1999 March. 前期 (Arcana 18)

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過去のお言葉

March. 1st (Mon.)

午後、京大数理研に顔を出し小一時間ほど T 師匠とゼミをし、 その足で BKC に移動。卒業判定の会議に出席。

「ドルコスト平均法」の話。 例えば次のように単純なモデルを考えてみよう。 今日と半年後に分けて二回ドルを買う。資金は10万円ずつで合計20万円。 一年後にいくらになっているだろう。 今日1ドル100円として、半年後には1ドルあたり10円上がるか下がるかの どちらかに確率半々でなっているものとしよう。 さらに半年後にはまたさらに10円下がるか上がるかする。 (したがって4分の1の確率で120円、2分の1の確率で100円、 4分の1の確率で80円になる) また円で持っていても利子はまったく付かないが、 ドルには半年で2パーセントの利子がつく。 両替手数料については、1ドルあたり片道1円かかる。 さて、一年後には円でいくら儲かっている? そしてそれは最初に一度に20万円分ドルに変えた場合にくらべてどうか? 平均だけでなく分散、すなわちリスクの大きさについてはどうか? さらにモデルを複雑化して両替の回数を増やしたらどうなるか?

毎月一定額の円でドルを買っていくと、 その月々の為替比率は確かに平均化される。 しかしそれは問題の一つの因子に過ぎない。 ドルに両替するのは、その利子を期待するからであるから、 ドルに預けていた期間の長さが問題になる。 後に両替した資金ほど預金されていた期間が短かくなるから、 当然利子分は小さくなる。 また後の両替比率ほど最終比率に近いから、 その分については為替損も得も小さい。 さらに、当たり前のことだが、最終的には円に戻すのだから、 ドルを買った時とそれを円に戻した時の為替の差が問題なのである。 さて、あなたはどんなモデルをたて、どんな計算をしましたか?

March. 2nd(Tues.) - 3rd(Wed.)

二日(火曜)。教授会の後、夜は前に事務をやってくれていた T さんが 外国から帰国したので、その歓迎会(?)。 草津で三時頃まで飲み、タクシーで四時ごろ帰宅。

三日(水曜)。午後から雑務をいくつか片付けるために大学にいく。

数日前から急に「ドクトル・ジバゴ」が読みたくなったので、 あちこち探しているのだが何処にもおいていない。 さすがにノーベル賞受賞作(受賞拒否したんだっけか) ともなれば何処にでもあるだろうと 思っていたのに、ちょっとショック。 本屋で検索してもらおうとしたら、その店員曰く 「ナークのドクトル・ジマゴですか?」
まずパステルナークはパステル・ナークじゃないし、 ジマゴって誰?快盗ジゴマと混乱してるのか? 俺はジゴマだジゴマだじょー、と歌いながら丸善を後にしたことであった。

明日から金曜日まで金沢でのシンポジウムに参加しますので、 次回更新は土曜日になります。

March. 4th(Thurs.) - 5th(Fri.)

4日と五日、金沢にてシンポジウム。 三月とは思えない暖かさだった。

講演の合間の休憩にお茶を飲んでいたら、 もうすぐ K 大を退官される W 先生に突然話しかけられて驚いた。 というのも、W 先生は大変物静かな方で、 こちらから話しかければ丁寧に答えて下さるだろうが、 先生の方から話しかけられたというような経験が皆無だったからである。 W 先生は今、先生が非常な興味を持って、 某数学者の仕事を follow していること、 それが難しくて良く分からないこと、 それについて先生が考えているイメージについて、 ほぼ一方的と言っても過言ではない不思議な熱心さで 僕に語ってくれた。

なんと言うこともないのだが、心打たれた体験であった。

March. 6th(Sat.) - 8th(Mon.)

二日ほど山科を離れて、あちこちで暗躍していたのだが、 留守中と雑用が舞い込んでいてちょっとぐったり。 この一週間はわりと暇なので、ゆっくり数学でも考えよう。

土曜は寒かったが、あたたかい日が多くなってきた。 このまま春になるのだろうか。そういや、春一番も吹いたらしいし。

9th(Tues.)

京都は雨。午前中はチェロの練習をして、 午後はさまざまな私的な雑務をこなす。 運転免許の住所変更をするために、区役所、警察と周り、 そのまま税務署に確定申告をしに行き、 郵便局で振込みなど色々とまとめて用事を済ませる。

私は給与所得者なので、当然ながら税金は源泉徴収されている。 給与所得者は年末調整もされているので、 普通は確定申告をする必要はない。 そうなのだが給与所得者も源泉徴収はよしてしまって、 毎年確定申告を義務にした方がいいのではないかなあ、 と無責任にふと思った。(アメリカとかはそうなんでしたっけ?) というのも、毎月の給料から税金分が既に天引きされていると、 自分が国に対してこんなに税金を払っているのだ、 という意識がどうしても薄くなりがちなのではないかなあ、と。 おおざっぱに言って、年収数百万の給与所得者は給与の内、 控除を除いた所得の一割から二割くらいは税金として払っている。 この日記を読んでくださっている方々には、 ひょっとしたらもっと払っている方もおられるかもしれない。 こんな多額のものを年度末に自分で計算して払うことになれば、 自分が払った税金に対して政府はちゃんとやっておるのか、 ともっと気になってくるのではないだろうか。 もちろん、こんなに払いたくなーい、 と年度末に思うだけのことかもしれないし、 ネガティブな面が色々あるのかもしれない。

いや、たいしたことではないのですが、 今年真面目に確定申告を書いてみたら(去年はテキトーだった(笑))、 思いがけずかなり勉強になったので、ちょっとそういうことを思いました。

10th(Wed.)

すごく久しぶりにブックガイドを更新してみました。 第四回は恋愛小説編。ページのデザインは今回、 Ori さんという方に頼んでおります。

中学、高校の頃って現代国語の授業とかで、 やたらに世界の名作を読まされますよね。 「パルムの僧院」とか「赤と黒」とか「罪と罰」とか「こころ」とか。 あれは非常に良くないんじゃないかなあ、と思います。 読んでもなんにもわからないのに、 その癖、読んだことは読んだと思っているから、 それにつまらなかった印象だけが残っているから、 大人になってからは読み返そうとはしない。 凄くもったいないんじゃないかなあ、こういうことって。 普通に考えて文学って大人が読むもんですよね。 なのにどうしてだか漱石なんて読んだのは子供の時。 電車の中とかで子供がカフカを読んでいても感想文の宿題かなあ、 と思うくらいで驚きもしないけど、 ふと喫茶店で隣りに座った大人の女性がキーツとか読んでいたら、 「おおおっ」とか思うのは僕だけでしょうか。 しかも急に魅力的な女性に思えたりして。 何かコンプレックスでもあるのだろうか…僕って。 ま、それはおいといて、 文学とか詩とかって大人になってからこそ読みたい、 と言いたいのです。


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