1999/2/28
日本選手権 決勝
東芝府中 VS 神戸製鋼
東芝府中VS神戸製鋼
243前半313
0TRY0
0GOAL0
1PG1
0DG0
21後半10
3TRY1
3GOAL1
0PG1
0DG0


感想
それにしても、「わたしはラグビー予想の天才か?」(^_^;)

早くも春到来を思わせる暖かな陽射し。そのせいか、当日券を求めて続々と人が訪れ、観客数では前日のサッカー、ゼロックススーパーカップを上回ったのではないでしょうか。(それでも満員にはほど遠かったですが)

社会人大会はトヨタ自動車対サントリーの決勝戦となり、トヨタ自動車の優勝。日本選手権は東芝府中対神戸製鋼で東芝府中の三連覇。
1月12日HPにアップした社会人大会決勝トーナメントが始まる前の予想と寸分違わぬ結果で、社会人大会から日本選手権と続いた1998年度のラグビーシーズンは終わりを告げました。我ながらお見事。うーむ。『サッカーくじ』じゃなく、『ラグビーくじ』があったなら、一儲けできそう…・。

ところでトップページにも書いたように、ここのところ、仕事が忙しい。(これは良いことなのですが…)お陰で、準決勝も秩父宮は生観戦、花園の試合もビデオでしっかりと観戦したのですが、時間が無くて観戦記が書けませんでした。
その二試合を見た限りでは、本音を言えば、神戸製鋼側の鉄壁のディフェンス、理詰めの攻撃。ミラー選手という確実な得点源の存在などから、東芝府中はやや苦しいのでは?という風にも見えました。

ただし、トヨタには完勝した神戸製鋼でしたが、ほんの少し不安が芽生えたのも事実です。あの試合は間違いなく神戸にとっては今シーズンのベストゲーム。ほぼ100%の出来。そう、社会人大会準決勝で東芝府中に圧勝したトヨタの試合を思い出させたのです。意味するところは、神戸が優勝するということではなく、果たして神戸は二試合続けてこのパフォーマンスを演じきることが出来るのか?という疑問です。

トヨタは優勝こそしたものの、決勝のサントリー戦での戦い振りは、準決勝には到底及ばない出来でした。日本選手権に入ってからは、その調子を維持できず、神戸製鋼に完敗。結局、東芝戦で演じられた『とてつもなく強いトヨタ』の姿はその後見ることが出来ませんでした。同様に『非の打ち所が無く強い神戸製鋼』も大丈夫なのだろうか? つまり、日本のチームは、100%のパフォーマンスを演じきる試合を続けて出来るほどの真の強さがまだ備わっていないのではないか? モチベーションと緊張感を完璧に維持したままハードな試合を続けていくことがどれだけ困難なことか?
 
トヨタの敗退は、あらためてその事実に気づかせてくれたのです。
『いかにして決勝戦にピークを持っていくか?』
終わってみれば、それが、今シーズンの社会人チーム(或いは大学チームでも)における最も重要視すべきテーマだったのかもしれません。

特に今年の場合、ワールドカップ予選やアジア大会が挟まったこともあって超過密スケジュールとなり、ジャパンに選ばれた選手達のコンディションの維持はさぞや大変だったことと思います。数年前まで、現在の日本選手権改革の基ともなった『絶対的な試合数の少なさ』が問題となっていたことを思えば、隔世の感があります。

多くの選手をジャパンにとられた東芝府中や神戸製鋼。
日本選手権の決勝がこの顔合わせになったということは、その疲労の蓄積とチームとしてのコンビネーション不足を解決するのに、少なくとも二ヶ月以上の月日が必要だったということなのでしょう。10月末のワールドカップアジア予選を乗り越えて、休む間もなく、優勝することを使命とさせられたアジア大会。

ところが決勝戦では信じられないレフェリングのせいでまさかの敗北。肉体的な疲れとともに、精神的疲労が多くのジャパン戦士達にのしかかっていたのかもしれません。最後の二試合、日本選手権の準決勝と決勝で、ジャパンスコッド達の「さすがジャパン!」という素晴らしいプレーを見るにつけ、今シーズンのジャパンの選手がいかに大変だったかを改めて感じました。

前置きはここまでにして、そろそろ試合内容に触れましょう。

前半はロースコアのディフェンス合戦。ボール支配率、地域獲得率とも東芝府中が圧倒していました。結局、互いにPG一本ずつを決め、3対3で前半終了。東芝府中にすれば、あれだけ攻めていたのだから、何とかトライを取りたかったでしょうし、神戸製鋼にしてみれば、渡辺選手のシンビンの間に、もう少し加点したかったことでしょう。

テレビでは、ゲストの平尾監督が「これは神戸ペース」とほくそ笑んでいたようですが、実際は東芝ペースだったような気がします。
というのも、準決勝のサントリー戦も似たような展開で、前半は堅くディフェンシブな試合運び。どうも東芝はこういった展開を最初から睨んで戦略を考えていたようなふしがあるのです。

フィットネスに自信があるせいか、後半、相手のフォワードが疲れを見せたところで連続攻撃を仕掛けるのがお得意のパターン。ただし、一昨年は見事に決まった『PからGO』も、これだけ普及してしまえば奇襲戦法にさえなりません。(もっとも、『PからGO』の存在意義というのは、奇襲などではなく、「徹底的にフィットネス勝負を挑む」という方に重きがあるのだろうと私は思っていますが)。

『連続で反則を犯した場合は早い仕掛けが出来ない』ことを逆手に取られ、意図的に10mバックをせずにオフサイド覚悟でディフェンスされるとなれば、そうそう相手陣形を崩せるものではありません。相手の選手のスタミナをロスさせ、ボディブローのように相手の体力を奪っていく。それを見切ったところでの仕掛け。それが東芝の持ち味です。確かに「そんなものは戦術、戦略などではない」いう意見にも一理あります。でも考えて見てください。いかに戦術、戦略が優れていても、選手がそれに見合うだけの体力を持っていなければ、まさに『絵に描いた餅』にしかなりません。

大学選手権一回戦。
早稲田大学の戦い振りは確かによく考えられたものでした。それでも100点ゲームの大敗。選手個人個人の強さ(大きさではないですよ)、或いはランニングフィットネスなしには結果は見えています。どんなに戦術の素晴らしい高校生チームがあったとしても、そのチームがジャパンに勝てるなどと信じるラグビーファンはどこにもいないでしょう。日本と世界の差はそれほどあるのです。今までジャパンが善戦しながら、必ずや最後の20分で逆転、あるいはトライを連取され、終わってみれば大敗という結果になっていたのは、フィットネスの違いに他なりません。

80分間きっちりと走りきれるスタミナを創り上げることから始めるのは、極めて真っ当な方法だと思うのです。
東芝府中が社会人大会で結果を残したことで、他のチームもこれまで以上に積極的にフィットネスに取り組むようになってきました。今年のトヨタなどはその最も顕著な例。スリムになった高橋選手やオト選手が大活躍したのは記憶に新しいところです。

この決勝戦でも、最後の最後までお互いの選手が良く走っていました。
最初にフィットネスありき。それは至極当然のことだと思います。
でも問題はその次。まずフィットネスを確立させ、そこからの第二段階。どんな戦法、いかなるプレーで外国チームに挑んでいくのか?ここからが平尾監督の真の手腕が試されるときです。

ただし、平尾氏自身は手の内をあまり相手に明かさない方が得策と考えているらしく、本大会前にはあまり披露したくない、と語っています。彼を信じるしかありませんが、今年のパシリムも、昨年同様に欲求不満が渦巻く(香港戦でスクラムにこだわり、批判を浴びたこと)、ファンにとっては少々つらい試合になるかもしれません。

ついつい脱線してジャパンの話になってしまいましたが、決勝戦の話に戻れば、後半、一気に試合が動き出します。

神戸製鋼がペナルティで3点を加えた後、東芝府中が速攻で神戸製鋼ゴール前に接近。続けて神戸製鋼が反則を犯し、最後は松田選手の突進を止めた神戸製鋼ディフェンスのオフサイドで認定トライ。
この直後、神戸が東芝22mライン内に攻め込み、東芝がペナルティ。当然、神戸製鋼はキックを選択。普通なら絶対入る距離と角度。ところが、このイージーなキックをミラー選手が失敗。

試合の流れから言うと、このゴール失敗は大きく響きました。
「この簡単なキックをミラー選手が何故外したのか?」にはちょっとした伏線があります。東芝に攻め込まれ、神戸がインゴールからタッチキックで逃げるとき、人工芝のせいかミラー選手は二度も足を滑らせ、キックをミスしています。軸足を二度も滑らせた印象が脳裏に焼き付き、ついつい違和感と不安が残ったまま、余分な力が入りミスキックになった、という気がします。
この後、東芝は勢いに乗って、二つのトライを連取し、安全圏に。
神戸も自陣から積極的に展開して何度か攻め込みますが、結局FB薬師寺選手のワントライに終わり、敗れました。

東芝はいつものハイスピードラグビーをほとんど見せずじまい。前半の負傷の影響か、村田選手の調子がいまひとつだったのと、神戸製鋼の鉄壁のディフェンスの前にフォワード中心の戦い方になりました。日本選手権という舞台は、どんな内容であれ、一番大事なのは結果。如何に良いラグビーをしても敗れては元も子もありません。相手の弱いところを突いて勝利を目指すのは勝負事の鉄則ですから、それはそれで理解できますが、ラグビーファンとしてみると、やはり物足りなさが残りました。

(観戦直後はそれほどでもなかったのですが、五カ国対抗の『ウェールズ対フランス』戦などの素晴らしい展開ラグビーを衛星生中継で見た今となっては、「もう少し何とかならなかったのか…」という気持ちになります。)
「ジャパンのラグビーはこれで良いのか?」というような話とは別の次元のものと捉えれば良いのでしょうが。

ただ、気になるのは、この試合のMVPを挙げろと言われれば、やはりゴードン選手か、マコーミック選手。ジャパンでも両輪といわれる二人だけに、東芝の不安はジャパンの不安とも結びつく部分があるところが、ちょっと怖い感じで、やはり日本人選手の奮起に期待したいところです。

敗れた神戸製鋼。
今シーズンはミラー選手のキックを軸にした戦い方でここまで来ましたが、日本中のどのチームより、技量を持ったタレント揃いのバックス陣なのですから、もっと自陣からでも積極的にボールを回すような戦法は取れなかったのでしょうか? 事実、この試合でも、大畑選手のライン際の快走や、FB薬師寺選手の見事なトライなど、黄金バックスの片鱗を度々見せていたのですから、もう少し早い時期から、(この試合に限らず、社会人選手権あたりから)この形での戦術を煮詰めていれば簡単に優勝していたのでは?、と思います。

この試合、リザーブに岩淵選手が入っていたので、てっきり私は、もし後半リードされるような試合展開なら勝負を賭けて投入してくるものと思いましたが、結局出場しませんでした。
調子が悪かったのかもしれませんが、采配として考えれば、やや疑問が残ります。神戸製鋼自体のチーム戦略として考えれば、結局ミラー選手を核とした今シーズンのゲームプランは誤りだったような気がします。
来期はまた新しい神戸製鋼のスタイルに期待したいと思います。
(ちょっと中途半端ですが、あまりにも時間が経ちすぎたので、今回はここまで)。<(_ _)>

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