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『はちみつぶた』
2005.0401−2005.0701.改稿
蛾兆VOLCA.
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【ようちえんは春休みで、お父さんはずる休みである】
夕日の射す桜の公園を
手をつないで歩きながら
<今夜は何が食べたいですか?>
と、僕は四歳の息子に質問する
<はちみつぶたがたべたいです>
と、息子は答える。
< 豚肉を煮て蜂蜜を、トリーリ、
トリーリって入れた、アレです >
なるほどね、
と、私が言うと、息子は続ける
< 前菜は、花豆のサラダがいいです
花の模様がついた、クレージービーンと水菜を
リンゴ酢と岩塩で和えたやつです
ご飯は炊き立てのものを
冷ましてください
デザートは
摘みたてのブルーベリーを乗せた
ホットケーキがいいと思います
全部食べたあと、
ロウソクが残っていたら
絵本を読んで下さい >
「それが私の幸福です」
って意味の事を
カタコトで
なるほどね。
と、私は言う
突然、友達を見つけて、
息子は駆け出していき、
私は私の孤独の中に残される
桜の降りそそぐ公園で
噴水の周りを
両手を突き上げて
子供たちが駆け回っている
桜の花をつかもうとして
そして私は見たのだった
はちみつでできた
透明のぶたを
子供たちが
歓声を上げながら
追いかけていくのを
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