赤いベゴニア

まったく今時の若者ときたら、人んちの庭に何すんねん。
コンビニおにぎりのビニールにガムの包み紙、それから
火がついたまんまのタバコの吸い殻なんかが植え込みの
中に投げ捨てられてるやんか。こんなんが花の栄養に
なるかっていうねん。

そりゃ、私も自慢じゃないけど大事に育てている訳じゃない。
ホームセンターで一番安いヤツの一年草を１０株ほど買って、
穴掘って適当に植えただけや。時々水をやる以外は、
枯れるまでほったらかしなんだけどね。
それでも健気に白やピンクの花を咲かせて、愛嬌を
ふりまいてるっていうのにさあ。それはないんちゃうか。
ゴミと一緒にせんとって。まったく！

そこのおじさん。今ツバ吐いたでしょ。きたないなあ、もう。
自分ちではちゃんとティッシュ使うくせに、よそはどうでも
ええんかい。緑色の葉っぱにおかしな模様が出来てもうたやん。
なんか臭いそうやで。もう、やめてえや。

ちょっと、こらっ、ガキ・・いやボク達。なんでここでサッカー
しとんねん。あんたら足下見てみい。メチャメチャなっとるやろ。
学校でも花壇のとこ壊したら、先生に「元通りにしいや」って
怒られるんちゃうの。
なんやて、そういう時は、用務員さんがやってくれるって！
アカン。とにかく、ここでは遊ばんといてね。

花の命は短くて、なんて誰かが言ってたなあ。とりあえず
このままおいとこう。そのうち、またホームセンター行こうかな。
しゃあないな。やれやれ。
おやあ、なんだこりゃ。雑草かいな。えらい葉っぱがようさん
出とるなあ。なんや見たことある葉っぱやな。この前までのとは
違うみたいやけど、まあいいか。水やってみよか。
これ、花咲くんかなあ。

そうだ。
君は去年、私の誕生日のプレゼントだったんだ。
もちろん覚えているよ。鮮やかな緑の葉っぱの中に、
とってもきれいな花がたんさんついていた。庭じゅういっぱいに
咲かせたくて、一生懸命に世話をしたもの。それなのに
悲しいことがあって、君に八つ当たりしてしまったんだ。
君を見るのがとてもつらかった。想い出がいっぱいあったから。
枯れてしまったと思っていた。
あれからもう一年たったのね。ずっと待っていてくれたの？
自分勝手な私を許してくれたの？
もう一度チャンスをくれる？

ねえ、みんな。うちの庭ってきれいやろ。ねえ、見てってえな