Back Numbers : No.17~What else ?



おいでませ、ディレクTV !

うーぴーはイナカモノである。そして、田舎にはあまり娯楽が存在しない。当然のことながら、映画館も存在する訳がない※1。ビデオなんてメディアだってまだ一般家庭には存在していなかった頃のお話、勢い、うーぴーは昔から超のつく“テレビっ子”だったのである。かつて「一億総白痴化」と言ったのは何という人だったか。しかしその白痴の時代の真っ只中に生まれてきた私達は、一体何をどうすればよかったというのだ ? おかげで私達は、つぎはぎだらけの断片的な情報の海を中途半端に泳ぐことしか能の無い、「ホイホイ人間」※2と相成るしかなかったのである。ちゃんちゃん。

さて、そんなうーぴーのもとに先日、ついにディレクTVがやって来たのであった ! 何でパーフェクTVじゃなくてディレクTVなの ? と言うと、セイコちゃんよりシュワちゃんの方が好きだから、ではなくて※3、実はうーぴーの家には以前からCSアナログ放送(衛星放送の一種)が導入されていたのが、今回、CSデジタル放送の開始に伴って、無料でディレクTVの方に移行してもらえることになったからなのである。うらやましい ? しかし、先年CSを導入する際には、ボーナス1回分がふっとぶくらいの投資はしているんだから。新たに投資するだけの財力があるでなし、アナログ放送廃止でこれまでの機械が使えなくなったらハイさよ~なら、なんてそりゃちょっと殺生でないかい ? と思ってたところなのだ。日本のCS放送の普及には早い時期から貢献してきたつもりなんだから、このくらいのサービスはしてくれてもバチは当たらんだろう。ちなみに、アナログCS導入当時は、電気屋さんの人にすら「BS100軒につきCSは1軒くらいですよ」と言われたもんである。(だってどーしてもCNNとMTVと映画専門のスター・チャンネルが見たかったんだもん ! )ほんの5~6年前の話なのだが、あの頃、日本でも数年後にデジタル衛星放送が本格的に始まるなんて、一体どれくらいの数の人が予想していたことだろう。時代が変わるのなんて、本当にあっちゅう間である。

ところで、いくら今まで衛星アナログ放送を見ていたとはいえ、そのチャンネル数はやはり1ケタの範囲内に留まっていた。地上波やBSを併せたって20局がせいぜいである。それでもチャンネルは多いと思っていたのに、今回一挙に、50局近くを新たに視聴出来ることになってしまったのだ ! (ちなみにパーフェクTVには100チャンネルくらいあるらしい。でも逆に、ディレクTVにしかないチャンネルもあるみたいだが。)チャンネル選びの幅が一挙に今までの3倍くらいになってしまう体験。これは、一体どう説明すればいいものだろうか。
とにかく番組はたくさんある。そして、新旧取り混ぜて、あぁこんなのが ! なんてものまでいろいろな内容のものが掛かっている※4。うーぴーがいつもよく見ているのは、料理のチャンネル、ニュースのチャンネル、音楽チャンネル、そして当然、映画のチャンネルなど。あとはゲーム専門のチャンネルでもあれば完璧かしら。他にも、趣味物のチャンネル、教育のチャンネル、スポーツチャンネルなど様々なものがある。(また、アダルト関連の番組もやはり少なくない。)
多チャンネルなんてものが海の向こうのお話だった頃には、日本にそんな時代がやって来ても手に余るだけなのではないか、という見方がかなり多勢を占めていたように思う。日本人は創造する能力に乏しいから、そんなにたくさんの番組枠を埋められないだろうと考えられていたのである。しかし今まで見るところ、そんな心配も杞憂なのではないかという気がしてくる。主に海外から番組を買ってくるチャンネルはともかく、明らかに国内で製作されていると見受けられる番組でも、悪くないものも多いのだ。勿論、現状では放送枠がフル稼動しているとは考えにくいし、明らかに内容が不足していて穴埋めプログラムをしょっちゅう流していると見受けられる局も少なくはない。しかし、今後放送内容を充実させていけない局は、遅かれ早かれ、間違いなく淘汰されていくことだろう。それよりも、今まで地上波中心で枠数が限られていた放送業界で、マスの視聴者に遡及するというお題目で否応無しに削られてきた部分に、今後の衛星波の世界では光を当てざるを得なくなってきそうなことの方が、私には断然楽しみなのである。ある特定の目的や一部の趣味的な世界のために奉仕させることこそに、一見無造作に多すぎるとも思われる多チャンネル放送の命脈が存在していると考えられるから、今後、個性的なチャンネルはいくらでも出てくる可能性があるのではないかと手前勝手に踏んでいるし、実際その兆候は見受けられるような気がするのである。
私としては単純な話、映画関連の番組が面白くなればそれでいい。もっともっとディープな情報番組や、なかなか観ることが難しかった古今東西の旧作、知られざる名作などがばんばん観られるようになればよい。それでもって、自分の家でもますます充実したシネマ・ライフが送れるようになりさえすれば、万万歳なのである。(ついでに映画業界でも、衛星放送の活性化が何らかの形で刺激になってくれればもっと好ましいことは言うまでもないのだが。)※5

しかしそうなると、うーぴーのテレビっ子ぶりにはますます拍車が掛かってきて、その「ホイホイ人間」ぶりにもますます磨きが掛かってしまいそうなのがコワくもあるのだ。今後ますます情報という名前のオバケが氾濫していきそうな中、与えられるものに振り回されることなく自分が本当に求めるものを選び取っていく能力は、今まで以上に必要とされるようになるに違いない。しかし、現状でもそんなこと全然出来ちゃいないというのに、一体どうするつもりなのだろうか ? こんなでは、デジタル社会の更なる奴隷になってしまうだけ、なんて未来も充分考えられそうなんである。
さあ、こんな私達に、果たして明るい明日はやってくるのでしょうかしら ?


注:
※1:は上京するまで、というかほとんど二十歳過ぎるまで、世の中に映画というメディアが存在すること自体を知らなかったといっても過言ではない。勿論、“映画”という言葉くらいは聞いたことはあったにせよ、そもそもフィルムというものの存在を知らなかったし、そのフィルムを映写機というものでスクリーンに投影してお客さんに見せるのが映画館という場所なのだ、ということも知らなかった(でも県庁所在地とかにある映画館に行ったことはある筈なんだけどな)。そういうものを作ったり見せたりすることを職業にしている人すら存在する、ということも勿論知る由もなかったし、テレビの『・・洋画劇場』といった番組は実はそういうものを放送していたのだ、ということも、やはり知らなかったのである。より年の若いよりはましだったにせよ、事情は似たり寄ったりであった。これは、うーぴーが生まれ育った家庭に映画を見るという文化(or習慣)自体が存在しなかったということに由来すると考えられる。
※2:一ツ橋大学の南博教授という方の命名。テレビがお茶の間に進出し始め、そろそろ産業としての映画が斜陽化しだした1960年前後当時の文献に載っていたものである。思考様式がテレビ型になってしまい、じっくり腰を据えて物事に取り組めず、目の前に差し出されたものをホイホイと消化していくことしか出来なくなってしまった人間のことを指す。正に今のうーぴーをあらわすよーな言葉だな。はこの表現にとってもハマってしまってて、しょっちゅう使わせて戴いております。
※3:そういえば、シュワちゃんが“アメリカーン・エンターテイメーント ! ”って叫ぶCMは見掛けなくなった。よっぽど評判が芳しくなかったのだろう。だって日本の人は、アメリカもんの娯楽オンリーでやっていけるようなメンタリティはやっぱり持ち併せちゃいないもんねぇ(実際そういう放送内容でもないんだし)。あぁよかったぁ。
※4:ちなみに、デジタル放送を見ていてうーぴーがこれまで特に感動した瞬間のベスト3と言えば、
1)一番最初につけた番組で、いきなりフランス語のラップが流れてきた時
2)タイムボカン・シリーズで一番好きだったゼンダマンの再放送にお目に掛かれた時
3)ごく最近、ダムタイプ(の大好きなパフォーマンス・グループ)の公演が放送されているのを見掛けた時
であった ! パチパチ !!
※5:映画館に掛かる映画とテレビ、あるいはビデオとの関係について述べようとすると長くなってしまうので、それはまたの機会に改めたいと思う。


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