フレーム比較論


そもそもLotusというのはバックヤードビルダーからきている。
直訳すれば裏庭の組み立て屋、今の日本であれば田舎のチューニング屋と いったところである。それゆえに量産車であってもその指向はレース車両 にとても近いものがある。いわゆるGTスポーツ系の指向は除きほとんどの Lotusがレース車両としてシーンに登場している。
その中においても市販車であってもMidshipレイアウトをとり、軽量スポーツ の雄として登場したEuropaについてもレースカーのそのものといった部分が 大変に多い。その根幹となるフレームに焦点をあててみたいと思う。
Lotusというクルマは軽量化命で来ている。それは歴代の車両をみれば一目瞭然 である。フレームにもそれがあてはまる。EuroapS2のフレーム重量はわずかに 41.5Kgにすぎない。フロア部分がないとはいえEliseよりもはるかに軽い。
対してTC用は42.5Kgと1Kgの増量である。これも強度よりも軽量化を優先させた 結果とさえ思われてならない。S2の80psに対してTCは105ps、馬力比に対して 30%強の出力の上昇をみる。それに対してフレームの増量はわずか1Kg、全体に 対して2.5%ほどの増量でしかない。これはエンジンベイが広がったことによる クロスビームへの補強が入ったためフレーム自体は補強の必要がなかったとも とれる。
このようなノーマルのフレームであるが、ねじれやしなりをかなり計算にいれて のものであって走りに対しては不足がない。それよりもフレームがしなることに よるタイヤの接地面の安定こそがLotusをハンドリングマシンにしているゆえんで あろう。同じことは現在のケータハムにもいえる。シャシーを第二サスペンション として使うことで非力なエンジンパワーながらコーナーで勝つマシンにしている。

ところが現在のハイグリップタイヤに対してはそうもいっていられないようである。 過去10年のタイヤの急激な進歩により、汎用のタイヤでさえもLotusが発売された 当時のレーシングスリックに匹敵するグリップを出している。10年ほど前ならば 既に旧車であっても当時の新型車に対抗しうる(当然レストアされていることが前提 であるが)パフォーマンスをもっていたが、最近のタイヤ事情による以下の2点が 国産車のパフォーマンスを飛躍的に向上させた。ひとつはタイヤのグリップの大幅な向上 であり、もうひとつはインチアップにみられるホイールのサイズアップである。 結果としてこれはLotusにあうタイヤサイズを圧迫してしまった。
現在のLotus乗りでよくみられがちな失敗はSタイヤの装着による駆動系のトラブル である。既にBSのB70程度であっても当時の超ハイグリップタイヤである。それよりも はるかにグリップの高いタイヤの装着は駆動系のダメージだけでなくフレームにも 及ぶ恐れがある。なぜならば当時はそのようなハイグリップを装着を想定していなかった からである。それはしごく当然である。当時のスリックタイヤをはるかにうわまわる レベルのタイヤが現在の市販タイヤだからである。
そうなるとまず考えなければならないのがシャシーの剛性である。長年使われて やれてきた鉄板をもつシャシーに現在のハイグリップに対応した補強をいれて やる必要もある。実はLotusもそれを考えていたらしく、現在入手できるS2用、TC用ともに 補強入りのシャシーが手にはいる。ノーマル+5万程度の値段である。
これはAuto Jumble Vol.21のEuropa特集で某コンストラクタの水越氏による 指摘された一部に補強が入っている。これからフレーム交換をなさる方は このあたりも考えてレストアしたほうがよさそうである。
実際に70タイヤにこだわると必ずでてくる銘柄がある。 TOYOタイヤのトランピオFM-09Rである。175/70R-13、185/70R-13という Europa TC,SPLの標準サイズと同じタイヤがあるのである。 すでに旧式ながらYOKOHAMAのA-021にも同様のサイズが存在する。
このようなハイグリップタイヤ(といってもダンロップ98Jあたりと 比較すると市販ラジアルにかなり近いものである。)に対応するフレーム の補強は前に述べた。ところが駆動系の補強となるとパーツがない状態 である。アップライトはアルミ製でベアリングに荷重がかかりすぎると がたがでてしまう。このあたりが現在のレベルでいうと弱点といわれて しまう部分であるが、元々がレースカーのようなものであるから日常の 点検、整備でふせげるという極めたオーナーも存在する。このあたりは 使い方、個人の整備の技量に依存する性能ともいえる。
またアップライトのガタは左側に多い。これは左側通行が影響している のかなと思えてしまうが原因はさだかではない。これらのガタはドライブシャフト がアッパーアームを兼用しているためにおこる現象でもある。 ドライブシャフトが回転系の動きをになっているだけではなく縦横の 荷重変化を制御しなければならないからである。これを受けているベアリング が多大なストレスを受けるのももっともな話しである。
これに対してLotusはEspritのそれもS3からアッパーアームを増設する ことで対応している。御大チャップマンが最後まで許さなかったそうである。 チャップマンに無断でアッパーアームを増設して、チャップマンに試乗させて はじめて納得させたというエピソードがあるくらいである。 それくらいチャップマンという人は軽量化にこだわっていたわけである。
現在、英国バンクス社からアッパーアーム増設キットがでている。 しかしながら、おりからの円安であるし、精度を求めるとこの値段をだすなら 国内のレース屋で作らせた方がよいように思える。 ここなどはEuropaのレーサーや Sevenのチューンをやっている。いかがなものであろう?