今月のお星様〜こんな映画を見た



このコーナーでは、東京近辺で上映した映画の中から実際に観たもののみをピックアップして、5段階評価による批評と感想を加えてあります。基本的には、封切りものか初見のリバイバルものを中心にしてあります。
ただしこれは、あくまでもうーぴーの好き嫌いに基づく評価でしかありませんので、皆様が映画を御覧になる時の御参考程度にお考えになって戴ければ幸いです。



2015年に見た全映画です。(や、やっと書けた……。)

【愛して飲んで歌って】三つ星

監督:アラン・レネ
脚本:ローラン・エルビエ
原作:アラン・エイクボーン
出演:サビーヌ・アゼマ、イッポリト・ジラルド、カロリーヌ・シオル、ミシェル・ヴュイエルモーズ、サンドリーヌ・キベルラン、アンドレ・デュソリエ
製作国:フランス
ひとこと感想:戯曲を原作とするアラン・レネ御大の遺作ということなのだが、老境に差し掛かっている三組の男女が織り成す軽妙洒脱な人間模様……って、ああもう全然興味が湧かない。アラン・レネ御大ほど人生のステージが上がっていないからなんでしょうかね。すみません。

【愛を語れば変態ですか】二つ星

監督・脚本:福原充則
出演:黒川芽以、野間口徹、今野浩喜(キングオブコメディ)、栩原楽人、川合正悟(チャンカワイ(Wエンジン))、永島敏行
製作国:日本
ひとこと感想:やることやっときながら「違うのよ」とか言い、少し責められると逆ギレするような女とは人生の上で一切関わり合いになりたくない。それは愛じゃなくて単なる性欲の正当化でしょ?そうじゃなければ歪んだ自己承認欲求?それでもいいとか言う男性諸氏はご苦労様。私の視界に入らない場所で勝手にやっとくれ。申し訳ないけど言わせてもらう。なんでこんな話につきあわなきゃならんのだ。

【愛を積むひと】四つ星

監督・脚本:朝原雄三
共同脚本:福田卓郎
原作:エドワード・ムーニー・Jr.
出演:佐藤浩市、樋口可南子、北川景子、野村周平、杉咲花、柄本明、森崎博之、佐戸井けん太、岡田義徳、吉田羊、他
製作国:日本
ひとこと感想:偏屈な男が、苦労を掛けた妻と北海道に移住→妻に先立たれ呆然→妻が生前完成を楽しみにしていた石積みの塀作りに再び着手する、といった流れの中で、関わり合う人達との交流を深め、ついでに長年仲違いしていた娘とも関係を修復する、といった話。ベタといえばベタなのだが、演出も、佐藤浩市さんや樋口可南子さんを始めとする役者さん達の演技も抑制が効いていて、北海道の美しい景色とも相まって、しみじみいい話になっていた。ただ、作中で何通も発掘される亡くなった妻から夫へのエールを送る手紙は、こんなに千里眼みたいな深読み能力のある奥さんってあまりにも男性の勝手な理想に過ぎるというか気持ち悪いというか、現実的にはちょっとありえないだろうなぁ、とは思った。

【アクトレス 女たちの舞台】四つ星

監督・脚本:オリヴィエ・アサイヤス
出演:ジュリエット・ビノシュ、クリステン・スチュワート、クロエ・グレース・モレッツ、他
製作国:フランス/スイス/ドイツ/アメリカ/ベルギー
ひとこと感想:スイスの山奥の高級リゾート地を舞台に、盛りを過ぎた大女優が、かつて演じた当たり役を若い女優に譲って脇役を演じるよう依頼され葛藤する様を描く。ジュリエット・ビノシュにこんな役を演じさせるなんてそもそもエグいけど、ジュリエット・ビノシュが女優を演じるというエグさを、オリヴィエ・アサイヤス監督もビノシュ本人もよく分かってて確信犯でやっているところがますますエグい。やっぱりヨーロッパって恐ろしいところだ、と改めて思った。

【アゲイン 28年目の甲子園】四星半

監督・脚本:大森寿美男
原作:重松清
出演:中井貴一、波瑠、柳葉敏郎、和久井映見、太賀、工藤阿須加、門脇麦、村木仁、堀内敬子、西岡コ馬、他
製作国:日本
ひとこと感想:大森寿美男さんというと大変高名な脚本家なのだが、ご自身で監督をなさった前作の【風が強く吹いている】がかなりの名作だったので、野球という題材はかなり気が進まなかったけど見に行ってみた。世の中には「マスターズ甲子園」という、元高校球児達がエントリーして戦う大会があるっていうこと自体を知らなかったのだが、このマスターズ甲子園に青春の禍根を重ね合わせて描いた脚本がお見事の一言。昔の傷跡は大概は癒やされることもなく心の奥底に封印されていくだけだけれど、お互いに歳月を重ねてきたからこそ受け入れられるようになることもある。このような形で清算されるストーリーは、年月の重さやそれを取り戻すことの難しさを実際に知っている中高年だからこそその価値が分かる大人のお伽噺だ。ということで、本作は、中高年の皆様にこそ是非とも見て戴きたい。勿論若い人達にも見てもらっても構わないけれど。

【明烏 あけがらす】二つ星

監督・脚本:福田雄一
出演:菅田将暉、城田優、若葉竜也、ムロツヨシ、吉岡里帆、柿澤勇人、新井浩文、佐藤二朗、他
製作国:日本
ひとこと感想:この展開は戴けないな〜。皆で口裏合わせてるって普通最初に思うでしょ?だったら普通、金策をどうこうする前に、皆をもっと問い詰めたりするでしょ?これは余りにもお話のためのお話に過ぎるというか、嘘くさすぎてついていけないし、後で辻褄合わせをされても余計に白けてしまうだけなのだが。おまけに、あの女の子が全然可愛くないので、全然心が動かないし。福田雄一監督がこういう“ゆるくだらない”作風なのは分かっているつもりだったけど、本作はちょっとやりすぎだし、やっぱり私には合わないのかも知れないと思い始めた。

【アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生】四つ星

監督:リオ・プライオプライト
(ドキュメンタリー)
製作国:アメリカ
ひとこと感想:ニューヨーク在住の60オーバーから最高90オーバーまでの7人のマダム達のファッションと人生のスタイルを描き出す。その名も「Advance Style」というブログが元ネタになっており、写真集も出ているそうなのだが、どのマダムもまぁカラフルで個性的でカッコいいったら。私自身は着るという行為にとんと興味がなく、服にはまぁお金を掛けて来なかったのだが(その分映画に金掛けてきたので……)、このマダム達にとっては服を着ること自体がアートであり生き様であり、そこには幾多の人生の荒波を乗り越えてきたことへの誇りと自信が反映されているのだということがよく分かった。

【あなたにゐてほしい Soar】四つ星

監督・脚本:原將人
共同脚本:今出川伊太郎
出演:観音崎まおり、他
製作国:日本
ひとこと感想:戦地に行った恋人をいつまでも待っている山奥の村のヒロインが、かつての恋人の願い通り、村にアンテナを引いてテレビを準備しようとする。実際、昔の山間部などでは、山の上などに共同でアンテナを建て、テレビの電波のエリアを少しずつ増やす、ということが行われていたらしい。戦後、天皇制に取って代わったのがテレビだったというのは原將人監督ならではの面白い指摘だった。また、画面にもやはり独特の味わいがあり、映画を見ながら画面をきれいと思ったのはかなり久しぶりな気がした。正直、100%理解したかと言われれば全く心許ないが、その独特な印象がいつまでも残り続けるだろうと思った。

【あの頃エッフェル塔の下で】四つ星

監督・脚本:アルノー・デプレシャン
共同脚本:ジュリー・ペール
出演:カンタン・ドルメール、ルー・ロワ=ルコリネ、マチュー・アマルリック、他
製作国:フランス
ひとこと感想:若かりし頃の恋の思い出は美しく見える……のかもしれない。例え実際には、お互いのエゴをぶつけ合い、お互いに対する虚像を喰い潰し合っているだけなのかもしれなくても。シワい話である。

【アメリカン・スナイパー】四つ星

監督:クリント・イーストウッド
脚本:ジェイソン・ホール
原作:クリス・カイル
出演:ブラッドリー・クーパー、シエナ・ミラー、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:この映画はやっぱり問題作なのではないだろうか。これは反戦映画なのか?と言われると違う気もするし、ならばよくあるタイプの戦争万歳アメリカ万歳映画なのか?と言われるとそれも違う気がする。本作は、このクリス・カイル氏という実在したスナイパーの心の中で起こっていたのではないかと思われることをおそらくかなり忠実に再現して、言ってしまえばそれしか描いていないのだ。父親からマチズモ的な薫陶を受けて育ち、国を守りたい一心で軍に志願し、家族や同胞を守るためと自分に言い聞かせながら引き金を引き続けた。けれど、殺した相手には子供や女性もいれば、自分と同じように家族や同胞を守るために引き金を引くスナイパーがいることも目の当たりにしてしまい、起こってしまったでのあろう心の動揺の辻褄をどこかで合わせなければならず、毒に蝕まれるように戦うことに蝕まれていった。彼が戦場に戻りたがったのは、変質してしまった彼の精神状態は、一般社会より狂った戦場の方が馴染んだからではないか。クリント・イーストウッド監督は、主人公に起こったことを悲劇的だと捉えてはいても、戦争やアメリカという国が戦争をする大義名分や主人公の愛国心は否定も肯定もしておらず、だからこそ、映画を見た人は、自分が読み取りたいテーマをある程度好きな形で読み取ることができるのだろう。それはどれも正解なのかもしれないし、どれも正解ではないのかもしれない。

【アリスのままで】四つ星

監督・脚本:リチャード・グラッツァー、ウォッシュ・ウェストモアランド
原作:リサ・ジェノヴァ
出演:ジュリアン・ムーア、アレック・ボールドウィン、クリステン・スチュワート、ケイト・ボスワース、ハンター・パリッシュ、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:若年性アルツハイマーと言えば渡辺謙さん主演の【明日の記憶】でも描かれていたが、やっぱりどう転んでも辛い話にならざるを得ない。自分の知能がままならなくなるなんてどんなホラーより恐ろしいし、ジュリアン・ムーアさん演じる本作の主人公の大学教授のように、仕事の上でもまだまだキャリアを積みたいような人であれば、その無念さはいかほどのものか。
ただ、本作で個人的により興味深かったのは、主人公の病が進行してからのエピソードのいくつかだ。【明日の記憶】では妻が滅私奉公をするように夫の面倒を見ていて、それはそれでどうかと思ったが、本作の夫は、病気になった妻の面倒は全て子供に押し付けて、自分のキャリアのために街を離れてしまう。妻が住み慣れた街を離れたがらなかったこともあり、介護のためにはお金も必要だとは思うけど、キャリアをランクダウンさせてでも妻の側にいるという選択肢はなかったのか。そして、母の介護を押し付けられた俳優志望の子供は、実は内心で大卒未満のキャリアを見下していた母親の本音に直面することになる。病気の母親相手では既にまともに反論する余地もなく、それでも母親を愛しているから飲み込まざるを得なかった子供の姿が切なかった。それでも主人公が「It's about love」(これは愛についての物語ね)と言うラストには、本質的には愛に満ちた人間であった主人公の人格の奥底の部分がまだ保たれていることが反映されているようで、少しだけ救いを感じられた。この主人公のジュリアン・ムーアさんがとにかくあまりにも上手くて素晴らしく、それだけでも本作は十分に見る価値があると思った。

【アルプス 天空の交響曲(シンフォニー)】四つ星

監督:ピーター・バーデーレ、セバスチャン・リンデマン
日本語ナレーション:小林聡美
(ドキュメンタリー)
製作国:ドイツ
ひとこと感想:スイス、オーストリア、フランス、イタリア、ドイツなどのアルプスの7ヵ国の各地を空撮。アルプスは、雄大な自然の中に、モンブラン、マッターホルン、アイガー北壁、山岳鉄道などの有名なスポットだけでなく、川や湖や峡谷や氷河、農地や酪農地や鉱山などもあり、登山、スポーツ、観光、リゾートなどの場所であるのみならず、農業、酪農業、鉱業などを営む生活の場でもあったりする。アルプスにはヨーロッパ文化の様々な側面が存在していて、その真髄が詰まっているのだ、ということがよく分かった。

【アレノ】三つ星

監督・脚本:越川道夫
原案:エミール・ゾラ『テレーズ・ラカン』
出演:山田真歩、渋川清彦、川口覚、内田淳子、他
製作国:日本
ひとこと感想:妻とその愛人が、旦那を殺した後に、そのしょうもなさに絶望してしまう話、かな?山田真歩さんと渋川清彦さんをキャスティングをした人の慧眼には感服するし、ベタベタしないクールな描写はいいけれど、残念ながら、この手前勝手な二人の心情にはあまり降りていけなかったかもしれない。今度は二人のコメディとか見てみたいかもしれないなぁ。

【あん】四星半

監督・脚本:河瀬直美
原作:ドリアン助川
出演:樹木希林、永瀬正敏、内田伽羅、市原悦子、浅田美代子、水野美紀、太賀、兼松若人、他
製作国:日本
ひとこと感想:現時点では河瀬直美監督の最高傑作なのではないだろうか。元ハンセン病患者を演じる樹木希林さんと永瀬正敏さんのやり取りが至高で、映画ではお見掛けする機会の少ない市原悦子さんも素晴らしく、彼らのキャリアの中でも白眉のものになったかもしれない。河瀬監督の発想の特異さについて今まであまり考えたことがなかったが、もしかしたら監督は、全くのオリジナル作品を手掛けるよりも、原作という重しがあった方が一般の人にも理解し易い作品を創ることができるのではなかろうか。映画ファンなら今年必ず観ておかなくてはならない映画の1本だと思う。

【アンジェリカの微笑み】三星半

監督・脚本:マノエル・ド・オリヴェイラ
出演:リカルド・トレパ、ピラール・ロペス・デ・アジャラ、他
製作国:ポルトガル/スペイン/フランス/ブラジル
ひとこと感想:マノエル・ド・オリヴェイラ監督がついに亡くなられてしまった。106歳。本作が101歳時の作品で、この後に【家族の灯り】と何本かの短編を作り、死の直前まで短編を手掛けられていたようで、立派としか言いようがない。本作は、死んだ女性の写真を撮ることを依頼され、その写真に恋してしまう男を描いたちょっと不思議な感じのお話。オリヴェイラ監督の映画はやっぱり自分にはかくちょう高すぎるわ、もっと歳を取ったら分かるようになるのかなー、なんて軽口を叩くことも、もうできなくなるのかと思うと寂しい。合掌。

【悼む人】四つ星

監督:堤幸彦
脚本:大森寿美男
原作:天童荒太
出演:高良健吾、石田ゆり子、井浦新、貫地谷しほり、椎名桔平、大竹しのぶ、平田満、山本裕典、麻生祐未、山崎一、戸田恵子、他
製作国:日本
ひとこと感想:事故や事件で人が死んだ現場に赴き、その人が「誰に愛され、誰を愛し、何をして感謝されたか」を思い起こして(というか想像して)その死を見詰める「悼む人」。原作者の言葉によると「一つ一つが素晴らしい命だったと、愛と感謝の名において、胸に刻んでほしい」ということなのだが、これがさっぱり分からない。私はさっさと忘れ去られたいけどね。生きていたという事実自体消えてなくなっていい。何百億、何千億の亡くなった人々の歴史の波にすぐに溶け込んで見えなくなりたいけど。宗教かよ!ってセリフがあったと思うけど、その方法をその人が信じているという意味においては確かに宗教だよな。でもこれはこれでこの人なりの死の消化の方法なのだろうから、咎め立てもしないけれど。

【イタリアは呼んでいる】三つ星

監督・脚本:マイケル・ウィンターボトム
出演:スティーヴ・クーガン、ロブ・ブライドン、他
製作国:イギリス
ひとこと感想:英国紳士2人のイタリア弥次喜多ぶらり旅。景色は美しく食べ物は美味しそうで、本人達が楽しそうで何よりだ。けれど、あまり内容の無いグダグダのジョークの応酬は、イギリスの芸能界に明るい人には味わい深いのかもしれないけれど、個人的にはいささか退屈してしまった。

【犬に名前をつける日】三星半

監督・脚本:山田あかね
出演:小林聡美、上川隆也、ちばわん、犬猫みなしご救援隊、他
製作国:日本
ひとこと感想:広島の「犬猫みなしご救援隊」や千葉の「ちばわん」など、心ない飼い主や悪質なブリーダーのために捨てられたり劣悪な環境に置かれたりして最後には命を奪われる犬たちや猫たちに、手を差し伸べる活動をしているボランティアの皆さん。心情的には寄り添いながらもてきぱきと現実的な対応を行う皆さんの姿が印象的で、こういう現実を教えてもらえたことは非常にありがたいと思った。けれど、これ、ドラマパート要るかなぁ?中途半端なドキュドラマにせずとも、小林聡美さんをレポーターにしたドキュメンタリーでよかったんじゃなかろうか。

【イマジン】三星半

監督・脚本:アンジェイ・ヤキモフスキ
出演:エドワード・ホッグ、アレクサンドラ・マリア・ララ、他
製作国:ポーランド/ポルトガル/フランス/イギリス
ひとこと感想:舌打ちなどをして出した音の反響で自分の位置を知る反響定位(エコロケーション)という方法で杖などに頼らずに歩く盲目の方々がいるらしい(日本では法律で杖を持つか盲導犬がいないと駄目なようだ)。本作はこの方法の先生と生徒になる盲目の男女を中心にした物語。ていうか設定はちょっと変わっているけど中身は普通のラブ・ストーリーだよね。リスボンの歴史的な町並みと光の加減が溶け合って美しかったのが印象的だった。

【イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密】四星半

監督:モルテン・ティルドゥム
脚本:グラハム・ムーア
原作:アンドリュー・ホッジス
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイ、マシュー・グード、マーク・ストロング、他
製作国:イギリス/アメリカ
ひとこと感想:159×10の18乗ものパターンがあり毎日変化するというナチス・ドイツの難攻不落の暗号エニグマを解読するためコンピュータの元となる機械を発明したという、アラン・チューリングなる実在の数学者を元にした話。チューリング氏は通常の人付き合いができないどう贔屓目に見ても変人なタイプの人で、おまけに後半ある秘密が明らかに(……そうじゃないかと思ってたが)。そしてチーム一丸となって暗号を解いても、暗号を解読したということがバレるとまずいから全部の情報を使える訳じゃないという矛盾。そうしたドラマ自体の面白さを堪能できる醍醐味を久々に感じた。ただ、ベネディクト・カンバーバッチさんのお顔だけはどうにも好みじゃなくて……本当にどうもすいません。

【インサイド・ヘッド】三星半

監督・脚本:ピート・ドクター、ロニー・デル・カルメン
共同脚本:メグ・レフォーヴ、ジョシュ・クーリー
声の出演:エイミー・ポーラー、フィリス・スミス、ルイス・ブラック、ミンディ・カリング、ビル・ヘイダー、リチャード・キング、ケイトリン・ディアス、カイル・マクラクラン、ダイアン・レーン、他
声の出演(日本版):竹内結子、大竹しのぶ、浦山迅、小松由佳、落合弘治、佐藤二朗、伊集院茉衣、花輪英司、田中敦子、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:本国では随分評価が高かった本作だが、個人的には、感情の各要素のそれぞれに人格があるという設定そのものに違和感しか感じなくて、全然入り込むことが出来なかった。百歩譲ってそこをスルーするにしても、自分ばかりが正しいと思っている傲慢なJOY(ヨロコビ)さんが物語の中心というのもどうも鼻白み、日本の人が作るのであればSADNESS(カナシミ)さんがもっと中心になってたんじゃないかなぁと思ってみたり、そのSADNESS(カナシミ)さんの扱いもあまり納得できるものじゃなかったり。これに“あなたの物語”とかコピーをつけるなんて随分大きく出たものだ。まぁ単純に言って“わたしの物語”ではなかったんだよね。

【インヒアレント・ヴァイス】三星半

監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
原作:トマス・ピンチョン
出演:ホアキン・フェニックス、ジョシュ・ブローリン、オーウェン・ウィルソン、リース・ウィザースプーン、ベニチオ・デル・トロ、キャサリン・ウォーターストン、エリック・ロバーツ、ジェナ・マローン、マーティン・ショート、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:70年代ロサンゼルスのヒッピー文化を背景にしたトマス・ピンチョン原作の探偵物語。時代の空気は描けていても、だらだらと芯の無いなし崩し的な話という印象なのだが、ほとんど原作に忠実なようなので何とも言えない。ポール・トーマス・アンダーソン監督は出世作の【ブギーナイツ】でも70年代を描いていたが、何故70年代への思い入れがこれほど強いのだろうか。私はそうでもないので、正直、見ていてなかなか辛かった。

【ウィークエンド・チャンピオン モンテカルロ1971】三つ星

監督:フランク・サイモン
(ドキュメンタリー)
出演:ロマン・ポランスキー、ジャッキー・スチュワート、他
製作国:イギリス/フランス
ひとこと感想:1971年当時のF1モナコ・グランプリの映像を見ながら、その年に年間チャンピオンだったジャッキー・スチュワート氏と、モータースポーツファンのロマン・ポランスキー監督が語り合う。1970年代はモータースポーツが最も盛んな年代だったということだが(今ほど安全基準が厳しくない反面、もっとワイルドな魅力に溢れていたのだろうと想像する)、冷戦の真っ最中とはいえ、欧米の人々にとっては我が世の春の麗しい時代だったんだろうな。そういう時代の空気は伝わってくるけど、正直、延々車が走っているだけの映像に、私はそこまで思い入れを持てなかったのだった……。

【ヴィオレット ある作家の肖像】四つ星

監督:マルタン・プロヴォ
脚本:ルネ・ド・セカティ、マルク・アブデルヌール
出演:エマニュエル・ドゥヴォス、サンドリーヌ・キベルラン、オリヴィエ・グルメ、他
製作国:フランス/ベルギー
ひとこと感想:【セラフィーヌの庭】のマルタン・プロヴォ監督が描く、フランスの作家ヴィオレット・ルデュックの評伝的な物語。彼女は1940年代という早いから女性の生と性を赤裸々に描き、ボーヴォワールとの交流を経て、やがて才能を開花させた。「涙も叫びも書くしかない」という台詞が印象的。作家って本来、骨身を削り血反吐を吐きながら魂をさらけ出す生業だったのだなと改めて突き付けられた。

【ヴィジット】四つ星

監督・脚本:M・ナイト・シャマラン
出演:オリヴィア・デヨング、ビーエド・オクセンボールド、ディアナ・デュナガン、ピーター・マクロビー、キャスリン・ハーン、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:祖父母の家に行った姉弟の恐怖の1週間……。分かってしまえばホラーとしては大したネタではない、かもしれないけれど、見せ方が抜群に上手くて引き込まれてしまった。映画好きの姉と弟がカメラで取ってるという設定の画面も面白い。シャマラン監督はホラーのセオリーとか本当によく熟知していて、映画を撮り始めた人が教科書として研究するにはいいんじゃないだろうか。

【ヴィンセントが教えてくれたこと】四つ星

監督:セオドア・メルフィ
出演:ビル・マーレイ、メリッサ・マッカーシー、ナオミ・ワッツ、クリス・オダウド、テレンス・ハワード、ジェイデン・リーベラー、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:ハリウッドで一番クソジジイ役が似合うようになったビル・マーレイ氏主演で、偏屈で打つ飲む買う(ギャンブル・飲酒・女)の不良爺さんと、隣家に引っ越してきた少年との関わりを描く。原題は【St.Vincent】で、聖人ヴィンセントといった意味なのだが、うっかり爺さんに懐いてしまった小学生の少年が、反面教師的な意味ではなく、それなりの人生を背負ってきた等身大の彼にこそ学ぶことがあると達観してしまうのが、ちょっとファンタジーが入っていても面白かった。何せビル・マーレイがはまり役で、彼のクソジジイ振りを見るだけでも十分価値があるけれど、少年役のジェイデン・リーベラーくんも可愛い。また、図らずもシングルマザーになってしまったけど日々奮闘していた少年の母親の姿も印象に残った。

【内村さまぁ〜ず THE MOVIE エンジェル】二つ星

監督:工藤浩之
脚本:森ハヤシ、たかはC
出演:内村光良、三村マサカズ、大竹一樹(さまぁ〜ず)、藤原令子、久保田悠来、他
製作国:日本
ひとこと感想:内村さまぁ〜ず』を制作しているK-maxという会社の代表の方が映画監督に初挑戦。一応設定らしきものがあり、思ったよりはストーリーらしきものもあるけれど、番組同様ぬる〜い感じ。芸人たくさん出しときゃウケるだろう、という姿勢には、悪い意味でのテレビマン的な安易さを感じずにはいられない。バラエティ番組ならいいけれど、これをわざわざ映画にする必要があるんだろうか。申し訳ない。内村さんのことは大好きだけど、“映画”と銘打って単なるお笑いビデオを作る所業は、私にはちょっと受け入れ難い。

【海のふた】二星半

監督:豊島圭介
脚本:黒沢久子
原作:よしもとばなな
出演:菊池亜希子、三根梓、小林ユウキチ、鈴木慶一、天衣織女、他
製作国:日本
ひとこと感想:このヒロイン、はっきりと寂れつつある海辺の田舎町で、メニューが3つくらいしかない趣味的なかき氷の店を始めるとか……えーっ!無理でしょそんなの!他にも、今まで地元でぎりぎり頑張ってきた元カレの酒屋さんが店を閉めるからって逆ギレするとか、駄目を承知で敢えてわがままをぶつけてるんだとしても、なんかちょっとあり得なくない?ヒロインの菊池亜希子さんの存在感にまだ救われたけれど、この手の自分探し映画だったか〜、と見に来たことをかなり後悔した。

【海街diary】四つ星

監督・脚本:是枝裕和
原作:吉田秋生
出演:綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず、樹木希林、大竹しのぶ、風吹ジュン、リリー・フランキー、堤真一、加瀬亮、池田貴史、前田旺志郎、坂口健太郎、鈴木亮平、キムラ緑子、他
製作国:日本
ひとこと感想:しっかり者すぎる長女、ちょっとお酒好きで男好きな次女、ユニークな趣味の三女、そして他所の家から引き取られてきた父親の違う四女。鎌倉の古い家に暮らす四姉妹の心の綾を描く丁寧に紡がれた物語がしっとりと美しい。家族を苦しめた父親を含めて様々な人を肯定し、表面上の諍いくらいでは切れない絆を改めて築き上げる。こういう一見優しい物語をきちんと描くことこそ本当は難しくて、こういう話も是枝裕和監督らしい手腕が堪能できていいかもしれない。

【映画 深夜食堂】四つ星

監督・脚本:松岡錠司
共同脚本:真辺克彦、小嶋健作
原作:安倍夜郎
出演:小林薫、高岡早紀、柄本時生、多部未華子、余貴美子、渋川清彦、筒井道隆、菊池亜希子、平田薫、田中裕子、オダギリジョー、不破万作、綾田俊樹、松重豊、光石研、篠原ゆき子、安藤玉恵、須藤理彩、小林麻子、吉本菜穂子、谷村美月、他
製作国:日本
ひとこと感想:ドラマ版には松岡錠司監督の他に山下敦弘監督や熊切和嘉監督などいろいろな人が絡んでいるらしいが、映画版では松岡錠司監督が3つのエピソードをじんわりと描いている。ドラマ版を見ていなくて恐縮だが、大人がしっとり楽しめる良質なお話に仕上がっていて、松岡監督はやっぱり圧倒的に上手いなぁと唸らされ、全然大丈夫で安心した。出てくる食べ物もいちいち美味しそうなのだが、ドラマの『ゴーイング マイ ホーム』や『ごちそうさん』、映画では【かもめ食堂】【南極料理人】など多数の作品を手掛けている飯島奈美さんがフードコーディネーターをなさっているのだそうだ。成程。

【映画 みんな!エスパーだよ!】二星半

監督・脚本:園子温
原作:若杉公徳
出演:染谷将太、真野恵里菜、池田エライザ、マキタスポーツ、深水元基、柾木玲弥、柄本時生、安田顕、神楽坂恵、高橋メアリージュン、サヘル・ローズ、冨手麻妙、他
製作国:日本
ひとこと感想:ドラマ版の中心人物の一人だった夏帆さんが出ていないのは正直言ってがっかり。最近はいろいろな映画からお呼びがかかるようになったので、もうパンチラなんてやってられねー、ということなんだろうか。画竜点睛を欠いた上で、ドラマ版の設定の説明に終始するばかりで、全く新味が感じられず、正直、何で映画にしたのか意味が分からない出来に。アイディアも何にもなくてカッスカスなのに何でもかんでも無理矢理映画にすればいいってもんじゃないってことは、強く言わせてもらいたい。

【エイプリルフールズ】三星半

監督:石川淳一
脚本:古沢良太
出演:戸田恵梨香、松坂桃李、小澤征悦、ユースケ・サンタマリア、菜々緒、大和田伸也、戸次重幸、宍戸美和公、里見浩太朗、富司純子、滝藤賢一、寺島進、高橋努、浜辺美波、山口紗弥加、岡田将生、りりィ、高嶋政伸、窪田正孝、矢野聖人、浦上晟周、古田新太、木南晴夏、生瀬勝久、千葉雅子、千葉真一、小池栄子、他
製作国:日本
ひとこと感想:“エイプリルフール”だけに嘘をテーマにして、総勢20人以上のキャストによる、お互いに少しずつリンクしている6つくらいのストーリーを同時進行で。これを混乱もなく分かりやすくすんなり見せる古沢良太脚本×石川淳一監督の『リーガル・ハイ』コンビの手腕は凄くて、単純に面白いけれど、後には何も残らないかもしれないな。

【エール!】二星半

監督・脚本:エリック・ラルティゴ
原作:ビクトリア・ベドス
出演:ルアンヌ・エメラ、カリン・ビアール、フランソワ・ダミアン、エリック・エルモスニーノ、他
製作国:フランス
ひとこと感想:作りが荒すぎの二流アイドル映画って雰囲気。耳が聞こえない一家の娘が歌手を志す、という基本のストーリーラインはいいとして、子供を理不尽な態度で縛り続ける両親は魅力的というよりはコミュ障&情緒不安定のメンヘラカップルにしか見えないし、音楽の先生が彼女のどこに才能を見出したのかもよく分からない。ボーイフレンド候補の男の子との関係性も曖昧。フランスでこれがヒットしたって本当なの?随分レベルが低くないか?

【黄金のアデーレ 名画の帰還】三星半

監督:サイモン・カーティス
脚本:アレクシ・ケイ・キャンベル
出演:ヘレン・ミレン、ライアン・レイノルズ、ダニエル・ブリュール、ケイティ・ホームズ、他
製作国:アメリカ/イギリス
ひとこと感想:『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像』。私、この絵をオーストリアで見たことがあるような気がするが、今はニューヨークにあるんだそうな。なんでもこの絵は、もともと個人のもので、ナチスに強奪されてしまったのに、その後所持していたオーストリア政府が、国家的名画だからという理由で長い間返還に応じなかったのだそうだ。この映画はそんな経緯を描いた物語で、単純に“そんなことがあったんだ〜”と興味深かったけど、それ以上の感慨もあまり湧かなかったかもしれない。
ところで本作は、渋谷のシネマライズのクロージング作品だった。これまでもいろんな映画館の閉館を目の当たりにしてきたけれど、シネマライズが閉館するというのは、本当に1つの時代の終焉を感じざるを得なかった。これからの私はどうやって映画と関わっていけばいいんだろうなぁ。う〜んう〜ん……。

【大阪外道】四つ星

監督・脚本:石原貴洋
出演:大宮将司、河本政則(彫政統)、木村涼介、他
製作国:日本
ひとこと感想:テアトル新宿の石原貴洋監督の特集上映の1本。外道と非道の頂上決戦!でも外道は外道であっても非道じゃないから非道に勝ったって?何のこっちゃ?まぁこの個性は実際見てみないと絶対分からないかもしれないな。
石原貴洋監督は、地元の大阪で働きながら子供達を起用した自主製作映画を10年間撮り続け、子供映画と暴力映画を合体させた本作のような映画で長編デビューを果たしたのだそうだ。子供達を含め素人と思われる人が何人も出ているのだが、その使い方が抜群に上手く、どの人にも凄い存在感がある。そして、テンポのよい会話のシーンに宿るユーモアの何とも言えない味。確かな語り口の独特のストーリー。昔、三池崇史監督作品を見始めた頃のワクワク感を久々に思い出した!
監督のお名前を存じ上げなかった自分の不明を恥じ入るばかりだけど、こんな隠し球が出てくるなんて日本って広いかも!そして、石原監督に限らず、【サウダーヂ】の空族や【そして泥船はゆく】の大田原愚豚舎など、東京以外に軸足を置いて映画を作ろうとする人々が全国的に少しずつ増えつつある傾向があるのかもしれない

【大阪蛇道】四つ星

監督・脚本:石原貴洋
出演:坂口拓、仁科貴、田畑智子、山中アラタ、木原勝利、大宮将司、他
製作国:日本
ひとこと感想:テアトル新宿の石原貴洋監督の特集上映の1本。仲良し3人組の1人はヤクザに売り飛ばされて最強ヤクザ(坂口拓)になり、残された2人は落ちこぼれヤクザ(仁科貴)とその奥さん(田畑智子)になって貧しくても3人の子供達と楽しく暮らしている。幸せってなんだっけ……能力があるからって幸せになれるとは限らないよね。喋らない最強ヤクザのやることなすことを全部察している舎弟(山中アラタ)のキャラクターが魅力的。そして私、どうやら大宮将司さんがとても好き。再会したヤクザ2人の間でもう少しストーリーが展開すればもっとカタルシスがあったのではないかとも思うが、それでも忘れがたい独特の味がある1本だと思う。

【娚(おとこ)の一生】三星半

監督:廣木隆一
脚本:斉藤ひろし
原作:西炯子
出演:榮倉奈々、豊川悦司、木野花、安藤サクラ、前野朋哉、落合モトキ、根岸季衣、濱田マリ、徳井優、向井理、他
製作国:日本
ひとこと感想:本作はたまたまさんが持ってた原作のマンガを読んでいたのだが、ヒロインがバリバリの工学系女子で、発電所を作る仕事をしていて、移住先の村の事業として地熱発電所作りに奔走するくだりがきれいさっぱりデリートされ、IT企業を辞めたヒロインが田舎で染色をやっている話に換骨奪胎されているのは、致命的なのではなかろうか。地震や発電所云々の話はどうしたって何かしらの政治的立場に結びついてしまいそうな2011年以降の世相を勘案したのだろうと勘繰らざるを得なかったし(原作が描かれたのは2008〜2010年)、優秀すぎて何でも出来てしまうが故に誰かに甘えることも媚びることも出来ない女性の寂しさ、みたいな原作の大切の要素が刮ぎ落とされ、よくある自分探し女子レベルの話みたいになっているのでは、原作の魅力は半減してしまっていた。あと、足の指を舐めるという描写は、実写で見るとかなりエグいね。入浴直後でもなければバイ菌だらけじゃん……。

【お盆の弟】四つ星

監督:大崎章
脚本:足立紳
出演:渋川清彦、光石研、岡田浩暉、渡辺真起子、河井青葉、田中要次、後藤ユウミ、他
製作国:日本
ひとこと感想:2006年の大森南朋さん主演の【キャッチボール屋】の監督&脚本家コンビの新作。(脚本の足立紳さんは去年の【百円の恋】が評価高かったですよね。)妻に捨てられかけているたった1作撮っただけの映画監督が故郷に帰り、病み上がりの兄と同居し、家事などしつつ次の映画の企画を立ち上げようとするけれど、そうすれば妻とよりを戻せるかもしれない、と考えるのはあまりに甘過ぎるというか。ほとんどの女性観客は「ねーよ!」とツッコミを入れていただろう。でも、逡巡しながら道を模索する主人公を演じる渋川清彦さんがあまりにも嵌まっていて、こんな割とどうしようもない役柄にペーソスの味を与えていたのはさすが。とにかく渋川さんをたっぷり見られたのが幸せだった。

【おみおくりの作法】三つ星

監督・脚本:ウベルト・パゾリーニ
出演:エディ・マーサン、他
製作国:イギリス/イタリア
ひとこと感想:各自治体にこんなふうに独りで亡くなった方々の後処理をする役人さんがいるのかなーと思うとお疲れ様だなぁと頭が下がるけど、自分が対象者になったらこの映画の主人公のような役人さんに個人の歴史をほじくり返されるなんてまっぴら御免というか、もっとビジネスライクでいいのでそっとしておいてほしいのだが。そもそも、あんなふうに一人一人の経歴を詳細に追うとか、現実的な作業時間とか予算とか考えたら絶対に無理。いくら映画だからって、あまりにも現実離れした設定は、萎えてしまって見る気がなくなってしまうのだが。

【地球交響曲<ガイアシンフォニー> 第八番】四つ星

監督:龍村仁
出演:中澤宗幸(ヴァイオリン製作者)、中澤きみ子(ヴァイオリニスト)、畠山重篤(牡蠣養殖者・NPO法人「森は海の恋人」理事長)、畠山信(「森は海の恋人」副理事長)、梅若玄祥(能楽師)、見市泰男(能面打)、柿坂神酒之祐(天河神社宮司)、他
(ドキュメンタリー)
製作国:日本
ひとこと感想:ジェームズ・ラブロック氏のガイア理論をベースに、地球環境と人間との関わりを描いたドキュメンタリーの【地球交響曲】シリーズ。(ラブロック氏自身も【…第四番】などにご出演なさっています。)今回は樹と人間との関わりがテーマらしくて、日々木と格闘するヴァイオリン製作者とその妻のヴァイオリニスト、海を豊かにするためには山に木が必要だと気づいて植林活動を始めた牡蠣養殖者とその息子、能楽師と木から能面を打つ能面打ちと伝説の能面がある神社の神主の3組が出演。樹は宇宙の意志の現れ、ってそこだけ聞くと相変わらずオカルトとかニューエイジっぽいんだけど、綿密な取材を経てそれぞれの人物の話をじっくり聞いた上で創られているから、誰が見てもそれまで知らなかったような世界観を何かしら見出し、何かしら参考にすることができる部分があるのではないだろうか。個人的には、海を豊かにするためには山に植林しなければならないという話が、今回特に興味深かった。

【海賊じいちゃんの贈りもの】三星半

監督・脚本:アンディ・ハミルトン、ガイ・ジェンキン
出演:ビリー・コノリー、ロザムンド・パイク、デヴィッド・テナント、他
製作国:イギリス
ひとこと感想:別居中の夫婦が、夫の父親であるおじいちゃんの誕生パーティのため、離婚寸前であることを隠して子供達を連れ、スコットランドに帰郷する。メモ魔の長女、ヴァイキング・マニアの長男、石マニアの次女と個性的な子供達は夫婦間の亀裂を感じ取っていて、大人達の諍いにうんざりしている。こんな子供達と偏屈なおじいちゃんとの交流は面白かったけど、子供達だけで勝手におじいちゃんの×××をしてしまうという後半の展開は、日本人の感覚ではあまりにも考えにくくて、ちょっと付いて行きにくくなってしまった。

【顔のないヒトラーたち】四つ星

監督・脚本:ジュリオ・リッチャレッリ
共同脚本:エリザベト・バルテル
出演:アレクサンダー・フェーリング、フリーデリーケ・ベヒト、アンドレ・シマンスキ、他
製作国:ドイツ
ひとこと感想:ドイツでは、自国の戦争犯罪に対する教育が日本より随分進んでいる印象があったのだけれど、第二次世界大戦後からしばらくは、やはりナチスの所業を忘却したがっていた時期があったのだとは知らなかった。この映画にある通り、ドイツでほんの数人のスタッフが8000人の元ナチス親衛隊員らを容疑者とした捜査を開始したのが1958年、その後、戦争犯罪に関する裁判が開始されたのが1963年で、それまで元親衛隊員らは、海外に逃れたり、普通にその辺でのうのうと暮らしていたりいたんだそうな。ただ、自分達の過ちを一旦理解した後のドイツは偉かった。先人が行った過ちを直視する勇気がなく、自分達は潔白でイノセントだというアイデンティティを手前勝手に捏造してすがりついているような人々が跋扈しつつあるどこかの国とはえらい違いだと思った。

【かぐらめ】三つ星

監督・原案:奥秋泰男
脚本:難波望
出演:武田梨奈、大杉漣、筒井真理子、上條恒彦、今井雅之、朝加真由美、黒川芽以、大河内奈々子、森岡龍、他
製作国:日本
ひとこと感想:武田梨奈さんが出ているので見に行った1本。父親に反発しつつ都会にも疲れてしまっているヒロインの心情はそれなりに描けていたように思うが、父親や父親の恋人など、周りの人間の性格や関係性の描写はなんか行き当たりばったりで、シーンごとに解釈もコロコロ変わってしまっているような印象が。タイトルにある神楽自体の見せ方も含めて、クライマックスの描き方と、そこに至るまでの盛り上げ方ももっと練り込んで工夫した方がよかったのではないかと思う。ところで、今井雅之さんは本作が遺作となってしまったらしい。この存在感は余人をもって代えがたいものだった。本当に惜しい人を亡くしてしまって残念だ。

【駆込み女と駆出し男】四つ星

監督・脚本:原田眞人
原案:井上ひさし
出演:大泉洋、戸田恵梨香、満島ひかり、内山理名、陽月華、樹木希林、キムラ緑子、木場勝己、麿赤兒、武田真治、堤真一、橋本じゅん、山崎一、中村育二、北村有起哉、宮本裕子、松本若菜、神野三鈴、玄里、高畑淳子、井之上隆志、山路和弘、でんでん、中村嘉葎雄、山崎努、他
製作国:日本
ひとこと感想:鎌倉のお寺の中でも東慶寺は特に大好きだけど(友人が鎌倉在住なこともあり結構行っている)、駆け込みをしてもすぐに離縁できる訳じゃなく、身辺調査後に入山し2年間みっちり修行してやっと手続きをしてもらえるとか知らなくて、いろいろと勉強になった。改めて考えてみると、完全なものではないにしろ、離婚を望む女性を救済する制度が存在していたというのは、世界の文化史の中でも面白いことだったかもしれない。本編は、駆け込みをした3人の女と、駆け込み寺に関わることになった戯作者志望の男を中心にしたお話で、特に、大泉洋さんの演じる、根は誠実だがひょうひょうとしていて2枚目とも3枚目ともつかない戯作者志望の男が魅力的だった。また、個人的には、おっとりしているように見えて実は色々分かっている東慶寺の実質的な責任者の尼さんもツボだった。

【風に立つライオン】四つ星

監督:三池崇史
脚本:斉藤ひろし
原作:さだまさし
出演:大沢たかお、石原さとみ、真木よう子、鈴木亮平、石橋蓮司、萩原聖人、藤谷文子、山崎一、中村久美、他
製作国:日本
ひとこと感想:『風に立つライオン』は、元々さだまさしさんがケニアで医療活動をしていたお医者さんの話にインスパイアされて1987年に作った曲だったそうなのだが、この曲に惚れ込んだ大沢たかおさんがさださんに働きかけた結果、さださんご自身により小説化され、今回更に映画化されることになったのだという。主人公は、ケニアと関わるうちにケニアでの活動に深く従事するようになり、日本に残してきた恋人と道が分かれることになっても「志」を貫き通そうとするのだが、このような高邁な理想に殉じようとする姿勢は今の日本では絶滅危惧種なのかもしれないと思った。でもモデルになったお医者さんは今でもご存命らしい。う〜んそこは創作かよ。しょうがねぇなぁ……。

【合葬】二つ星

監督:小林達夫
脚本:渡辺あや
原作:杉浦日向子
出演:柳楽優弥、瀬戸康史、岡山天音、オダギリジョー、他
製作国:日本
ひとこと感想:カッコつけているばかりで、何が描きたいのかのフォーカスがグスグスで、全く何も伝わってこない時代劇。時代劇のイロハのイもできていないというか、それ以前に、ドラマとして何を伝えたいかの基本すら全然できていないという感じ。ナレーションがカヒミカリィさんというのがもう……彼女は別に嫌いじゃないけど、時代劇のナレーションに合っているかどうかは別の話。柳楽優弥さんのマネージメントをやってる皆様、あんまり彼を安売りしないで下さいよ、と言いたいところだが、杉浦日向子さん原作で渡辺あやさんが脚本を書いて、ここまで駄作になるなんて普通思わないわよね……。

【KANO 1931海の向こうの甲子園】四星半

監督:マー・ジーシアン(馬志翔)
脚本:ウェイ・ダーション(魏徳聖)
出演:永瀬正敏、ツァオ・ヨウニン、チェン・ジンホン、坂井真紀、大沢たかお、他
製作国:台湾
ひとこと感想:戦前に甲子園で準優勝した台湾の高校の実話をベースにした物語。嘉義農林学校の野球部の近藤兵太郎監督は、日本人や漢人や現地出身の台湾人の混成チームを率い、選手を分け隔て無く鍛えて、日本本土で行われた甲子園で準優勝を勝ち取ったという。日本は台湾を占領していたのだし、差別や抑圧に与する人も多く存在していたのだろうけど、この近藤監督や、本作にも少し登場する八田興一氏(大規模な水利設備を整えて台湾の農業の発展に貢献した)などのように、立派な行動を行って尊敬を集めた人がいたこともまた事実なんだろうと思うと感慨深かった。【海角七号】や【セディック・バレ】でも日本人が関わった台湾史を描いていたウェイ・ダーション(魏徳聖)氏(本作では脚本およびプロデューサー)が、日本人を過度に貶めるのでもなく過度に美化することもなく、フラットな目線で日本との関わりを見詰めようとして下さっているのが本当にありがたいことだと思う。そして本作に永瀬正敏さんを呼んで下さってありがとう!本作が永瀬正敏さんの新たな代表作になったことが本当に嬉しい。

【神々のたそがれ】四つ星

監督・脚本:アレクセイ・ゲルマン
共同脚本:スヴェトラーナ・カルマリータ
原作:ストルガツキー兄弟
出演:レオニド・ヤルモルニク、他
製作国:ロシア
ひとこと感想:タルコフスキー監督の【ストーカー】の原作者であるストルガツキー兄弟の作品を原作にした、ロシアの巨匠アレクセイ・ゲルマン監督の遺作。地球より800年ほど進化が遅れている別の惑星に乗り込んだ男が神として振る舞う話、ということでいいのかな?しかし正直、ぱっと見でストーリーが分かりやすいような語り口じゃない、というか頑張って見ていてもあんまりよく分からないかもしれないし、当たり前みたいに死体がごろごろしている血と泥と糞尿にまみれた世界は、神話的とかいったレベルをとっくに通り越していて、あまりに濃すぎてどっと疲れる。しかし、疲れるくらいにずっしり来る映像の重みを体感すると、これこそ本来映画でしか表現できない感覚なのではないかと思えた。今後はもうこんな重厚感に溢れた画面は誰にも撮れないかもしれず、だからこそ見ておく価値があるのではないかと思われた。

【神様はバリにいる】二星半

監督:李闘士男
脚本:森ハヤシ
原案:クロイワ・ショウ
出演:堤真一、尾野真千子、玉木宏、ナオト・インティライミ、他
製作国:日本
ひとこと感想:原案になっている実話本があるらしいのだが、幸せ=金儲け=産業=不動産開発という外部の人間の勝手な理屈のもとに南の島にホテルをぶっ建てて現地の環境や文化を破壊、というバブル時代の土建屋的発想をまるっきり一歩も出ていなくてびっくりした。堤真一さんが思い切りデフォルメして演じているからぎりぎり成立……しているのかもしれないけれど、そもそも今の時代にこれで映画作ります?この時代錯誤感に、映画って古くさい業界なんだな〜ということが改めて思い起こされて、思い切りがっくりきてしまった。

【彼は秘密の女ともだち】四つ星

監督・脚本:フランソワ・オゾン
原作:ルース・レンデル
出演:ロマン・デュリス、アナイス・ドゥムースティエ、ラファエル・ペルソナ、他
製作国:フランス
ひとこと感想:ある女性の親友が亡くなり、その夫が次第に女性化。なりゆきで彼女は彼と“女の友情”を育むことになるけれど、その友情はいつしか愛情に……彼は彼で、ちょっとした女装願望が完全な女性化願望に変化していくことを止められず、彼女は彼女で、夫がいながら、心の奥底に持っていたらしいレズビアンの素質が顕在化していくのを止められない……って、なんつーフクザツな話なの。私だったら、旦那の方が顔が好きだし(笑)、ご飯作ってくれて子供の面倒もちゃんと見てくれるまっとうで優しい旦那が可哀想すぎると思うけど、まぁ人の心なんてそういうことだけじゃないからな……。こういった人間のデリケートで複雑な領域をそのままに描いてみせることができるフランソワ・オゾン監督の感受性が素晴らしい。そして、ロマン・デュリス様は、やっぱりこういうアンビバレントな役柄が世界一上手いかも。しかし、どんなに剃っても濃い青髭がべっとり残っているところが何とも形容し難いけれど……。

【完全なるチェックメイト】三星半

監督:エドワード・ズウィック
脚本:スティーヴン・ナイト
出演:トビー・マグワイア、ピーター・サースガード、リーヴ・シュレイバー、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:【イースタン・プロミス】のスティーブン・ナイト脚本作。正直、以前見聞きしたことがあったボビー・フィッシャーの評伝やドキュメンタリーなど較べて、あまり目新しさは感じられなかった。ただ、久々にトビー・マグワイアさんの演技をどっぷり見ることができたのはよかったかな。あと、ボビー・フィッシャーの宿敵ボリス・スパスキーを演じたリーヴ・シュレイバーさんが、どうみてもロシア人にしか見えないのがスゴいと思った。

【消えた声が、その名を呼ぶ】四星半

監督・脚本:ファティ・アキン
共同脚本:マルディク・マーティン
出演:タハール・ラヒム、シモン・アブカリアン、マクラム・J・フーリ、モーリッツ・ブライプトロイ、トリーネ・ディアホルム、他
製作国:ドイツ/フランス/イタリア/ロシア/ポーランド/カナダ/トルコ
ひとこと感想:1915年にオスマン・トルコで起きたアルメニア人を巡る歴史的事件を基にした話で、強制連行され声を失いながらも、離ればなれになった家族を執念で探し続ける男の物語。何故これほど残酷な映画を見なければならないのだろうと自問しつつ、世界はもっと残酷だということを知っておくためだ、と肝に銘じる。威張りたい奴が銃を持ち、銃を持った奴が威張り散らす凶暴で頭の悪い文明が進化するのはいつのことだろう。でも、進化できなければ人類は滅びるということを知っている人達もいるからこそ、こうした作品も創り続けられるのだろう。
ファティ・アキン監督はトルコ系移民の両親を持つドイツ人。今のヨーロッパのシリア難民危機に何を思うのか、今こそ聞いてみたい気がする。

【岸辺の旅】四つ星

監督・脚本:黒沢清
共同脚本:宇治田隆史
原作:湯本香樹実
出演:浅野忠信、深津絵里、小松政夫、村岡希美、蒼井優、柄本明、奥貫薫、赤堀雅秋、首藤康之、他
製作国:日本
ひとこと感想:行方不明になっていた夫がいきなり奥さんの元に戻ってきて、もう自分は死んだと言い、それまでの彼の道行きを2人で一緒に辿り始める、という不思議な物語。いろいろあったんだろうけど、夫は奥さんのことを愛していたから、自分のことを分かって欲しくて、覚えておいて欲しくて戻ってきたんだろうね。全然作風が違うんだけど、同じ黒沢清監督の【回路】を何か思い出してしまった。あの世とこの世の邂逅みたいな部分の解釈がどこか似ているのかもしれない。

【起終点駅 ターミナル】四つ星

監督:篠原哲雄
脚本:長谷川康夫
原作:桜木紫乃
出演:佐藤浩市、本田翼、泉谷しげる、尾野真千子、中村獅童、和田正人、音尾琢真、他
製作国:日本
ひとこと感想:ある地方都市で、過去のトラウマに囚われて日々無為に生きる初老の弁護士が、ある若い女性の再生を助けることで生きる息吹を取り戻す……。主人公の佐藤浩市さんが渋くて大変よろしいが、本田翼さんは後ろ暗い過去がある女にはあまり見えなくて、ちょっとミスキャストだったかも?それでも全体的にはじんわりと染み込んでくるいい映画だったように思う。

【寄生獣 完結編】三つ星

監督・脚本・VFX:山崎貴
共同脚本:古沢良太
原作:岩明均
出演:染谷将太、阿部サダヲ、橋本愛、深津絵里、北村一輝、浅野忠信、國村隼、豊原功補、新井浩文、ピエール瀧、大森南朋、他
製作国:日本
ひとこと感想:不完全燃焼!市役所での殲滅作戦は分量的にお粗末すぎ、後藤との対決では後藤の最強生物ぶりが十分に描けておらず、全くもって物足りなかった。予算不足なのか、はたまたレイティングの関係で原作の残虐性を軽減させたいのかは分からないけども、わざわざこの原作を扱うのであれば、原作のテーマと密接にリンクした、生きるか死ぬかの死戦を穿つ残虐性を描き切る覚悟が必要で、2Dの動かぬ紙媒体よりもショボい描写しかできないのでは、実写化する意味などない。原作にない台詞などを追加して物語性を膨らませ補おうとしているきらいはあるが、こういう歴史的名作を敢えて映画にしたいというのであれば“そこそこ”じゃ駄目。圧倒的傑作を創るより他にないのである。

【奇跡のひと マリーとマルグリット】四つ星

監督・脚本:ジャン=ピエール・アメリス
出演:イザベル・カレ、アリアーナ・リヴォアール、他
製作国:フランス
ひとこと感想:19世紀末のフランス。聾唖の女性を受け入れている修道院で、あるシスターが、聾唖の上に盲目でもあるが故にちゃんとした教育を受けられず野獣のように暮らす少女を受け入れて世話をする決心をする。フランスにもヘレン・ケラーみたいな実話があったようで、途中まではヘレン・ケラーの話とほぼ似たような展開なんだけど、このシスターは体が弱く、サリヴァン先生みたいに長生きできなかった……。この話がヘレン・ケラーの話ほど有名にならなかったのは、成長した少女がヘレン・ケラーのような精力的な社会的活動を行って有名になった訳ではなく、修道院内に留まって似たような立場の女性達の手助けをした後に、かなり若くして亡くなってしまったからだろう。どちらも尊い人生だったと思う。そして、人生を尊いものにするためには教育が重要なのだなと改めて思う。

【きみはいい子】四つ星

監督:呉美保
脚本:高田亮
原作:中脇初枝
出演:高良健吾、尾野真千子、池脇千鶴、喜多道枝、高橋和也、富田靖子、黒川芽以、内田慈、松嶋亮太、加部亜門、他
製作国:日本
ひとこと感想:【そこのみにて光輝く】の呉美保監督の新作。片や、教育現場の現実にとまどう中、被虐待児を見つけてしまった小学校の新米教師。片や、自ら虐待を受けていた経験を持ちながら、自分の子供への虐待を止めることができない主婦。よく描けているだけに見ていてとても辛いけど、教師の小さな決意が少しばかりの救いになっているかな。結局言いたいことはただ一つ。『児童虐待、ダメ。ゼッタイ。』

【キャノンレース】四つ星

監督:ハルヴァルド・ブレイン
脚本:リン=シャネス・キューズ
出演:アンドレス・バースモ・クリスティアンセン、スヴェーン・ノルディン、ヤニ・スカヴラン、オットー・イェスペルセン、トロン・ハルボ、イダ・ヒューセイ、他
製作国:ノルウェー
ひとこと感想:首都オスロからヨーロッパ最北端のノールカップ岬までのノルウェーの公道2200キロを縦断するカーレース(違法)。親子の絆とか友情とかも少しは描いているけれど、レースの背景にほぼ意味はなく、ただ走るのが好きな人達が競いたくなったというそれだけなのが、あまりにもバカバカしくていっそ清々しい。私の心の故郷ノルウェーの田舎の、邪魔なものが何もない広々とした景色がただもう素敵。うぉぉぉ、行きてぇ〜 !! あんなところをただ延々とドライブしたい〜 !!

【木屋町DARUMA】三星半

監督:榊英雄
原作・脚本:丸野裕行
出演:遠藤憲一、三浦誠己、武田梨奈、寺島進、木下ほうか、木村祐一、尾高杏奈、趙a和、勝矢、烏丸せつこ、他
製作国:日本
ひとこと感想:達磨と言うだけあって、主人公は手足を切断された元ヤクザの借金取り立て人。そしてその世話をする別のヤクザ。遠藤憲一さんに三浦誠己さん、武田梨奈さんが出るとなるとそりゃあ見ないわけにはいかないけれど、暴力的なシーンだけならともかく、うんこやゲロがふんだんに出てくるような画面を見てると、何もそこまで露悪的じゃなくても……と思ってしまう。しかも何もこんな破滅的なエンディングじゃなくっても……。運命なのか、自分で選んだ道なのか。そんな軛の中でもがく人々を活写しているのはいいけれど、とても万人にお勧めできるようなタイプの映画だとは言い難いかもしれない。

【ギャラクシー街道】二星半

監督・脚本:三谷幸喜
出演:香取慎吾、綾瀬はるか、大竹しのぶ、西田敏行、優香、梶原善、遠藤憲一、西川貴教、段田安則、山本耕史、石丸幹二、田村梨果、小栗旬、阿南健治、秋元才加、浅野和之、他
製作国:日本
ひとこと感想:宇宙の街道の道端のハンバーガーショップにやってくる様々な宇宙人……この設定に乗っかることができれ楽しむことができるのかもしれないが、ちょっと突飛すぎて、私にはちょっとハードルが高いみたい。加えて、1つ1つのエピソードがあまり笑えない上に、それぞれがバラバラで、練り込みが足らず消化不良な印象。深いテーマがあるようにも思えないし、一瞬一瞬で笑えればそれでいいという悪ふざけにしか見えないかもしれない。役者さんはみんな一生懸命演じているが故に余計いたたまれないような気がする。三谷監督も、機会があれば何が何でも撮る、というのではなく、ものによってはもうちょっと企画を温めてから撮った方がいいのでは。この映画が監督やそれぞれの役者さんの黒歴史とならないようお祈りするしかない……と言ってももう遅いか。

【ギリシャに消えた嘘】四つ星

監督・脚本:ホセイン・アミニ
原作:パトリシア・ハイスミス
出演:ヴィゴ・モーテンセン、キルスティン・ダンスト、オスカー・アイザック、他
製作国:イギリス/フランス/アメリカ
ひとこと感想:落ちぶれた詐欺師が更に破滅へと向かう、というパトリシア・ハイスミス原作のいかにも救いのない心理サスペンス。図らずも共犯関係になってしまった男達が、どこまで相手を信用するか、どこで相手を出し抜くか、どこで相手の裏切りを見抜くかという緊張が連続し、ここに詐欺師の妻への横恋慕というファクターも絡んで更に混乱する。特に大仕掛けのネタとかがある訳じゃないけれど、心が寒々しくなるようなソリッドな本格的サスペンスが見たい人にはお勧めできると思う。

【禁じられた歌声】三星半

監督・脚本:アブデラマン・シサコ
共同脚本:ケッセン・タール
出演:イブラヒム・アメド・アカ・ピノ、トゥルゥ・キキ、ファトウマタ・ディアワラ、イチェム・ヤクビ、アベル・ジャフリ、ケトゥリ・ノエル、他
製作国:フランス/モーリタニア
ひとこと感想:マリ共和国を舞台に、イスラム過激派に占拠された街の人々の苦しみと抵抗を描くドラマ。この映画の日本公開には【トゥーマスト 〜ギターとカラシニコフの狭間で〜】などでトゥアレグ族が少し注目された関係もあったのかなと想像する。ぱっと見では少し表現が分かりにくい面もあったし、それぞれのエピソード自体は他の作品やドキュメンタリーなどでも見聞きするものとあまり差がないようにも思えたが、アフリカの人達が自身の手で自分達の状況を語る機会は、これからますます必要になるのではないかと思った。

【クーキー】四つ星

監督・脚本:ヤン・スヴェラーク
出演:オンジェイ・スヴェラーク、ズデニェク・スヴェラーク、オールドリッチ・カイザー、他
製作国:チェコ
ひとこと感想:1997年公開の【コーリャ 愛のプラハ】のヤン・スヴェラーク監督の作品。実写パートのメインの男の子は監督の実の息子さんなのだそうだが、主役はへんてこりんなテディ・ベアのクーキーを始めとする人形達の方だ。世界的にも有名だというチェコのゲーム&デザインクリエーターチームのアマニタ・デザインが“森に住む自然の神様”という設定でデザインしたものだそうで、スマートにはほど遠い手作り感満載の独特な造形には、かえってなんとも言えない味がある。この人形達に命が吹き込まれて活き活きと動き出し、ちょっとダークな物語を紡ぎ出す様には、人形劇&パペットアニメ大国のチェコの伝統が感じられて、ひたすら素晴らしい。

【グッド・ストライプス】四つ星

監督・脚本:岨手由貴子
出演:菊池亜希子、中島歩、臼田あさ美、中村優子、杏子、うじきつよし、他
製作国:日本
ひとこと感想:“ストライプス”というのは永遠に交わらない平行線の関係を示唆しているのだそう。『問題のあるレストラン』で真木よう子さんの同僚を演じていた菊池亜希子さんと、『花子とアン』で仲間由紀恵さんの駆け落ち相手を演じていた中島歩さんが、たまたま子供ができたからなんとなく結婚を決めたカップルを演じているのだが、この2人、情熱的な恋愛関係にはほど遠く、まー熱量が低いこと。いくら子供がいるとはいえ、そんなふわっとした感じでいい加減に結婚決めていいのかな?とも思ったが、どこの時点であれ、お互いへの理解を深め合う過程があればいい訳で、このカップルの場合はそれが婚約中だった、ということなのだろうね。一見平坦だけれど地道な起伏が存在する脚本のバランスが素晴らしい。これが完全にオリジナルとは。岨手由貴子監督のセンスには今後も期待できそうだ。

【くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ】四つ星

監督:バンジャマン・レネール、ステファン・オビエ、ヴァンサン・パタール
原作:ガブリエル・バンサン
脚本:ダニエル・ペナック
(アニメーション)
製作国:フランス
ひとこと感想:日本でも出版されている有名な絵本が原作のフランスのアニメーションで、【かぐや姫の物語】と同時に米国アカデミー賞にノミネートされていた作品。絵本さながらの美しいパステル系の色調の画面がそのまま動くのが素晴らしい。私は動物が人間みたいな5本指になっている系の描写がちょっと苦手だし、主人公達がふつーに泥棒とかしてるので子供に見せたりするのにはちょっとしたインストラクションが必要かもしれないと思ったが、そうした点を補って余りある美しいアニメーションだと思った。日本のアニメ製作者の皆様も頑張っているけれど、日本以外の世界にも素晴らしいアニメはたくさんありそうだ。

【グラスホッパー】三星半

監督:瀧本智行
脚本:青島武
原作:伊坂幸太郎
出演:生田斗真、浅野忠信、山田涼介、麻生久美子、波瑠、菜々緒、宇崎竜童、村上淳、吉岡秀隆、石橋蓮司、金児憲史、佐津川愛美、山崎ハコ、他
製作国:日本
ひとこと感想:これ、生田斗真さんだけじゃなく、浅野忠信さんも山田涼介さんもそれぞれ主役なのよね?そのことに気づくまでに大分時間を無駄にしてしまった。かと言って、そこに気づいたところで、あまり事態は好転しなかったかも。それぞれのパーツに強度はあるのだが、それぞれのエピソードを描くのに手一杯で、てんでバラバラで全体の大きな流れに収束していかない感じ。どうも中途半端で物足りなかった。

【グローリー 明日への行進】四つ星

監督:エヴァ・デュヴァネイ
脚本:ポール・ウェッブ
出演:デヴィッド・オイェロウォ、トム・ウィルキンソン、キューバ・グッディング・Jr.、ティム・ロス、カーメン・イジョゴ、ロレイン・トゥーサント、テッサ・トンプソン、オプラ・ウィンフリー、キース・スタンフィールド、他
製作国:イギリス/アメリカ
ひとこと感想:今やオバマさんが大統領になったアメリカだけど、ほんの50〜60年までは黒人に対する差別が公然と行われており、官民一体となった強固な不平等の構造が存在していた。そんな差別に一連の人々が命がけで抗い改革しようとした公民権運動の指導者の一人として、おそらく最も有名だったのがキング牧師だ。だが、超意外なことに、キング牧師の話はこれまで映画化されたことがなかったんだそうだ。本作とともに、スパイク・リー監督の【マルコムX】や【ゲット・オン・ザ・バス】、マリオ・ヴァン・ピープルズ監督の【パンサー】などを見ると、アメリカの公民権運動のあらましが分かるんじゃないかな。アメリカという国は、人種差別に関してはこれだけの改革を成し遂げることができたのだから(まだまだ十分ではなくても)、今あるような経済的格差も改革していけるようなポテンシャルをどこかに持っているのではないだろうか……(無理か)。

【恋人たち】四つ星

監督・脚本:橋口亮輔
出演:篠原篤、成嶋瞳子、池田良、安藤玉恵、黒田大輔、山中崇、内田慈、山中聡、リリー・フランキー、木野花、光石研、他
製作国:日本
ひとこと感想:恋人を殺されて人生無気力になった男、味気ない日常から不倫に走る女などの描写から、人生の不条理の機微を物語る。笑って生きるのがすごく難しい時にどうすればいいのかと言ったって、ちょっとしたことの積み重ねでしかないのだろうなと思った。僕はあなたと話したいと思うよ、という台詞が心に残った。

【コードネーム U.N.C.L.E.】四つ星

監督・脚本:ガイ・リッチー
共同脚本:ライオネル・ウィグラム、
原案:ジェフ・クリーマン、デヴィッド・C・ウィルソン、サム・ロルフ
出演:ヘンリー・カヴィル、アーミー・ハマー、アリシア・ヴィキャンデル、エリザベス・デビッキ、ジャレット・ハリス、ヒュー・グラント、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:1960年代のスパイ・ドラマのリメイクなのだそうで、ひたすらおっされー(お洒落)でたのしー、さすがはガイ・リッチー監督な出来。後には何にも残らないけれど、たまにはまぁそういうのもいいんじゃないかな。

【氷の花火 山口小夜子】四つ星

監督:松本貴子
(ドキュメンタリー)
出演:山口小夜子、山本寛斎、ザンドラ・ローズ、セルジュ・ルタンス、田賢三、天児牛大、天野幾雄、生西康典、入江末男、大石一男、大塚純子、掛川康典、下村一喜、ダヴェ・チュング、高橋靖子、立花ハジメ、富樫トコ、富川栄、中尾良宣、藤本晴美、丸山敬太、山川冬樹、松島花、他
製作国:日本
ひとこと感想:松本貴子監督は、【≒草間彌生 〜わたし大好き〜】なども撮られた方だそうだが、元々テレビ東京系の『ファッション通信』のディレクターをしていて、その縁で山口小夜子さんと親しくなったのだそうだ。だからこそ、山口さんの膨大な遺品を借り受け、それを紐解きながら彼女の足跡を辿るなんていうドキュメンタリーを創ることができたのだろう。経済や文化の在り方も時代の要請もいろいろなことが違うから一概には言えないけれど、70年代〜80年代の東京のカルチャーの華やかさ、きらびやかさと革新性に目を見張り、そんな時代のイコンたりうるファッションモデルが日本に存在していたんだな、という事実に改めて驚かされた。そして、モデルという枠に留まらず、途中からは舞台などに活動の中心が移っていった山口さんが、こんなにも表現者としての自我や自覚が強い人だったんだなということを初めて知り、生前にもっといろいろと拝見させて戴いておけばよかったかもと少し後悔した。今の日本の芸能界には掃いて捨てるほど多数のモデルさんが存在していて、それぞれ将来どうするのか悩んでいるかもしれないけれど、1回何かの参考にこの映画を見てみるのもいいんじゃないだろうか、と思った。

【黒衣の刺客】三つ星

監督・脚本:ホウ・シャオシェン(侯孝賢)
共同脚本:チュー・ティエンウェン(朱天文)
原作:ハイケイ
出演:スー・チー(舒淇)、チャン・チェン(張震)、許芳宜(シュウ・ファンイー)、妻夫木聡、忽那汐里、他
製作国:台湾/中国/香港/フランス
ひとこと感想:耽美系のホウ・シャオシェン監督は、予想通りやっぱり苦手だった……。遠景ショットが多いからか?人物の見分けもつきにくく、人間関係もそんなに丁寧に説明していたりもしないので、何やってるのかよく分からない。事前にストーリーを読んでなければ、もっとさっぱり分からなかったかも。この映画を評価することができる人は、自分とは映画を見るベクトルが全く違っているのだろうなぁ、ということはよく分かった。

【極道大戦争】三星半

監督:三池崇史
脚本:山口義高
出演:市原隼人、成海璃子、リリー・フランキー、高島礼子、青柳翔、渋川清彦、ヤヤン・ルヒアン、優希美青、ピエール瀧、でんでん、他
製作国:日本
ひとこと感想:なぜヤクザにヴァンパイアやらカエルの着ぐるみやらが絡むのかは定かではない……が、まぁその辺りは理屈ではないのだろう。しかし、全体的に、三池崇史監督が過去に手掛けまくってきて既にカスカスのヤクザもののテイストを、無理矢理搾り取って増幅させて過剰に入れ込んだような印象で、手詰まり感を感じてしまったのは私だけだろうか。あと、市原隼人さんが筋肉鍛えすぎで気持ち悪かった……。ハリウッド・スターとかでもありがちなんだけど、金や時間に余裕ができたからって筋肉の増強に励むのはほどほどにしといてくれないかな。そういうのが男らしいと思うのは勘違いも甚だしいよ。

【GONIN サーガ】四つ星

監督・脚本:石井隆
出演:東出昌大、桐谷健太、土屋アンナ、柄本佑、安藤政信、根津甚八、竹中直人、福島リラ、テリー伊藤、井上晴美、りりィ、菅田俊、井坂俊哉、松本若菜、鶴見辰吾、佐藤浩市、他
製作国:日本
ひとこと感想:正直、ストーリー的には「?」と思っちゃう箇所もあったけど、細かな整合性とかを突き詰めて考えたりするよりは、全体的なニオイとか雰囲気を楽しんだ方がいいんじゃないかと思った。最近、そういうニオイがしない映画が多すぎて。そして、特別出演の根津甚八さんには涙せずにはいられなかった。

【この国の空】三星半

監督・脚本:荒井晴彦
原作:高井有一
出演:二階堂ふみ、長谷川博己、工藤夕貴、富田靖子、利重剛、上田耕一、石橋蓮司、奥田瑛二、他
製作国:日本
ひとこと感想:第二次世界大戦中。周りに若い男がいなくなる中でこのまま恋もせず死んじゃうのかしら……ともやもやした気持ちを抱える若い女が、妻子を田舎に疎開させた隣の家のおっさんと不倫する話。戦争という極限状態下で飢餓感を抱える者同士が持つギリギリの関係性とか、戦争の混乱と個人的衝動とのオーバーラップとか、いかにも荒井晴彦御大が好きそう。しかし、チョビ鬚男が嫌いで生理的に受け付けないのに加え、何のかんの言いながら結局若い女がいいのかよという帰結になると、何だかもうひたすら気持ち悪い。でもって、彼女の戦争は終わっていないとか何とか、戦後に正妻と戦ったりするつもりなんでしょうか……うーむ。こんなよく分からんキャラクターでも成立させてしまう二階堂ふみさんの上手さだけが不気味に光っていた。あと、工藤夕貴さんや富田靖子さんが老け役枠になりかかっているという事実に、いささか衝撃を受けざるを得なかった。

【コングレス未来学会議】三つ星

監督・脚本:アリ・フォルマン
原作:スタニスワフ・レム
出演:ロビン・ライト、ハーヴェイ・カイテル、ポール・ジアマッティ、コディ・スミット=マクフィー、ジョン・ハム、ダニー・ヒューストン、サミ・ゲイル、他
製作国:イスラエル/ドイツ/ポーランド/ルクセンブルク/フランス/ベルギー
ひとこと感想:俳優や女優が自分の映像のデータ化権を売る世界。本人は一時的に大金を得るが、以降は自分の画像データが勝手にCG化されたものが出回るようになり、自分自身は作品に出て演技してはいけなくなるという……。しかし、その世界観が更に進んでアニメに移行したあたりから気持ち的に話についていけなくなってしまった。でもそういえば、同じアリ・フォルマン監督の【戦場でワルツを】ってそもそもアニメ作品だったっけ。映画を見る前の自分の気構えが間違えてたのかな、うーむ。

【コントロール・オブ・バイオレンス】四つ星

監督・脚本:石原貴洋
出演:山中アラタ、渋川清彦、屋敷紘子、大宮将司、仁科貴、仲谷進、大瀬誠、尚玄、木原勝利、八神湧、海道力也、他
製作国:日本
ひとこと感想:テアトル新宿の石原貴洋監督の特集上映のうち、文字通り最もバイオレンス色の強い1本。ヤクザとチンピラとギョウザ工場の面々が三つ巴で絡み合う。そして最凶の能面野郎の正体とは。暴力を支持するつもりはないけれど、映画の中のファンタジーとしての暴力には時に魅力を覚えてしまう矛盾。まーカッコよかったんですわ。

【サイの季節】四つ星

監督・脚本:バフマン・ゴバディ
出演:ベヘルーズ・ヴォスギー、モニカ・ベルッチ、ユルマズ・エルドガン、カネル・シンドルク、ベレン・サート、他
製作国:イラク/トルコ
ひとこと感想:3年かかってやっと公開された【酔っぱらった馬の時間】【亀も空を飛ぶ】のバフマン・ゴバディ監督の新作で、実在のクルド人詩人サデッグ・キャマンガール(サデク・カマンガル)の体験を基に描かれた物語。詩人はイラン革命の最中に反革命的な詩を発表した罪で投獄され(実は妻に横恋慕していた男に投獄された)、妻は夫の帰りを待ち続けるが、夫が獄中で死んだと聞かされる。詩人は30年後にやっと自由になり妻の行方を探すが、その年月が既に彼を蝕んでいた。詩人を演じているのは、イランの往年の大スターでありイラン革命で亡命後に映画に出られなくなったというベヘルーズ・ヴォスギーさんで、イタリア人のモニカ・ベルッチさんがそのクルド人妻を演じているのは、イランの女優さんでふさわしい人がなかなか見つからなかったからだそう。個人的には、若い頃の詩人とその恋敵の顔の区別がついてなくてちょっと混乱してしまったが、重厚な世界観と骨太な物語は相変わらずの見応えだった。
クルド人であるゴバディ監督は、前作の【ペルシャ猫を誰も知らない】を政府に無許可で撮影したためイランに戻れない状態になっているそうなのだが、イランでは相当辛い思いをしていたようで、この映画は“自分の中にあった膿を出す”ために撮ったのだそうだ。本国に戻るつもりは全く無いらしい。監督の思いを聞く度に、世界はまだまだ安寧からはほど遠いのだなと痛感する。

【さいはてにて やさしい香りと待ちながら】四星半

監督:チアン・ショウチョン(姜秀瓊)
脚本:柿木奈子
出演:永作博美、佐々木希、桜田ひより、保田盛凱清、臼田あさ美、浅田美代子、村上淳、永瀬正敏、イッセー尾形、他
製作国:日本
ひとこと感想:本作は、東映国際部の日本人プロデューサーが台湾のチアン・ショウチョン(姜秀瓊)監督の映画を見てスカウトし、地元などからも資金を集めて日本映画として創ったものだそうだ。永作博美さんと佐々木希さんが演じる、全く違う行き方をしてきた2人の女性が出会い、お互いとの関わりの中で少しずつ人生をやり直していく、という過程の描写があまりにも見事で、石川県珠洲市の二三味珈琲(にざみこーひー)をモデルに珠洲市の海岸に建てたというコーヒーショップのロケーションともぴったり嵌まっている。(こんな人が来なさそうなところでどうやって珈琲店を経営していくのだろう、と思ったら、評判の高い豆を通販で売っているという設定だったので納得。)すごい好き。正直、前年の○永○百合さんの岬のコーヒー屋の映画より100倍くらい素晴らしいんじゃないかしら。

【薩チャン正ちゃん 戦後民主的独立プロ奮戦記】四つ星

監督:池田博穂
出演:山本薩夫、今井正、新藤兼人、家城巳代治、山田洋次、降旗康男、他
(ドキュメンタリー)
製作国:日本
ひとこと感想:第二次大戦後に東宝争議という労働運動(俳優さんや監督さんを含む従業員と会社側との争い)があったという話は読んだことがあったのだが、それがアメリカのレッド・パージとも関連した話だとはあまりよく分かっていなかった。で、大手資本である大手映画会社が親方アメリカに丸め込まれ、その後ろ盾で独占的な支配を強める中、山本薩夫監督や今井正監督らが独立プロを創って活動し、その支配に風穴を開けたのだという。大まかに言えば、この流れが新藤兼人監督の近代映画協会の作品群や大島渚監督らに代表されるようなATGの作品群などに結びついていったのだ。テレビの時代になって映画会社自体が弱体化したこともあり、監督や脚本家やスタッフは独立し、俳優は芸能プロダクションに所属するのが当たり前になって久しいが、そうではなかった時代からの変遷を経て今に至っているということは、映画ファンの人には知っておいて欲しいと思う。そうした中、この映画は、日本映画史の一側面の貴重な資料として見ておいて損はない一作ではないかと思う。

【ザ・トライブ】四つ星

監督・脚本:ミロスラヴ・スラボシュピツキー
出演:グリゴリー・フェセンコ、ヤナ・ノヴィコヴァ、他
製作国:ウクライナ
ひとこと感想:ウクライナ映画は初めて見たけど、聾唖学校内の生徒同士の力関係を描いた話なので、【桐島、部活やめるってよ】の遠い遠い親戚のようなものかもしれなくて、お国がどうとかあまり関係ないかもしれない。全編手話だけで、台詞も字幕もない表現は力強く、描かれている関係性はバイオレントでプリミティヴで生々しくて、とにかく凄く痛そうだった。でも、例によって、学校内でのいざこざがどうのこうのという話は、もう遠い日のことすぎてあんまりピンとこないのよねー。ホントにもうすみません。

【裁かれるは善人のみ】四星半

監督・脚本:アンドレイ・ズビャギンツェフ
出演:アレクセイ・セレブリャコフ、エレナ・リャドワ、ウラジーミル・ヴドヴィチェンコフ、ロマン・マディアノフ、他
製作国:ロシア
ひとこと感想:金満主義の市長のせいで先祖代々住んでいる海辺の家から立ち退きを食らった男。頼った弁護士は美人妻と不倫、そして更なる悲劇が……。原題は【Leviathan】(リバイアサン)だそうだが、主人公が翻弄される運命そのものが、人間には制御しきれない怪物のようで理不尽すぎる。あるいは、主人公を不幸に陥れた数々の人々の強欲そのものが真の怪物なのかもしれない。ロシアのアンドレイ・ズビャギンツェフ監督の描写には文学的な骨太な厚みがあり、希望はないけれど、見てしまった後にどす〜んと来る妙なカタルシス感がある。この雰囲気は、大好きなデンマークのスサンネ・ビア監督を思い起こさせた。
しかし、この邦題自体がネタバレなのでは?というどこかに書かれていた指摘は、確かにそうかもしれない。配給会社の方々、その辺りも少しご配慮戴けると助かります。

【サム・ペキンパー 情熱と美学】四星半

監督:マイク・シーゲル
(ドキュメンタリー)
製作国:ドイツ
ひとこと感想:ジュリアン・レノンのMV『ヴァロッテ』と『トゥー・レイト・フォー・グッドバイ』はサム・ペキンパーが撮っていたって知らなかった。他に、そういえば【ゲッタウェイ】とか【ビリー・ザ・キッド】とか見てないなー、とか、【ジュニア・ボナー】って面白いのかー、とかサム・ペキンパーの詳細なフィルモグラフィがごく普通に参考になった。しかし、この映画に映っているそれぞれの作品の断片を見るだけでも、それぞれの映画に込められた熱量や圧倒的な個性が、どこか線の細い今の時代の作品とは違うなと思ってしまう。昔はよかった、なんて感想を言っちゃうようになるとは、ババァになった証拠だな。

【さようなら】四つ星

監督・脚本:深田晃司
原作:平田オリザ
出演:ジェミノイドF(女性型アンドロイド)、ブライアリー・ロング、新井浩文、村田牧子、村上虹郎、木引優子、ジェローム・キルシャー、イレーヌ・ジャコブ、他
製作国:日本
ひとこと感想:大規模な原発事故でいよいよ人が住めなくなり、人々が各国へ難民として散り散りに出国することを余儀なくされる世界を背景に、ある事情から出国できそうもない女性と、女性を子供の頃から世話しているアンドロイドの行く末が描かれる。人間とアンドロイドの世界初の本格的共演、なんて触れ込みを見てもっとキワモノ的な作品を想像していたが、アンドロイドの存在が物語の上で重要な意味があり、しかも確かに“演技”をして作品に参加していたので斬新だと思った。人間とアンドロイドの残酷なまでの時間軸の違い、そして、人間がいなくなった世界のなんという静けさ。人の存在の有無に関わらず世界は美しい。そのあまりに寂寞たる終末感に戦慄した。

【さよなら歌舞伎町】四つ星

監督:廣木隆一
脚本:荒井晴彦、中野太
出演:染谷将太、前田敦子、南果歩、松重豊、イ・ウンウ、ロイ、我妻三輪子、忍成修吾、河井青葉、宮崎吐夢、桶井明日香、田口トモロヲ、村上淳、大森南朋、他
製作国:日本
ひとこと感想:歌舞伎町のラブホテルを舞台にした5組のカップル+αの話。一応、ラブホテルで働く染谷将太さんとその彼女の前田敦子さんがゆるやかな話の中心になっているのだが、ラブホテルがテーマなだけに結構な濡れ場もある中で、前田さんの扱いはいささかぬるかったかもしれない。しかし、他の個性的な面々、特に、南果歩さん&松重豊さんの純愛お尋ね者カップルや、河井青葉さん(【私の男】で浅井忠信さんの恋人役だった人)&宮崎吐夢さんの不倫刑事カップル、周囲の田口トモロヲさん、村上淳さん、大森南朋さんらの中年男達の佇まいなどはとても面白かった。

【さよなら、人類】三星半

監督・脚本:ロイ・アンダーソン
出演:ホルガー・アンダーソン、ニルス・ウェストブロム、他
製作国:スウェーデン/ノルウェー/フランス/ドイツ
ひとこと感想:ロイ・アンダーソン監督の映画は、新作を見ては自分とは合わないな〜と思い、またしばらくして新作が来るとその繰り返し。なら見なきゃいいじゃんといつも思うのだが、個性のある映画は、例え自分とは合わなくても嫌いじゃないんだよね〜。

【さらば、愛の言葉よ】三星半

監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール
出演:エロイーズ・ゴデ、カメル・アブデリ、ゾエ・ブリュノー、他
製作国:フランス
ひとこと感想:フランス語の「さようなら」には「オーボワール(au revoir)」と「アデュー(a dieu)」があって、前者は「また会いましょう」だけど後者は「神の御許へ=永遠にさようなら」だと聞いたことがある。今回の映画ではやたら「アデュー」を繰り返していたので、本作がゴダールの遺言だという風評はあながち間違っていないのかもしれない。3Dが嫌いでメガネなしで見たので画面はところどころブレブレだったし、ぼんやりストーリーらしきものはあっても相変わらずよく分からなかったけれど、ゴダールはゴダールなりに人類の幸福を願っているのだろう、という気はした。

【百日紅 Miss HOKUSAI】四つ星

監督:原恵一
脚本:丸尾みほ
原作:杉浦日向子
(アニメーション)
声の出演:杏、松重豊、濱田岳、高良健吾、美保純、清水詩音、筒井道隆、麻生久美子、立川談春、他
製作国:日本
ひとこと感想:杉浦日向子さんは、漫画家としても江戸風俗研究家としても希有な方で、若くして亡くなられたのは本当に残念だった。その杉浦さんの原作が掘り起こされて若い人にも紹介されるのは喜ばしい。原恵一監督は、その中でも、葛飾北斎の娘である葛飾応為(お栄さん)の話をフィーチャーしたけれど、現存する作品は少ないけど才能のある絵師だった彼女の名前が新たに広められることは喜ばしいことだと思う。海外の人は、龍や妖怪や地獄の概念が分かれば、本作を更に楽しめるだろう。クールジャパン上等。こういう作品は、国内だけでなく、海外にもどんどん売り込んだらいい。

【サンドラの週末】四星半

監督・脚本:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
出演:マリオン・コティヤール、ファブリツィオ・ロンジォーネ、他
製作国:ベルギー/フランス/イタリア
ひとこと感想:主人公は、どうやらうつ病でしばらく仕事をお休みしていたらしい女性。職場に復帰するといきなりクビ宣告で、会社と何とか交渉すると、週末の間に他の10数人の従業員全員に会って、自分の解雇の撤回と引き替えにボーナスを諦めてくれるよう頼めとのこと。主人公は最初から心が折れてる(そりゃそうだ)。同僚だって経済的にどうしてもボーナスが必要という人が少なくなく、それを押して頼むことも心苦しい。でも主人公の家も夫婦共々も働かなければ経済的に立ち行かない……う〜んシワい。さすがはダルテンヌ兄弟、なゲロ吐きそうな設定だ。それでも旦那や友人に支えられ、主人公は何とか頑張ろうとする。(支えてくれる人がいるだけいいじゃん!という見方もあるかもしれないが。)どうなったのかは実際に本編を見て戴きたいが、主人公も頑張った結果思わぬものを得たということだろう。私も現状に不満を抱えてるだけじゃなく、もっと具体的に頑張るべきなんだろうな、と思った。

【シーヴァス 王子さまになりたかった少年と負け犬だった闘犬の物語】三星半

監督・脚本:カアン・ミュジデジ
出演:ドアン・イズジ、ハサン・オズデミル、フルカン・ウヤル、エズジ・エルギン、ムッタリップ・ミュジデジ、他
製作国:トルコ/ドイツ
ひとこと感想:舞台はトルコの郊外で、少年が拾ってきた闘犬に自分を仮託し、結果、血まみれにさせるまで戦わせてしまうという話。少年が王子様になりたい?っていう願望に固執するところにあまり乗れず、あまりついていけなかったけれど(おそらく、誰もがちやほやしてくれるような特別な存在になりたい、くらいの意味だったのだろうけど)、どんな世界の人でも思い描くような普遍的な感覚を描こうとしているところは好感が持てるかもしれないと思った。

【シェフ 三ツ星フードトラック始めました】四星半

監督・脚本・出演:ジョン・ファヴロー
出演:エムジェイ・アンソニー、ジョン・レグイザモ、ソフィア・ベルガラ、スカーレット・ヨハンソン、ボビー・カナヴェイル、ダスティン・ホフマン、ロバート・ダウニーJr.、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:【アイアンマン】のジョン・ファヴロー監督の自らのオリジナル脚本による監督・主演作。雇われているのが嫌になったシェフが自分のフード・トラックを手に入れて、ゴキゲンなキューバ音楽に合わせてキューバ風サンドイッチを売りながら、息子や相棒と共に大陸を横断する。バターもチーズもベーコンもたっぷりでカロリー滅茶高そうだが美味そう〜 !! 主役を務める監督御本人や息子役のエムジェイ・アンソニーくん、相棒役のジョン・レグイザモさん、ガールフレンドのスカーレット・ヨハンソンさん、元妻のソフィア・ベルガラさんなど、みんなキャラクターが立っていて、ストーリーも面白くて完璧!これは思わぬ拾いものの映画だった !!

【死神ターニャ】四つ星

監督・脚本:塩出太志
出演:芹澤興人、小堀友里絵、他
製作国:日本
ひとこと感想:全然恐くない他のお気楽な死神たちの造形が斬新で、疫病神や貧乏神のビジュアルもインパクトある〜。死神ものにありがちなシリアスさもみじんもなく、ヒロインとかもヒサンと言いながら基本前向きで明るいので、ひたすらファンキーで楽しい。似たような映画ばかりになりがちな新人監督の作品の中で、本作には圧倒的な個性を感じる。塩出太志監督、うまく化けて欲しいな〜。今後の新作も待ってます。

【ジヌよさらば かむろば村へ】四つ星

監督・脚本・出演:松尾スズキ
原作:いがらしみきお
出演:松田龍平、阿部サダヲ、松たか子、西田敏行、中村優子、二階堂ふみ、杉村蝉之介、皆川猿時、荒川良々、片桐はいり、モロ師岡、オクイシュージ、伊勢志摩、他
製作国:日本
ひとこと感想:いがらしみきおさんの原作を松尾スズキ氏が脚本・監督。「お金アレルギー」になった男が、お金を一銭も使わずに生活したいと山奥の村に越してくるという物語だけど、まずは「お金アレルギー」という設定が秀逸なのだが、人間社会に属する限り、どんな田舎に行ったところでお金はついて回るという現実に対する皮肉が効いている。この主人公を、ただおもしろおかしく演じるのではなく、真面目に朴訥と演じて得も言われぬ“おかしみ”を醸し出す松田龍平さんが芸術的に素晴らしい。しかし、本当のテーマは、お金云々ではなく、互いにスネに傷を持つ身でもどれだけ支え合い許容し合って生きていけるか、ということかもしれない。【夢売るふたり】コンビの阿部サダヲさんと松たか子さんの夫婦が最高でーす。

【ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して】三星半

監督・脚本:アルノー・デプレシャン
共同脚本:ジュリー・ペール、ケント・ジョーンズ
原作:ジョルジュ・ドゥヴルー『夢の分析:或る平原インディアンの精神治療記録』
出演:ベニチオ・デル・トロ、マチュー・アマルリック、他
製作国:フランス
ひとこと感想:本作は、謎の症状に悩む戦地帰りのネイティブ・アメリカンを診察したフランス人民族精神医学者が書いた、その道では有名な論文を基にしているらしい。(そもそも“民族精神医学” なる言葉を初めて聞いたのだが……。)患者の謎の症状は戦争後遺症などではなく、昔のいろいろな辛い経験が原因だったのだが、どうも正視に耐えがたいというか。結局、民族精神医学って何のことやらよく分からなかったし、この人達の友情といわれてもどう考えていいものやら、最後まで反応に困ってしまった。

【ジミー、野を駆ける伝説】四つ星

監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラヴァティ
出演:バリー・ウォード、シモーヌ・カービー、ジム・ノートン、他
製作国:イギリス/アイルランド/フランス
ひとこと感想:アイルランド内戦後の1930年代を舞台に、ジミー・グラルトンという実在の活動家を描く。ジミー・グラルトンについてはあまり細かな記録は残っていないらしいが、映画の中の彼は、健全なダンス・パーティすら禁止するほど社会・共産主義的な流れを過度に恐れていた教会などの保守勢力によって排斥され、故郷を追われる。自分にとって都合の悪い真実を見つめることを極端に拒み、ただ地道に働いて誠実に生きたかっただけの人を排斥しようとする妄信的で愚かな頑迷さは、これまでケン・ローチ監督が敵として穿ち続けてきたものなのかもしれない。ケン・ローチ監督にはいつまでもお元気で映画を作り続けて欲しいな。ケン・ローチ監督がこの世からいなくなってしまったら、本当にもう映画を観ることを卒業してもいいのかもしれない。

【シャーリー&ヒンダ ウォール街を出禁になった2人】三星半

監督:ホバルト・ブストネス
出演:シャーリー・モリソン、ヒンダ・キプニス、他
(ドキュメンタリー)
製作国:ノルウェー/デンマーク/イタリア
ひとこと感想:原題は【Two Raging Grannies】で、92歳と86歳の2人の怒れるおばあちゃん達が、人類に与えられた資源は限られているのに経済成長し続けることなんてできるのか?(……無理じゃね?)というたった一つのシンプルな問いへの答えを求めて、アメリカ中の財界人に突撃取材するというドキュメンタリー。たまに答えてくれる人もいるけれど、多くは門前払いか、無視か、嘲笑。何故なら、問題が大きすぎて誰も考えが及ばないし、誰もが前提にすることすら放棄しているから。アメリカの経済界が、いかに近視眼的な利益しか追い掛けていないかがよく分かる。これ、アメリカ映画だとばかり思っていたら、ノルウェーのドキュメンタリー監督による映画だった。考え続け挑戦し続けようとするおばあちゃん達の2人の掛け合い漫才みたいな会話は楽しかったけれど、問題への答えは出ないままだ。

【ジュピター】三星半

監督・脚本:ウォシャウスキー姉弟
出演:チャニング・テイタム、ミラ・クニス、ショーン・ビーン、エディ・レッドメイン、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:グラフィックノベルをまんま実写化したみたい。【マトリックス】みたいな時代を変えてしまうほどの衝撃はないのかもしれないけど、普通に面白いんだけど。ただ、どちらかというと実写よりアニメとの親和性が高い内容のような気もして、【アニマトリックス】みたいにアニメ化した方が受け入れられるんじゃないかとは正直思った。

【ジョーカー・ゲーム】三星半

監督:入江悠
脚本:渡辺雄介
原作:柳広司
出演:亀梨和也、深田恭子、伊勢谷友介、小出恵介、渋川清彦、山本浩司、小澤征悦、嶋田久作、田口浩正、千葉哲也、光石研、他
製作国:日本
ひとこと感想:優秀なスパイが色ボケになって要らない苦労をする話?亀梨くんは頑張ってたし、伊勢谷友介さんは無駄にカッコよかったし、渋川清彦さんや山本浩司さんが重要キャストで出てるのは好きだったけど、全体的にマンガチックで、それ以上の印象は残りにくかったかも。深田恭子さんは、ただ発注者の要求通りに底の浅〜いファム・ファタールを演じるだけじゃなく、そろそろ真木よう子さんや寺島しのぶさんみたいな女優エゴみたいなものを少しは持ってもいいんじゃないかな?
本作は、亀梨和也くん主演で何か映画を、というジャニーズ主導の企画で誰か監督を探していて、たまたま【SR サイタマノラッパー】【日々ロック】の入江悠監督に白羽の矢が当たったんじゃないかと推測する。映画界のみなさーん!今のうちにジャニーズと組ませてもらってバンバン映画作っとけー!世の中の流れを見誤っているジャニーズはもうすぐ凋落すると思うから。

【白い沈黙】三星半

監督・脚本:アトム・エゴヤン
共同脚本:デヴィッド・フレイザー
出演:ライアン・レイノルズ、スコット・スピードマン、ロザリオ・ドーソン、ミレイユ・イーノス、ケヴィン・デュランド、アレクシア・ファスト、他
製作国:カナダ
ひとこと感想:少し目を離した隙に行方不明になった娘を8年間も探し続ける夫と別居中の妻。娘のことが原因で修復しがたいほどの溝が出来ている。警察も捜査を続けていて、子供を虐待することを目的とした秘密組織で娘が生きているらしいことを突き止める。時系列が意図的にばらばらにされていて、物語を理解するのに少し時間が掛かったのはともかくとして、監禁ものということで言えば、これまでの感想とあまり大差はない感じ。個人的には、娘の立場が少しお綺麗なままにぼやかされているのが少し気になった。こういう犯罪のおぞましさ自体がぼやかされているように感じられたのだ。無論、凄惨な映像が無意味に流れることなどを望んでいる訳ではないのだが。

【新宿スワン】三星半

監督:園子温
脚本:鈴木おさむ
原作:和久井健
出演:綾野剛、山田孝之、伊勢谷友介、沢尻エリカ、深水元基、村上淳、豊原功補、金子ノブアキ、山田優、吉田鋼太郎、安田顕、真野恵里菜、丸高愛実、久保田悠来、他
製作国:日本
ひとこと感想:園子温監督にしては、これほど原作のイメージやストーリーを尊重して作っている作品は珍しいんじゃないだろうか。綾野剛さん、山田孝之さん、伊勢谷友介さんなどを始めとした俳優さんの力量を楽しむにはいい作品だったけれど、スカウトって水商売や売春の斡旋業な訳で。ファンタジーと言われればそれまでだけど、こうした中間搾取を“皆を幸せにしてる”と明るく開き直られても釈然としない。そこにはポップに描くだけじゃ不十分な現実との深い齟齬が存在しているんじゃないだろうか。

【ストレイヤーズ・クロニクル】四つ星

監督:瀬々敬久
脚本:喜安浩平
原作:本多孝好
出演:岡田将生、染谷将太、成海璃子、松岡茉優、高月彩良、黒島結菜、白石隼也、清水尋也、蜿r太郎、鈴木伸之、瀬戸利樹、豊原功補、石橋蓮司、伊原剛志、他
製作国:日本
ひとこと感想:遺伝子操作その他で超能力を持たされた(Xメンみたいね)代わりに寿命が短い若者達が、それぞれの思惑を掛けて、自分達を作り出した者達や人類を滅ぼそうとする者達と戦う……でよかったかな。瀬々敬久監督にサイキック・ウォーズものを発注する人がいるのにビックリしたが、多分、【アントキノイノチ】が割と好評だった岡田将生さんの事務所辺りが音頭を取ったんじゃなかろうか。役柄に対して、岡田さんは若干薄すぎで、岡田くんと敵対する染谷将太さんは若干濃すぎな気がしないではないけれど、若いキャストの皆さんが、有名な人も無名な人も等しく個性を発揮して頑張っているのには好感が持てた。♪暗い定めを吹き飛ばせ〜、と戦う中で人が死にすぎのきらいがあるところを除けば、概ね嫌いじゃなかった。

【STROBE LIGHT(ストロボライト)】三つ星

監督・脚本:片元亮
出演:福地教光、宮緒舞子、他
製作国:日本
ひとこと感想:熊切和嘉監督、山下敦弘監督、呉美保監督、石井裕也監督などを排出している大阪芸術大学映像学科出身の片元亮監督のデビュー作。雰囲気作りのための謎のための謎が多く、ストーリー的には所々疑問を感じるけれど、低予算でここまで本格的なサスペンスのタッチを出せる新人離れした演出力は、今後期待できるかもしれない。

【セッション】四つ星

監督・脚本:デイミアン・チャゼル
出演:マイルズ・テラー、J・K・シモンズ、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:高名な音楽クラスの生徒となった主人公は功名心のカタマリで、その天敵の先生はいじめも同然の指導をする理不尽のカタマリ。どっちもどっちのクソ野郎。こんなのは自分の思ってる音楽と違ーう!音楽ってこんな俗物根性とは全く違う次元にあるべきものなんじゃないの?……と思っていたら、音楽の神はこんなくだらない人間の思惑を超えた全く別の次元に忽然と存在していた。この圧巻のラストシーンを見るだけのために、頑張って全編を見る価値はあると思う。

【Zアイランド】四つ星

監督・脚本:品川ヒロシ
出演:哀川翔、RED RICE(湘南乃風)、鶴見辰吾、鈴木砂羽、山本舞香、水野絵梨奈、窪塚洋介、風間俊介、般若、木村祐一、大悟(千鳥)、川島邦裕(野性爆弾)、宮川大輔、中野英雄、小沢仁志、シシド・カフカ、河本準一(次長課長)、篠原ゆき子、他
製作国:日本
ひとこと感想:世界中に数多あるゾンビ映画の中でも、感染性で移動が速すぎるハイブリッド・ゾンビというコンセプトが秀逸。このアイディアはハリウッドに売ることができるのでは。これに加え、窪塚洋介さんの拳銃マニアの警官とか風間俊介さんの女好きの医者とか、意外な配役がことごとく嵌まっていて、特に、(品川ヒロシ監督と同じ)吉本興業所属の芸人さんのキャスティングが芸術的なほど素晴らしい。こうして役者が揃ったところで、ストーリー展開は分かりやすく、伏線の活かし方も上手い。唯一不満があるとすれば生き残った人が少なすぎるところくらいかな。ありとあらゆる娯楽的要素を突き詰めて分析し、それを余すところなく実現させている品川ヒロシ監督は本当に凄い。彼を輩出できただけでも、吉本興業が映画事業に手を出した意味はあったんじゃないかと、私は思っているのだが。

【セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター】四星半

監督:ヴィム・ヴェンダース、ジュリアーノ・リベイロ・サルガド
(ドキュメンタリー)
出演:セバスチャン・サルガド、他
製作国:フランス/ブラジル/イタリア
ひとこと感想:世界的写真家であるセバスチャン・サルガド氏が最新作『GENESIS』を発表するまでの軌跡。監督は、ヴィム・ヴェンダースと、サルガド氏のご長男だそうだ。(ていうかサルガド氏がまだご存命ということ自体を知らなくてすいません……。)サルガド氏は世界中の戦争や貧困の現場に足を運び、写真に収めては世に問うてきたが、ルワンダ内戦のあまりに酷い状況を目の当たりにしてすっかり鬱状態になってしまったのだそう。その後、故郷のブラジルに戻って(サルガド氏がブラジルのご出身ということも知らなくてすいません……)、荒れ果てた故郷の大地に森林を再生させる計画を妻から提案され、この地に緑が戻った経験から、人間と地球環境との関わりに関心を寄せるようになり(このプロジェクトはテラ・フォーミングのモデルケースになっているそうだ)、報道写真から方向転換したのだそうだ。『GENESIS』は素晴らしい写真集なので、いつかは入手したいものだ。

【ゼロの未来】三星半

監督:テリー・ギリアム
脚本:パット・ルーシン
出演:クリストフ・ヴァルツ、デヴィッド・シューリス、メラニー・ティエリー、ルーカス・ヘッジズ、他
製作国:イギリス/ルーマニア/フランス/アメリカ
ひとこと感想:現実とはあまり関わりたくなくて電脳世界に生きてるほとんどヒッキーな男が主人公。テリー・ギリアム監督の近作では一番いいかもしれないと思ったが、【未来世紀ブラジル】をちょっと現代風にしてコンパクトにした焼き直しみたいでもあった。この終わり方は【未来世紀ブラジル】ほどの悪夢ではないけれど、やっぱりちょっともの悲しいかもしれない

【1001グラム ハカリしれない愛のこと】三星半

監督・脚本:ベント・ハーメル
出演:アーネ・ダール・トルプ、ロラン・ストッケル、スタイン・ヴィンゲ、他
製作国:ノルウェー/ドイツ/フランス
ひとこと感想:1879年に国際キログラム原器というものが作られた後、重さの標準原器として世界各国にキログラム原器の複製が配られることになったのだそうだ。本作は、ノルウェー国立計量研究所に勤める私生活がちょっと上手く行っていないヒロインが、ノルウェーのキログラム原器を持ってパリの国際セミナーに参加してさぁどうなる、という筋書き。設定はちょっと毛色が変わっていて面白いけれど、例によってベント・ハーメル監督の映画のゆったりとした静かな雰囲気ってどうも自分には合わなかったみたい。毎度毎度すいません……。

【ソレダケ that's it】四つ星

監督:石井岳龍
脚本:いながききよたか
楽曲:bloodthirsty butchers
出演:染谷将太、水野絵梨奈、渋川清彦、村上淳、綾野剛、他
製作国:日本
ひとこと感想:【爆裂都市】とか【ELECTRIC DRAGON 80000V】とかみたいな爆音系石井岳龍作品。渋川清彦さんにしろ、村上淳さんにしろ、綾野剛さんにしろ、好きな人ばっかり出てて嬉しい!んだけど、私の歳では大音量があまりにも辛すぎて、映画の内容に集中できなかった……。感動も半ばという感じ。残念。

【ターナー、光に愛を求めて】三星半

監督・脚本:マイク・リー
出演:ティモシー・スポール、マリオン・ベイリー、ドロシー・アトキンソン、ポール・ジェッソン、レスリー・マンヴィル、ルース・シーン、マーティン・サヴェージ、他
製作国:イギリス/フランス/ドイツ
ひとこと感想:イギリスの国民的画家ターナーを、イギリスの巨匠マイク・リー監督が映画化。ティモシー・スポールさんが主演って結構レアで、絵面としても面白いと思う。しかし、この二重生活はひどいわ〜とは思っても、ターナー自身がどういう人生を歩いたかということは割とどうでもいいと思っていることに気がついた。ターナーの絵は嫌いじゃないけど、自分にとっては私生活に興味が湧くタイプの芸術家じゃないんだな。

【小さき声のカノン 選択する人々】三星半

監督:鎌仲ひとみ
(ドキュメンタリー)
製作国:日本
ひとこと感想:子供たちへの放射能の影響に対する不安と向き合うために、安全な食品の調達や夏休み中の県外での保養など、自分達なりに行動を始めている福島在住の若いお母さん(&お父さん)達の姿などを描く。全部の意見に全面的に賛成という訳ではないかもしれないけれど、自分にもし子供がいて福島で暮らしていたら、同じ行動を取っていたかもしれない。何につけ、その場の人々の感覚や判断や決断が最も尊重されるべきもので、それに寄り添っていくことが必要なのだなと改めて思った。

【チャッピー】四つ星

監督・脚本:ニール・ブロムカンプ
共同脚本:テリー・タッチェル
出演:シャールト・コプリー、デーヴ・パテル、シガニー・ウィーヴァー、ヒュー・ジャックマン、ニンジャ、ヨーランディ・ヴィッサー、ホセ・パブロ・カンティージョ、他
製作国:アメリカ/メキシコ/南アフリカ
ひとこと感想:生まれた時は汚れを知らない赤ちゃんみたいに無垢なロボットだったチャッピーが、理不尽な苛めに遭うわ、犯罪に利用されてしまうわで、人間の手前勝手な欲望にさんざん翻弄されて本当に気の毒。私も含め、ロボットに容易く感情移入してしまう人が多い日本では、ツライと感じてしまう人も結構多いのではなかろうか。で、最後には結局、すっかり犯罪が生業となったり、人間の方もみんなロボット化してしまったり、朱に交われば赤くなり、すったもんだでとんだディストピアに帰着って、結構トリッキーなプロットだな。昔、『鉄腕アトム』でマッドサイエンティストに利用されるロボットを描いた手塚治虫氏が本作を見たら何て言ったか、ちょっと聞いてみたかった気がした。

【チョコリエッタ】四つ星

監督・脚本:風間志織
原作:大島真寿美
出演:森川葵、菅田将暉、他
製作国:日本
ひとこと感想:フェリーニの【道】をモチーフに、自分の周りの世界に違和感を覚える映研の女の子とその先輩が、自分の“道”を探してさまよう物語。今の日本の学校に、昔みたいな泥臭い空気感の映研があるのかどうかはよく知らないが、まぁそこは置いといて。ヒロインの森川葵さんは、それぞれのシーンに雰囲気を出す瞬発力はあるけれど、映画全体でトータルに演技を組み立てるとなると、まだまだこれからの発展途上という感じ。それでも、風間志織監督のいい意味での変わらなさと相俟って、独得の空間を創り上げていたのではないかと思う。

【追憶と、踊りながら】四つ星

監督・脚本:ホン・カウ
出演:ベン・ウィショー、チェン・ペイペイ、アンドリュー・レオン、ナオミ・クリスティ、ピーター・ボウルズ
製作国:イギリス
ひとこと感想:自分を嫌ってる人と仲良くするのはどんな場合でも難しいわよね。ましてや、死んでしまったゲイの恋人のお母さん、しかも中国系で言葉も通じない人とコミュニケーションを取るなんて至難の業。それでも主人公は、あきらめそうになりながらも、少しずつ距離を縮めようと頑張ってみる、何故なら愛した人のお母さんだから(結局一度はキレちゃうけど)。人間が生きていくために必要な、他者の温度を感じられる距離感とはどういうものだろうと考えてみた。派手さはないけどいい映画だと思った。

【繕い裁つ人】四つ星

監督:三島有紀子
脚本:林民夫
原作:池辺葵
衣装監修:伊藤佐智子
出演:中谷美紀、三浦貴大、片桐はいり、余貴美子、中尾ミエ、伊武雅刀、黒木華、杉咲花、他
製作国:日本
ひとこと感想:服ロハス!足踏みミシンをかたかたと鳴らす職人の手仕事で丁寧に仕上げられる、時代を経ても着続けられる上等な洋服は、まるっきりファストファッションの対極。こういう仕立屋さんが知り合いにいたら、自分ももう少し服に興味がある人間になっていたのではないだろうか。中谷美紀さんが演じる、自分の仕事に誇りを持ち、受け継がれてきたものを守りながらも発展させていこうと思い至る、背筋のピンと伸びた服職人という役柄の説得力が凄い。正直、同じ三島有紀子監督の【しあわせのパン】や【ぶどうのなみだ】はあまり私の感覚に合う作品じゃなかったけれど、本作ではついに押し切られてしまったかもしれない。

【妻への家路】四星半

監督:チャン・イーモウ
脚本:ヅォウ・ジンジー
原作:ゲリン・ヤン
出演:チェン・ダオミン、コン・リー、チャン・ホエウェン、他
製作国:中国
ひとこと感想:うちの母は昔風のクラシックなラブ・ストーリーが大好きなのだが、そういう母に勧められる大人向けのラブ・ストーリーって、最近はほとんどなかったりする。そんな母に久々に勧めることが出来ると感じられたのが本作だった。文化大革命で拘束されていた夫が戻ってきたが、妻は夫と引き離された経験が辛すぎて記憶障害を起こしており、帰ってきた夫を認識できなかった。けれど、夫は記憶の戻らない妻に寄り添い続ける決意をする。(ここに、夫の拘束の原因を作った娘と妻との確執、といった要素も絡んでくる。)反右派闘争や文化大革命は中国系の映画で何度も繰り返し描かれるけれど、チャン・イーモウ監督の世代の人には、決して抜けない棘のように記憶に突き刺さり続ける出来事だったのだと改めて思わされる。こんなに悲劇的な話なのに、見終わって残っているのは重厚な味わいの中にもじんわりと暖かい感触で、チャン・イーモウ監督はやっぱり巨匠なのだなと改めて思い起こした。もし若い人がこの映画を見る機会があったら、これをきっかけに、今の中国になる前の時代に何が起こったのか、少し調べてみるのもいいのではないかと思った。
しかし……「人民バレエ」というものがかなりの衝撃だったんだけど……。これも一種の文化の吸収や進化ということになるのだろうか?しかしそもそも、バレエは西洋の退廃芸術とかだったりはしないのかな?

【ディアーディアー】四つ星

監督:菊地健雄
脚本:杉原憲明
出演:中村ゆり、桐生コウジ、斉藤陽一郎、柳憂怜、山本剛史、染谷将太、佐藤誓、政岡泰志、松本若菜、菊地凛子、他
製作国:日本
ひとこと感想:かつて絶滅したとされていた鹿の目撃者になってしまったことで人生につまづいてしまった田舎町の3兄弟妹(きょうだい)の物語。閉塞した人間関係と停滞する経済状況という田舎のネガティブな面が延々と描かれ、見ていてあんまり明るい気分にはなれないけれど、このエグいくらいに的確な描写力は凄いと思う。登場人物の皆様に幸あれと願わずにはいられない。そして、監督の他の作品も是非見てみたいと思った。

【天空の蜂】三星半

監督:堤幸彦
脚本:楠野一郎
原作:東野圭吾
出演:江口洋介、本木雅弘、仲間由紀恵、綾野剛、國村隼、光石研、石橋蓮司、竹中直人、やべきょうすけ、永瀬匡、佐藤二朗、手塚とおる、松島花、柄本明、落合モトキ、石橋けい、向井理、他
製作国:日本
ひとこと感想:ヘリコプターをハイジャックして原子炉に落とすと脅し、日本のすべての原発の破棄を要求してきた犯人。これに対峙する警察や原子炉の設計者達との攻防を描く。細かいツッコミどころはいろいろあるし、時間的に切羽詰まってからバタバタするのはお約束だけど(そんなシーンで長々と悠長に会話してんじゃねーよ!)、概ねは手に汗握る展開で、大型映画らしいスケール感はあったと思う。原発に対しては是とも非とも言ってないが、この国には原発を止める意思はないとははっきり言っていたのは興味深かった。役者で特に印象に残っているのは、やはり二人の中心人物の江口洋介さん本木雅弘さんと、キーマンの綾野剛さん。本木さんを映画でこんなにがっつり拝見したのは久々の印象。江口洋介さんはほんとにトラボルタ・タイプ※だな〜と改めて思った。
(※個人的に、役者をジョン・トラボルタ型とアンソニー・ホプキンス型に分けてみることがある。前者は、どちらかというと持って生まれた資質の魅力で勝負するタイプで、後者は、どちらかというと演技を理詰めで追求して磨き上げるタイプ。多くの役者さんは両方の資質が混ざり合っていて、前者の資質が勝っている人は珍しいと思う。前者では他には長瀬智也さんとかがイメージ。)

【天使が消えた街】三つ星

監督:マイケル・ウィンターボトム
脚本:ポール・フィラガー
出演:ダニエル・ブリュール、ケイト・ベッキンセイル、ヴァレリオ・マスタンドレア、カーラ・デルヴィーニュ、他
製作国:イギリス/イタリア/スペイン
ひとこと感想:イタリアに留学していたイギリス人女性が殺害され、そのルームメイトのアメリカ人女性らが容疑者として捕まるが、容疑者の容姿が美しく私生活が奔放であったことからマスコミ報道があらぬ方向に過熱し一大スキャンダルと化した、という実際にあった事件を元にした映画。しかし、この狂騒の渦中にあったであろう欧米で見るのとは異なり、この事件自体がそもそも知られていない日本で見るのでは何のこっちゃという感じ。しかも、この事件を違った視点から見つめ直そうとする映画監督が主人公だったりするのでますます距離感が……。これは日本では評価のしようがないのは仕方ないと思う。

【天の茶助】二星半

監督・脚本・原作:SABU
出演:松山ケンイチ、大野いと、伊勢谷友介、田口浩正、大杉漣、玉城ティナ、寺島進、他
製作国:日本
ひとこと感想:人間の運命は天界にいる無数の脚本家が描くシナリオ通りに動いており、しかもそのシナリオは互いに干渉し合っている?最近自分は非現実的な設定を理解するのが大変難しくなっているので、こういう物理的に無理めな仕組みがそもそも受け入れ難く、そんな中で、主人公がたまたま1人を特別に救いたくなって直接下界に赴くなんて非効率的で自分勝手な話はあり得ないと思われ、についていくのが難しかった。しかも、下界に降りた主人公が実は昔×××だったとかいうご都合主義的な展開はひどすぎない?豪華なキャストとか、なんかいろいろ勿体ない。

【トゥーマスト ギターとカラシニコフの狭間で】三星半

監督:ドミニク・マルゴー
出演:トゥーマストの皆さん、他
製作国:スイス
ひとこと感想:サハラ砂漠のベルベル人系の遊牧民、トゥアレグ族のバンド「トゥーマスト(Toumast)」を追ったドキュメンタリー。リーダーは元レジスタンス兵士で、銃ではなく音楽でトゥアレグ族の状況を世界に知ってもらおうとバンドを始めたのだそうだ。トゥアレグ族が元々住んでいた地域は20世紀初めに始まったフランスの植民地政策によりアルジェリア、ニジェール、リビア、マリ、プルキナファソの5つの国に分割され、そこからご多分に漏れず始まった苦難の歴史が未だに続いているのだという。21世紀になっても、世界の混乱と不平等が解消されそうな糸口は全く見えないのだけれど、銃を放棄した彼等のような人々のこんな戦い方には、一筋の光明があるのかもしれない。

【東京無国籍少女】二星半

監督・脚本:押井守
原案:山岸謙太郎【東京無国籍少女】
出演:清野菜名、田中日奈子、吉永アユリ、花影香音、りりィ、金子ノブアキ、本田博太郎、他
製作国:日本
ひとこと感想:スッカスカで観念的で独りよがりなストーリー。押井守監督のよくない癖が全部出てる。ていうか、これまで煮え湯を飲まされ続けてきた押井監督の実写映画にどうして行ってしまったのか……。この映画の元ネタになったという短編は見ていないのだが、正直、本作は不要だったんじゃないのか。清野菜名さんのアクションを見せたかったのであれば、その目的だけはそれなりに果たしているかもしれないが。

【ナイトクローラー】四つ星

監督・脚本:ダン・ギルロイ
出演:ジェイク・ギレンホール、レネ・ルッソ、リズ・アーメッド、ビル・パクストン、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:【リアル・スティール】の脚本家ダン・ギルロイの脚本・監督作。「ナイトクローラー」は“夜を這いずり回る者”という意味で、人生に成功してこなかったスクープ・ハンターがやっと成功らしきものを掴み、ミスを挽回してしがみつくために人間として超えてはならないであろう一線を次々と超えてしまうという話。そのヤバさを薄々と分かっていながら、彼からスクープ映像を買い続ける女性ディレクターも、また成功の亡者の一人なのだろう。社会の中で成功を収めることが最も大切であって、そのためには手段は問われない傾向があるといったような、アメリカという国のえげつない一側面を見事に穿っている。そんな人々を演じているジェイク・ギレンホールさんやレネ・ルッソさんが素晴らしい。

【涙するまで、生きる】四つ星

監督・脚本:ダビド・オールホッフェン
原作:アルベール・カミュ
出演:ヴィゴ・モーテンセン、レダ・カテブ、他
製作国:フランス
ひとこと感想:アルジェリアの山奥でひっそりと暮らしていて、ひょんなことからアラブ人を連行するよう命じられる元フランス軍人が主人公。カミュはフランス領だったアルジェリアの出身で、フランスとアルジェリアの相互理解を望んでいたということだが、本作ではそんなカミュのアルジェリアに対する思いの複雑さを少し垣間見ることができる。参考までに、アルジェリアの独立戦争を描いた1966年の【アルジェの戦い】や、何年か前に公開されたカミュの自伝的作品【最初の人間】なんか併せて見るといいかもしれない。

【二重生活】四つ星

監督:ロウ・イエ
脚本:メイ・フォン、ユ・ファン
出演:チン・ハオ、ハオ・レイ、チー・シー、他
製作国:中国/フランス
ひとこと感想:文字通り、アホ男が、本妻と愛人(それぞれ子供を作っている)の間を行き来する話。この本当に何も考えていない頭カラッポ男の行動は完全に私の理解を超えているが、男に他の女がいることを知った女達が取る行動がこれまたエグい。最近見た中国映画って、剥き出しの欲望のままぶつかり合う殺伐とした人間関係を描く心寒い作品ばかりなのは何なんだろう。ここまで己の欲望のまま、ありのままに動く人達ばかりを見ていると、私が日本文化で一番嫌いな面、つまり、外面を取り繕い自分がどう見えるかということばかりに腐心する性質というのも、たまには必要な美徳なんじゃないかという気すらしてくる。

【日本のいちばん長い日】四つ星

監督・脚本:原田眞人
原作:半藤一利
出演:役所広司、本木雅弘、松坂桃李、堤真一、山崎努、他
製作国:日本
ひとこと感想:日本の人民にこれ以上の苦難を背負わせたくないから戦争は終結させてくれと天皇がさんざん頼んでいるというのに、「一億玉砕」「本土決戦」とか言って、国民が一人残らず死ぬまで戦争を続けるべきだ、そう考えない天皇は間違っているから説得することこそが正しいと言っていたという陸軍の頭の悪さ。焼け残ったご立派な建物の中で飯をたっぷり食いながら、日本軍の勝利のおめでたい幻影を脳内だけで膨らませていた愚かさ。人間が一人残らず死に絶えた土地なんて最早国とも呼べない、ということが分からないのだろうか?終始ゲロ吐きそうで、どうしてこんなものを描こうとしたのか、最初はよく分からなかった。逆に、今の世に当時の陸軍の愚かさを喧伝するためなのか?あるいは、こんな状況下でも戦争を終わらせるべく尽力した鈴木貫太郎首相や阿南陸軍大臣を始めとする人々の姿を描きたかったのか?そう考えればよく出来た映画であるような気もしてきたのだけれども。

【脳内ポイズンベリー】四つ星

監督:佐藤祐市
脚本:相沢友子
原作:水城せとな
出演:真木よう子、西島秀俊、神木隆之介、吉田羊、桜田ひより、浅野和之、古川雄輝、成河、他
製作国:日本
ひとこと感想:少女マンガの原作を【キサラギ】【ストロベリーナイト】の佐藤祐市監督で映画化。脳内に「ポジティブ」「ネガティブ」「衝動」「理性」「記憶」といういろんな自分がいてせめぎ合ってるという発想は面白く、これが某ピクサーの某作品とどう違うのかというと、それぞれの脳内人格が自分が全体の要素であるということを理解しているところと、それゆえにちゃんと合議で意志決定してトータルの人格を成立させようとしているところ。(実はシークレットの6人目がいて、この人だけ激しく例外なんだけど……。)それぞれの人格は、それぞれの要素を煮詰めた極端な性格をしているので、見ててげんなりさせられたりする部分もあるんだけど、でも30歳くらいってこういうことで一番悩んでる年代で、それを詳細に描くとこういうふうになるというのは誠実な描き方なかもしれない。しかし、このトータル人格を演じている真木よう子さんが、そもそもこういったことでウジウジ悩むタイプには見えないんだよな。演技力でカバーしてるとは言え、その辺りには若干齟齬があるかもしれない。

【野火】四つ星

監督・脚本・出演:塚本晋也
原作:大岡昇平
出演:リリー・フランキー、中村達也、森優作、中村優子、他
製作国:日本
ひとこと感想:太平洋戦争の悲惨さを描いている日本映画と聞かれて私が思い浮かべるのは、ドキュメンタリーでは原一男監督の【ゆきゆきて、神軍】、池谷薫監督の【蟻の兵隊】、亀井文夫監督の【戦ふ兵隊】など、劇映画では熊井啓監督の【ひかりごけ】(これも実際の事件が基になっているらしいが)などで、筆舌に尽くしがたい物資の少なさに起因する悲劇的状況を描いているものが多い。(しかも、その中の多くでは人肉食について言及がなされている。)市川崑監督の【野火】も、自分の中でそうした一群の映画に連なる一作で、それを今日的な意義を問い直しながらリバイバルすることには意味があると思う。ここ10年位に作られた太平洋戦争映画では最も見る価値があるだろう。この映画に戦争の総てが描かれている訳ではないかもしれないが、少なくとも、【永遠の0】とか見て戦争が分かった気になっている若い人には是非見てもらいたい。現実の戦争の大部分はあんなにお綺麗なものじゃなかったということは、声を大にして言いたいと思う。

【バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)】四星半

監督・脚本:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
共同脚本:ニコラス・ヒアコボーネ、アレクサンダー・ディネラリス・Jr、アルマンド・ボー
出演:マイケル・キートン、エドワード・ノートン、エマ・ストーン、ザック・ガリフィナーキス、アンドレア・ライズブロー、エイミー・ライアン、ナオミ・ワッツ、リンゼイ・ダンカン、他
ドラム:アントニオ・サンチェス
製作国:アメリカ
ひとこと感想:落ち目の映画スターが俳優としての自負を取り戻そうともがく物語。枯れかけた初老の俳優を演じるマイケル・キートンさんを始め、娘役のエマ・ストーンさん、共演俳優役のエドワード・ノートンさん、恋人役のナオミ・ワッツさんなど、俳優さん達の演技のぶつかりあいが凄まじく、がっつり堪能することができる。アントニオ・サンチェスのジャズ・ドラムのみをフィーチャーしたBGMが緊迫した雰囲気を盛り上げているのも無茶苦茶カッコいい!アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の映画にはこれまでハズレがないけれど、よくこれだけ次々とアイディアがあるものだと驚嘆せざるを得ない。

【徘徊 ママリン87歳の夏】四つ星

監督:田中幸夫
(ドキュメンタリー)
製作国:日本
ひとこと感想:人の老い方は千差万別だから、自分の親がいつどんなふうに老い始めるかなんて分からないし、事前に準備のしようもない。幸いウチの母親はまだまだ元気だけど、そろそろ後期高齢者だし、本格的に老い始めたらどうなるんだろう……と不安にもなってしまう。でも、認知症の母親の面倒を見ているこの映画のファンキーなおばさまの中に、そんな不安へのヒントが少しだけ垣間見えた気がした。認知症って、思考回路があちこち繋がらなくなってしまう病気なんだね。昔みたいな生活が送れなくなったり、昔みたいに意思の疎通ができなくなったりするかもしれないけれど、思考回路自体はどこかに存在している訳だから、それほどまでには恐れることもないのかもしれない。この映画のおばさまみたいな度量が自分にあるかどうかは分からないけど、以前よりは少しは気が楽になったような気がする。

【博士と彼女のセオリー】四つ星

監督:ジェームズ・マーシュ
脚本:アンソニー・マクカーテン
原作:ジェーン・ホーキング
出演:エディ・レッドメイン、フェリシティ・ジョーンズ、チャーリー・コックス、他
製作国:イギリス
ひとこと感想:ホーキング博士は学生時代からある女性と付き合っていたんだそうで、博士がALSを発症しても二人は結婚したけれど、結局、女性はいろいろ疲れてしまって介護を手伝ってくれていた男性と再婚してしまい、博士も自分の看護師だった女性と再婚する。(けれどこの人から虐待を受けてまた離婚したとか何とか。)それでも、博士の業績は、この元妻の長年の支えがあればこそだったというのは確かだったようだ。このホーキング博士を演じたエディ・レッドメインさんがとにかく抜群に上手くて、これでアカデミー賞を受賞したというのは大納得。ただ、アカデミー賞には病人役が有利という説は再び証明されてしまったかもしれないが。

【薄氷の殺人】四つ星

監督・脚本:ディアオ・イーナン
出演:リャオ・ファン、グイ・ルンメイ、他
製作国:中国/香港
ひとこと感想:蜘蛛女、飛んで火に入る冬の虫。自分が一番不幸だという顔をして、そんな自分を人身御供にするかに見せかけて、「オレこそが救ってやれるんだ」と勘違いするバカっぽい男達が与えるものを享受している、一番タチが悪いタイプの受け身型ファム・ファタール。あ゛あ゛あ゛見ててイガイガする〜 !! この薄ら寒さを客観的に描き出しているのは本当に凄いと思うけど、見ていて本当に腹立って腹立って仕方なかった。

【バクマン。】四星半

監督・脚本:大根仁
原作:大場つぐみ、小畑健
出演:佐藤健、神木隆之介、小松菜奈、染谷将太、桐谷健太、新井浩文、皆川猿時、山田孝之、リリー・フランキー、宮藤官九郎、他
製作国:日本
ひとこと感想:漫画バトルシーンとか、プロジェクションマッピングを使った執筆シーンとかの演出が斬新!本来地味な作業であるはずのマンガの執筆をここまでポップに描き、ついでに恋愛や友情、ライバルとの切磋琢磨を経た主人公の成長なんていうあまりにも王道な青春ものにもなっていてびっくり。原作よりは登場人物もエピソードも絞っているみたいだけど、それで2時間のストーリーを再構築している匙加減がまた上手い。もちろん原作の力は大きいし、完璧すぎるキャストの貢献も大きいけれど、大根仁監督の手腕には本当に唸らされた。

【バケモノの子】四星半

監督・脚本:細田守
声の出演:役所広司、宮崎あおい、染谷将太、広瀬すず、大泉洋、リリー・フランキー、津川雅彦、山路和弘、宮野真守、山口勝平、長塚圭史、麻生久美子、他
(アニメーション)
製作国:日本
ひとこと感想:行き場をなくした人間の少年・九太が、渋谷の路地裏から繋がっているバケモノの世界で、バケモノの熊鉄と“親子”みたいなものになる物語。キャラクターも舞台設定もストーリー展開も完全無欠。特に、熊鉄が“息子”のために迷い無く取った道には泣けた。今までの細田守監督作品で文句なく一番好き。人間は心の闇を抱えているというけれど、だからこそ、その闇を補うべく強くなろうとするんだね。

【母と暮せば】四つ星

監督・脚本:山田洋次
共同脚本:平松恵美子
出演:吉永小百合、二宮和也、黒木華、加藤健一、浅野忠信、他
製作国:日本
ひとこと感想:広島の原爆を生き残った女性を描いた井上ひさし原作の黒木和雄監督作品【父と暮せば】と対になる作品。井上ひさし氏は『父と暮せば』を広島・長崎・沖縄の3部作で構想していたそうなのだが、果たせずにお亡くなりになり、山田洋次監督がその志をついて本作を創作したとのことだ。最後の家族だった息子を長崎の原爆で失い一人残された女性の元に、息子が幽霊として現れる。女性が息子の婚約者に次の人生を歩ませようと算段する、という展開は概ね心に沁みるものだったけど、最終的にこの女性が死んでしまうって展開はどうなの。母親は家族に殉じるのが幸せだ、的な価値観は古くない?助産婦さんなら、長生きしてたくさんの子供を取り上げて未来に貢献すればいいじゃんか、と思ったんだけど。

【パプーシャの黒い瞳】四つ星

監督・脚本:ヨアンナ・コス=クラウゼ、クシシュトフ・クラウゼ
出演:ヨヴィタ・ブドニク、ズビグニェフ・ヴァレリシ、アントニ・パヴリツキ、他
製作国:ポーランド
ひとこと感想:ロマ(ジプシー)の女性で歴史上初めて「詩人」となったパプーシャ(プロニスワヴァ・ヴァイス)を描いた作品。ポーランドのクシシュトフ・クラウゼ監督が手掛け、監督の死後に奥様のヨアンナ・コス=クラウゼ監督が完成させたのだそうだ。ポーランドのジプシーがナチスの迫害を受けつつあった時代に、明らかに女性の発言力が無いコミュニティで、親が勝手に決めた相手に無理矢理嫁に行かされたこと自体が不幸の始まり。その上、字を習って使うことも、自分達の世界観を書き残して外部の人の目に触れさせることも呪われた所業とされるという想像を絶する状況。案の定、彼女は精神を病み、ジプシーのコミュニティからはつまはじきにされて、幸福とは言えそうにない人生を歩むことになってしまった。いつの世も、こと芸術に関しては、作品の素晴らしさと作者の幸福がリンクするとは限らないのが残酷。けれど、彼女が詩を書き残したことでジプシーの豊かな世界観や自然観の一端が世に知られることになり、私達は今でも彼女の詩を味わうことができるのだ。
監督によると、「ロマ」という呼称は、1970年代のロマ会議でバルカンのロマたちが主張して以降広まったものなので、1910年代頃を描いているこの映画では「ジプシー」と呼ぶのが妥当ではないかとのこと。現在でも「ロマ」という呼称を嫌がるジプシーの人達もいるとのことで、難しいけれど、その時々の文脈で判断しなきゃいけないんだね。

【バベルの学校】四つ星

監督:ジュリー・ベルトゥチェリ
出演:ブリジット・セルヴォニ、適応クラスの皆さん、他
(ドキュメンタリー)
製作国:フランス
ひとこと感想:フランスには各学校に、様々な理由で外国から移住してきた子供達が入る「適応クラス」(reception class)という学級があるんだそうな。国籍も人種も宗教も育ってきた家庭環境も本人の個性もバラバラなのだが、その学校の教育環境に慣れるまでは1つのクラスで学び、お互いに少しずつ本音を出し合いながら、お互いの存在を尊重することを少しずつ学んでいく(授業はフランス語で行われる)。監督はヨーロッパでも人種差別の傾向が強くなっていることに危機感を覚えたこともあって本作を作ったのだそうで、この映画の中の先生は後にフランス国民教育省で先生を教える教官になったのだそうだ。今は難民流入問題で様々なことが大変難しくなっているが、そもそもヨーロッパには、長い歴史を経て獲得してきた人類の共存という理念が厳然として存在している。こういうカリキュラムが現実に存在していることに、その底力を見たような気がした。

【原宿デニール】二星半

監督・脚本:タカハタ秀太
出演:武田梨奈、BEE SHUFFLE、今野浩喜、麻宮彩希、木下ほうか、山本浩司、他
製作国:日本
ひとこと感想:例によって武田梨奈さんが出てるからと見に行ってしまったが、タカハタ秀太監督(かつて草g剛さんが主演した【ホテルビーナス】などの監督)とは合わないんじゃないかな〜という悪い予感がそのまま当たってしまった。おそらく、このBEE SHUFFLE(韓国人3人と日本人2人の男の子のユニット)というグルーブの売り出しありきの企画なんだろうけれど、若者受けするように原宿を舞台にして、監督の好みで梨奈さんに警官のコスプレをさせ、パンストを脱がせ、今野浩喜さんと不倫させるというシーンを追加して、あとは適当に繋ぎ合わせて辻褄を合わせようとしただけなんじゃなかろうか。それでクライアントの要望通り作れているのなら、その能力には感服するけれど、そこにワクワクする何かがあるかどうかは別問題。梨奈ちゃん、ほんっと仕事は選んで欲しいわ、と真剣に思った。

【春子超常現象研究所】四つ星

監督・脚本:竹葉リサ
出演:中村蒼、野崎萌香、小日向文世、青木さやか、池田鉄洋、マメ山田、ブラザートム、斎藤工、高橋由美子、他
製作国:日本
ひとこと感想:人格を持ったテレビ(♂)とついつい男女の関係を持ってしまうとか、何てアホなプロットなの〜〜!私のツボには完全に入ってしまい、見ている間中爆笑が止まらなかった。けど、おバカな展開の中にも、自ら愛を求めて行動するヒロインがいじらしくも麗しく、ポップさの中に何とも言えない可愛いらしさがあるのが堪えられない。日本ではナンセンス・コメディは難しいと心密かに思っていたのに、こんなところに逸材がいらっしゃったとは!竹葉リサ監督!これからのご活躍を期待していいですか !?
ヒロインの野崎萌香さんのコメディエンヌとしても才能もさることながら、テレビ男なんていうすっとぼけた役を被りものをして演じながら、何とも言えないユーモアと色気を醸し出して決して下卑た感じにならない、中村蒼さんの俳優としてのポテンシャルの高さをもの凄く感じた。お二人とも、監督同様、今後のご活躍を心よりお祈りしております。

【パレードへようこそ】四つ星

監督:マシュー・ウォーチャス
脚本:スティーヴン・ベレスフォード
出演:ベン・シュネッツァー、ジョージ・マッケイ、ビル・ナイ、イメルダ・スタウントン、アンドリュー・スコット、パディ・コンシダイン、ドミニク・ウェスト、ジョセフ・ギルガン、フェイ・マーセイ、フレディ・フォックス、他
製作国:イギリス
ひとこと感想:サッチャー政権時代に相次いで閉鎖された炭鉱の労働組合を支援したゲイとレズの団体の実話を元にした話。史実では、イギリス最強の労働組合と言われていた炭鉱労働組合は政府に敗北、イギリスの労働組合運動は衰退し、イギリスは強者に優しく弱者に厳しいグローバリズムへの道を突き進むことになったという。既に輸入石炭の方が安く、炭鉱の維持は不採算だったとはいえ、炭鉱の存在が地域経済の屋台骨でもあったから、この後イギリス社会がどれだけ変質していったのか、想像に難くない。そして、【ブラス!】【リトル・ダンサー】【フル・モンティ】などの例を挙げる間もなく、これだけモチーフとして何度も現れる炭鉱閉鎖の問題は、イギリス社会にとってどれだけ重要な出来事だったのかと今更ながら思う。
そしてイギリスは、【マイ・ビューティフル・ランドレッド】【モーリス】【アナザー・カントリー】といった同性愛をモチーフにした映画を世界に先駆けて発信していた国でもあった。この2つのモチーフを合わせた映画(しかも実話ベース)というのは、最初思った以上に重要な気がしてきた。機会があったら是非一度ご覧になってみることをお勧めする。

【ピース オブ ケイク】四つ星

監督:田口トモロヲ
脚本:向井康介
原作:ジョージ朝倉
出演:多部未華子、綾野剛、松坂桃李、木村文乃、光宗薫、菅田将暉、柄本佑、峯田和伸、安藤玉恵、森岡龍、宮藤官九郎、廣木隆一、他
製作国:日本
ひとこと感想:♪たやすいことよね〜、と歌うほどには容易くない恋愛あるある。ヒロインは、好きな人とやっと両思いになれたけど、元カノの影がちらつき始めて動揺し、仕事も恋愛も周りに流されるままだった自分をようやく省みるようになる。後で考えると気恥ずかしくなるような青臭い時代にトライ&エラーを繰り返しながら何かを探り当てようとする若い人の姿がしっかりと捉えられているところは、田口トモロヲ監督の他の作品にも通底するようなテーマなのかもしれない。ただ、主演の多部未華子さんと綾野剛さんは、いかにもビジネス恋愛、とまでは言わないけど、熱量が若干低そうに見えたのがちと気になった。ヒロインを助ける友人のオカマの天ちゃんを演じた松坂桃李さんはいい味出してた。この人は結構どんな役でもさらりとやってのける、いい意味での器用さがあると思う。

【HERO】四つ星

監督:鈴木雅之
脚本:福田靖
出演:木村拓哉、松たか子、北川景子、杉本哲太、八嶋智人、濱田岳、小日向文世、吉田羊、正名僕蔵、松重豊、角野卓造、佐藤浩市、勝矢、大倉孝二、イッセー尾形、田中要次、森カンナ、新井浩文、児嶋一哉、James C. Burns、Greg Dale、他
製作国:日本
ひとこと感想:検事となった松たか子さんが帰ってきて、木村拓哉さんの新たなチームと共に外交官特権絡みの事案に挑む……。ドラマ版は見ていないのだけれど、万人の期待に応えることを狙ってそれを果たすのだから、単純に凄いと思う。俳優さんとかいろいろ素晴らしい要素はあるけれど、福田靖氏の脚本が盤石だというのが最大の成功要因なんじゃないだろうか。

【ピエロがお前を嘲笑う】三星半

監督・脚本:バラン・ボー・オダー
共同脚本:ヤンチェ・フリーゼ
出演:トム・シリング、エリアス・ムバレク、他
製作国:ドイツ
ひとこと感想:何とか新しく見えるものを作りたいという熱意は感じられ、終盤のストーリーに2ひねりくらいある展開にちょっと驚いた。が、そもそもハッカー集団内のすったもんだというとお話の広がりには大体限界があり、概ねは想像の範囲内で、度肝を抜かれるというほどのことはなかったような……。

【光のノスタルジア】四つ星
【真珠のボタン】四つ星

監督:パトリシオ・グスマン
(ドキュメンタリー)
製作国:【光のノスタルジア】:フランス/ドイツ/チリ、【真珠のボタン】:フランス/スペイン/チリ
ひとこと感想:チリの軍事独裁政権下での暗黒の近代史を、チリの悠久の大地の記憶にリンクさせて織り込んだドキュメンタリー。パトリシオ・グスマン監督は一貫して本作のようなチリの近代史を描いてきたドキュメンタリー作家なのだそうだ。チリは苦難の歴史を歩むことになったけれど、そもそも文化的ポテンシャルは高い国だったのだなと思う機会が多い今日この頃。この映画にも、深い教養に裏づけられた、圧倒的な知性の広がりを感じた。

【ピクセル】三星半

監督:クリス・コロンバス
脚本:ティム・ハーリヒー、ティモシー・ダウリング
出演:アダム・サンドラー、ケビン・ジェームズ、ミシェル・モナハン、ピーター・ディンクレイジ、ジョシュ・ギャッド、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:パックマン!ドンキーコング!街そのものが巨大な3Dのクラシック・アーケード・ゲームと化す!これらのゲームをリアルタイムで知らない若い人にはなんのこっちゃかもしれないが、街全体がアーケードゲームになってる絵面や、あの小さいキューブに崩れる感じが凄く面白い。最初からストーリーなんか期待してなかったのでオーッケイ !! ただ単純にひたすら楽しかった!

【ビッグ・アイズ】三つ星

監督:ティム・バートン
脚本:スコット・アレクサンダー、ラリー・カラゼウスキー
出演:エイミー・アダムス、クリストフ・ヴァルツ、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:妻が描いた絵を夫が自分の絵だと偽って売っていたという実際のゴースト画家事件を描いているのだが、この夫というのが、まるで安手のコミックのヒールみたいにあまりにも分かりやすい下司野郎の悪役で、まるでリアリティが無い。まぁ実際に非道い人だったみたいだけど、それにしたって、もう少し描きようがあったんじゃないだろうか。もしかしてティム・バートン監督は、人生の機微とか人間のきめ細かな心の揺らぎとかはいよいよ描けなくなったのだろうか。いや、もともとそんなの描くタイプの人じゃなかったんだっけな……。

【ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム】四つ星

監督・脚本:マーク・バートン、リチャード・スターザック
(アニメーション)
製作国:イギリス/フランス
ひとこと感想:アードマン・アニメーションの最新長編。テレビで放映している短編もたまに見ると面白いけれど、長尺になってもダレてなくて掛け値なく面白い。決まり切った日常に嫌気が差したショーン達が一騒動起こすけれど、結局は元の暮らしが一番という話。ショーン達も牧羊犬のビッツァーもみんな本当は牧場主が大好きで、そこに愛があるのがいいのよね。

【ひつじ村の兄弟】四つ星

監督・脚本:グリームル・ハゥコーナルソン
出演:シグルヅル・シグルヨンソン、テオドル・ユーリウソン、他
製作国:アイスランド/デンマーク
ひとこと感想:お互いに何十年もいがみあっていてまともに口も聞いていない羊飼いのおじいちゃんの兄弟が、羊の危機を前にして一致団結する。グローバルスタンダードと個人の生き方の相克、農業の先細りの問題、なんて各国に共通しそうな結構シビアな話を背景にしているけれど、過剰すぎる羊への愛としょうもない兄弟喧嘩で出来ているおじいちゃんたちの人間性がひたすらユーモラスでファンキー!人間の裏側をシビアに見つめながらも愛情たっぷりにほっこりと描くアイスランド映画は、朴訥として滋味に溢れていてステキ。

【夫婦の危機】三星半

監督・脚本・出演:ナンニ・モレッティ
脚本:フランチェスコ・ピッコロ、フェデリコ・ポントレモーリ
原作:ハイドルン・シュリーフ
出演:シルヴィオ・オルランド、マルゲリータ・ブイ、他
製作国:イタリア
ひとこと感想:落ち目の映画プロデューサーがうっかりベルルスコーニを批判する内容の映画を手掛けることに……。いかにも左派のナンニ・モレッティ監督らしい政治批評的な内容だけど、日本に暮らしている自分にはちょっと分かりづらい部分があった。しかし、日本といいイタリアといい、どうしてこんな人が票を集めてまんまと首相とかになってしまうんだろう。ポピュリズムというやつですか?他の国々でも最近は妙な動きが多いしなー。駄目だなー。政治に希望持てねぇなー。

【夫婦フーフー日記】二星半

監督:前田弘二
脚本:林民夫
原作:川崎フーフ
出演:佐々木蔵之介、永作博美、杉本哲太、佐藤仁美、他
製作国:日本
ひとこと感想:原作は夫婦の闘病記のブログだったらしいのだが、死んだ妻が見えるというオカルトな設定が追加されてしまっているのが何だかな。佐々木蔵之介さんも永作博美さんもとにかく上手くて、この夫婦の関係性が充分麗しく描けているのだから、普通に時系列に作ればよかったんじゃないの?それだとインパクトが弱いから何か仕掛けを、とか思っちゃったのかな。それで白けてしまったら何にもならないと思うのだが。

【フェデリコという不思議な存在】四つ星

監督・脚本:エットレ・スコーラ(エットーレ・スコラ)
共同脚本:パオラ・スコーラ、シルヴィア・スコーラ
出演:トンマーゾ・ラゾッティ、ジュリオ・フォルジェス・ダヴァンツァーティ、エルネスト・ダルジェリオ、他
製作国:イタリア
ひとこと感想:ドキュメンタリーかと思いきや、フェデリコ・フェリーニ監督と長年の友人だったエットーレ・スコラ監督の追想を、再現ドラマなども交えて綴ったエッセイみたいな映画だった。二人が出会ったのはフェリーニ監督が所属していた雑誌の編集部にスコラ監督が入社した時で、その後、二人とも順次映画監督としてデビューして、お互いに映画を作り、人生を謳歌し、お互いにとってお互いが特別な存在であり続けてきたのだろう。そんな年月の重みを感じる。そんなスコラ監督も2016年に入ってお亡くなりになり、2人の娘さんが脚本を手伝った10年ぶりの監督作である本作が遺作となってしまった。これがおそらく最後の映画になると分かっていらっしゃったのかと思うと、あのラストシーンが余計に切なく感じられる。どうぞ安らかにお眠り下さい。合掌。

【フォックスキャッチャー】四つ星

監督:ベネット・ミラー
脚本:E・マックス・フライ、ダン・ファターマン、他
出演:スティーヴ・カレル、チャニング・テイタム、マーク・ラファロ、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:テフロン加工でお馴染みのデュポン社は、フランスからアメリカに移民して様々な発明を行って財を成したらしいのだが、本作はそのデュポン家の御曹司がレスリングのオリンピックチームのスポンサーになり、何故か殺人事件を起こしてしまったという実話に基づく話らしい。何でもこの人は、レスリングを下品とみなす母親に反対され、自分はレスリングをできなかった結果、“偉大”だった自分の父親みたいにチームの精神的支柱となってチームを優勝に導くという妄想に取り憑かれ始め、その挙句にいろいろこじらせてしまったらしい。結局、頭のおかしい金持ちが貧乏人の人生を弄ぶ話と化していて、その寂寥感が半端なかった。しかし、今回最も衝撃を受けたのは、アメリカにおけるレスリングというスポーツのマイナーぶり。こりゃオリンピックから外そうって話も出る訳だ……。日本も含め、レスリングが盛んな他の国の人々がもっと頑張って啓蒙活動しないとね。

【FOUJITA】四つ星

監督・脚本:小栗康平
出演:オダギリジョー、中谷美紀、アナ・ジラルド、アンジェル・ユモー、マリー・クレメール、加瀬亮、りりィ、岸部一徳、
製作国:日本/フランス
ひとこと感想:小栗康平監督の新作は、藤田嗣治氏の人生の正確な評伝というよりは、藤田嗣治にまつわるイメージを膨らませて映像化した詩的なエッセイみたいで、最初はちょっと面食らった。でもそういう解釈も面白いかもしれない。フジタって自分の才能に自覚的な、当時の日本人としてはかなり特異なパーソナリティの持ち主氏で、あの性格であの激動の時代を生きるのは変だっただろうな……と改めて思った。オダジョーさんってフランス語上手くてビックリだった。

【ふたつの名前を持つ少年】四つ星

監督:ペペ・ダンカート
脚本:ハインリッヒ・ハッディング
原作:ウーリー・オルレブ
出演:アンジェイ&カミル・トカチ、エリザベス・デューダ、ジャネット・ハイン、ライナー・ボック、イタイ・ティラン、他
製作国:ドイツ/フランス
ひとこと感想:ナチスに追われて父親と生き別れたユダヤ人の少年。助けてくれた女性にもらった十字架を携え、偽名を使いキリスト教徒のふりをしながら、ある場所では住み込みで働き、ある場所では食べ物を恵んでもらい、ある場所では騙されたりもしながら農村を渡り歩く。ナチスから逃れ自力で生き抜こうとする少年の逞しさが秀逸で、彼が安住の地を得たラストには涙を禁じ得なかった。しかし、アウシュビッツ収容所が解放されてから70年になるという今年になっても、未だに第二次世界大戦の映画が作られ続けることの意味は重いんじゃないだろうか。どこまで行ってもあの戦争は、いろいろな意味で、人類にとって抜けない棘であり続けるのだろう。

【フリーダ・カーロの遺品 石内都、織るように】五つ星

監督:小谷忠典
(ドキュメンタリー)
出演:石内都、他
製作国:日本
ひとこと感想:遺言により死後50年以上封印されていたフリーダ・カーロの衣装や日用品を写真に収めるプロジェクト。メキシコのフリーダ・カーロ美術館の女性キュレーターによるこの企画で、他の写真家に代わり抜擢された日本の女性写真家の石内都さんが実際に写真撮影を行う過程を、もともと石内さんのファンで彼女のドキュメンタリーを撮ろうとしていた小谷忠典監督が撮ることになったのが本作だそうだ。
フリーダ・カーロは、美しい衣装で着飾るという楽しみから、耐えがたいほどの痛みや苦しみと戦う力を得ていたのだという考察が興味深い。また、芸術的な美しい刺繍が施された伝統的な衣装の数々は、彼女のルーツであり死というモチーフと強く結びついたメキシコの伝統文化にも繋がっている、という指摘も面白い。本作は、衣装という特別なフィルターを通してフリーダ・カーロの人物像に思いを馳せるという意味でも、そういう方法で人物像にアプローチするという手法があるということを知る意味でも、その手法を編み出した石内都さんという写真家自身を知るという意味でも、何重もの意味で優れている希有なドキュメンタリーであると言えると思う。美術ファンはもちろん、オシャレな洋服が大好きな若い女の子とかに是非見て欲しい1本だ。

【フレンチアルプスで起きたこと】四星半

監督・脚本:リューベン・オストルンド
出演:ヨハネス・バー・クーンケ、リサ・ロブン・コングスリ、クリストファー・ヒヴュー、クララ&ヴィンセント・ヴェッテルグレン、ファンニ・メテーリウス、他
製作国:スウェーデン/デンマーク/フランス/ノルウェー
ひとこと感想:一家でのバカンスにアルプスへ。カフェで食事を待ってると、目の前の雪山に雪崩が発生。雪山が丸ごと落ちて迫ってくる如きの光景を前に、あろうことか、お父さんは奥さんも子供も置き去りにして我先に逃げ出してしまう……。悪いけどこりゃアウトだよね。百歩譲って奥さんはともかく、子供は助けなきゃ駄目でしょうよ。普段、理屈の上でどんな美辞麗句を並べていても、心の底では、自分の身を投げ出してでも家族を救おうという意識がないことがバレバレになってしまったね。
男性って自分の頭の中で手前勝手に作り上げた理想の設定に引き摺られていることがままあるよねー。最後はお父さんも自分の弱さをやっと認められるようになり、当の子供が親の離婚を望んでいなかったことから関係は修復されるものの、今度は奥さんの方がなーんか怪しい……。意地悪くも鋭い切り口のブラック・コメディ。普段は建前や理想で取り繕われている人間の暗部をえぐるスウェーデンのリューベン・オストルンド監督に、今後も大いに期待したい。

【ボーダレス ぼくの船の国境線】四つ星

監督・脚本:アミルホセイン・アスガリ
出演:アリレザ・バレディ、他
製作国:イラン
ひとこと感想:難破船に少年が一人で住んで逞しくサバイバルしている様には、同じイランのアミール・ナデリ監督の【駆ける少年】を思い出した。その後、互いに言葉の通じない少年兵や少女やアメリカ兵がやって来て暮らすようになるが、ここには、国境のないアジール(避難場所となる聖域)的世界が寓話的に描かれている。国境のない世界を願う人は世界中にいるのに、実現にはほど遠いみたいで、時々泣きそうになる。

【僕たちの家に帰ろう】三星半

監督・脚本:リー・ルイジュン
出演:グオ・ソンタオ、タン・ロン、他
製作国:中国
ひとこと感想:中国北西部の少数民族“ユグル族”の幼い兄弟が、離れて暮らす両親のもとへ帰る道中に、様々な人々と出会って別れるという経験を経て成長していく話。監督は子供の頃にユグル族と実際に交流があったそうで、中国の少数民族が抑圧されている現状に関してはいろいろと思うところがあることだろう。けれど、この本編自体にはあまり感情移入ができなかったのは何故だろう。

【ボクは坊さん。】四つ星

監督:真壁幸紀
脚本:平田研也
原作:白川密成
出演:伊藤敦史、山本美月、溝端淳平、濱田岳、渡辺大知、イッセー尾形、松田美由紀、松金よね子、有園芳記、品川徹、遠藤雄弥、他
製作国:日本
ひとこと感想:坊さんになりたての若い主人公が、自分は普通の人間なのに坊さんになれるのだろうか?と苦悩する。正直、冗長な部分や食い足りない部分もあって、演出や脚本にもっとブラッシュアップの余地がありそうだったけど、悩みながら手探りで一歩一歩歩いて行こうとする主人公を誠実に演じた伊藤敦史さんがよかったし、イッセー尾形さんなどの周りの役者さんの演技も手堅くて、総じて好感の持てる映画だったと思う。

【ぼくらの家路】三星半

監督・脚本:エドワード・ベルガー
共同脚本:ネル・ミューラー=ストフェン
出演:イヴォ・ビッツカー、ゲオルグ・アームズ、ルイーズ・ヘイヤー、他
製作国:ドイツ
ひとこと感想:言ってしまえば、幼い兄弟達が鍵がなくて自宅に入れなかった、ってだけの話。施設に子供達を迎えに行くと言っていたのに3日もほっといて男と遊んでいるとか、もう完全にネグレクトをやらかしている母親だけど、男の子はそんな母親の実態を理解し、母親の愛を求めることをやめて自立することを決める。だからこそ【Jack】(男の子の名前)という原題が生きたはずなのに、どうしてこういう本質をぼやかした邦題をつけるかな。男の子の演技はとてもよかったし、次男君も可愛かったのに……。

【ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲】二星半

監督・脚本:コーネル・ムンドルッツォ
共同脚本:カタ・ヴェーベル、ヴィクトリア・ペトラニー
出演:ジョーフィア・プソッタ、シャンドール・ジョーテール、他
製作国:ハンガリー/ドイツ/スウェーデン
ひとこと感想:カンヌで「ある視点」部門のグランプリとパルム・ドッグ(犬の演技が印象的だった映画への賞、最高賞のパルム・ドールに掛けている)を受賞したという触れ込みについつい騙されて、うっかり見に行ってすんげぇ後悔した。人間に見放されたと思った犬が凶暴化するっていう話なんだけど、登場人物の行動は行き当たりばったりだし、オチとかもあまりにひどくて、思わず吹き出してしまうようなレベル。これなら最初っからB級犬ホラーだって宣伝しといてよ〜。最初からそう思って見ていたら、また別の楽しみ方ができたかもしれないのに〜。

【マエストロ!】三星半

監督:小林聖太郎
脚本:奥寺佐渡子
原作:さそうあきら
出演:松坂桃李、西田敏行、miwa、濱田マリ、嶋田久作、斉藤暁、池田鉄洋、モロ師岡、村杉蝉之介、古館寛治、河井青葉、小林且弥、中村倫也、大石吾朗、松重豊、他
製作国:日本
ひとこと感想:これまで【かぞくのひけつ】【毎日かあさん】などを手掛けてこられた小林聖太郎監督は、上岡龍太郎さんの息子さんなのだそうだ。本作は、1回潰れた交響楽団の再生に、それぞれのメンバーの過去のエピソードが絡む話。原作の流れが大体踏襲されているらしく、概ねいい話なんだけど、あまり特徴が無く話が平坦に進んでいく印象が残ったかもしれない。

【幕が上がる】四つ星

監督:本広克行
脚本:喜安浩平
原作:平田オリザ
出演:百田夏菜子、玉井詩織、高城れに、有安杏果、佐々木彩夏(ももいろクローバーZ)、黒木華、ムロツヨシ、清水ミチコ、志賀廣太郎、他
製作国:日本
ひとこと感想:【踊る大捜査線】シリーズを始めとする多くのヒット作を持つ本広克行監督は、一時は映画監督をやめようと思い悩んだ時期もあったらしいが、平田オリザ氏の主宰する劇団「青年団」に刺激を受けて思い留まったのだそうで、それが本作に繋がったらしい。部活としての高校演劇を題材として真正面から取り上げ、実際にオリザ氏のワークショップも受けたという「ももいろクローバーZ」の面々をアンサンブルキャストとして起用したからこそ、今の彼女達の輝きがそのまま閉じ込められ、高度に純化された青春映画または超正統派アイドル映画の傑作になった。彼女達をサポートする元学生演劇の有名女優という役どころの黒木華さんの演技力にも改めて感動した。

【マジック・イン・ムーンライト】四つ星

監督・脚本:ウディ・アレン
出演:コリン・ファース、エマ・ストーン、アイリーン・アトキンス、サイモン・マクバーニー、マーシャ・ゲイ・ハーデン、他
製作国:アメリカ/イギリス
ひとこと感想:過剰に合理主義者のマジシャンと、霊能力者を名乗る訳ありの女性が、互いに段々と惹かれ始める、てな話。人生を生きるには嘘が必要?いやいや、幻想は必要かもしれないけれど……。でも、この世を回すにはちょっとしたマジックが必要、なのかもしれない。確かに、ウディ・アレン監督一流の洞察力に溢れた映画じゃないかもしれないけれど、【ブルー・ジャスミン】を見て本当にブルーになった後だったから、これぐらい可愛い話でちょうどよかったんじゃないかと思うわ。

【Mommy マミー】三星半

監督・脚本:グザヴィエ・ドラン
出演:アンヌ・ドルヴァル、スザンヌ・クレマン、アントワン=オリヴィエ・ピロン
製作国:カナダ
ひとこと感想:グザヴィエ・ドラン監督のデビュー作【マイ・マザー】と同様の、分からず屋の母親との愛憎劇といった感じ。監督は、母親との関係に余程いろいろあって、余程根深いトラウマがあるんだろうなぁ。でも、個人的には、そのくらいでもういいよ……(げんなり)という感じ。監督はまだ若いからしょうがないかもしれないけれど、親との関係に問題がある場合は、不満をあらかた吐き出して一息ついたら、後は自分で頑張って克服していく以外にどうしようもないんだよ。ということで、監督も今後、自分の人生のために頑張って欲しいです。しかし、この映画の評価がすこぶる高いというのは、映画関係者にはいかにマザコン男が多いかってことなんでしょうかね。

【真夜中のゆりかご】四星半

監督:スサンネ・ビア
脚本:アナス・トーマス・イェンセン
出演:ニコライ・コスター・ワルドー、ウルリッヒ・トムセン、マリア・ボネヴィー、ニコライ・リー・コス、リッケ・メイ・アンデルセン、他
製作国:デンマーク
ひとこと感想:ある警官が、突然死んでしまった自分の赤ちゃんを、子供をまともに育てられそうにない(と勝手に決めつけている)ジャンキーカップルの赤ちゃんとこっそり取り替えてくる……なんて自己中にもほどがある!なんてシワいお話なの。まぁそれだけ追い詰められて訳分かんなくなってたんだろうけど、そうこうしているうちにもっとひどい展開になってしまい、ますます暗い気持ちに……。スサンネ・ビア監督はいつだって人間の暗くて深い彼岸をえぐる。その冷徹なまでに冴えた観察眼が大好きだ。

【マンゴーと赤い車椅子】三つ星

監督:仲倉重郎
脚本:福島敏朗、山室有紀子
出演:秋元才加、NAOTO(EXILE)、石井貴就、吉岡里帆、三田佳子、他
製作国:日本
ひとこと感想:秋元才加さんの演技を見てみたかったから本作を見た。車椅子生活になったヒロインが頑張る姿やリハビリの過程などが丹念に描かれており、秋元さんが役に真面目に取り組んでいる姿には大いに好感が持てたのだが、ストーリーにはとってつけた感があるご都合主義的な箇所が多過ぎ、残念ながらいろいろ失敗してると言わざるを得ないかもしれない。

【ミケランジェロ・プロジェクト】三つ星

監督・脚本・出演:ジョージ・クルーニー
共同脚本:グラント・ヘスロヴ
原作:ロバート・M・エドセル、ブレット・ウィッター
出演:マット・デイモン、ケイト・ブランシェット、ビル・マーレイ、ジョン・グッドマン、ジャン・デュジャルダン、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:第二次大戦中に、ドイツ軍が各国の美術品を大量に略奪しているのを懸念したハーバード大付属美術館の館長が、ルーズベルト大統領を説得して、歴史的建造物や美術品を守るための特殊チーム「モニュメンツ・メン」を結成したという実話に基づく話。けれど、事実関係を淡々と追い掛けているだけで、どうも盛り上がりに欠けるような。これまでのジョージ・クルーニー監督作はそれぞれ良作だったから期待していたんだけど、もしかしたら監督は、大々的なロケハンが必要な映画は苦手で。室内サイズの会話劇を作る方が向いているのだろうか。

【味園ユニバース】四星半

監督:山下敦弘
脚本:菅野友恵
出演:渋谷すばる、二階堂ふみ、鈴木紗理奈、赤犬、他
製作国:日本
ひとこと感想:味園ビルって、NHKの『ドキュメント72時間』でもやってたね〜。大阪にこういう文化の発信地のようなスポットがあるって知らなかった。本作は、おそらくジャニーズ主導で関ジャニ∞の渋谷すばるさんを主役にすることがあらかじめ決まっていた企画に、味園を拠点にしている赤犬というバンド(山下敦弘監督の大学の先輩なのだそうだ)を組み合わせてみよう監督が発想したことから骨格が出来上がっていったらしい。褒められない人生を送ってきた挙げ句記憶喪失になっていた男が最後は歌に光明を見出す、というストーリーには渋谷さんの歌のうまさが非常に重要な要素になっており、説得力が半端ない。どアップに耐えられる力を持っている人は大体本物。これに、圧倒的に上手い二階堂ふみさんが抜群に可愛く健気に演じる女の子や、見事に大阪の下町出身の女医さんに見える鈴木紗理奈さんなどか組み合わさって、二重にも三重にも相乗効果を生み出している。どこが発端になっている企画でも、一つ一つの要素を吟味して丁寧に組み立てていけば、大化けする可能性だってあるというお手本みたいな映画。関ジャニをよく知らない人も、ジャニーズに偏見がある人も、絶対に見ておいた方がいい。

【皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇】四星半

監督:シャウル・シュワルツ
(ドキュメンタリー)
製作国:アメリカ/メキシコ
ひとこと感想:アメリカのエルパソのすぐ隣りに位置するメキシコのシウダー・フアレスという都市を舞台にした、メキシコの麻薬戦争についてのドキュメンタリー映画。監督はイスラエル出身の報道カメラマンだということなのだが、地元出身の当事者だといろいろ巻き込まれてしまうので、かえって撮れないということもあるらしい。原題は【Narco Cultura】で“麻薬文化”といった意味のようだが、地域を牛耳る麻薬カルテルが武器を振り回して闊歩し、ナルコ・コリードという麻薬王を称える歌が歌われ、目障りであれば地元民でも警察でもジャーナリストでも殺されるという暗澹たるカオス状態。しかし、これで社会が崩壊してしまったら、麻薬ギャング自身だってそのうちやっていけなくなるんじゃないのかな……そんなことはどうでもいいのか、そんなことまで考えちゃいないのか。

【ミルカ】三星半

監督:ラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ
脚本:プラスーン・ジョーシ
出演:ファルハーン・アクタル、他
製作国:インド
ひとこと感想:先年のドキュメンタリー【聖者たちの食卓】にも登場していたインドのシク教は、インド全体では少数派ながら比較的裕福で教育水準の高い人が多く、海外で活躍しているような人も少なくないのだそう。本作は、「空飛ぶシク教徒」と呼ばれ、1956年のメルボルン・オリンピックや1960年ローマ・オリンピックに出場した実在のインド人オリンピック陸上選手ミルカ・シンを描いたもの。あくまでもインド娯楽映画の枠内で作られており、時系列があちこち飛んだりもして、バイオグラフィとして見るには少しとっちらかった印象もあるけれど、少年時代に住んでいた村がパキスタン分離独立戦争に巻き込まれた話なども描かれており、インドの歴史の一側面として興味深いものだった。

【みんなの学校】四つ星

監督:真鍋俊永
(ドキュメンタリー)
出演:大阪市立大空小学校の皆さん
製作国:日本
ひとこと感想:大阪市立大空小学校という公立小学校で行われている不登校児ゼロへの取り組みを紹介したドキュメンタリー。ここはその地域に住んでいる人なら誰でも通える公立学校で、200人余り生徒の中に特別支援の対象となる子供が30人くらいいるのだが(しかもこの学校の評判を聞いた家族がこの地域に引っ越してきたりしてその数が増えつつあるらしい)、特に特別支援学級など設けずに皆が同じ教室で学ぶ方針の中で、不登校を減らしていけるよう日々取り組みが行われているのだそうだ。ただ甘やかすのではなく「自分がされていやなことは人にしない」ことを時には厳しく教えることを貫いていることや、教職員に任せきりなのではなく保護者や地域ボランティアの人々も一丸となって学校や子供達を支えていること、新人の先生はベテランの先生がフォローして育てる体制が出来あがっていることなどが特に印象に残った。実際には三歩進んで二歩下がるような地道な努力の連続で、先生方の日々のご苦労を思うと本当に頭が下がる。不登校なんて全く珍しいことではなくなった昨今、子供を育てるということはどういうことなのかという命題は、今すぐに社会全体で抜本的に考え直さなければならない最重要課題であるはずだ、と改めて思った。

【女神は二度微笑む】四つ星

監督・脚本:スジョイ・ゴーシュ
共同脚本:リティーシュ・シャー、他
出演:ヴィディヤー・バーラン、パラムブラト・チャテルジー、他
製作国:インド
ひとこと感想:ヒンドゥー教のドゥルガー・プージャーというお祭りで祀られる戦いの女神ドゥルガーをモチーフにした、従来のインド娯楽映画のフォーマットを完全に脱した本格的サスペンス映画。確かにインドの女優さんにはもれなく女神的な神々しさがあるかもしれない。お祭りの前のコルカタ(旧カルカッタ)を舞台に、妊婦が警察官の助けを借りて行方不明になった夫を探す、というプロットなのだが、あっと驚くどんでん返し!に結構マジで「えっ!」と言ってしまった。ハリウッド・リメイクが決定済みということなのだが、混沌の国インドを舞台にしなければこの雰囲気は出ないんじゃないかなぁ、と少し危惧してしまった。

【モンキー・マジック 孫悟空誕生】二星半

監督:ソイ・チェン
脚本:エドモンド・ウォン、ローラ・フオ、シトー・カムイェン
アクション監督・出演:ドニー・イェン
出演:チョウ・ユンファ、アーロン・クォック、ピーター・ホー、ケリー・チャン、ジジ・リョン、他
製作国:中国/香港
ひとこと感想:CGが勝ち過ぎている映像って、見ていると段々飽きてくるんだよね……。映画を見ている間中、『西遊記』というと、未だにやっぱり堺正章さん主演のアレが一番面白かったような気がするなー、ということしか考えていなかったような気がする。

【モンタナ 最後のカウボーイ】三星半

監督:イリーサ・バーバッシュ、ルーシァン・キャステーヌ=テイラー
(ドキュメンタリー)
製作国:アメリカ
ひとこと感想:『ハント・ザ・ワールド ハーバード大学 感覚民族誌学ラボ傑作選』という特集上映のうちの1本で、昨年公開された【リヴァイアサン】なども同時上映。ハーバード大学にはSensory Ethnography Lab(SEL)という美学と民族誌学とのコラボを試みる実験的なラボがあって、プロジェクトの一環として映画・ビデオ・音響・写真・インスタレーションなどの作品を制作しており、今回の特集上映はそのドキュメンタリー映画の作品群なのだそうだ。文化人類学のフィールドワークなんかで映画作るのに大学がお金出してくれるってこと?ドキュメンタリーに対して社会的な理解があって素晴らしいなぁ。本作では、文字通りモンタナ州でカウボーイとして生計を立てる人々を映したもの。馬に乗り、大自然の中でベーコン焼いて食って、クマが出れば撃つ。こんな絵に描いたようなカウボーイが本当にいたんだなぁ。まるで川の流れのような大量の羊の群れが特に印象的だった。

【約束の地】三星半

監督・脚本:リサンドロ・アロンソ
共同脚本:ファビアン・カサス
出演:ヴィゴ・モーテンセン、ビルビョーク・マリング・アガー、ギタ・ナービュ、他
製作国:アルゼンチン/デンマーク/フランス/メキシコ/アメリカ/ドイツ/ブラジル/オランダ
ひとこと感想:アルゼンチン南部の荒野・パタゴニアで娘を探してさまよう父親の話、なのだが、途中から何だか夢の中の話みたいに合理的な展開ではなくなってくる。これは南米のマジック・リアリズムなのか……よう分からん……。結局、パタゴニアの地形って変化に富んでて面白いのね〜、とか関係ないところに興味が行ってしまっていた。

【雪の轍】四つ星

監督・脚本:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
共同脚本:エブル・ジェイラン
出演:ハルク・ビルギネル、デメット・アクバァ、メリサ・ソゼン、ネジャット・イシレル、他
製作国:トルコ/フランス/ドイツ
ひとこと感想:2014年のカンヌのパルムドール受賞作。しかし、屁理屈で人を追い込んで、人より優位に立つことにアイデンティティを見出しているようなオッサンの話って結構辛い。そんなことやってて人から愛される訳がないじゃん!と終始げんなりさせられてしまい、圧倒的な重厚感に溢れた作風だけに余計に辛かった……。

【予告犯】三星半

監督:中村義洋
脚本:林民夫
原作:筒井哲也
出演:生田斗真、戸田恵梨香、鈴木亮平、濱田岳、荒川良々、福山康平、本田博太郎、宅間孝行、田中圭、坂口健太郎、滝藤賢一、仲野茂、窪田正孝、小松菜奈、小日向文世、他
製作国:日本
ひとこと感想:ネットで予告した通りの犯罪を行う4人組の目的は、亡くなった同僚に関することだった。ほんの少しルートから外れただけでまともな職につくことも難しくなるような就業差別の問題を描こうとしているのはいいと思うけど、筋書きのオチはちょっと弱かったかな?それでも、生田斗真さん、鈴木亮平さん、濱田岳さん、荒川良々さんというキャストのアンサンブルは悪くなく、中村義洋監督らしい手堅さはそれなりな楽しめたような気はする。

【ライアの祈り】三星半

監督:黒川浩行
脚本:寺田敏雄
原作:森沢明夫
出演:鈴木杏樹、宇梶剛士、武田梨奈、秋野太作、藤田弓子、宅間孝行、村田雄浩、他
製作国:日本
ひとこと感想:そういえば私は、ある美術展で買った合掌土偶(青森県八戸市の国宝)のストラップや、尼存で買った土偶の写真集を持っている。いいよね、土偶。街おこしの一環にするのは悪くないと思う。本作は八戸市のご当地映画として様々な観光スポットやイベントなどが絵に描いたようにインサートされているけれど、それも嫌いじゃない。ストーリーも、鈴木杏樹さん演じるバツイチのヒロインの話を丁寧に掘り下げて、宇梶剛士さん演じる朴訥とした研究者とのラブ・ストーリーに帰結させているのは悪くないと思った。世間にはまともなアラフォーのラブ・ストーリーって案外少ないのかもしれない。例によって武田梨奈さん目当てで見に行ったのだが、思わぬ拾いものの映画だった。

【ラスト・ナイツ】三星半

監督:紀里谷和明
脚本:マイケル・コニーヴェス、ダヴ・サスマン
出演:クライヴ・オーウェン、モーガン・フリーマン、クリフ・カーティス、伊原剛志、アン・ソンギ、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:忠臣蔵を中世ヨーロッパ風に翻案したものなんだそうだけど、今回は紀里谷和明監督が自ら脚本に参加していなかったせいか(?)かなりすっきりと見やすい。画面も、それなりのバジェットが掛かっているだけあって、それらしく雰囲気もある。少なくとも【47Ronin】とかよりはかなりマシなんじゃないだろうか。しかし、すっきりと分かり易いハリウッド映画って、概ねプレーンすぎて深みもなかったりするんだよね……。でも、単身アメリカに渡ってそれなりの規模の映画を撮らせてもらうなんて、普通に考えて凄い快挙だと思うので、紀里谷監督にはこれからも独自路線を邁進して戴きたいと思う。

【ラブ&ピース】三星半

監督・脚本:園子温
出演:長谷川博己、麻生久美子、西田敏行、渋川清彦、マキタスポーツ、深水元基、手塚とおる、Revolution Q、小倉一郎、真野恵里菜、神楽坂恵、菅原大吉、波岡一喜、松田美由紀、他
声の出演:星野源、中川翔子、犬山イヌコ、大谷育江、他
製作国:日本
ひとこと感想:打ち捨てられたおもちゃ達や動物達が集う地下世界、という発想は面白かったけれど、でっかいカメのハリボテに……私は萎えました。そこが大丈夫な人なら、夢を叶えることの意味についてのファンタジーとして楽しめる可能性があるのかもしれないけれど、私は、旧作の過剰な焼き直し的な手詰まり感ばかりを感じてしまった。

【リトル・フォレスト 冬編・春編】四つ星

監督・脚本:森淳一
原作:五十嵐大介
出演:橋本愛、三浦貴大、松岡茉優、桐島かれん、他
製作国:日本
ひとこと感想:【…夏編・秋編】に引き続き、農村へのUターン問題とロハス趣味がごっちゃになってるきらいが。そもそもこんな手作り生活をこの水準で一人で維持するのは無理だと思うし、限界集落の維持や再興はそんなに簡単じゃないと思うのだが。けれど、一応ゆるやかなストーリーの流れがある中で、ヒロインが自分の人生にマジメに向き合ってるのは嫌いじゃない。少なくとも、私よりは相当きちんと生きてる人だよねぇ……。

【龍三と七人の子分たち】四星半

監督・脚本:北野武
出演:藤竜也、近藤正臣、中尾彬、品川徹、樋浦勉、伊藤幸純、吉澤健、小野寺昭、安田顕、矢島健一、下條アトム、勝村政信、萬田久子、ビートたけし、他
製作国:日本
ひとこと感想:自分勝手で我を曲げない傍迷惑なジジィ達は基本的に嫌いだ。そういう奴が世のすべての不幸の元凶だと思っていた時代もあったくらいだ。けれど、北野武監督は、コメディというオブラートにくるみながら、威勢の良かった昔みたいに物事が運ばなくて右往左往してるジジィ達は滑稽だけど可哀想だろ?大目に見てやんなよ〜、と言っているような気がした。とりあえず、北野監督はそのうちジジィ映画の傑作を撮るのではないかという予感は当たったみたいでよかったと思う。

【ルック・オブ・サイレンス】三星半

監督:ジョシュア・オッペンハイマー
(ドキュメンタリー)
製作国:デンマーク/フィンランド/インドネシア/ノルウェー/イギリス
ひとこと感想:1960年代にインドネシアで起こった共産党員の大量虐殺を描いた【アクト・オブ・キリング】の続編で、大量虐殺の際に兄を殺された人が、兄を殺した人々を訪ねて実際に対峙する様子に取材したもの。そこのところを曖昧にしたままでこの先生きていけない、という気持ちはよく分かるんだけど、そんなことをして自分の命が危険に晒されたりしないのだろうか、と恐ろしかった。しかし、会いに行った相手は概ね爺さんになっていて、沈黙するとか怒りを露わにするとか反応は様々だけど(中には自分の悪行を武勇伝としてわざわざ書き残している奴もいるけど……)、その家族となると、最早爺さんが昔しでかしたことを知らない場合がほとんど。そんな中、その話には胸が痛むけど、もう爺さんは先の無い弱った老人になってしまっているから許してやって、と言った女の人が印象的だった。愛する者を理不尽な暴力で奪われた者は、その不条理を受け入れることができるのか。古今東西変わらない難しい命題だと思う。

【ルンタ】四つ星

監督:池谷薫
(ドキュメンタリー)
出演:中原一博、他
製作国:日本
ひとこと感想:中国政府からの長年にわたる弾圧を受けて民族殲滅が進んでいるチベットでは、抗議の焼身自殺をする人々が後を絶たないのだそうだ。おそらく中国から陰に日向に圧力があって、日本国内ではチベットに関する報道は限られたものになっており、こうした話はなかなか日本まで伝わってこない。本作では、そんなチベットの人々の心情や本音に迫ろうとする。非暴力主義のチベットの人達は、怒りを他者へ向けず、他者を傷つけまいとするから、テロではなく焼身自殺という手段に帰結する人が多いのだという。逮捕されて拷問された過去なども凛とした態度で迷いもなく話すのは、彼等の心に一片の澱みもないからだろう。しかしこの先、ダライ・ラマ14世がお隠れになってしまったら、彼らはどうなってしまうのか……。幸運を願うための風の馬(ルンタ)の紙のお札をばらまく儀式のラストシーンに、いろいろと思いを馳せずにはいられなかった。

【ローリング】四つ星

監督・脚本:冨永昌敬
出演:三浦貴大、柳英里紗、川瀬陽太、他
製作国:日本
ひとこと感想:かつて女子更衣室を盗撮してクビになった元高校教師のちゃらんぽらん人生。【サウダーヂ】などと同様の地方都市の閉塞感の中に、絶対悪と呼ぶには小粒すぎる“不善”を描く独得な匙加減が個性的だと思った。それが妙な突破感につながっているのが不思議な味わい。でも盗撮は本当にやめてよね。1ミリも擁護できないから。

【ロマンス】四つ星

監督・脚本:タナダユキ
出演:大島優子、大倉孝二、野嵜好美、窪田正孝、西牟田恵、他
製作国:日本
ひとこと感想:タイトルは新宿から箱根に行く特急ロマンスカーから来ていて、車内販売員のヒロインと、胡散臭い乗客のおじさんが、成り行きで珍道中を繰り広げる話。大島優子さん演じるヒロインは既に人生いろいろ煮詰まっている。大倉孝二さん演じるおじさん(後に崖っぷちの映画プロデューサーと判明)は、途中でいい人と判明する訳でもなく、終始胡散臭いけど、この人なりに今までいろいろ一生懸命やってきたらしいということも分かってくる。そんな二人が、ゆきずりの関係の中で、一瞬どこかで理解し合う、その距離感が妙にリアルだった。こんな独特な役をきちんと成立させている大倉さんは安定の上手さだけど、こんな役柄にもポーンと飛び込める大島さんの柔軟性や度量の広さも印象に残った。

【忘れないと誓ったぼくがいた】三つ星

監督・脚本:堀江慶
共同脚本:おかざわさとこ
原作:平山瑞穂
出演:村上虹郎、早見あかり、他
製作国:日本
ひとこと感想:消えてしまう彼女を彼が必死に覚えておこうとしたという話。しかしこの、誰からも存在を忘れ去られてしまう、という設定が最後までよく分からず、説明不足だったんじゃないかと思った。虹郎くんとあかりちゃんがたっぷり見られたのは嬉しかったんだけど、こういう話だと印象にも残りにくいかな。

【私たちのハァハァ】四星半

監督・脚本:松居大悟
共同脚本:館そらみ
出演:井上苑子、大関れいか、真山朔、三浦透子、池松壮亮、中村映里子、他
製作国:日本
ひとこと感想:好きなバンドのライブに行きたいがために、お金を持たずに福岡から東京に行こうとするなんて(しかも最初は自転車で!?)、あんまりにも考えが甘過ぎで、世間知らずで、ずうずうしくて、危なっかしくてしょうがなくて、あんたたちはたまたま危険な目に遭わなかっただけだわよ!と声を大にして説教したくなる。自分が親なら無論全力で阻止するだろう。そんな無謀さの帰結を思い知らされるような結末もちゃんと用意されているけれど、まぁこういう無謀さも全部ひっくるめて若いってことなんだろうなぁ、と思うとひたすら眩しくもあった。ここ何作かの松居大悟監督は外れがなくていいねぇ。次作が本当に楽しみになってきた。

【わたしに会うまでの1600キロ】四つ星

監督:ジャン=マルク・バレ
脚本:ニック・ホーンビィ
原作:シェリル・ストレイド
出演:リース・ウィザースプーン、ローラ・ダーン、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:【ハイ・フィデリティ】【アバウト・ア・ボーイ】のニック・ホーンビィの脚本を、【ダラス・バイヤーズクラブ】のジャン=マルク・バレ監督が映画化。アメリカにはPCT(パシフィック・クレスト・トレイル)という1600キロにも及ぶ自然歩道があるそうなのだが、本作は、薬や男に溺れて旦那から離婚された女性が、母親が誇りにしてくれていた自分を取り戻すためにこれの踏破を試みたという実話に基づいているらしい。母親が死んだからってそこまで自己破壊的になってしまうヒロインの気持ちは正直よく分からなかったが(まぁ実話だから仕方ないか)、歩き続けることで彼女が少しずつ自分を取り戻していく様子はよく描けていると思った。それにしても、リース・ウィザースプーンさんの映画にこんなに人が入るなんてびっくり。母親役のローラ・ダーンさんもこんな大きな役ではお見掛けするのは久しぶりで、デヴィッド・リンチ監督の【ブルーベルベット】や【ワイルド・アット・ハート】で一世を風靡していた頃がちょっと懐かしかった。

【私の少女】四つ星

監督・脚本:チョン・ジュリ
出演:ペ・ドゥナ、キム・セロン、ソン・セビョク、他
製作国:韓国
ひとこと感想:優秀なのに同性愛者だということでド田舎に左遷させられた女性警察官が、ある少女が虐待を受けていることに気がついて……といったお話。絵に描いたような田舎のおっさんが、不法労働者を酷使したり、レズビアンに分かりやすく偏見の目を向けて差別したり、連れ子を虐待したりする様子にイーっ(ギリギリギリ…)となるが、これらはどれも日本でも隠れた場所で日々やらかされているような案件なのかもしれない。しかしこのヒロイン、少女に中途半端に手を差し伸べておいて面倒くさくなってきたから手離しちゃうなんて、それ一番やったらあかんことやないけ……。だから少女は、生き残るために捨て身の偽装工作に走らざるを得なくなる。この壮絶な自己保身とも愛ともつかない何かを、誰も咎め立てたりできはしない。この少女役のキム・セロンの、可愛さをかなぐり捨てたリアル感が素晴らしかった。
本作は韓国のチョン・ジュリという女性監督のデビュー作だそうだが、彼女のオリジナル脚本に惚れこんだイ・チャンドン監督がプロデュースを買って出て実現したのだそうだ。こういう実力のある人がちゃんとデビューできる土壌があるのは羨むべきことだなぁと思った。

【わたしはマララ】二つ星

監督:デイヴィス・グッゲンハイム
(ドキュメンタリー)
出演:マララ・ユフスザイ、ジアウディン・ユフスザイ、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:母国パキスタンのタリバンを批判し、命を狙われても活動を続けた史上最年少のノーベル平和賞受賞者マララ・ユスフザイさん。彼女自身はとても立派だと思うし、イスラム世界にもマララさんのお父さんのように女性に教育を授けて自立を促しそうとしている男性が普通にいるのだということが分かってよかった。イスラム世界の女性がちゃんと教育を受けられるようになりその地位が向上するように、今後も全力で応援したい。しかしこの映画は、反イスラム的価値観に凝り固まったある一部の人々が、マララさんを広告塔にしようとして作った出来の悪いプロモーションビデオそのもので、軽薄の一言。こんなものでドキュメンタリーを名乗るとか、真剣にやめて戴きたいものだ。

【ワンダフルワールドエンド】四つ星

監督・脚本:松居大悟
出演:橋本愛、蒼波純、稲葉友、利重剛、他
製作国:日本
ひとこと感想:ブログやツイキャス(スマホなどからライブ配信を行うサービス)などのSNSを多用して活動を続ける売れない地下アイドルと、何故か彼女の熱烈な追っかけファンをしている中学生女子。いつでも不安で必死で崖っぷち。そんな彼女らのアンビバレントさがグサグサ突き刺さる。【アフロ田中】【スイートプールサイド】の松居大悟監督が描いた少女像は、新しい時代の類型になり得るんじゃないだろうか。2015年のマストシー映画の1本だと思う。



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