Back Numbers : No.45~雑想ノート



うーぴーの選ぶ`00ベスト20映画


【2000年度ベスト20】

1.【花を摘む少女と虫を殺す少女】
2.【顔】
3.【最後通告】
4.【インサイダー】
5.【スリ】
6.【金髪の草原】
7.【サイダーハウス・ルール】
8.【あの子を探して】
9.【オール・アバウト・マイ・マザー】
10.【バトル・ロワイアル】
11.【ストレイト・ストーリー】
12.【アメリカン・ビューティー】
13.【トイ・ストーリー2】
14.【マグノリア】
15.【BULLET BALLET バレット・バレエ】
16.【ヤンヤン 夏の想い出】
17.【サウスパーク<無修正映画版>】
18.【フルスタリョフ、車を ! 】
19.【シビル・アクション】
20.【式日】
20.【ドグマ】
20.【DEAD OR ALIVE2/逃亡者】

(次点)
【ペパーミント・キャンディー】
【ビューティフル・ピープル】


年間ベスト映画のリストを作る時にはいつも、本誌に載せた時のお星様の数にはそれほどこだわらないことにしている。昨年の本誌でリバイバル以外で満点をつけたのは【花を摘む少女と虫を殺す少女】だけだったのだが、この映画の奥ゆかしさは、どちらかというと賑々しく1位なんぞにするよりは、ベストテンのどこかにそっと忍び込ませたりする方がふさわしいような気はした。でもそうすると1位は【顔】か何かってことになる ? う~むそれじゃキネ旬と同じになって芸がないじゃん。ということで今回は【花虫】をそのまま1位に据えてみたりしたのだが、いかがなものだろうか ? ちなみに、日本人監督の映画がワンツーフィニッシュを飾るのは、当ホームページを始めて以来初めてのことである。おめでたいのう。


【各賞】


リバイバル大賞……【愛のコリーダ2000】
リバイバル特別賞……【ストップ・メイキング・センス】【ハネムーン・キラーズ】
リバイバルと呼ばないで大賞……【シャフト】【新・仁義なき戦い。】
ヴィデオ・ムービー大賞……【ブック・オブ・ライフ】【通貨と金髪】【東京ゴミ女】【絵里に首ったけ】【歯科医】
アジアって広いで賞……【パンと植木鉢】【サイクリスト】【フォーエバー・フィーバー】【ルナ・パパ】【アシュラ】【6ixtynine9<シックスティナイン>】
イギリスから来たで賞……【イギリスから来た男】【アンジェラの灰】(アラン・パーカー監督の根っこにあったのはロンドンの貧しい下町の記憶だそうですから……)
ヨーロッパの狂気大賞……【カノン】【フェリシアの旅】【ミラクル・ペティント】
ヨーロッパの因業大賞……【ダンサー・イン・ザ・ダーク】(だってこりゃどこを切ってもヨーロッパの匂いしかしないんだもん。)
ヨーロッパ鉄道旅行大賞……【ハンネス・列車の旅】
エクセレントドラマ大賞……【ミフネ】
働けど、働けどなお我が暮らし楽にならざりじっと手を見る大賞……【ロゼッタ】
中年の逡巡大賞……【スティル・クレイジー】【ノー・ルッキング・バック】
若者の逡巡大賞……【クラークス】
First Love大賞……【はつ恋】【ヒマラヤ杉に降る雪】
アトムの子ども大賞……【ジュブナイル】
おたくの星大賞……【ブリスター ! 】
どっこい生きてる時代劇大賞……【どら平太】【雨あがる】
麗しの70年代大賞……【サマー・オブ・サム】
最早お笑いではないで賞……【マン・オン・ザ・ムーン】
親の因果が子に報い大賞……【白い刻印】
明日なき暴走大賞……【HYSTERIC】
アクションムービー大賞……【ロミオ・マスト・ダイ】【TAXi2】
ベストサウンドトラック賞……【パリの確率】
ベストテーマ曲賞……『A DREAM GOES ON FOREVER』(by Todd Rundgren) from 【ヴァージン・スーサイズ】(去年この曲をうーぴーの二人でのべ300回以上は聞いたと思うので。)


ちょっとコレ、我ながら数が多すぎだよなぁ。でも何だか今年は、映画の出来のわりには世間的な注目が今一つ、といった作品がどうも例年以上に多かったような気がして、ついついたくさん選んでしまったのだ。まぁ世紀の変わり目なんだし、大盤振舞いってことで大目に見てやって下さい。


でもどうして“出来のわりには注目が……”といった映画がやたらと増殖してしまったのだろう ? 長年映画を見すぎたせいで個人的な好みが自分にしか通用しない妙な方向へ特化されるようになってしまったから ? トシを取ってしまって若い人向け中心の世間の潮流とずれるようになり始めたから ? ……正確な理由はちゃんと分析しきれていないのだけれど、最近一つ感じられてしょうがないのが、配給・宣伝会社の人達の中に、自分で扱っている筈の“商品”の良いところや本質を実は把握しきれていないまま、最早誰が始めたかすらも分からないような決まり切ったセオリーに則ったルーティンワークをこなすこと以上のことは考えていない、悪い意味での会社人間的な人が増えているのではなかろうか、といった危惧である。その映画の良さを伝えて歩くエヴァンジェリストにならなければならないはずの人達がそれでは、他にも映画は山のようにあることだし、その映画への注目度がその分落ちるのは必至のことだろう。勿論、映画への豊かな感性を保持し続け、それをきっちり仕事に生かして手堅い業績を収めている会社も少なくないとは思うのだけど……。あと一つなんだかなぁと思っているのが、市場主義経済の論理をそのまま作品の良し悪しを判定する基準として流通させようとする向きが以前よりもあからさまになってきたような気がすることだ。市場の公正な見えざる力の御加護によりいいものは必ず売れるはず、なんてことが信じられるほど、最早誰しもおめでたくはない。マスを相手にモノを売るためには宣伝なるものが不可欠なのであり、そこにはマスコミと企業と世論と、それを構成しているはずのそれぞれの個人が複雑に介在する。その辺りについてはいつかもっと詳細に考察してみる機会があればと思うが、ごく一般的に言うならば、宣伝しやすくてたくさんの人に遡及しやすいものが金が儲かるから“正しい”という流れになり易く、それなら単純明快なものの方が遡及しやすくて有利、といった傾向になり易いのだ。無論、一見難しいものをうまく遡及させることによって独自のユニークな地歩を確立している向きも一方には存在するのだけれど……。単純明快なものはあっていいとは思う。ただ、表現に関する“商品”に関して言えば、世の中や人生そのものが不可解なのを映し込むように、単純明快さだけで総てが説明できてしまうほどシンプルではないってところが問題なのだ。映画が繊細な複雑さや多様性を映し出せなくなり、ステレオタイプの組み合わせを延々と繰り返すだけのメディアに堕してしまったとしたら、私にはもう映画を見ることの意味は一切見出せなくなってしまうだろう。でも、昔想像していたよりもずっとずる賢くて周到かもしれないビッグ・ブラザーが世界をどんどん侵食してくるのに、太刀打ちすることなんて果たして出来るのだろうか ?
それでも、世間様だの大衆だのを分解すると詰まるところは個人に行き当たるのだから、ならばまずは、個人が原初的に思ったことを素直に形にして示してみるしかあるまい。例えば、評論することの原点はそういった作業の中にあるのではないかと、私自身は思っている。だから、それが世間様の思惑といかに隔たっているかもしれなくても、私は今年もまた自分の第六感の趣くがままに好き勝手なことを書き続けることだろう。個人個人のそういった行動はもしかして大海原に水を一滴注ぐくらいの虚しい作業なのかもしれなくても、自分の判断力と自主性を持って行われたそういった行動の集積の中にしか真の“世論”は存在しないはずだと思っているから。ということで今年は、心からの敬意を込めまして【ゴッド・アンド・モンスター】に年間の特別賞をお贈りしたいと思います

しかし、最早本当に自分の気に入った面白いものを探し当てたいと思ったら、究極的には自らの足で世界中をあちこち飛び回らなければしょうがないのかもしれないね。そんな時間とお金があればの、夢のようなお話ではありますが。


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