Back Numbers : No.10~よもやま話



山形に行って来ました !!

ぴ : つ、ついに行って来たぞぉ~山形 !!
う : 山形国際ドキュメンタリー映画祭'97ね。前々から行きたい行きたい言ってたもんねぇ。
ぴ : 昔、【1000年刻みの日時計】なんかを観て以来、日本にも凄い人がいるなぁ~ってんですっかり小川紳介監督のファンではあったんだけど、その後小川プロダクション製作の【映画の都】っていう映画を観てね、これが第一回の映画祭の様子のドキュメンタリーだったんだけど、もうそれ以来「絶対いつかは行ってやる~ !! 」って心に決めていたのよ。隔年開催で今回で5回目なんだけど、前回まではお金が無かったり仕事の関係で無理だったりしてね……苦節8年……ううっ。
メイン会場のあるaZ七日町ビル
メイン会場 う : そうかそうか。で、面白かった ?
ぴ : そりゃあもう !! もう何から何まで。
う : ほうほう。
ぴ : まぁ私ゃ独りで行ったもんで、いつも映画に行く時みたいに、ただひたすら映画観ていただけなんだけどね。本当は別に映画ばっかり見ていなくても、県内を観光したり温泉に入ったりするとか、もっと違った楽しみ方をしたっていいんだけどね。またゲストとして招かれて行ってたりしたら、これはいろんな人と会ってディスカッションなんか出来たりする場になるんだろうし、ボランティアとかで映画祭スタッフとして参加してたりしたらまた違った面白さがあるんだろうけど。
う : まぁそこは、お独りで1観客として行った訳だから……。
ぴ : でもそれで一つ面白いと思ったのは、これが映画を観る段になったら、ゲストもスタッフも一般観客もプレスも何も無いってこと。各自観たいプログラムがあったらその会場に行って、みんな同じ席に座って観る、ってシンプル極まりないもんだから、同じ映画を観てるんだって実感がものすごくあるし、何とも言えない一体感が自ずと出てくるんだな、これが。
う : へー。
ぴ : それにあんまり大きくない街だから、ほとんどの上映会場が15分くらいで歩いて行ける範囲内にあってね。首に掛けてる入場パスの色で大体どういう人だか分かるんだけど、映画の監督さんも審査員の人も映画祭スタッフの人も、みんなその辺ほてほて歩いてたり、上映会場のロビーで同じ映画を待ってたりするんだよー。
う : じゃあ、気に入った映画の監督さんつかまえて握手とか求めたりなんかして……
ぴ : 御迷惑じゃない範囲内なら、映画の感想とか言ったりしてもいいんじゃないの ? 言葉さえ通じればね。
う : うう、その問題があったか……。でも、映画を創る人も観る人もそれを送る人も、みんな文字通りほんとに近い距離にいる訳だね ? 凄いねぇ。
ぴ : うん、それこそ映画の原点、っていう感じがするよね。きっと小川監督が思い描いたような……
う : はー。さすがに世界的にも評価されている老舗の映画祭は違いまんな~。
“アジア千波万波”上映会場の「ミューズ」
アジア特集館 ぴ : あと一つ思ったのがね、山形の人って見る目が肥えてるというか、観客としてのレベルがものすごく高いんじゃないかと。
う : へぇ、それはどういうこと ?
ぴ : 何しろたくさんの人が観に来てるんだもの ! 勿論、観客の中には私みたいに余所から来てる人も多いはずだけど、例えばボランティア・スタッフの人達なんかは明らかに地元の人が多いだろうしさぁ、
う : ボランティアの人達も映画観に来てるんだぁ。
ぴ : 当然でしょう。あと、こりゃ明らかに学校帰りだなっていう制服の子とか、子供連れのお父さんお母さんとか……オフィシャルな託児所も設けられているしね。他に例えば、夕方から深夜に渡るような上映会で、終わって外に出てみたら自転車で帰る人達がたくさんいたりしてね。
う : はー。
ぴ : はっきり言ってドキュメンタリーなんて、ごく一般的な認識からすればちょっと取っつき難いジャンルじゃん ? それなのに皆映画を楽しんでるのが、一緒に観てると肌で分かるんだよねぇ……こりゃちょっと凄いと思った。
う : どうしてまたそんなに ? やっぱり映画祭も何回もやってるから、自ずと興味も湧いてきたってことかなぁ ?
ぴ : それもあるかもしれないけど、どうも山形って、もともと映画に対する関心が相当高い所みたいよ ?
う : と言いますと ?
ぴ : まず山形って、人口25万人の所に、映画館が13もあるんだってよ ! まぁ2件はピンク系みたいだけど、それにしたってすごい数だよね !
う : じゅ、13。それはすごい。
ぴ : それで、いわゆる単館系・アート系の映画も普段から相当やってるみたい。映画祭でも会場の一つになっている「フォーラム」っていう映画館があるんだけど、ここはもともと山形にあった自主上映サークルが発展して出来たところみたいでね、系列の「ヌーベルF」って映画館と併せて4館あるから、資金稼ぎのためにちょっとメジャーっぽいものもやりながら、単館系のものをがんがん掛けているという……。館内に置いてあったチラシをちょっと見てみたんだけど、何かもう、東京とほとんどタイムラグがないような作品も少なくないんだよね。
上映会場の一つ「フォーラム」
フォーラム う : へぇぇ……
ぴ : それで月一回、一般の人も交えた会議をやって上映プログラムを決めているんだって。他にも、要望があればいろいろな上映会のお手伝いとかもしてくれるとか。
う : へぇ、正に、地域に根ざした活動をしてる訳やね ?
ぴ : そう。そりゃ山形に住んでる人の全員がいつもいつも映画を見に行ってるって訳ではないにしても、やっぱりこういう映画館があって平生から地道にやっているとね、一般の人達の映画に対する関心も自ずと違って来るんじゃないかという……。
う : そぉだよねぇ。
ぴ : 私は今まで山形映画祭は、小川紳介がいるからこそ成立した映画祭だとばかり思っていたんだけどね、確かに、小川紳介がいなければこういう形で映画祭が出来たかどうかは分かんないけども、それが広い範囲での理解を得て市民レベルで支えられることがなければ、ここまで成功していたかどうかは分かんなかったよなぁと。そう言えばそもそも小川紳介だって、かつて山形での映画の上映会がきっかけで木村迪夫さんて詩人の方と知り合って、それで山形に住み着くことになった筈だよねぇ。
う : あ、そうなの ?
ぴ : ボランティアの人達だって、見てると若い人もおじさまもおばさまも、いろんな人がいるんだけど、皆、本当にこの映画祭の意義をよく分かってて、喜んでやっているっていう感じが滲み出ているの。
う : あー、そこら辺が、某東京国際映画祭なんかと大きく違っていると ?
ぴ : 某東京国際は参加している人の顔が全~然見えないし、ボランティアの話なんて聞いたこともない。お上も財界もいわゆる大手の映画会社も絡んでいるのかどうか知らないけど、いかにも大衆不在のハコだけ大きなイベントって感じで、なんかこう、全然そそられるものがないでしょう ? 中身的にも全然特別なものも無いし。小松沢(陽一)さんがやってるファンタ(スティック映画祭)だけはかろうじて別だけどさぁ。
う : 日本の大手の映画会社って、そもそも観客のことなんてまるで考えてないじゃない。その体質までよく表れちゃってるって感じだよね。
ぴ : 山形の人達が、いろんなスピーチやら配布物やらで「山形は映画の都」ってフレーズを使っているのがとても誇らしげなんだよね。だって山形は掛け値無しの本物の【映画の都】なんだもの。本当の自負に裏打ちされてるっていうか。
う : 文化が根付くって本来そんなふうなことを言うんだろうね。てなところでおあとがよろしいようで。
ぴ : ところでさぁっちゃん、小川紳介監督の映画って何か見たことあるの ?
う : いゃぁ~、それがまだ一つも無いんですけど……。
ぴ : まぁビデオなんかもなかなか無さそうで難しいかもしれないけどさ、機会があったら【1000年刻み…】は是非とも観てくれたまへ。私は昔あれを観た時に、日本てどういう国なんだろうとか、日本に生きて映画を撮ったり観たりすることにはどんな意味があるのだろうとか、すごく考えてしまった。
う : へへ~っ。そのうち必ずや。

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