょっとハマってしまうかもしれない。

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【マネーボール】四つ星

監督:ベネット・ミラー
脚本:アーロン・ソーキン、スティーヴン・ザイリアン、スタン・チャーヴィン(原案)
原作:マイケル・ルイス
出演:ブラッド・ピット、ジョナ・ヒル、フィリップ・シーモア・ホフマン、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:セイバーメトリクス(sabermetrics)という、データを統計学的に分析して選手の評価や戦略を考える野球の分析手法を、本格的に導入してチームを強くしたビリー・ビーンさんという方の話。主演のブラピはプロデューサーも兼ねており、【カポーティ】のベネット・ミラー監督をスカウトしたり(ついでにフィリップ・シーモア・ホフマンさんにも声を掛け)、脚本もアーロン・ソーキンとスティーヴン・ザイリアンにお願いしたりと手抜かりない。参謀役のジョナ・ヒルさんもいろんな助演賞にノミネートされそうな名演技。総じて手抜かり無く創り上げられた良作だった。やっぱりブラピは引退などせずに、自分でいい作品をプロデュースして出まくって欲しいよね。

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【まほろ駅前多田便利軒】四つ星

監督・脚本:大森立嗣
原作:三浦しをん
出演:瑛太、松田龍平、麿赤兒、片岡礼子、鈴木杏、松尾スズキ、高良健吾、本上まなみ、柄本佑、岸部一徳、大森南朋、他
製作国:日本
ひとこと感想:地に足をつけきれてないけれど、幸せになりたくて地道にあがく優しい人達。人間の営みってそういうことの連続なのかな。強固な主義主張を振りかざすのではなく、瑛太さんと松田龍平さんを取り巻く雰囲気をふんわり楽しむ映画かなと思う。

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【漫才ギャング】四つ星

監督・脚本:品川ヒロシ
出演:佐藤隆太、上地雄輔、他
製作国:日本
ひとこと感想:しっかりしたキャラクター設定に、アップテンポなストーリー、見事な漫才のシーンと見所満載。個人的には違うラストを期待したかったけど、品川ヒロシ監督の力量は充分に感じられた。震災直後の時期でなければもっと普通にヒットしてたと思うんだけどな。

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【緑子 MIDORI-KO】四つ星

監督・脚本:黒坂圭太
声の出演:涼木さやか、他
(アニメーション)
製作国:日本
ひとこと感想:キモチワルくてワケワカラなくてクセになる黒坂圭太監督の長編アニメ。色鉛筆で13年かけて手描きしたという絵は、有機物感が百倍増くらいでハンパない……。

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【未来を生きる君たちへ】四星半

監督:スサンネ・ビア
脚本:アナス・トーマス・イェンセン
出演:ミカエル・パーシュブラント、他
製作国:デンマーク/スウェーデン
ひとこと感想:母親を癌で亡くした子供は、大人達が必ず治るという“嘘”をつき続けていたことや安楽死を考えたこと(あまりの癌痛のため)に傷つき、無理矢理にでも世の中の秩序を取り戻さなければならないと暴力的傾向に走る。別の子供は、父親がアフリカの混乱した地域での医療に携わり不在がちなため、ふとした寂しさから友人に引きずられる。この世界で、子供達に平和について教えるのは、とっても、とっても、とっても、とっても難しい。今や世界で最も好きな監督さんの一人になったスサンネ・ビア監督の作品の中でも最も素晴らしい一本だと思う。

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【無言歌】四つ星

監督・脚本:ワン・ビン
原作:ヤン・シエンホイ
出演:ルウ・イエ、他
製作国:香港/フランス/ベルギー
ひとこと感想:9時間超のドキュメンタリー【鉄西区】のワン・ビン(王兵)監督の作品。文化大革命の頃の話かと思っていたら、実際は文化大革命前に毛沢東が採った「反右派闘争」という史実にまつわるものらしい。食物もろくにない砂漠の超劣悪な環境下での強制労働で、とにかく人がバタバタ死ぬ。もう涙も乾いてしまいそうなスケール感。中国の歴史はこういう無数の人民の屍の上に成立しているのかもしれない、と思いを馳せずにはいられない。

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【モテキ】四星半

監督・脚本:大根仁
原作:久保ミツロウ
出演:森山未來、長澤まさみ、麻生久美子、真木よう子、リリー・フランキー、他
製作国:日本
ひとこと感想:地味でありながら主役でなければならない。こんな無理難題を引き受けられる俳優さんは日本の若手では3人くらいしか思いつかない。目立たない草食系男子の主人公にモテ期がやってくるというコンセプトを聞いた時、森山未來さんを主役に選んだ人はなんてセンスがあるんだと思った。(都会的という要素も必要なので、本作に関しては加瀬亮さんや濱田岳さんよりも相応しいよね。)正面からやったら手垢がつきすぎて変わり映えのしない恋愛ものも、低恋愛偏差値男というところを切り口にすることで新鮮に映る。これをスピーディな演出と絶妙な音楽のチョイスで軽快に映像化する大根仁監督のセンスが抜群。テレビドラマ版も面白かったけど映画版はまた一段と進化していて、一周回ったところで今時の恋愛をきちんと描いてみせる案外正攻法なラブ・ストーリーなんじゃないかと思った。本作の長澤まさみさんの存在感は近作では出色。(俳優さんは1本当たり役があると流れを変えられるよね。)♪心変わりの相手は僕に決めなよ~、と『今夜はブギーバック』は相変わらず名曲だ。

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【ヤコブへの手紙】四つ星

監督:クラウス・ハロ
共同脚本:ヤーナ・マッコネン
出演:カーリナ・ハザード、ヘイッキ・ノウシアイネン、他
製作国:フィンランド
ひとこと感想:人生に懐疑的な元受刑囚の女性は自分のために祈る人がいてくれるということを知り、老齢の盲目の牧師は神が自分に使命を与えてくれていたという結論に至る。必ずしもキリスト教的ということではなく、人と人との繋がりについての普遍的な問い掛けを静かに発する誠実な映画だった。

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【指輪をはめたい】四つ星

監督・脚本:岩田ユキ
原作:伊藤たかみ
出演:山田孝之、小西真奈美、真木よう子、池脇千鶴、二階堂ふみ、他
製作国:日本
ひとこと感想:『指輪をはめたい』ってぇとRCサクセションを思い出すけどあまり関係ないようで。主人公は、小西真奈美さん、真木よう子さん、池脇千鶴さんが演じる三者三様の女性とよろしくしようとするサイテーな三股男だけど、コイツが自ら苦境に陥って翻弄される様子を見ていてもあまり嫌な気分にならない。こんなドイヒー男をコミカルに演じて愛すべき野郎に見せている山田孝之さんの力量をたっぷり堪能できる映画だ。

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【洋菓子店コアンドル】二つ星

監督・脚本:深川栄洋
共同脚本:いながききよたか、前田こうこ
出演:江口洋介、蒼井優、江口のりこ、他
製作国:日本
ひとこと感想:オサレな洋菓子店という浮ついたイメージを漠然と映像化したなれの果て。仕事なるものの描き方があまりにもいい加減で腹が立つ。演者がいくら頑張っても限界がある。申し訳ないけれど、見に行ったことを後悔した。

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【八日目の蝉】四星半

監督:成島出
脚本:奥寺佐渡子
原作:角田光代
出演:井上真央、永作博美、小池栄子、森口瑤子、田中哲司、余貴美子、劇団ひとり、他
製作国:日本
ひとこと感想:自分を騙していた不倫相手の子供を誘拐する。許されない犯罪であるという視点は明確であっても、その中で精一杯子供を愛していたという“母親”の感情は嘘じゃない。その愛情が紆余曲折を経ながらも受け継がれていく様子がきめ細かく的確に描かれているのが秀逸だと思った。しかし、苦しみながらもそれぞれの真実に到達しようともがく女達に較べて、目先の問題から逃げようとする男達の情けなさったらないわよねぇ。個人的には「普通の環境で育ちたかった」と叫ぶ小池栄子さん演じる主人公の幼なじみも心に残った。

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【ランゴ】四つ星

監督・原案:ゴア・ヴァービンスキー
脚本:ジョン・ローガン、ジェームズ・ウォード・バーキット(原案)
声の出演:ジョニー・デップ、他
(アニメーション)
製作国:アメリカ
ひとこと感想:ジョニー・デップ=カメレオン俳優ってギャグなのかしら !? 筋書きは若干スッキリしないけど、CGのクリーチャー達の出来がスバラしく、とにかく全編楽しめる。ゴア・ヴァービンスキー監督をちょっと見直した。

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【リアル・スティール】四つ星

監督:ショーン・レヴィ
脚本:ジョン・ゲイティンズ、ダン・ギルロイ(原案)、ジェレミー・レヴェン(原案)
原作:リチャード・マシスン
出演:ヒュー・ジャックマン、ダコタ・ゴヨ、エヴァンジェリン・リリー、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:ロボットにボクシングをさせるという世界で、そのロボットを買うために親権すら売り渡してしまう駄目駄目オヤジが、たまたま息子もロボット・ボクシング好きだったことから図らずも接近し……。無駄な描写が一切ない惚れ惚れするよなウェル・メイド。ロボットだけに日本的な意匠が混ざっているのも楽しー!見ても絶対に損しない一本です。

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【レア・エクスポーツ 囚われのサンタクロース】四つ星

監督・脚本:ヤルマリ・ヘランダー
出演:オンニ・トンミラ、ヨルマ・トンミラ、他
製作国:フィンランド
ひとこと感想:フィンランドの『珍しい輸出品』の“本当は恐いサンタクロース”!? 勿論フィクションなんだけど、アメリカがサンタクロースのイメージを勝手に作って広める以前の、ヨーロッパ古来の伝承の中での生のイメージに少し思いを馳せることができるかもしれない。みそっかすだった男の子がお父さんに認められるようになるちょっと成長譚でもあり、案外イイ話だったりして。

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【聯合艦隊司令長官 山本五十六】四つ星

監督:成島出
脚本:長谷川康夫、飯田健三郎
出演:役所広司、玉木宏、柄本明、柳葉敏郎、阿部寛、吉田栄作、椎名桔平、他
製作国:日本
ひとこと感想:第二次大戦ものとか概ね面白いと思った試しがないのだが、本作は戦争映画にしては凄くまともだなと思ったのは、くだらない戦闘シーンとかナルシスティックなヒロイズムとかではなく、山本五十六個人の人物像に焦点が当てられているからだろう。写真で見る山本五十六は役所広司さんには全然似ていないのだが、段々とダブって見えてきたから不思議。“戦争を終わらせることができる人”を失った大日本帝国は破滅に突き進んだということで、その姿が今の日本とダブって見えて仕方なかった。

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【ワイルド7】三つ星

監督:羽住英一郎
脚本:深沢正樹
原作:望月三起也
出演:瑛太、椎名桔平、丸山隆平、阿部力、深田恭子、中井貴一、他
製作国:日本
ひとこと感想:瑛太さんが出てるという一点のみで見に行って失敗。いろんな事情があるんだろうが、凶悪犯を処刑する権限を与えられた超法規的警察組織って、今のこの時代にこの映画を作る必然性がどこにあるんだろう?望月三起也氏の原作に思い入れがある人の感想はもしかして違うのかもしれないけど。

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【ワラライフ !!】四つ星

監督・脚本:木村祐一
共同脚本:木村祐一、井土紀州
出演:村上純(しずる)、香椎由宇、吉川晃司、鈴木杏樹、他
製作国:日本
ひとこと感想:この前後に心寒くなるような映画ばかりを見たせいか、人生の心温まる瞬間のみをエピソード的に繋ぎ合わせて一つのお話にしているこの映画の存在にほっとした。毒気がなさ過ぎるという批判もあるんだろうが、現実の人生が辛いことばかりであればこそ、こういう映画もあってもいいんじゃないかと思う。お笑いコンビのしずるの村上純さんの根っこの人の良さみたいなのが滲み出ていていい味を出していた。

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