Back Numbers : 映画ログ No.9



【インディラ】三星半
解説によると、この映画はインド映画の中でも、娯楽映画にシリアスな要素を持ち込んで表現しようとする最近の流れの一派に属するものなのだという。成程この映画では、娯楽の要素(分かり易い勧善懲悪の図式やミュージカルシーンなど)と社会問題(今に残るカースト制度の弊害)の提起、そして監督の次世代への祈り(女性や子供達に寄せる期待)までもが、若い女主人公のインディラを中心とした数々の美しい描写の中に、うまく融合され表現されている。これは実にお見事 ! な出来であるといえよう。監督のスハーシニさんは、元タミル語映画界のトップ女優だとのこと。う~む、大したものである。
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【悦楽共犯者】四つ星
前作の【ファウスト】辺りを観て、やっぱりヤン・シュワンクマイエルは下手に実写など撮らずにアニメ一辺倒の方がいいのではないかしらん ? などと勝手に思っていたのだが大間違いであった。妄想を見る人間の姿、また妄想の姿そのものが、実写とアニメの組み合わせで実に効果的に表現されていて秀逸である。これは近作中でも一番の出来なのではないだろうか。拍手 !
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【恋 極道】三星半
【鬼火】の原田芳雄さんが演じたのが火の玉ヤクザの骨太さなら、今回の奥田瑛二さんが演じたのは、同じヤクザの裏表の弱さや情けなさの部分であろう。夏生ゆうなさん、火野正平さん、松岡俊介さん、みんな最高 ! 望月六郎監督の創り出す空間では、何故あのように登場人物の一人一人が生々しく息づくのだろうか。映画を観たなぁ~という醍醐味をこれだけ堪能させてもらえて、私ゃひたすら幸せです。
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【コンタクト】三星半
宇宙のどこかに同胞はいるのか ? カール・セーガンの祈りの込められたテーマは素敵だし、お話も悪くないし、ジョディ・フォスターというこれ以上考えられないキャストを擁している(深い知性と感受性と孤独と勇気を併せ持つ女の科学者というのは、ハリウッドには滅多に無い役柄に違いない ! )のに、映画全体としてはどことなく厚みが感じられない印象になってしまったのは何故 ? が思うに、これだけ深みのある女主人公の造形に対して、相手役のマシュー・マコノヒーくんの役柄が薄っぺら過ぎたのが敗因だったのでは。科学への造詣も深い全米有数の神学者、というよりは青二才のおにーちゃんにしか見えず、釣り合いが取れてない。これなら下手に神サマ話なんて持ってこない方が、設定に説得力が出たんじゃないのかな ?
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【シャ乱Qの演歌の花道】二星半
シャ乱Qの皆様が平気でギャグをやってのけるのは、実は下積み時代に据わった根性の賜物であり、うーぴーは密かに支持している。同じアイドル映画(?)を作るなら、ここまでシャレのめして戴いた方が、いっそすがすがしくてよろしんじゃないかと思う。ただ、全体的に少し重たい感じがしたので、もう少しアップテンポな方が良かったんじゃないかなぁ ? 音楽の使い方にももうちょっと気をつけて戴きたかったような気もするし。それに、あの逃げの入ったラストはいかん。“演歌の花道”という題名なんだから、やっぱりそのセンをまっとうした方が潔かったんでないかい ?
【おまけ】 : 併映の映画、時間の関係でちょっとだけ見たんだけれど……安っぽいTVドラマといったふうな趣きで……う~ん、どうしてこんなんわざわざ作るのかなぁ ? 謎だ。
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【素晴らしき日】二星半
ミシェル・ファイファーとジョージ・クルーニーの主演、ということで実はこの映画、かなり以前から楽しみにしていたのだが(何で公開されないのよう ! と怒っていたのだが、確かにタイミング的には【バットマン&ロビン】直後の今がベストですな)、もっとしっとりとしたロマンチック・コメディを期待していたら、さにあらず。ケンカしながら仲良くなるという古典的なラブコメの筋書きに現代的な要素を加味しよう……という狙いだったのだろうが、“現代人の忙しさ”の演出が過度すぎて、最初から最後まで何だかガチャガチャと慌ただしく、つまらなくはなかったけど、見ていてすごく疲れてしまった。
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【フィフス・エレメント】四つ星
今までのリュック・ベッソン監督のイメージをそのまま持って行ったら面食らうかもしれないけど、これは確かにリュック・ベッソン以外の誰が創れる世界でもない。なんかあんまりいい前評判を聞かなかったのだけれども、これを軽佻浮薄と言うのなら、軽佻浮薄で何が悪い、と私は言いたい。凝りまくった美術に凝りまくった人物配置(ゲイリー・オールドマン、クリス・タッカー最高) ! またこのゴージャスかつひねくれた世界の主役を張れるのは、世界広しと言えどもブルース・ウィリスを置いて他にはいないだろう。しかし見終わった感想は「れ ? もう終わり ? 」折角これだけの世界を構築しておきながら、これだと確かに話があまりにも単純すぎて勿体なさ過ぎる !! 思うに、これが2時間7分ぽっちにカットしてあるっちゅうのは、全米公開向け仕様なんじゃないの ? これは絶対3時間くらいにして、もっといろんなエピソードを詰め込み、例えばブルース・ウィリスとミラ・ジョヴォビッチが絡むプロセスなどもじっくり見せてくれた方が数倍は面白いはず。ホンモノ志向の日本市場向けには最初から“完全版”を公開してくれい ! と言うことで、将来に絶対公開されるであろうバージョンへの期待を加味して、今回はこの星で。
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【二人が喋ってる。】四つ星
私が今まで観た日本語の映画の中で、これだけ“二人の喋り”をフィーチャーして、そのリズムそのものが心地よく響く映画って確かに無かったような。“二人で喋る”という以外では捉えられない関係性の描写にしろ、“笑いの神様”と“お笑いの神様”のシーンにしろ、一見コミカルなのに実は腰が抜けるほどディープな内容で仰天してしまった。犬童一心監督はこれ、計算して創っているんだよなぁ……こりゃ凄いわ。
併映の短編【金魚の一生】も、「金魚だからよく分からなかった」というセリフが何げに恐かった。では人間が後生大事に持っている記憶だって金魚のそれとどう違うのか、なんて考えてたら、実はこれ、宇宙的なスケール感を持つ作品だったりなんかして……。
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【ポストマン・ブルース】三星半
一歩間違えると安っぽくって嘘っぽいマンガチックなお話になってしまいそうだが、一旦引きずり込まれてしまうと最後まで乗せられていってしまうだけのパワーがあるし、独特のリリシズムで全体のトーンがうまくまとまっていて良かったと思う。でもこの終わり方はちょっと安易なのでは ? そんなことない ?
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【私たちが好きだったこと】三つ星
思えばは【きらきらひかる】も観ていない。うーぴーの親はアルコール依存症だったため、同年代くらいの女がアルコールに逃げるなんて安易なことをやっちゃってる設定が、どうしても解せなかったのだ。松岡錠司監督とはどぉ~も相性がよくないようである。今回のこの映画も、微妙な感情の振幅をきちんと表現しているという点からするときっとすごくよくできたいい映画なんだろうけど……物事を白黒はっきりさせるタチのには、このうだうだとした煮えきらなさを敢えて理解したいとは思えなかったんである。特に、ラスト近くでヒロインの一人が言ったセリフだけはちょっと耐えられなかったなぁ。“どうして私のこと力づくで止めてくれなかったの”だっけ ? てめぇの人生はてめぇで落とし前をつけるべきじゃないのか ? 他者に帰着させてる場合じゃないだろう、と思ってしまいましたです。
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